デ・クラン プレミアム・ケープ・ルビーとポートワイン
先日、東京メトロ半蔵門線の水天宮前駅そばの南アフリカワイン専門ショップ「a2 by アフリカー(以下、アフリカー)」に行ってきた。
南アフリカワインを試飲するなど大変有意義な時間を過ごしたあと、2本のワインを購入した。そのうちの1本が、デ・クランのプレミアム・ケープ・ルビーというワイン。
ケープルビーは南アフリカのポートスタイルのワイン。ポートワインのことってそういや全然知らないなと思ったのでサクッと調べると、14世紀中頃にポルトガル北部で生産がはじまり、18世紀にポルト港からイギリスに盛んに輸出され、そこでポルト(港)がポートに転じてポートワインとなった、というワイン。
発酵途中のワインにブランデーを加えることで酵母の働きを止めて甘味とコクを出す酒精強化ワインで、裏ラベルには「甘味果実酒」という分類が記されている。
でもって、その名称は(シャンパーニュのように)厳格に管理されているため、他国で造ったワインはポートワインを名乗れない。なんでもかの有名な赤玉ポートワインもいまは赤玉スイートワインに名称を改めてるそうですよ余談の余談だけど。
デ・クラン プレミアム・ケープ・ルビーと「ケープ・ポートスタイル」
ともかくそんな事情で南アフリカではポートスタイルのワインをケープ・ルビーとかケープ・ヴィンテージとか呼ぶみたい。さらに詳しく知るべくwikipediaで南アフリカワインのページ(英語版)を調べると、「ケープ・ポートスタイル」という項目があった。
それによると、ケープ・ポートには以下のような種類がある。
ケープ・ホワイト=白品種から造る。
ケープ・ルビー=数種類のワインをブレンド。
ケープ・タウニー=樽熟期間の長いもの(?)。
ケープ・レイト・ボトルド・ヴィンテージ(LBV)=単一ヴィンテージ、長期間熟成。
ケープ・ヴィンテージ=単一ヴィンテージ。
ケープ・ヴィンテージ・リザーブ=良年のみ名乗れる。
え、こんなにあんのかよ。どうやらポートワイン自体にこのような分類がそもそもあり、南アでもそれを踏襲しているっぽい。 「ポート」の名称は名乗れないながら、「ケープ・ポート」と(おそらくは)俗に呼ばれるワインには熟成期間などに細かい規定も設けられているようだ。
なぜこんなにも南アフリカではポートスタイルワインが盛んに造られるのか? 調べ出すとキリがないので大幅に割愛するが、ポートワインはイギリスと密接な関係があり、イギリスと南アフリカは密接な関係がある(旧宗主国であり、南アフリカワインの約1/4はイギリスに輸出される)、ゆえに南アフリカでもポートワインの生産が盛ん、といった事情であるようだ。
デ・クラン プレミアム・ケープ・ルビーと「ケープ・ポートスタイル」
なんの話だっけ。そうだアフリカーでデ・クランのプレミアム・ケープ・ルビーという名前のワインを買ったわけなんですよ。価格は2970円(だったと思う)。以前、アフリカーの系列のレストラン・ヘルマナス714でこのワインを飲んだのが強く印象に残っており、「あること」をしたいと思って購入したのだった。
デ・クランはケープタウンから東に370キロ離れたカリッツドープ地区を代表する生産者(クランは崖の意。ザ・崖)。プレミアム・ケープ・ルビーはトゥーリガ・ナシオナル、ティンタ・バロッカ、ティンタ・アマレッラ、ソウゾアから造るワイン。
ポルトガルの赤品種で有名なトゥーリガ・ナシオナル以外完全に初耳だが、どれもポート用のブドウ品種なんだそうで、ティンタ・アマレラに至ってはポルトガルでもっとも広く栽培されている品種のひとつだそうですよwikipediaによると。世界は知らないブドウ品種で溢れてる。
それらのブドウは収穫後、自然発酵がはじまるまで放置。しかるべき糖度に達した時点でマスト(果汁)にアルコールを加えて発酵を停止させ、その後に圧搾。300リットル入りの古樽での熟成を経て、瓶詰め前に異なるヴィンテージのワインをブレンドして完成させるのだそうだ。発酵を途中で止めるから糖が残って甘いわけですね。アルコール度数は18.94度だそうだ。アルコール度数が高いこともあり、アフリカーの小泉俊幸さんいわく「2週間くらいは平気で保つ」そうだ。
デ・クラン プレミアム・ケープ・ルビーのマリアージュ体験について
さて、私はこのワインを「あること」をしたいと思って購入したと書いた。そのあることとはなにかといえば、ヘルマナス714で味わった、カルダモン入りのチョコテリーヌとのペアリングだを再現したいと思ったのだ。美味い蕎麦屋で「もり」をたぐって大吟醸追っかけたとき級に爆発的に合った、あの感動を再現したい。家で。
というわけで、カルダモン、板チョコ、マスカルポーネチーズなどを購入、簡単かつおいしそうなレシピでチョコケーキを焼き、それとワインを合わせてみることとした。バレンタインデーも近いし。いつもありがと、自分! という感謝の気持ちでレッツクッキングスタートである泣いてない。
手順は簡単だ。まず薄力粉20グラムにココアパウダー15グラムを混ぜる……のだがココアは5グラムしか残ってなかったので5グラムで良しとし、3グラム入れよと記されているベーキングパウダーは自宅になかったので省略した(適当)。
溶かした板チョコ2枚(100グラム)に、きび糖30グラム、米油50グラム、卵黄2個を加えたものを薄力粉と混ぜ、さらにマルカルポーネ30グラムを投入。そこにハンドミキサーでツノを立てた卵白2個分を2回に分けて入れたら準備は完了。クッキングシートを敷いたグラタン皿に流し込んだら180度に予熱したオーブンで18分。カルダモンは出来上がったあとで振りかけることとした。
18分後、オーブンから出してみると、おお、ちゃんとケーキ然とした物体ができてる。すごい。しかし、私が作りたかったのはスイーツではなくあくまでワインのつまみだ。ただの甘味をワインサイドにグッと引き寄せるにはアレの力を借りる必要があるだろう。助けてっ、カルダモン!(『ドラえもん』の発音で)
ナイフで切り分けたチョコケーキにカルダモンパウダーを振りかけて食べてみると、もちろんレストランの味とは比べるまでもないが甘くてスパイシーという基本要件は満たせていてちゃんとおいしい。
そしてケープ・ルビーで追っかけてみるとこれは完全勝利と言っていいんじゃないでしょうか。自宅でできるマリアージュとしては自分比最高峰だと思われる。ケープ・ルビーのダークチョコを思わせる樽の効いた暗めの甘さとチョコの甘さ、ワインのスパイシーさとカルダモンの爽やかな刺激がスクラムを組んでおいしさのラグビーボールを味覚中枢に押し込んでくる。行ってよかった、ヘルマナス714。
そもそもケーキを作るのがめんどくさい、ダルい、という問題はあるが、コンビニで売ってるフォンダンショコラとかティラミスとかにカルダモンぶっかければ大体オッケーなはず。しかし、紹介したレシピはよくよく見ると混ぜて焼くだけなのでわりとけっこうカンタンなのだった。
というわけで自宅で再現可能なこのマリアージュ、おヒマな方にはぜひお試しいただきたい。ナッツ系のなにかを入れたら樽の感じにさらに近づく感じするなあ。また作ろ。
当該ワインがアフリカーのサイトで見つけられなかったのでKWVのポート・ルビー貼っときます↓