ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

ヘルマナス714に行ってきた! 南アフリカワイン5杯×5皿+αのペアリングコースの全貌は?

南アフリカ専門店として名を馳せるアフリカーが新宿・荒木町にオープンしたワインバー・ヘルマナス714に行ってきた。

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ヘルマナス714、夜のご様子

南アフリカといえば2020年代の今、世界最高峰の高コスパワイン産出地帯なのではないかという土地。1万円のワインペアリングコース(5皿+5杯+デザート、ルイボスティー)でどんなワインと料理が楽しめるのか、ワクワクしながら東京メトロ丸の内線・四谷三丁目の駅からお店へと向かった。

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お品書きがこちら。デザートを除く5皿に5杯のワインがペアリングされる

お店の内装は黒をベースにしたシンプルでモダンなもの。テーブル席に通していただき、お品書きを眺めていると一杯目のスパークリングワインをソムリエの方が運んできてくれた。

 

ヘルマナス714のペアリングコース【1皿目】

出てきたのはグラハム・ベックのブリュット ロゼ ミレジム2012。ピノ・ノワールで造られたロゼ泡だ。特徴はイチゴみたいなかわいらしい香り。

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なみなみと注がれるグラハム・ベック ブリュット ロゼ2012。

でもってこれを非常にたくさん注いでくれるわけなんですよ。「乾杯用+1皿目へのペアリング用」ということで量が多めになっているんじゃないか説。

乾杯で喉を潤しても十分に残るので、残りは料理と一緒に楽しむ。私は非常にチョロいタイプの人間なので、この時点でもう好き。

さて、グラハム・ベックのロゼに合わせる料理は「イチゴと生ハムウエハースサンド〜最中バジル〜」だ。ごめんちょっとなに言ってるかわからない。料理の見た目は、完全に最中(もなか)だ。

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もなかキタ

イチゴの香りのワインにイチゴもなか。イチゴ×イチゴというシンプルな掛け算で、いただいてみると、イチゴ×イチゴ=イチゴ、というイチゴ100%的世界観にバジルと生ハムがアクセントと塩味を加えてうん、おいしい。

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まずは初球、右バッターのアウトローに軽めにストレートを投げ込んでワンストライクをとりにいくような静かな出だしという印象。日中の仕事の余韻もいい感じに抜けてきて、夜はここから。いざ2杯目の登場だ。

 

ヘルマナス714のペアリングコース【2皿目】

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2杯目は「ドーランス・ブラン」

運ばれてきたのはドーランス・ワインズの「ドーランス・ブラン」。シュナンブラン100%、ステンレスタンクで発酵後、4カ月澱の上で熟成させたあと、少量のSO2だけを添加してリリースされるというワイン。合わせる料理は「軽くグリルした帆立と蕪のマリネ〜菊花 柚子 エストラゴン〜」。

ワインはほんの少し自然派感のある、スッキリのなかに旨みも感じられるタイプ。料理も非常に繊細というかグラスに入っている白ワインを料理で再構成したような味わいで、実にピッタリとワインに寄り添っていた。

先頭バッターが出塁したあと送りバント成功という印象で、このあとの展開にさらに期待が高まっていく。

 

ヘルマナス714のペアリングコース【3皿目】

さて、ここからはいよいよ3、4、5番のクリーンナップに突入。3番バッターは「スワーワー ルイ・フルン セミヨン・グリ」。セミヨン・グリで造られたオレンジワインだ。

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スワーワー ルイ・フルン セミヨン・グリ

アフリカーのインディ・ジョーンズ映画みたいな見出しがつけられた特設ページセミヨン 〜南アフリカの秘宝〜」によれば、セミヨン・グリは「セミヨンが突然変異で赤く変異した」南アフリカにしかないと言われる品種なのだそうだ。へー。

掲載されているブドウの写真を見るとたしかに赤い。ならば普通に造るとオレンジじゃなくてロゼになるような気が素人としてはするわけだがそうはならないんですね。運ばれてきたグラスの中身はキレイなオレンジ色をしている。合わせる料理は「ひよこ豆のタヒンポタージュ〜鴨のラビオリと共に〜」だ。

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料理とワインの色味もきれいに揃っていい感じ

ワインはハーブのような香りに果実味、旨味が加わった肉厚な味わい。そのハーブの香りと、ポタージュに入れられたタイムの香りが合体して爆発、南アフリカ国立野生ハーブ園(※妄想上の施設)に一瞬で運ばれるような体験が得られた。すごいなこれ。

自宅ではここまでの料理とワインを合わせる精度は到底不可能。お店に来てこそ楽しめるペアリングの妙だと感じた。あと普通に鴨のラビオリが超うまい。「おかわり!」って元気に言いたくなるレベル。

 

ヘルマナス714のペアリングコース【4皿目】

ここまでロゼ泡→白→橙ときて、次に登場したのはアルダリンのソーヴィニヨン・ブラン

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4杯目はアルダリンのソーヴィニヨン・ブラン

流れ的にはロゼとか軽めの赤かと思いきや、さっぱり白。その意図やいかにと料理を待つと、運ばれてきたのは「サーモンとコンテチーズ パートフィロ包み〜ケープマレー風ココナッツミルクのソース〜」だ。前菜からはじまって、スープ、パスタだから次はお魚なわけかそうか。

アルダリンはツイッターのタイムラインでもたびたび見かける銘柄ながら未飲だったのだが、これ非常においしいですね……。私は爽やかすぎるソーヴィニヨン・ブランよりも少しコクのあるタイプが好きなのだがこれはまさにそれ。

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春巻きみたいなパリパリの食感でたいへんおいしい。

料理のほうの「パート フィロ包み」は私の文脈に置換して述べると揚げ春巻き的食感で、中のサーモン、コンテチーズも非常にさわやかな味わい。ワインも料理もどちらもシンプル&高品質という感じで、クライマックスへの助走は十分となった。

 

ヘルマナス714のペアリングコース【5皿目】

最後に注がれたのが、デイヴィッド&ナディアのグルナッシュ2020。これが単独で飲むとすっぱ&渋いという印象ながら味わいの芯があって、いかにも「肉と一緒に飲んでくれ頼む」というワイン。

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赤はデヴィナディのグルナッシュでした。

合わせるのは「蝦夷鹿ランプ肉ローストと小さなポポティー 〜スパイスを効かせた赤ワインソース&マッシュルームクリームソース〜」という一皿。ポポティーっていうのは要するにハンバーグとかつくねみたいなひき肉料理のことみたいです。

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おいしそうな見た目の通りにすごくおいしい

単独では正直あまり印象に残らないかもしれないワインが、蝦夷鹿を食べたあとで飲むと印象が一変。旨み帝国の逆襲というか、単体では私レベルには感知できなかった旨み成分がジユワッと溢れ出してくる。

単体で飲んでいたときに小さいと感じた味のボリュームの中に、途方もないエネルギーが詰まっていたという感じ。強敵(鹿)を目の前にした場合のサイヤ人(ワイン)的な、敵(肉)が強ければ強いほど強く(うまく)なる系ワインだ。

 

ヘルマナス714のペアリングコース【+α】

以上で5皿×5杯のワインペアリングコースは終了。だが、まだ食後の甘味として「カルダモン香るチョコレートテリーヌ〜マスカルポーネのムース添え〜」が待っている。

これにはルイボスティーが付いてくるのだが、お店からご提案いただいた「デ・クラン ケープ ヴィンテージ」を合わせてみた。南アフリカのポートスタイルの酒精強化ワインだ。

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この夜最大のサプライズがこれ。

でですね、これが「あれひょっとしてこれ今日イチじゃない?」くらいデザートに合った。私はワインに甘いものが合うわけないでしょどう考えても派だったのでビビった。心底驚いた。合いすぎ注意報

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ワインの写真も撮ったんですがめっちゃブレてたのでデザートの写真を貼ります。

なんというかこのワイン、そもそもがチョコっぽいのだ。甘口なので当然のごとく甘いのだが、渋みとか苦味みたいなものも同時に感じる味の構成が実にもってチョコ的。それに現実のチョコを合わせると、チョコの原子とチョコの原子が激突して核反応を起こしたような現象が脳内の味覚中枢で起こる。舌とかじゃなくて脳に直撃してくるんですよこの甘さと甘さの激突。カルダモンのスパイシーさとワインのスパイシーさも合う・オブ・ザ・合うだった。

というわけで5皿×5杯+1皿×1杯のペアリングは大満足で幕を下ろし、お会計1万1000円を支払うと、シェフとソムリエの方にお見送りしていただきながら店を後にしたのだった。うーん、満足。みなさんもぜひ!

これが相当お得ってことがよくわかった↓

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