ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

ドメーヌ・デ・リゼ「エキノックス」。“神の子”がつくるシラーの味わいは? 【Domaine des lises Equinoxe】

ドメーヌ・デ・リゼ「エキノックス」を買った

安くておいしいシラーを飲んでシラーの地図を作ろうと思い立ち、ツイッターで3000円以下のオススメシラー情報を教えてくださいと呼びかけてみた。ツイッターに集うワイン賢者のみなさんの集合知でワインを選べば、最短距離で「安うまシラーMAP」が完成するに違いないと思ったからだ。

コメント欄が有用すぎるのぜ是非ご覧いただきたいのだが、今回飲むドメーヌ・ド・リゼの「エキノックス」もそうして教えていただいたうちの1本。輸入元のフィラディスのページによれば、希望小売価格は税抜き3100円のようだが、ネットショップなどでは3000円を切る価格で売られているので「安うまシラーMAP」のレギュレーション(3000円以下)的にはアリ。

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ドメーヌ・デ・リゼ「エキノックス」を飲みました。

AOCはフランスは北ローヌのクローズ・エルミタージュだ。北ローヌ最大のアペラシオンだよねたしか。使われているのはシラー100%。AOCの規定ではシラーを85%以上使う必要があり、残り15%は白ブドウのマルサンヌ、ルーサンヌをブレンドできるそうだ。

 

ドメーヌ・デ・リゼはどんな生産者か

さて、どんな生産者なのかと調べてみると、あれおかしいな。公式サイトがヒットしない。輸入元のページには、クローズ・エルミタージュの神様的存在であるアラン・グライヨの息子であるマキシム・グライヨが独立して設立したとある。神様の息子だから神の子。息子の情報がないならばまずは神様・アラン・グライヨのほうから調べてみることにした。

ドメーヌ・アラン・グライヨで検索してみると、croze-helmitage-vin.frという、クローズエルミタージュの公式サイトみたいのがヒット。そこには、ドメーヌ・アラン・グライヨの公式サイトのurlも記載されていた。

やっと一次情報にありつけそうだわい。そう思ってリンクをクリックした私はとんでもないものを目にすることになる。これだっ

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coming soonって。
親子そろって公式の情報がネット上に(見つけられ)ない。
今度とcoming soonは来たことがないという名言(そんな名言はない)に従い、今回は粛々とインポーター資料を読み込んでいきたい。

himawine.hatenablog.com

 

ドメーヌ・デ・リゼとマキシム・グライヨとアラン・グライヨ

ドメーヌ・デ・リゼは北ローヌの有名産地であるところのクローズ・エルミタージュにおいて神様と称されるアラン・グライヨの息子、マキシム・グライヨが設立。

マキシムは2003年にクローズ・エルミタージュに5ヘクタールの土地を買い、2004年、27歳で初ヴィンテージをリリース。たちまち評判となり、現在は父のドメーヌ、ドメーヌ・アラン・グライヨの醸造責任者も務めている、という人物。2004年で27歳だったらほぼ同世代だな自分と。親近感わくな。

himawine.hatenablog.com 

で、面白いのは父のドメーヌと自分のドメーヌで醸造のやり方を変えているという点。

父ドメーヌ:全房発酵、タンクでのマロラクティック発酵、古樽での熟成
子ドメーヌ:90%除硬、バリックでマロラクティック発酵、新樽10%ほど使用

父のドメーヌでは父のドメーヌの伝統を守りつつワインを造り、自分たちのドメーヌでは自分たちのやり方でワインを造っている。結果、「マキシム・グライヨはアラン・グライヨのライバル」と言われるほどの評価を得たのだとか、なんですかねこのいい話。中国の故事にありそう。

エキノックスは、春分秋分を意味するフランス語。春分の日に瓶詰めされ、秋分の日にセラーから出荷されるからその名がつけられたのだとか。シャレとる。一体どんな味なのか、いざ飲んでみよう。

 

ドメーヌ・デ・リゼ「エキノックス」を飲んでみた

グラスに注いでみると、かなり濃い紫色。エキノックスという名前やラベルのイメージからもう少し軽めの感じかと思いきや意外と見た目は濃厚だ。でもって香りがすごいなこりゃ! 毛皮と土と果実の合わさったような、野に咲くなんらかのベリーを食べ尽くしてきた満腹獣(まんぷくじゅう)、みたいなワイルドな香り。

で、全然いやな香りではないのだが、ちょっとだけワイルド過ぎるような気がしなくもない。そして私の少ない経験から「なんとなく、時間が経ったらなくなる香りのような気がする」という気がしたので初日はグラスに1.75杯くらいを飲んで2日目に飲んだらうはは、超うまい。

これぞまさに飲む美女と野獣状態で、野獣が王子に変わったような味わい上の変化があった。ワイルドだった香りは穏やかになり、酸味が前に出ていた味わいは落ち着いてマイルドになっている。そして主張しすぎない上品な果実味があってどんどん飲めちゃう。

うーんこれ2000円台か。2000円台も後半になるとこういうスケールの大きいワインが出てくるから面白いんだよなあ。

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シラーMAP上の打点は、意外とエレガント系ではなく果実味よりの味わいだと感じた。次なるシラーもすでに抜栓済み。地図を埋めていく作業がなんだかとっても楽しくなってきた!

現時点でのベストは変わらずポークパインリッジ シラー↓


<余談>生産者名はドメーヌ・デ・リゼなのか問題

ここから先は完全な余談だ。本稿ではこのワインの生産者を「ドメーヌ・デ ・リゼ」と輸入元の表記に従って表記してきたが、これは本当に正しい生産者名なのだろうか?

というのも、海外の生産者紹介サイトを見ると「Domaine Equis」あるいは「Equis」として紹介されてるんですよこの人たち。で、ドメーヌ・デ・リゼは彼らがつくるワインの商標的なものだと紹介されている。
Equis クローズエルミタージュ “エキノックス” =若飲みタイプ

Equis クローズエルミタージュ“ドメーヌ ・デ・リゼ” =熟成可能なタイプ
みたいな。

実際、エキノックスのラベルにドメーヌ・デ・リゼの文言はなく、mis en bouteille par equisというクレジットが入れられている。「equis」が瓶詰めしましたよってことですよねこれ。うーん気になる。気になるので輸入元のフィラディスに問い合わせをかけてみたが、返信は現時点で届いていない。我ながら面倒な問い合わせなので納得だ。すみません。ただ気になるは気になるので、この件、正解をご存知の方がいたら教えてください。

 <追記>

記事公開後、

ドメーヌ・デ・リゼ=クローズエルミタージュの自社畑のブドウで造ったワイン

Equis =買いブドウで造ったワイン

ではないかというご意見を頂戴しました。クローズ エルミタージュ ヴィーニュ フランシュという接ぎ木をしていない自根ブドウでつくるワインもドメーヌ・デ・リゼ名義であることもその傍証となりそう。