恵比寿の「ワインマーケットパーティ」に行ってきた。
とあるワインが欲しいと思って輸入元に問い合わせてみたところ、恵比寿のワインマーケットパーティになら確実にあると思うと教えてもらい、恵比寿の有名店、いまだ伺ったことがなかったのでこれを機に行くことにした。
いきなり雑談めいた内容になるがあれですね。ワインマーケットパーティは素晴らしいお店ですね。入店すると出迎えてくれるグラスの数々。ザルトやらリーデルやら木村硝子やら、のグラスがすべて手に取れるのがまずすごく嬉しい。
実は私は最近ネットでグラスを凝視する日々を過ごしており、あれがいいかこれがいいかと比較していたのだが、百聞は一見にしかず一見は一触にしかずというわけで実際に触れると違いがよくわかる。マシンメイドとハンドメイドってのは全然違うなー! みたいな感動を得た。
さらに店内がすごく広くて品揃えもすごい。デイリーワインが豊富にあって、お財布にもやさしい。ソムリエナイフとかのグッズも豊富。「1日いられる」とかを超越した「住める」のレベル。店員さんにワインについて「あの……お値段は?」と聞くつもりがうっかり「あの……お家賃は?」と聞いちゃいかねないレベルですよ多少言いすぎてるかもしれないけど。
マルセル・ダイス アルテンベルグ・ド ・ベルグハイム グラン・クリュ2012とは?
ともかく目的のワインもバッチリ見つかったのでそれを買い、ワイン1本を買って退散するのももったいないので有料試飲コーナーで1杯だけ飲んでいくことにした。泡白赤とあるなかで、1杯しか飲む時間がないならば……ええいままよと注文したのがマルセル・ダイスのアルテンベルグ・ド ・ベルグハイム グラン・クリュ2012。
値段は70ミリリットルで1600円。70ミリリットルにしてわざわざ買いにきた750ミリリットルのワインと値段がそんなに変わらないような気もするがそれは言うだけ野暮である。ちょっと高いかな、でもいっか! と注文した自分を私はタイムマシーンがあったならばその日に戻ってキツめに抱きしめこう言いたい「よくやった」と。
マルセル・ダイスとコンプランタシオン
さて、感想は後回しにしてマルセル・ダイスについて調べてみよう。公式サイトを訪ねると、目に飛び込んでくるのは「The Art of complantation」の文字。コンプランテーション。フランス語でコンプランタシオン。サイト全体がとにかくコンプランタシオン推し。ではコンプランタシオンとはなんなのか?
公式サイトによれば、それは「テロワールの中でブドウ品種を混ぜ合わせること」。彼らの畑にはアルザスの13品種のブドウが植えられ、収穫も、プレスも、醸造も一緒に行われるのだそうだ。混植、混醸っていうんですかね。
「完全に無秩序に」ブドウの木を植えることで「品種の枠組みを超えてこそ、テロワールの大きな貢献を感じることができる」と公式サイトにある。この考え方は一読の価値があると思うので、おヒマな方はぜひ公式サイトを訪ねてみてもらいたい。テクニックである以上に思想という印象だ。いろんな人がいるもんだ。コンプランタシオンは声に出して読みたい日本語(注:フランス語)。
アルテンベルグ・ド ・ベルグハイム グラン・クリュとアルザスの13品種
さて、ワインに話を戻すと、アルテンベルグ・ド ・ベルグハイム グラン・クリュは初めてコンプランタシオンが畑の中で実施された記念碑的な畑であるようで、そこで栽培された「AOCアルザスのすべてのブドウ品種」が「正確な比率で使用されている」のだという。
その13品種が以下だ。
1 リースリング
2 ピノ・ノワール
3 ピノ・グリ
4 ピノ・ブラン
5 ピノ・オークセロワ
6 ピノ・ブーロ
7 ゲヴュルツトラミネール
8 トラミネール
9 ミュスカ
10 ミュスカ・ア・プティ・グラン
11 シルヴァネール
12 シャスラ
13 ローズ・ダルザス
知ってる品種もあれば初めて聞いた品種もあるが、「正確な比率で使用されている」ってことはこれらが約7.7%ずつ使われてるってことですかね。どうなのかな。ともかく、これら13種類を一斉に育て一斉に収穫し、徹底的に選果し、絞り終えたときにブドウの皮が破れていないくらいゆっくりプレスを行って、13種類一緒に醸造するのだそうだ。なにかとすごい。
マルセル・ダイス アルテンベルグ・ド ・ベルグハイム グラン・クリュ2012を飲んでみた
なんとなくワインについてわかったような気がする。というわけで、そろそろ話を恵比寿のワインマーケットパーティに戻そう。
というわけで私の目の前にはゼルトのユニバーサルにきっかり70ml注がれたマルセル・ダイス アルテンベルグ・ド ・ベルグハイム グラン・クリュがある。まず色がすさまじい。これは完全に黄金。あれ、俺っていま、秀吉がつくった黄金の茶室にいるんだっけ? 恵比寿じゃなくて。と錯乱するような華やかな金色が目に飛び込む。グラスのなかが大坂城。
そして、グラスからは濃厚ななんすかねこれは「花の蜜」としかいいようがない香りが別府温泉の湯量もかくやといった勢いでこんこんと湧いてくる。めっちゃくちゃいい香り。
で、飲んでみるとすごいんですよこれが。まず、白っていうか甘口。なんだけど甘ったるくはない、スッキリした甘口。そして、13種類をコンプランタシオンしているという前提をもとに飲んでいるからなのかもしれないけれども、本当に13種類の果実がそれぞれ感じられるような複雑に折り重なった味がする。
ハチミツのような桃のような、杏のようなみかんのようなゆずのような、脳内に浮かぶイメージがすべて黄色系統。それら13種類の黄色い絵具を混ぜたらなぜか黄金色に輝き始めたみたいな感じですよこれ。めっちゃうまい。おいしいを通り越して尊い。
というわけで70ミリリットルで1600円と安くはないけれども満足度は楽勝で元がとれる試飲となったのだった。ちなみにボトル価格は1万3800円税抜き。ワインマーケットパーティ、またお邪魔します!