「ニッポンのいいお酒。」3500円で60分試飲し放題
東京は各線渋谷駅前の東急プラザ渋谷で2022年6月9日まで開催中の「ニッポンのいいお酒。 第9回 長野ワインと清酒」に行ってきた。
長野ワインと日本酒100種類以上が一堂に会し、その場で買えるのはもちろん、2000円あるいは3000円または3500円を払えば60分間試飲がし放題になるというイベントだ。
2000円では上位レンジのワインは飲めないが、3500円だと3000円、2000円のワインも飲める。となれば払うべきは3500円一択ということでその金額を払い、スタッフの方の説明を聞きながらいろいろ飲ませていただいたのでレポートしていきたい。
冒頭に書いておきたいのだが、私は正味59分滞在し、結局18種類のワインを試飲した。1杯あたりの試飲量はどうすかね。小さなプラカップに20〜30ml前後といったところだろうか。仮に30mlだとすると540ml。フルボトルの7割強をいただいた計算になる。普段なかなか飲めないボトルを18種類飲めて、かつ渋谷駅前の場代を考えると非常にリーズナブルなイベントだと思う。みなさんも会期末は迫っているがぜひどうぞ。
ル・ミリュウ「ハートビート巨峰」
というわけで1杯ずつ振り返っていこう。
まずは安曇野市のル・ミリュウの「ハートビート巨峰2020」。瓶内一次発酵のスパークリングワインで、巨峰っぽさがあまりなく、つまりあんまり甘々してないドライな泡で夏の日の乾杯用に良さそうな感じ。
変なクセがないので1杯目として良かった。先は長いしどんどんいこう。
井筒ワイン「NAC竜眼2021」
続いては井筒ワインの「NAC竜眼2021」。塩尻市の自社&契約農園で収穫した竜眼を使用したというワインで、私は竜眼のワインを意識して飲むのははじめて。シルクロードを通って日本にやってきたブドウだそうですよ。天山山脈を超えてタクラマカン砂漠を抜け、海を渡ってなぜ長野へ……?
それはともかく飲んでみると意外とアロマティックな感じで、香りが華やかでおいしい。味わいはスタッフの方が「シュール・リーを長く行った甲州っぽい」とおっしゃっていて「わかる」ってなった。
井筒ワイン「NACピノ・ブラン2020」
井筒ワインが続き、続いては「NACピノ・ブラン2020」。これは前に飲んだ竜眼よりもさらにさわやか、甲州に比べると華やかみたいなワイン。香りは弱めだが、味は好みだった。
このワインの価格は公式サイトによれば1557円。この値段なら十分アリだと思う。
ちなみにNACはどうやらNAGANO APPELATION CONTROLの略のようだ。なるほど。
ル・ミリュウ「ポラリス 竜眼オレンジ2021」
続いてはル・ミリュウの「ポラリス 竜眼オレンジ2021」。竜眼でつくったオレンジワインはどうやらかなり希少なようで、果実の香りがしっかりあって、飲むと渋みもしっかりある力強い造り。
色合いもあって、柿っぽさをちょっと感じたりもした。個性ある1本。
ベリービーズワイナリー「グリーンハーヴェストブラン2020」
次に来たのが御嶽海関ですよなんですかこれは。なんでも大関・御嶽海は長野県木曽郡上松町出身。郷土の英雄の大関昇進を祝福しての記念ラベルなんだそうだ。
生産者は塩尻市のベリービーズワイナリーでキュヴェ名は「グリーンハーヴェストブラン2020」。ナイアガラを早詰みして仕込んだワインとのことだがハッケヨイのこったと飲んだこれがスマッシュヒット。
ナイアガラは好きな品種のひとつだが、その独特の香りが立ち会いからしっかり香り、酸味という名の右上手をしっかりとつかんだ味わいで見事寄り切り。相撲ファンならずとも手に取りたい1本だった。ナイアガラは優等生だなあホントに。あとちょっと御嶽海応援したくなる。
幸西ワイナリー「丘の上シャルドネ2021」
御嶽海が白のベストかな、と思っていたら次に飲んだのも非常に良かった。それが幸西(こうにし)ワイナリーの「丘の上シャルドネ2021」。
他社醸造から自社醸造に切り替えてまだ数年とのことだったが、自社醸造に切り替えてから評判が良くなっているらしく、日本の国際品種に時折感じるような気がしないでもない味わいの芯のなさみたいなものがなく、そのうえでしっかりと個性があった。
フランスのシャルドネともアメリカのシャルドネとも違うニッポンのシャルドネ、という印象でこれはまた改めて飲みたい1本となった。
信濃ワイン「シャルドネ葡萄交響曲シャルドネ作品502」
続いて飲んだのは信濃ワインの「シャルドネ葡萄交響曲シャルドネ作品502」というワインで、セラーでクラシックを聴かせながら熟成させたというワイン。
これはなんというか、ちょっとワイン離れした味わいで、後味で私が感じたのは甘酒。飲んだ印象も日本酒っぽい変わったワインだった。
ヴァンヴィ「VinVieロゼ カベルネ・フラン2021」
これでまだ半分くらいだろうか。まだまだ試飲は続いていき、次に飲んだのは自社畑で取れたりんご・ぶどうを使ってシードルとワインを生産しているというヴァンヴィ(VinVie)の「VinVieロゼ カベルネ・フラン2021」。
香りはベリー系のはつらつチャーミング系ながら、飲むとわりとズシリとした渋みがあり、液体に粘性の高さも感じる、合わせるならば俄然肉、というワインだった。信州だし馬刺しとか合わせたら合うのかな。どうなんだろ。みたいなことを思った。公式サイトを見ると生産本数はわずか165本とのことで、貴重なワインをいただいた。
塩尻ワイナリー「塩尻メルロ ロゼ2019」
次は大手も大手のサントリーによる塩尻ワイナリー「塩尻メルロ ロゼ2019」。
これはまさに大手という味で、果実味も酸味も主張しすぎない、飲みやすさに特化したような味わい。バランスの良さは見事だが、ここまで小規模ワイナリーのものも含めて飲み進めてみると少し個性が欲しいかなあ、という気がしてくる。
そうなのだ。思ったよりはるかに個性的なんですよ長野ワイン。当たり前かも知れないが、生産者による違いがくっきり出る。
スタッフの方いわく、「長野には地産地消文化がある」のだそうで、であるがゆえに東京にもそうたくさん入ってくるわけでなく、それもあってか生産者のエッジが立っている印象を受けた。
サンサンエステート「柿沢ロゼ2020」
次に飲んだのはサンサンエステートの柿沢ロゼ2020。自社農園産メルローをマセラシオンしてロゼ色に仕上げたというワイン。
こちらはメルローらしい味わいがあって、すごくおいしいワインだと感じた。公式サイトによれば価格も1980円とこなれてる。良い。
ヴァンヴィ「緒[いとぐち]2021」
ここから赤に行く前に白が2杯続く。まずはヴァンヴィの「緒[いとぐち]2021」という洒落た名前のワイン。
シャルドネ50%、ソーヴィニヨン・ブラン46%、ケルナー4%の混醸。樹齢3〜6年の若木から生まれるワインなのだそうで、公式サイトを見ると無濾過で亜硫酸塩の添加もわずかとナチュラル的な造り。
なるほど若木と言われれば納得の青っぽい感じはあるが複雑みもたしかにあって、5年後、10年後のヴィンテージが楽しみになるようなワインだった。
楠わいなりー「日滝原2020」
続いては楠わいなりーの看板ワインだという「日滝原2020」。自社栽培のセミヨンとソーヴィニヨン・ブランを発酵後8:2でブレンドしたというワイン。
ボルドー・ブランから樽の印象だけとったようなワインで、私が訪れた前日に試飲したソムリエの方が世界レベルだと絶賛したとかしないとか。おいしいワインなのは間違いないと私も思った。
ところで楠わいなりーは楠わいなりーなのか楠ワイナリーなのか。楠わいなりーが会社の名前で楠ワイナリーがワイナリーの名前なのか、よくわからなかった。どなたか教えてください。
大池ワイン「メルロー 2019 樽熟成」
いよいよ赤だ。長野といえばなんつったってメルローでしょうやっぱり。
というわけでトップバッターは大池ワインの「メルロー 2019 樽熟成」。ラベルにかわいい女の子が描かれているが、このワインの通称は“村の人気者の三女”というのだそうだ。シャルドネが“しっかり者の長女”でソーヴィニヨン・ブランが“個性的な次女”とのこと。
でもってこのワインが今回試飲したなかで三傑に入る個性派。なにがすごいって樽の香りがほんとにすごい。目隠しして嗅いだらウイスキーと勘違いするまであるというくらいの強さ。それでいてアルコール度数11%(とてもそうは思えない)という印象に残るワインだった。
信濃ワイン「スーパーデラックス 白2020」
これは個性的ですねえ、とかなんとか言ってたらスタッフの方がこれもかなり個性的ですよと持ってきてくれたのが信濃ワインの「スーパーデラックス 白2020」というすさまじい名前のワイン。
品種は竜眼。なにが個性的なのか。エビの香りだ。正確にいうと名古屋土産の定番のひとつ、坂角総本舗の「ゆかり」を思わせるエビの殼的な香りが余韻にある。個性派NO.1はこれだったかもしれない。
かといって生臭いとかそういうことではなく、ワインとしてはふつうにおいしい。バーベキューで殼ごと焼いたエビと合わせてみたいですね、みたいな話をしながら、いよいよラストスパートに入る。
井筒ワイン「NACメルロー[桔梗ヶ原]2020」
ここからの赤4連発の最初に飲んだのが井筒ワインの「NACメルロー[桔梗ヶ原]2020」。メルローのわりにというかなんというか香りはピーマン的な青野菜系。それでいて味わいはなめらかなメルロー。
今飲んでもおいしいが、これはもう少し時間をおくともっと良くなりそうだなあと感じた。井筒ワイン、基本なに飲んでもはずれがなくてすごい。
サンサンエステート「柿沢メルロ セクションA 2018」
続いてはサンサンエステートの「柿沢メルロ セクションA 2018」。標高840〜864メートルに位置する塩尻市柿沢地区の自園で採れたブドウを使っているというワインで、樽感、スパイシーさ、ベリー感どれもあっておいしい。
サンサンエステートはロゼもこのメルローもおいしかったので、味の方向性と自分の嗜好が合っているのかもしれない。こういう、自分好みの生産者に出会えるのは試飲会ならではだ。
たかやしろファーム&ワイナリー「カベルネ・ソーヴィニヨン&メルロー2020」
次はたかやしろファーム&ワイナリーの「カベルネ・ソーヴィニヨン&メルロー2020」。ふたつの品種を半分ずつブレンドしているとのことで、特徴的なバラの香りのせっけん的な香りがする。
味わいは小さい果実の印象で、きっちりおいしい。アルコール度数は12度。ここまでこれだけ飲んできてもスイスイ飲めてしまうような軽快さも良い。
アルプス「ミュゼドゥヴァン マエストロ 塩尻シラー 2020」
いよいよオーラスで、飲んだのはアルプスの「ミュゼドゥヴァン マエストロ 塩尻シラー 2020」。いちごジャム、それもいちごを摘んできて自宅で似たようなやや野生的な香り。
酸味もしっかりとあって、涼しい地方のシラー感があった。これもアルコール度数12度と軽め。前に飲んだメルローもそうだが、「軽めの国際品種」を探したときに、日本ワインは選択肢になるなみたいなことをぼんやり考えたりした。
というわけで以上18種類。これだけの量を一気に飲める機会はなかなかない。繰り返しになるが、6月9日までにいける方はぜひ3500円持って、東急プラザ渋谷へ。