「中川ワイン」の試飲会に参加した
カリフォルニアワインのインポーターとして名高い「中川ワイン」の試飲会に参加してきた。
希望小売価格(税別)1980円のワインから200000円のワインまで、全93種類を試飲したうち、とくにこれはすごいぞと思ったワインをご紹介したい。キーワードはみっつ。
・デコイ
・グロウワー
・トーマス・リヴァース・ブラウン
のみっつだ。早速いってみよう。
個人的キーワード1:「デコイ」
まず声を大にして言いたいのが、「デコイはヤバい」ということだ。チリの「コノスル」が1000円前後のレンジで圧倒的においしいように、デコイは実勢価格3000円前後のレンジで特筆すべき品質だと思う。3000円以下の安ワイン大好き勢にとっては、デコイ買っとけば間違いないっすと断言できるレベル。
とくに、
【世界異様コスパ泡大賞有力候補】ブリュット・キュヴェ スパークリングワイン 3300円
【93種類のうち飲みやすかった赤NO.1】ジンファンデル カリフォルニア 2900円
【実勢3000円台世界最強メルローの可能性】デコイ・リミテッド メルロ アレキサンダー・ヴァレー 4400円
あたりはコスパが完全にぶっ壊れている。(ちなみに【 】内はヒマワインが勝手につけたキャッチコピーです)
デコイ ブリュット・キュヴェ スパークリングワイン
ブリュット・キュヴェ スパークリングはピノ・ノワール49%、シャルドネ47%、ムニエ4%とシャンパーニュと同じ品種を使って瓶内二次発酵させたワイン。ブドウのソースはノース・コースト&セントラル・コーストと広域なのだがもうこれほぼシャンパーニュなんじゃないか、シャンパーニュを名乗っちゃっていいんじゃないか(だめ)という味がする。
希望小売価格は3300円で、ネットで調べると2700円とかで売られているのだが、昨今の円安に伴いほぼこの値段で買えるシャンパーニュはなく、結果的にこれは価格に対して世界最強級においしい泡ということになる。なんならそもそも安いシャンパンよりうまい。南アのMCCとコスパでいえば双璧みたいなことになるだろうか。南ア好き勢に試してもらいたい。
デコイ ピノ・ノワール カリフォルニア2021&ジンファンデル カリフォルニア 2021
白も高コスパなのだがデコイはとくに赤がヤバい。希望小売価格2900円のピノ・ノワール カリフォルニア2021とジンファンデル カリフォルニア 2021はともに2000円台のBEST BUY。とくにジンファンデルは嫌いな人いないでしょこれ・オブ・ザ・イヤー。カリフォルニア特有の果実味はありながら甘すぎず、酸もある。
デコイ・リミテッド メルロ アレキサンダー・ヴァレー2021
そしてこの日の超驚愕ワインが上級レンジであるデコイ・リミテッドのメルロ アレキサンダー・ヴァレー2021だった。
私がワインを評価する独自基準に「やわらかさ」があり、100%主観の完全定性評価ではあるのだが、このワインはやわらかさにおいては5桁円クラスのワインに一歩も引けを取っていなかったと思う。
デコイはダックホーンの廉価レンジであり、ダックホーンはメルローの名手。ハイコスパワインを造る手腕とメルローを造る手腕が正面衝突して生まれた新たな素粒子が、このデコイ・リミテッドのメルロ アレキサンダー・ヴァレー2021だ。断言する。このワインは素粒子だ(自分でもなにを言っているかわからない)。
このワインなんと3000円台で買えちゃうんですよ実勢価格だと(定価4400円)。友だちへのプレゼントや手土産にもちょうどいい価格帯。ホムパお呼ばれで褒められ続出間違いなしですよこれは。「おいしい〜」とか「ワイン苦手だけどこれなら飲める〜」とかじゃなく、「これ楽天で買える!?」って聞かれると思う(真顔で)。
というわけでデコイはヤバい。デコイ・イズ・ヤバい。
中川ワインの試飲会でおいしかった白ワイン
デコイの話に終始してしまうので、次なるテーマに行く前に白ワインで印象に残ったのをいくつか記録しておきたい。
ベッドロック ソーヴィニヨン・ブラン ソノマ・ヴァレー2022
ベッドロックのソーヴィニヨン・ブラン ソノマ・ヴァレー2022は樽をしっかり効かせたソーヴィニヨン・ブラン。まるでボルドー・ブランとカリフォルニアのシャルドネの中間地点みたいな独特の味筋でとてもおいしかった。5500円。
マックマニス ヴィオニエ2022
マックマニスのヴィオニエ2022は1980円とこの試飲会の最安値だが、これは超ハイコスパ。酸がしっかりあって白桃感たっぷりで実に美味。
リンカーン・セラーズ シャルドネ ナパ・ヴァレー2018
そして5000円以下のシャルドネBEST BUYがリンカーン・セラーズのシャルドネ ナパ・ヴァレー2018。飲み頃のど真ん中、スイートスポットに今突入している印象で、樽に頼りすぎず果実に頼りすぎずバランスで勝負していておいしい。ネットだと4000円をギリ超える価格なので、ちょっと贅沢したい日の候補に。
個人的キーワード2:ハドソンとピゾーニ。栽培家(=グロウワー)が造るワイン
そして、次のキーワードは「グロウワー」だ。シャンパーニュで新世代のRMをグロウワーと呼んだりするみたいだけど、カリフォルニアにもグロウワー系生産者はいて、中川ワインでいえばハドソンとピゾーニが双璧みたいに言っちゃっていい気がする。
ハドソン・ヴィンヤード シャルドネ カーネロス ナパ・ヴァレー2021
ハドソン・ヴィンヤードもピゾーニ・ヴィンヤードもいずれもカリフォルニアの有名畑。どちらも自社ワインを造っているのだが、まずはハドソンのシャルドネ カーネロス ナパ・ヴァレー2021(13000円)が素晴らしかった。
カリフォルニアワインは以前よりエレガントな路線になっていると耳にするけれど、それでもやっぱり濃くて強いものが多いと思うのだがハドソンはエレガント。
この日来日したラ・ペレのワインメーカー、マーヤン・コシツキさんが「樽はあくまでもワインのサポーター」と良いことをおっしゃっていたが、このハドソンのワインにも同じことを感じた。
栽培家=グロウワーだからこそ、果実の良さを活かす造りになるのだろうか。以前、ウエストソノマコーストの造り手「フリーマン」のアキコ・フリーマンさんが「シャルドネにとっての樽は女性にとってのお化粧」とおっしゃっていたが、ハドソンのワインには素材の良さを活かした薄化粧の美があると思う。
ルチアbyピゾーニ ピノ・ノワール エステート・キュヴェ 2022
そして、もうひとつのグロウワー、ピゾーニが手がけるルチアbyピゾーニのピノ・ノワールがこの日の私のMVPワインとなった。なんだこりゃうますぎる。
デコイのメルロー同様に、まず非常にやわらかい。それでいて酸がしっかりとある。やわらかさと酸は相反する要素な気がするのだがグラスの中で共存しており、そこに果実が主張しすぎず通奏低音のように流れている。
価格は1万円と高級なのだが、今回のベストコスパワインはこれだ! みたいな気分になる。高名なピゾーニ・ヴィンヤードに加えて、ゲイリーズ、ソベラネスという3つの畑から造られるワイン。単一畑より複数畑のブレンドのほうが味わいのバランスが取れる説、正しいような気がする。
キーワード3:醸造家トーマス・リヴァース・ブラウン
でもって最後、個人的キーワードの3つ目はトーマス・リヴァース・ブラウンだ。いや今回「うわこれうまっ!」となったワインの多くが、TRBの手がけたワインだったわけなんですよ。
すごいシャルドネ4選
シャルドネでは4種類「これはすごい」と思うワインがあって、そのひとつが前述したハドソン。残りは、
【バランス最強の濃い系】センシーズ シャルドネ ラシアン・リヴァー ソノマ・コースト2019(14000円)
【南国フルーツと北国フルーツの激突】リリックス シャルドネ ブラウン・ランチ・ヴィンヤード 2020(20000円)
【今回ベストシャルドネこれ疑惑】シブミ・ノール シャルドネ ブエナ・ティエラ。ヴィンヤード2020(24000円)
この3つなのだがこれがすべてTRB印。カリフォルニアらしく味わいは濃いのだが、あと一歩、そこから先に足を踏み入れたらクドくなるというラインの手前でピタリと止まり、そのラインの内側で完璧なバランスを組み上げるような造り。
白でいえば果実と酸と樽、赤でいえば果実と酸と渋みがすべてバチバチに強いのに、飲んだ印象はバランスが取れてエレガント。イヴ・サン・ローランじゃなくてラルフ・ローレンのスーツのイメージだ。
すごい赤ワイン4選
単純に私の好みとTRBスタイルが合うだけなのかもしれないが、今回は本当においしいと思ったワインのTRB率が異常だった。赤も列挙すると以下になる。
【すっぱいのに超うまい希少種】センシーズ ピノ・ノワール デイ・ワン ヒルクレスト・ヴィンヤード2021 (28000円)
【バランス最高峰。飲むマイク・トラウト】ダブル・ダイヤモンド カベルネ オークヴィル ナパ・ヴァレー 2021(14800円)
【TRB所有ワイナリー。そりゃうまいよ!】リヴァース・マリー カベルネ・ソーヴィニヨン2021(18000円)
【パーカー100点の20万円ワイン】シュレイダー オールド・スパーキー・カベルネ・ソーヴィニヨン マグナム2021
10000円を超える高級ワインはそりゃもうどれもおいしくないはずないのだが、さすがに20種類も続けてテイスティングすると、私レベルの低テイスティング能力では差分がわからなくなってくる。
なのだがやっぱり何種類かにひとつ「おっ」というワインがあって、それが大概TRBものなのだ。スーパーワインメーカーの名にガチで全然恥じてないと思う。造るワインに個性があって、とてもおいしい。
じゃあその個性ってなんだ言え、となると思うので私が思うところを以下に列挙する。
・濃いけどエレガント
・酸がしっかりとある
・樽の使い方が穏やか
・全体にとても柔らか
・とにかく飲みやすい
こんな感じだ。印象としてはカリフォルニアとフランスの汽水域という感じで、旧世界と新大陸を結ぶ大西洋上に浮かぶトーマス・リヴァース・ブラウン島で造られるワイン、みたいなフランスとカリフォルニア両方の良さを併せ持つ感じがする。
シャルドネもピノ・ノワールもカベルネ・ソーヴィニヨンもおいしいが、以上の傾向が一番強く味わえるのはダブル・ダイヤモンド。ダブル・ダイヤモンドはやべえ。濃いのにエレガントなキャプテン・アメリカみたいなワインだ。
そして最後、93番目に飲んだのがシュレーダーのオールド・スパーキー2019。20万円するパーカー100点のマグナムで品種はカベルネ・ソーヴィニヨンとなると、印象としては今飲むには全然早くてガチガチ、20年後に会おうみたいな感じかと思いきや全然で、今飲んで普通にウルトラうまい。
このアクセスしやすさ、飲みやすさもTRBの造るワインすべてに感じた。リリース後、すぐにおいしいワインは正義。
とにかくトーマス・リヴァース・ブラウンはガチ。TRBが醸造家としてクレジットされていたら一定の品質をクリアしていると思って間違いがないと思う。
おいしかったワイン:その他
最後にほかにおいしかったものをまとめよう。
パトリモニー カーヴ・デ・ライオンズ パソ・ロブレス2020
パトリモニーのカーヴ・デ・ライオンズ パソ・ロブレス2020(6万円)がとんでもないワインだった。カベルネ・ソーヴィニヨン65%カベルネ・フラン35%を新樽率100%のフレンチオークで30か月熟成させたというワインで、「山カベ」の最高峰的ワインのひとつなのだそう。
山カベに関してはまったく知見がないので今後の課題とするが、このワインはカベルネながら酸が残って極エレガント。こんなの飲んだことないな、という感じがして衝撃的だった。すごいぞ、パソ・ロブレス。
ノリア ピノ・ノワール ウミノ・ヴィンヤード2021
日本人醸造家の中村倫久さんが造るピノ・ノワールも素晴らしかった。日本食に合うワインを追求しておられるのだそうで、たしかにマグロやカツオの刺身とか、なんなら肉じゃがとか焼き鳥(タレ)とかにも合いそうな涼しさのなかに親しみのある味わいで大変素晴らしかった。価格は9000円。
印象に残ったワインBEST3
というわけで今回も素晴らしいワインにたくさん出会えた中川ワインの試飲会だった。最後に印象に残ったワインを3つ厳選して稿を閉じたい。(シュレーダーのオールドスパーキーは別格として除外)
それが以下。
デコイ・リミテッド メルロ アレキサンダー・ヴァレー2021
ルチアbyピゾーニ ピノ・ノワール エステート・キュヴェ 2022
ダブル・ダイヤモンド カベルネ オークヴィル ナパ・ヴァレー 2021
ズラリ並んだ中川ワインの93種類のなかで、私には以上3種類のワインが特別光り輝いて感じられた。みなさんもよかったらぜひ、お試しあれ。
なぜかトスカニーでぜんぶ買える↓