ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

アウトロット ソノマカウンティ シャルドネを飲んで調べて味と感想と価格をまとめてみる。【Outlot Sonoma County Chardonnay 2016】

アウトロットとマグノリア半島の戦いの歴史

マグノリア半島。カリフォルニア州ヒールズバーグ郊外(アウトロット)の土地は、地元民に愛着を込めてこう呼ばれていた。
しかし、7メートルを超える豊かな土の層に覆われ、19世紀から農地として栄えたこの土地に、1970年代に開発の波が押し寄せる。
ひたむきにこの地の土を耕し続けた農夫たちは激怒する。そして、祖先から受け継いだ大地を守るため、10年に及ぶ戦いーー「ヒールズバーグ・マグノリア半島の戦い」を戦いに身を投じ、苦難の果てにこれに勝利。果樹園とワイン畑が広がる、19世紀の姿のままの豊かな農地を今に残している……。

というのが、outlotwines.comの「ABOUT」の項目に書いてあった物語。何年設立で、ブドウ畑が何ヘクタールで、ワインメーカーは誰で、みたいなのかと思ってクリックしたらまさかの歴史絵巻。ヒールズバーグ・マグノリア半島の戦いのくだりではトラクターに乗ってスキやら鍬やらを高く掲げて悪徳ディベロッパーに立ち向かう農民反乱軍の姿が私にはたしかに見えた。旗印は無論、マグノリアの花である。

と、一部妄想が混じっているものの公式サイトに「the “battle for Healdsburg’s Magnolia Peninsula”」って書いてあるんですよ本当に。権利や自由、そして誇りは戦って勝ち取るものなんだ、合衆国(ステイツ)ではな!

アウトロット シャルドネはオーク樽で12カ月熟成

f:id:ichibanboshimomojiro:20200412172418j:plain

アウトロット ソノマカウンティ シャルドネを飲みました。

というわけで、とにかくアウトロット ソノマカウンティ シャルドネ(以下、アウトロット シャルドネ)のボトルになぜ白い花の絵がデザインされているのかの理由はとくとわかった。マグノリアの花が咲き誇る土地から、今地球・日本・東京の我が家へとこのワインはやってきた。長旅ご苦労さまです。先日同じくシャルドネを飲んだSIMI(シミ)ワイナリーもこのヒールズバーグの街にあるみたい。行ってみたいぞ、ヒールズバーグ。

さて、outlotwines.comは潔いほどシンプルなウェブサイトで、「ABOUT」と「OUR WINES」の2項目しかカテゴリがなく、じゃあってんでクリックした先の「OUR WINES」のカテゴリにもソーヴィニヨン・ブランシャルドネカベルネ・ソーヴィニヨンの3項目しかない。ラーメン、つけめん、チャーシュメンしかない店か。

しあわせワイン倶楽部の商品ページによれば、「フレンチオークにて樽発酵及び12ヵ月熟成」とのこと。質素極まるウェブサイトの作りとは裏腹に大資本(Accolade Wine Group)が手がけているらしく、高品質で安いを実現しているのだとか。高品質で高いものが私は好きだが、高品質で安いものはそれより100倍好きだ。アイラブ高品質で安いワイン。毎日だって飲みたいくらいだぜ(飲んでる)。

アウトロット シャルドネ、どんな味?

さて、果たしてどんな味なんだろうかとよく冷やし、少し室温におき、ここぞという瞬間を見計らってカッと刮目し抜栓。グラスに注いで飲んでみた。

私が感じたのは、住んでいる人のいない部屋の匂い。木製の天井まで届く本棚があって、ライティングデスクがあって、ベッドがある。足元には毛足の短い絨毯が敷かれて、喫煙者だったと思しき持ち主のために、机の上には灰皿が置いてある。その部屋はもう誰も暮らしていないけれど、定期的に換気され、掃除もされている。窓の外には金木犀かなんかが咲いていて、風に乗ってその余韻が届く。みたいな匂いがまずやってくる。部屋には西日が差していて、ワインはその西日の色に染まっている。

味わいもやっぱり木。なんの木かはしらないけれどもとにかく木。「木」という概念が放つ概念的な香り。それでもって蜂蜜の味がする。蜂蜜の味がするのに、甘くない。でもって苦味もある。いやな苦味ではなくて、日本茶とかふきのとうの天ぷらとかカニ味噌とかがそれぞれ苦味があるからおいしいように、おいしい苦味。まとめると「誰も住んでいない部屋の匂いがする、うまにがあまい木の味」となって、1ミリもおいしそうでないけれどもそれでもおいしいんだからワインって本当に不思議だわ〜。ワインなんなの。

たるったる。みたいな感じではないけれども、樽の効いたシャルドネにはこういう表現の仕方もあるのかと、大いに蒙を拓かれた次第です。いい意味でフルーツ感がない。

アウトロット シャルドネはお値段1958円税込。

マグノリア半島の戦いを戦い抜いたひたむきな男たちに感謝。みなさんのおかげで、今夜私はおいしいワインが飲めました。ザッス! ちなみに購入したのは京橋ワインで、「インポーターさん日本撤退による大・大・大処分特価!」だという1958円税込。海外のショッピイングサイトで27ドルとかで売られていたので、2000円切る値段で飲めるのはちょっと異常にお得な気がします。アイラブ安くて旨いワイン。