ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

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樹齢200年の自根の味は? ドメーヌ・ド・ラ・シャルモワーズ「プロヴィナージュ 2018」

ドメーヌ・ド・ラ・シャルモワーズ「プロヴィナージュ 2018」を飲んだ

恵比寿のワインマーケット・パーティでドメーヌ・ド・ラ・シャルモワーズの「プロヴィナージュ 2018」を飲んだ。品種はロモランタン。樹齢はなんと180〜200年。欧州がフィロキセラ禍に見舞われる前の、極めて希少な“自根の古樹”だ。プロヴィナージュはその当時に行われていたブドウ樹の繁殖方法。

ワインマーケット・パーティ沼田店長いわく「プレ・フィロキセラのワインと言えば必ず通るべき生産者(ワイン)の一つ。」なのだそうで、年によってわりと味わいに違いがあるというが、その2018は絶品だったのだった。

なんというか、「おいしい体験」というよりも「不思議な体験」というべきワイン体験。飲んだ瞬間にわいわいガヤガヤという周囲のホワイトノイズが消え、水墨画の世界にトリップしたような感覚があり、東方の海にあるとされた蓬莱山、そこに住む仙人が瓢箪に入れて飲んでるのはこれだな?(確信)みたいになる、どことなく中国茶のような香りと、桃のニュアンスのある味わい。

桃はかつて不老長寿をもたらす仙果とされた果物。黄泉平坂でイザナギイザナミに投げて難を逃れた生命力の塊だ。フィロキセラ禍に負けず200年を生きたブドウの生命力がグラスから溢れるような、エネルギーに満ちた液体。なんだこりゃうまいな!

 

ドメーヌ・ド・ラ・シャルモワーズとは?

ロワールのトゥーレーヌに在するドメーヌ・ド・シャルモワーズは1921年にクレベール・マリオネという人物が創設したドメーヌ(土地自体は19世紀に取得していたみたい)で、当代はアンリ・マリオネ。このアンリさんがどうやらめちゃくちゃ面白い人物のようだ。

1990年にガメイから亜硫酸無添加でワインを造った、つまりは自然派の先駆者の一人であり、絶滅してしまった品種「ガメ・ド・ブーズ」からワインを造っていることでも知られるそうだ。

そのうえプレフィロキセラのブドウ樹も所有しているという異様にネタの多い生産者なのだ。ドラの乗り方がすごい。

 

ドメーヌ・ド・ラ・シャルモワーズ「プロヴィナージュ 2018」はどんなワイン?

そんなわけでほかのキュヴェも気になるのだが、今回はプレ・フィロキセラのワイン「プロヴィナージュ 2018」がなぜこんなにもユニークで、そしておいしいのかを調べていこう。

理由はやはり、プレ・フィロキセラの自根のブドウだからだろうか。「フィロキセラ」のwikiにはこのような記述がある。

「一部のヴィンテージワイン愛好家の間では、フィロキセラによるヨーロッパブドウの壊滅および抵抗種導入により、ヨーロッパ産ワインの本来の味が失われた、という見解もある[要出典]。」

出典ないのかよ。しかもこれは検証がたぶんほとんど不可能だ。フィロキセラが欧州で猖獗を極めたのは1860-1870年代。それ以降、欧州に自根のブドウはほとんどない(ギリシャサントリーニ島、イタリアのアマルフィ、フランスのピレネースロベニアマリボルのStara trtaなどには残っているようだが)。

ゆえに、こちらは亜硫酸を加えたキュヴェでこちらは加えてないキュヴェです、みたいに、自根のブドウと台木に接ぎ木したブドウを比較することは現代では難しい。自根だからおいしいのかもしれないし、違う理由でおいしいのかもしれない。

では、古木だからおいしいのだろうか? 古木になるとブドウ樹は自然と収量を減らし、一房あたりの凝縮度は高くなる。とされるが、一緒にYouTubeチャンネルを運営しているNagiさんいわく、それも一概には言えないようだ。端的に古樹でも収量はさして減らず、根から得られる養分的なものも植樹から10年が経過すれば以降は大して変わらないのだそうだ。

www.youtube.com

つまり超・古木だからおいしいのだとも言い切れない。じゃあなんでおいしいんだよこのワイン。

 

ドメーヌ・ド・ラ・シャルモワーズ「プロヴィナージュ 2018」とロモランタン

ロモランタンという品種に秘密があるのだろうか。1519年、フランス王フランソワ1世がブルゴーニュから8万本を運ばせ、ロモランタン(ロワールの地名)周辺に植えさせたのだがはじまりだというこの品種はのちに衰退し、現在はクール・シュヴェルニーAOCなる小さな生産地でひっそり栽培されているだけなのだそうだが、もともとブルゴーニュから運ばれてきただけにこれはシャルドネやアリゴテの兄弟品種。

これはすごく納得がいく。シャルドネやアリゴテに通底する豊かな酸と、それに拮抗する果実味、個人的にはあまり使いたくない言葉だがミネラル感、三拍子が備わっているのがロモランタンという印象だ。書きながら思い出したが沼田店長と会話してるときフロランタンって発語してた気がする。アーモンドが香ばしいお菓子かよ。正解はロモランタンだ。

そして公式サイトによれば、アンリの息子で現場を取り仕切るジャン=セバスチャンは、「畑では化学薬品を使わず、セラーではオークを使わない」というアンリのやり方を引き継いでいるのだそうな。そしてマロ発酵は行わず収量は20hl/haと超低収量なのだそうだ。(繰り返しになるが、古木だから低収量なのか、そういう栽培をしているかはわからない)。

想像にすぎないが、接ぎ木をしていない樹齢200年のブドウ樹はワイナリーにとって御神木みたいなもんでしょうこれは。畑の広さはわずか0.36ヘクタール。造れる本数はたったの1000本だ。なのできっとすごく丁寧にお世話をしてあげてると思う。フィロキセラが絶滅したってわけじゃないみたいだし。

つまり丁寧に栽培したぶんだけすごく丁寧に醸造も行われ、全体的にすごく丁寧に造っているからおいしい説だ。それを言ったらおしまい感はあるけれども。

「高いけど、飲む価値はあるよね」と沼田店長がいうのも納得だ。ほかのワインと比べてどうという味ではなく、ほかに似ているワインがちょっと思いつかない単独峰の良さがある。樹齢200年の自根ブドウであり、ロモランタンという聞き慣れない品種であることも、このワインのミステリアスな魅力をブーストしている。

いつかまた飲みたい素晴らしいワインだった。お買い求めはワインマーケット・パーティで。

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