ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

ルソー・バトー「キュヴェ・ノワール」。グランクリュ村のブラン・ド・ノワールを飲んでみた。【Rousseaux Batteux Cuvee Noir】

シャンパーニュと原産地呼称

Alexandros(アレキサンドロス)というバンドをご存知だろうか。私は知らなかった。なんの話なんだよと思われるかもしれないがこのバンド、6年前まではChampagne(シャンペイン)という名前で活動していたのだそうだ。なぜ改名に至ったのかはワイン好きならお察しの通りだ。バンドの所属会社のリリースにはこうある。

<改名理由について>
シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(C.I.V.C.)の日本支局より、「Champagne」という名称がフランスシャンパーニュ地方の原産地名称として日本国内に於いても保護されているという事からアーティスト名の変更を求められました。

うーん、強いなシャンパーニュの原産地呼称保護。スイスにあるシャンパーニュという自治体が、その土地で作ったワインやビスケットにシャンパーニュという名をつけられない(しかも歴史的には先にワインを造っていたのに)ように、極東のロックバンドもシャンパーニュを名乗ることを許されない。それくらいシャンパーニュは特別だってことですね、雑にまとめると。

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ルソー・バトー「キュヴェ・ノワール」を飲みました。

シャンパーニュはこのように特別なお酒なので特別な日にはシャンパーニュを飲むべきだ。では特別な日とはどんな日だろうか。それはシャンパーニュを飲む日のことだ。どシリアスなトラブルが発生して朝7時から23時まで休まず仕事した日でも、残りの1時間でシャンパーニュを飲んだら特別な日だ。シャンパーニュはいつ飲んでもその日をセレブレートし、特別な日に変えてくれる。365日すべてがシャンパーニュの旬。なので今日私はシャンパーニュを飲むことにした。天気がいいし。あ、あと勤労感謝の日も近いし。自分の勤労は自分で労うスタイルである。

グランクリュ村ヴェルゼネのレコルタン・マニピュラン、ルソー・バトー

1年間の勤労をセレブレートするためにはそれなりのシャンパーニュが必要だ、ということでセラーから召喚したのは7月にCAVE DE L NAOTAKAの4300円シャンパンくじで当たった(3等だった)「ルソー・バトー キュヴェ・ノワール グランクリュ」売価6800円。輸入元は株式会社都光。いずれもリカマングループなので、自社輸入ワインということですね。

himawine.hatenablog.com

どんな造り手だろうかと公式サイトを見てみると、ルソー・バトーの本拠地はシャンパーニュ地方に17あるグランクリュの村のうちのひとつ、ヴェルゼネ村。ルソー家は18世紀末からその地でブドウを栽培していたのだそうで、いろいろあってその後自社ブドウで造ったシャンパーニュをリリースするようになり、今は当代のアドリアン・ルソーが率い、注目のレコルタン・マニピュランとなっているようだ。

ルソー・バトーの「キュヴェ・ノワール」はどんなワインか?

さて、キュヴェノワールはどんなワインか。データシートを見ると、2018年5月ボトル詰め、2020年5月デゴルジュマンのものに関して、こんなことが書いてある。
・ヴェルゼネのブドウを100%使用
ピノ・ノワール100%
・2017年収穫の50%をステンレスタンクで醸造
・2016年収穫の50%をオーク樽で醸造・熟成

様々なヴィンテージのワインをブレンドして毎年一定の味わいを保ったり、新たな味わいを生み出すのがシャンパン造りの妙、みたいに私はざっくり理解しているが、1年前のヴィンテージはオーク樽で、当年のヴィンテージはステンレスタンクでそれぞれ醸造してブレンドするっていうのは初めて。これなんかすごい期待感高まるな。まさに魚介と豚骨の濃厚Wスープ的な感じ……じゃないですよねすみませんでした。

モノ・クリュでモノ・ヴァラエタル。5000本+マグナム98本の限定生産ということもあって地元の選手だけで甲子園出場の栄冠を勝ち取った公立高校みたいな感じがしてなんとも良い。我が地元、千葉でいうところの銚子商業的なシャンパーニュということ……じゃないですかもうどっちでもいいか。ともあれ大変おいしそうだ。ちなみにブラン・ド・ノワールを飲むこと自体私は初めて。その味わい、興味津々である。

ルソー・バトーの「キュヴェ・ノワール」を飲んでみた

というわけで秋晴れの良き日に抜栓、グラスに注いでみるとおお、リンゴの蜜部分を液体にしたみたいな色。トーストみたいな香り、っていうのが私には実感としてあまり得られてないんだけどシャンパーニュを開けたときにしか嗅げない匂いがしっかりする。

飲んでみるとこれはピノ・ノワールだわっていう感じがたしかにする。もちろん、「これはピノ・ノワールで造られています」っていう前情報を前頭葉に彫刻刀で刻み込んだ上で飲んでるいるわけだけれども、その情報とともに味わうと、たしかに自分の知っているピノ・ノワールのニュアンスが感じられる。酸味が主体で、箱根駅伝で給水所から100メートルくらいだけ伴走して監督のメッセージとかを伝える控えの選手、みたいな感じで果実味も味わえる。うはは、うまい。テーブルの上に置いたまま、温度が上がってくるとまた一段と香りが華やかになって、ミトンでくるんでよく蒸らした紅茶の葉みたいな雰囲気が出てくる。

これを開けようとセラーから冷蔵庫に移して冷やしていると急な来客があり、数名でワイワイ開けたのだが、「あ、これおいしいじゃん」的な感想が散発的に聞かれた。ワインに特別な興味のない人のこういうリアクションは貴重なので、これはきちんとおいしいことの証拠だと思われる。

今日はなにも特別なことのない、1年の1/365に過ぎない1日だった。そんな1日を特別に変えてくれるから、やっぱりシャンパーニュは特別だ。

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