バード・イン・ハンド ピノ・ロゼはどんなワインか
ロゼが苦手だ。
モツが苦手だ、といった意味合いで、鍋は好きだがモツは苦手な人がいるように、私の場合ワインのことはワインになりたいくらい好きだがロゼは苦手だ。モツは好きです。
ロゼに関しては、苦手というか心の底からおいしいと思ったことが実はない。みたいなことをいうと、「それは本当においしいロゼを飲んだことがないからだよ」と、「それは本当においしいホルモンを食べたことがないからだよ」とか「それは本当においしい白子を食べたことがないからだよ」とか言う人がよくいるが私は白子は本当に無理だワインの話だった。
おそらくおいしいロゼを飲んだことがない説が最有力だろうということで、おいしそうなロゼを注文した。それが、「バード・イン・ハンド ピノ・ロゼ」だ。しあわせワイン倶楽部の商品ページに“太鼓判”って書いてあるし、レビューアプリの点数も高いし間違いないでしょこれは。価格も2398円で、激安ってわけじゃないし。ちなみにしあわせワイン倶楽部の商品ページによれば使用ブドウはピノ・ノワール100%。ステンレスタンクで熟成とのこと。
バード・イン・ハンドは特徴的な名前だが、これは「A bird in the hand is worth two in the bush.」ということわざに由来するのだとか。掌中の一羽は叢中(そうちゅう)の二羽に値する、と訳され、日本語でいうと「明日の百より今日の五十」となる。同じワイナリーのプロダクトで「ツー・イン・ザ・ブッシュ」というシリーズもあって、なんだか遊び心があっていいじゃない。
調べてみるとバード・イン・ハンドが創立されたのは1997年。アンドリューとその父マイケルのニージェント親子がオーストラリアはアデレードヒルズの荒廃した酪農場をワイナリーへと生まれ変わらせると、2003年にオーストラリアを代表するワインメーカーでマスター・オブ・ワインのキム・ミルンが醸造長としてジョイン。わずか20年ほどで世界的な評価を得るに至ったんだとか。そんなすごい人が造るロゼで、しかも3年連続ベストロゼ受賞だっていうわけですよ。1回は偶然で勝てて2連覇も勢いでできたとしても3連覇はたしかな実力がなくては無理っていうのは勝負事のいわば常識であります。2020年は残念ながら中止が決まってしまったけれども夏の甲子園を3連覇したのは1931年からの中京商だけでそれくらいレアだ。
バード・イン・ハンド ピノ・ロゼを飲んでみた
これはもう大丈夫でしょう。おいしいに違いない。故・川上哲治氏はその全盛期、バッターボックスでボールが止まって見えたというけれどもそれくらいの絶好球。俺にはワインが止まって見える(止まってる)!
いざ飲んでみるとうーんどうなんだろうこれ。非常にフレッシュ、なんだけど、フレッシュっていうかすっぱくないすかねこれ。どうなんですかね。白ワインのようにさわやかさだけで突っ走ることもできないし、赤ワインのような濃厚さ・重厚さ・複雑さもない、まさに白黒ならぬ紅白はっきりしない味わい、という風に感じてしまって極めて遺憾。熱いと冷たいの中間はぬるいだが、そのようなどっちつかずの印象を受けてしまったというのが正直な感想だ。
おいしい(はずの)ワインが楽しめない場合、とりあえず寝るというのが私の基本的なストラテジーなので、とりあえず寝た。で、日が昇ってまた沈み、2日目の再戦とあいなって、ようやく印象に変化が起きた。
チェリーだ。昨日「すっぱい」しか感じなかった瓶の底からさくらんぼがやってきた。なんだ〜、来てたの〜、みたいな感じでこれは大歓迎である。知り合い一人もいないカジュアルなパーティにひとりだけ正装できちゃって気まずさ指数89%くらいのタイミングで見つけた知り合いくらいのありがたみがある。今夜、おれは貴様を離さないからな! 男女は問いません!
このチェリー味がなんだか非常にかわいらしくて悪くない。そして、私の少ない経験のなかで、白ワインでも赤ワインでも感じたことがない味わい。これはロゼを飲む理由になりうる。あともしかしたら意外と濃い味に合う感じなんですかねこの子。近所の居酒屋テイクアウトの唐揚げっていう凶暴なメニューと合わせたときにすごくいい感じでした。サッパリして。
とにもかくにも、私にはロゼの経験値が圧倒的に足りない。足りなすぎる。もしかしたらもっと感じられるはずの味わいが、きちんと感じられていない感がどこかにあるので、また試そうと思いました。
そしていつか、ロゼ大好き! といいたい。アメリカのセレブに人気だっていうし。ミーハーか。