398円の値札がついたワイン「ダンシングフレイム」
アクアパッツァとワインを合わせていい気持ちになろう。そう考えて「ローソン100」に向かった。アクアパッツァの主原料は魚、アサリ、ニンニク、オリーブオイル、そして白ワインなので料理用の安い白ワインが必要となる。予算は500円以内といったところでしょうか。
さて、白ワインコーナーに並んでいるのは酸化防止剤無添加のおいしいワイン亜種的な国内ブランドのワイン、フランス安ワイン、そしてチリワインといった面々。料理用とはいえ単体でも飲んでみたいので価格帯を考慮するとここはチリワインが最適解であろうとダンシングフレイムなるワインを購入した。値札の金額は398円。税込438円。安い。恵比寿あたりで駐車場にクルマを止めたらその瞬間に課金されるレベルの金額だ。
ダンシングフレイムとルイス・フェリペ・エドワーズ
品種はカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネ、そしてソーヴィニヨン・ブランがあったがシャルドネをチョイスした。輸入元は三菱食品。調べてみると生産者はチリのルイス・フェリペ・エドワーズ(LFE)で、1976年創業の家族経営のワイナリーとしてはチリ最大という大規模生産者であることがわかった。
LFEのサイトを見るとこれすげえな。大規模生産者だけにその建物は完全に「工場」なのだが立地がすごい。1時間に3万5000本を瓶詰めできるという巨大工場が山の裾野に広がる畑のど真ん中に突如ある。工場と畑の距離がゼロ。
さらに出荷設備まであるらしく、収穫→醸造→出荷設備が一体となったものすごい正しい設備投資をしてる印象。「どうです? その結果398円なんですよ、私」とボトルが語りかけてくる感じがする。
ダンシングフレイムと三菱食品
三菱食品のプレスリリースを見るとこのワインが発売されたのは2019年8月26日で、同社の「輸入酒類開発プロジェクト」第二弾として開発された商品だそうだ。
日本食糧新聞の記事によれば、輸入酒類開発プロジェクトは「日欧EPAの発効で伸長が予想されるワイン市場に対し、取り扱いブランドや輸入国を増やす取組みの一環」なんだそうで、その第一弾はフランスの「パトリオッシュ プレステージ」、第三弾はチリ最大手のコンチャ・イ・トロがアルゼンチンで手がける「トリヴェント」。
三菱食品といえば年間の売上高が2兆円を超えるという巨大商社。巨大商社と巨大生産者がタッグを組んでスケールメリットを全開でぶん回した結果のボトル1本398円であるようだ。ワインの適正価格って一体なんなんだろうかという認識を揺さぶる価格だ。
灌漑、除草剤の使用、機械収穫等々、ワインを安くするための方法はいろいろあると思われ、それらはすべて至高のワインを生産するためのレシピには含まれない。
じゃあダメなのか。それはワインと呼ぶに値しないのかといえばそんなことがあろうはずがなく、そこがワインの複雑で面白いところだと私は思う。高いワインは素晴らしいが、安いワインもまた素晴らしい。それらはそれぞれ違う努力と違う情熱で造られていて、それぞれの努力と情熱が私は素晴らしいと思うんですよホントに。工業製品として造られるワインも私は好きだ。
なんの話だっけ。ダンシングフレイムシャルドネの話だった。ワイン自体に話を戻すと、産地はチリの一大産地セントラルヴァレー。品種はシャルドネ100%であることがわかった。ダンシングフレイムのラベルに描かれているのは、標高6893mという世界最高峰の活火山オホス・デル・サラード。チリの大地は太古の時代の盛んな火山活動によって造られたのだそうで、そこへのリスペクトが込められているんだって。なるほど。
ダンシングフレイム シャルドネを飲んでみた
といったところで話はローソン100でダンシングフレイムシャルドネを買って帰った日の夜に戻る。今夜のディナーはアクアパッツァだ。「飲む用」のワインは別で用意し、魚とニンニクとアサリを入れた鍋にダンシングフレイムを大量投入。フタをして魚に火を通す間、ワインをグラスに注いで味見をしてみて驚いた。えっなにこれおいしいんだけど。
おそろしいことに、この398円のシャルドネは本当にまったく悪くない。樽熟成に由来する可能性はほぼゼロだと思われるがオーク樽のニュアンスと豊かな果実味があって、味わいにネガティブな点がない。1280円と言われて出されても「1280円でこれはいいですね!」といい笑顔で言いそうな味わいだ。私の味覚なんて所詮こんなもんですよ、となぜか急に自虐的になっておいお前どうしたってなる味わいとも言える。
こりゃおいしい。驚いた、という気持ちをTwitterに投稿したところ、「ソーヴィニヨン・ブランもいいぞ」といったご意見を頂戴した。じゃあ飲んでみっかと後日ふたたびローソン100に向かい、今度はソーヴィニヨン・ブランを入手した。ついでに大好きな台湾パインも買った。台湾パイン500円くらいワイン438円で支払い総額1000円弱。台湾パインの素晴らしさは1000円に匹敵するのでワイン代は実質無料だ。
飲んでみると、こちらもまったく悪くない。ただ、どちらかといえば私はシャルドネのほうが果実味が豊かな感じがして好き。これはもちろん好みの問題なので、さっぱりした味わいが好きな方はソーヴィニヨン・ブランを選ぶのが吉であろう。
というわけでダンシングフレイム、少なくともシャルドネは500円以下で国内で入手できるワインとしては最強クラスだと感じた次第。めちゃくちゃおいしい! ってことはないけれど、間違いなくそこそこおいしい。そして、ワインの買いすぎからくる慢性的な金欠に効くクスリとしては、これはもう特効薬と言えそうなので、同じ病気に苦しんでいる方にはぜひオススメしたい。だって438円ですよみなさん。