ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

シャンパーニュ「ドゥラモット ブリュット」を飲んでみた。サロンの姉妹メゾンの味わいは? 【DELAMOTTE BRUT】

ドゥラモットはどんなメゾンなのか

有名メゾンのスタンダードシャンパーニュを飲むシリーズの一環として、今回はドゥラモットを飲むことにした。1760年から続く老舗メゾンだそうで、公式サイトは日本語も用意されている。

それによれば、シャンパーニュとは「表現形式」であり、ドゥラモットは、「エリート意識とは無縁の馴染みやすい」シャンパーニュなのだとか。そして「爽やかな飲み口、個性豊かな味わい」で、「理解するためには欲望をもつよりほかに手段は」ないとあるだ。これパワーワードだな。ドゥラモットを理解するためにはッ! 欲望をもつよりほかに手段はないッ! いいなこれ。荒木飛呂彦先生の作品に出てくるセリフかよ。ワムウが言いそう。

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ドゥラモット ブリュットを飲みました。写真を撮り忘れたためドゥラモット公式サイトに合った販促用画像をお借りしてます。

さらに、メゾンのスローガンは「Vive et me ama」(生きて我を愛せよ)であり、「喜びを神聖視する姿勢は、エピキュロスの教えを想起させ」るとしている。エピキュロスといえば快楽主義。ヘレニズム紀のギリシアにあって「パンと水さえあればゼウスと幸福で勝つこともできる」と語った人物だ。「シャンパーニュとつまみがあれば大体のことは平気」が弊ブログのスローガンなので、ドゥラモットの思想と私の思想は共鳴していますね間違いなく(怪電波)。

ドゥラモットとサロン、そしてローラン・ペリエ

さて、なぜドゥラモットを試してみたいと思ったかといえば、かの高級シャンパーニュ・サロンの姉妹メゾンですみたいなことを聞いたからなのであった。サロンは10万円とかするのでもちろん買えず、いつかテイスティングするチャンスを虎視眈々と伺っている間にドゥラモットでアップしておこうという貧者の兵法。私には金はないが好奇心はある。好奇心が換金できるディストピアSFっぽい未来が生きている間に来てくれませんかねワインの話だった。

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ドゥラモットは1760年から続く歴史あるメゾン。写真はドゥラモット公式サイトの販促用画像。

ドゥラモットの公式サイトにはサロンとの関係性の記述がないのだが、日本語表記がある海外サイトによくあるように、日本語と英語では中身が異なり、英語版にはサロンとの関係が書かれていた。その他、wikiとかいろいろの情報をまとめてタイムラインにすると以下のような感じになるようだ。

1760年 ドゥラモット設立
1905年 サロンのファーストヴィンテージ
1927年 ローラン・ペリエの経営者、マリー=ルイーズ・ドゥ・ノナンクールがドゥラモットの経営権を引き継ぐ
1943年 サロンの創設者亡くなる
1988年 ローラン・ペリエ、サロンを傘下に

というわけで急にローラン・ペリエが出てくる。なんでも、1927年にマリー・ルイーズが経営権を引き継いだ際、ドゥラモットは大手シャンパーニュメゾン・ランソンの傘下にあったようだ。そしてマリー・ルイーズはランソン家の子女なんだそうで、彼女がローラン・ペリエやドゥラモットを再建し、その息子がサロンをも傘下に収めてローラン・ペリエ王国を築く、みたいなストーリーのようだ。シャンパーニュの歴史を調べると驚くほどの確率で女性の名前が登場するが、今回も例に漏れなかった。戦争に行って不在の男性たちに代わって女性たちが歴史を紡ぎ、そして築いたのがシャンパーニュですなあ。

himawine.hatenablog.com

それにしてもシャンパーニュの歴史は複雑だ。関ヶ原の頃の戦国大名同士の姻戚関係かよってくらいに複雑だ。第一次大戦から世界恐慌、第二次大戦っていう歴史に翻弄され、複雑な姻戚関係と経営権の統合に彩られるシャンパーニュ地方の歴史はこれはもう現地に行って土地の古老とかに話を聞かないと理解できない気がする。リタイアしたらシャンパーニュでお遍路したい。「OHENRO」を広めていきたい。

ドゥラモット ブリュットはどんなワインか

さて、サロンとドゥラモットの関係は有名で、シャンパーニュ地方はコート・ド ・ブラン地区のグランクリュ、メニル・シュール・オジェ村のシャルドネを100%使い、良年のみに生産されるのがサロンであり、サロンが生産されない年に造られるのがドゥラモットだ。大阪桐蔭高校野球部が甲子園に出られなかった年にベンチ入りできなかったメンバーだけで結成した野球チームがドゥラモット、みたいな印象で、なんともいえないエクスペンダブルズ感というか雑草魂、みたいな感じがあって私は好きだ。応援したくなる。

サロンはシャルドネ単一品種で、ドゥラモットにもブラン・ド・ブランが存在するが、スタンダードキュヴェのドゥラモットブリュットはシャルドネ55%、ピノノワール35%、ピノムニエ10 %のブレンド。30〜36カ月の澱熟成の後に若干のドザージュを行うとのこと。どんな味か、いざ飲んでみよう。

ドゥラモット ブリュットを飲んでみた

というわけでグラスに注いでみると、うーん、シャンパーニュらしい黄金色に細かくて柔らかい泡。シャンパーニュはこの風景がすでにいい。グラスに注がれたシャンパーニュから細かい泡が立ち上る姿には夕陽、とか滝、とかそれレベルで心を癒す作用がある。

で、飲んでみるとうーんこれはなるほど。これは一言でいえば「調和」ではないのか。いやほら、散々「欲望がないと理解できない」とか「喜びを神聖視する姿勢」とか「生きよ。」とかいうからもっとこうド派手なクラブでEDMがドンツクドンツク鳴り響くなか飲むパリピ的テイストを予想してたらそうではなくて、むしろこう、禅寺での厳しい修行を終えたあと、雪の積もる石庭を眺めながら住職から出されたのがよもやよもやのドゥラモット、みたいな印象だったのだった。突出したところがなく、味わいのバランスが整然と並び、飲んで5秒無言の後、しみじみ「うめぇなぁ……」と懲役明けの高倉健さんみたいな顔で言いたくなる。

エピキュロスは、真の快とは「精神的なものであって徳と不可分であり、節制に基づく、心の平安である」としたとwikipediaに書いてあるけど、この思想とドゥラモット ブリュットの味わいにはなるほど一脈通ずるものがある気がする(怪電波again)。

ドゥラモットのラインナップはブリュットのほかにロゼ、ブラン・ド ・ブラン、そしてブラン・ド ・ブランのミレジメがある。ミレジメはプチサロン的な味わいなのだそうで、販売価格は1万円を切る。なにかのタイミングで試してみたいなこれはと思った次第だ。