フリードリッヒ・ベッカーとぼく。
フリードリッヒ・ベッカーのワインを初めて飲んだのは2020年の秋のことで、ワインショップ・葡萄畑ココスのいわゆる“中の人”にツイッターのDMを通じて「なにかおいしいロゼがありませんか?」と質問したところ、ベッカーのプティ・ロゼを紹介してもらい、それを飲んだところなんだこれ超うまい笑う、となった。なんかすっぱくてよくわかんないんだよな、正直、と思っていたロゼが以来私は大好きとなり、白・赤・ロゼ、みんな違ってみんないいみたいな気持ちに今ではすっかりなるまでになった。
ベッカーのプティ・ロゼ、次のヴィンテージを飲むのも楽しみだな早く2021年にならないかなと思っていたら、今度は神宮前のウィルトスワインでベッカーの試飲会があると聞き、輸入元であるヘレンベルガー・ホーフの担当の方のお話聞きつつそこで飲んだ数々のワインがどれもおいしく、今でもその日1リットル入りのジルヴァーナーを「1リットルかぁ、重そう」という理由(物理)で買わなかったことを私は今も後悔している。
さて私は3000円以下のおいしいピノ・ノワールを探す、という試みを弊ブログを通じて行っており、ヒマがあると価格と品種でソートしておいしいピノ・ノワールはないかとネットを探索しているのだが、考えてみるとベッカーにも3000円を切るピノ・ノワールは存在するのだった。すなわち、「シュペートブルグンダー」と「シュペートブルグンダー ドッペルシュトゥック」である。シュペートブルグンダー=ピノ・ノワールですね。前出の葡萄畑ココスで、いずれも2948円。ギリいける(ただし定価は3000円超え)。
シュペードブルグンダー「ドッペルシュトゥック」ってなんだろう?
とまあここで気になるのが同じ価格で同じピノ・ノワールで造られたワインで両者はなにが違うのかということだ。そもそもドッペルシュトゥックってなんだよそのカッコいい感じのやつ。
調べてみると、ドッペルはダブルの意。ドッペルゲンガーとかっていうときのドッペルと同じドッペル。「同じドッペル」っていう言い回しがなんかいいな関係ないけど。そのドッペルとこのドッペル、言っとくけど同じドッペルだからな! みたいな。どんな会話だよ。で、ゲンガーは「散歩する人」みたいな意味で、シュトゥックは1200リットル入りの大樽のことなんだとか。1200リットル入りの大樽のドッペルなので2400リットルの大樽ってことですね。120×160センチの浴槽10杯分くらいの量。うーん、デカい。レッドブル9600本分。
無印シュペートブルグンダーとドッペルシュトゥックどちらを飲むべきか問題
どちらを飲むのがいいのかなあとこれまた葡萄畑ココスの中の人に聞いてみると、ドッペルシュトゥックは大樽のみ、普通のシュペートブルグンダーは一部225リットルの小樽も使っているとのこと。そして、普通のキュヴェのほうが万人向けで、ドッペルシュトゥックのほうが気難しさや凛とした雰囲気がある、といったような内容の文学的回答をいただいた。
要するにどちらもオススメということのようなので、最終的に名前がカッコいいという理由でドッペルシュトゥックを選択し注文した。専門家にオススメしていただくと、最終的に購入に向けて背中をトンと押してもらえるので最高だ。大樽な分だけ樽の影響が少なく、よりピノ・ノワールのピュアな味が楽しめるそうですよ。
フリードリッヒ・ベッカー「シュペートブルグンダー ドッペルシュテック」を飲んでみた
さて、届いたワインのスクリューキャップをくるくる回してグラスに注いでみると、ピノ・ノワールらしいグラスの向こうがギリギリ透けて見える感じのよく熟したリンゴの皮みたいな色。ピノ・ノワールは色がいい。香りもとてもいい。なんですかねこれは。ブドウの皮を剥いてさあ食べようと思った次の瞬間に、ユリかなんかの切り花を買ってきたことを思い出し、園芸用のハサミで茎を斜めにパチッと切ったときのキッチンの香り、みたいな青臭フルーティな香りがする。いい香り。
でもって、いざ飲んでみるとこれがとてもいい。販売価格ギリ2000円台の限界値みたいなおいしいピノ・ノワールの味がする。成績でいえばオール4みたいな、欠けたところがひとつもない優等生的な味わいで、少し冷やして単体でチビチビ飲んでもおいしいし、肉と合わせてグビグビ飲んでもおいしいし、食後にちょっとぬるくなってきたところをチーズかなんかと再びチビチビ合わせてもおいしい。やっぱりうまいよ、ベッカーは。今度は無印シュペートブルグンダーと比較してみよう。そしてその前にジルヴァーナーを飲まないと。ああ忙しい。
ちなみにこのワインに関しては、ヘレンベルガー・ホーフの公式YouTubeチャンネルに詳しい動画があるのでそちらもぜひ。「2400リットル入りの樽」のサイズ感がひと目でわかるので、オススメです。