下北沢ワインショップ併設のバー・フェアグラウンドで甘口ワインを飲む
先月、下北沢ワインショップで開催された試飲会で購入したワインを引き取りに、再び下北沢に向かった。下北沢ワインショップにはバー・フェアグラウンドが併設されているため、ついでに一杯飲もうという魂胆だ。「ワインを買うついでに一杯飲む」のってなんでこんなに楽しいんですかね。
フェアグラウンドは珍しい甘口ワイン特化型のバー。ツイッターでつながりのあるつびぃさんが働いておられるので、彼女にいろいろとお話をうかがいながら普段比較的飲む機会の少ない甘口ワインの世界を垣間見ようというのが趣旨だ。
謎のドリンク「マチュドニア」の正体は?
伺ったのはまだ少し暑さの残る天気の良い10月のある日。まずいただいたのは南アフリカはロバートソンのゲヴュルツトラミネールに凍らせたシャインマスカットの粒を沈めた「マチュドニア」なる飲み物。なにこれおしゃれか。
マチュドニアは多様な民族が暮らす土地・マケドニアにちなんで名付けられた要するにフルーツポンチなのだそうで、それをアレンジしたのがこのシャインマスカット入りのゲヴュルツトラミネール。
店内満席のため3階テラスで飲ませていただいたのだがさわやかな甘口ゲヴュルツにシャインマスカットの皮の苦味がアクセントになっておいしかった。いいぞいいぞ。
ダーレンベルグ「マッドパイ」2017/2021を比較する
そうこうする間に店内が空いたのでカウンターに場所を見つけて甘口ワインをオーダー。つびぃさんの一押しは、ハウスワイン的に提供しているオーストラリアはアデレードヒルズの生産者・ダーレンベルグの「マッドパイ」。マッドパイは泥だんごの意だそうだ。なぜだ。(『このワインをつくるのは、子供のころマッドパイをつくったときのようにワクワクするから』だそうです)
この泥だんごは遅摘みとかではなくて貴腐ブドウを使った極甘口。「2017ヴィンテージがもうすぐなくなるので、2021ヴィンテージと飲み比べてみてください」(つびぃさん)ということで甘口ワインの垂直テイスティングという珍しい体験をさせていただいた。
で、結論を申しますとこのマッドパイ、なるほどとてもおいしいワインだった。このワインきっかけで甘口ワインにハマった人もいるのだそうで、お店では「ワインのことを全然知らないアルバイトの子には、まずこれを飲ませる」というワイン沼に突き落とすための棒、みたいに使われるワインだというが、それも納得の親しみやすさ。
そして並べてみると一目瞭然、2017と2021では色味がまったく異なる。こんなに異なることあんのってくらい異なる。外観だけでなく使っているブドウも異なり、2017はヴィオニエ、ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、ピノ・グリ、2021はヴィオニエ、セミヨン、リースリングで造られているのだそうだ。
とはいえ色味の大幅な違いと使用品種の違いがあれどそこは同じ名前のワイン、味の系統は似ていて、つびぃさんいわくの「濃く淹れた紅茶にマーマーレードを入れた感じ」という印象を両者に受けた。2017のほうが紅茶要素が濃く、2021のほうが薄い。2021のほうがマーマーレード感があり、2017はそこに少し酸味のあるハチミツを加えたような印象だろうか。それぞれに良さがあって、どちらもおいしい。
おすすめの甘口ワイン「パンテレッリア」
この日は時間が足りなくて飲めなかったのだが、最後につびぃさんにほかにオススメの甘口ワインはないか聞いてみたところ、「パンテレッリア」という耳慣れない名前が出てきた。なんすかねそれ。
つびぃさんいわく、パンテレッリアはパンテレッリアという名前の地中海に浮かぶ火山島で造られるワインで、ズビッボなる地ブドウを用いたパッシート(陰干しを使うやつ)が有名なのだそうだ。ズビッボってなんだよ!? となるわけだが要するにこれはマスカット・オブ・アレキサンドリアなのだそうでいわゆるひとつのマスカットだ。
マスカット、フランス語でミュスカ。スペイン語でモスカテル。イタリア語でモスカート。それがいったいなにをどうしたらズビッボになるんだ、となるわけだが、それはともかくズビッボで造られたパンテレッリアの甘口ワインは、(トスカニーの商品ページによれば)「カサノヴァも女性を籠絡するのにパンテッレリーアのパッシートを利用していた」という逸品なのだそうだ。女性を籠絡するにはパンテレッリア・ディ・パッシートですよみなさん。
というわけでフェアグラウンド再訪も実に楽しい時間だったのだった。甘口ワインが好きな方、クリスマスシーズンの贈り物に甘口ワインを探している方は、ぜひ一度訪ねてみてはいかがか。30種類というすげえ数の甘口ワインを飲みくらべできますよ!
私の推し甘口↓