富士屋ホテルへワインを飲みに行ってきた
箱根・宮ノ下の富士屋ホテルに宿泊してきた。富士屋ホテルといえば箱根駅伝のテレビ中継などでもお馴染みの1878年創業の箱根エリアっていうかほぼ関東を代表すると言っていいんじゃないかレベルのクラシックホテル。いろいろワインを飲んできたのでレポートしたい。
富士屋ホテルのアフタヌーンティーでペリエ・ジュエを飲む
さて、現地には14時頃に到着したので、まずはふたつあるラウンジで供されるアフタヌーンティーを楽しむことにした。
なんでもアフタヌーン・ティーとは19世紀中葉のイギリスで、夕食の時間までの空腹に悩まされた公爵夫人が始めた茶会がその起源なのだそうだ。産業革命の結果ガス灯が普及、晩ごはんが遅くなったのがその遠因とのこと。産業革命の結果アフタヌーンティーという文化が生まれるのいかにも「人類史」って感じがして良い。
当初貴族文化として生まれたそれは19世紀末に中産階級にも伝播、21世紀の今はお茶だけじゃなくてお酒も飲んじゃいますかついでに、みたいな展開も見せているのだそうだ。最初に「あの〜、自分お酒もいただいちゃっていいすかね」って言った人えらい。
というわけで富士屋ホテルのラウンジではアフタヌーンティーが6400円で楽しめる。スイーツやらサンドイッチやらが3段+1皿に盛られたそれには紅茶をはじめとしたお茶を合わせるのが基本。なのだが、シャンパーニュ(ペリエ・ジュエ)をオーダーすることもできる。
シャンパーニュは1杯3,000円なのだが、90分10,500円でフリーフローもオーダー可能。おじさん4人で行ってひとり1台オーダーし、フリーフローでシャンパン飲んだらさぞかし楽しいだろうなあと思いつつ、夜もあるので私はグラスで飲むに留めておいた。
箱根の富士屋ホテルでアフタヌーティー+シャンパンフリーフローすんの、東京から日帰りで楽しめる最強のおやつって感じしていいな。 pic.twitter.com/Vi1wuBMTMQ
— ヒマワイン|ワインブロガー (@hima_wine) 2024年1月8日
ペリエ・ジュエ グラン・ブリュットはピノ・ノワール40%、ムニエ40%、シャルドネ20%のブレンド。その味わいはザ・スタンダードという印象。エノテカでは10,003円で売られているワインなので、90分10500円フリーフローはお値打ち感がある。15分に1杯飲んだら大勝利。
富士屋ホテルのレストラン・カスケードでワインペアリング
さて、そんなこんなでチェックインを済ませ、温泉など浸かっていると夕食の時間がやってくる。食事どころは格安の宿泊プランだったこともあり、メインダイニングのザ・フジヤではなくレストラン・カスケード。
レストラン・カスケードは大正9年(1920年)建築の旧宴会場「カスケードルーム」を復原したというレストラン。ステンドグラスや欄間の彫刻などが美しい、風情のある空間だ。こんなもんただの文化遺産であって、文化遺産のなかで食事ができること自体がもう尊い。
料理は前菜、スープ、魚料理、肉料理、サラダにデザート・小菓子・お茶がつくコース。ワインはメニューに合わせてソムリエが選んでくれるペアリングコースをお願いした。足りなければ4杯目も頼もうということで、注文は7500円の3種ペアリングにした。
ワインペアリング1杯目:ペリエ・ジュエ グラン・ブリュット
と、最初に出てきたのはふたたびペリエ・ジュエのグラン・ブリュットだ。
ついさっき飲んだのでとくにこれといったコメントはないが、柚子風味のソースで食べる真鯛のマリネと堅実に合っておいしかった。エースでも4番バッターでもないけれどチームにいないと困る選手、それがペリエ・ジュエ グラン・ブリュット。出塁率が高いタイプ。
ワインペアリング1杯目:グレイスワイン グリド甲州2022
素晴らしかったのは2杯目のペアリング。グレイスワインのグリド甲州が出てきたのだが、それと魚料理の「サーモンと帆立貝のヴァプール 白ワインソース」がちょっとびっくりするほど合ったのだった。
料理自体サーモンとホタテの甘さを白ワインとバターの旨味が補強して大変おいしかったのだが、料理のなかに要素として存在しない酸と果実味をグリド甲州がピタッと埋めて、一緒に味わうと両者の化学変化によって別の味わいが現出する感覚があった。
さらにバターを乗せたパンを合わせるとそこに香ばしさも加わってあれ、いまって熟成しためっちゃいいシャンパーニュ食べてるだっけ? みたいに脳が誤作動を起こすおいしさだった。
グリド甲州、なんといいましょうか、野暮なことをいうと高いワインではないのだが、ていうかグラス1杯2500円換算のこのワインペアリングにあってボトル1本2500円だったりするのだが、それはそれとしてとてもおいしいワインだ。2000円台のベスト甲州はこれかもしれない。ていうかこれ。
ヴィンテージ違うかもなので注意↓
ひさしぶりにワインと料理が鍵と鍵穴のように完全に符号するペアリングを味わった。最高。
ちなみに料理名の「ヴァパール」は蒸し料理のことだそう。知らなんだ。
ワインペアリング3杯目:ヴァンサン・ロワイエ ブルゴーニュ ピノ・ノワール2022
そして3杯目は肉料理(国産牛ロース肉のポワレ ディアブルソース)に合わせてピノ・ノワールが出た。銘柄はヴァンサン・ロワイエ ブルゴーニュ ピノ・ノワール2022。
ここまでの流れでなんとなく察しがつくとおりにとくに高いワインというわけではないのだが(市販価格3000円+とか)、イチゴのお菓子のような少し甘い香りが漂ってきておいしいワインだった。
脂が多く肉質が甘い国産牛ロースの味わいをピノ・ノワールの渋みと果実味でソース的に補強し、ともすればくどくもなりがちな脂を豊かな酸で流すといったイメージ。
同点の9回裏2アウト満塁から、ホームランでなく、ヒットでなく、押し出しのフォワボールを淡々と選んだようなペアリングで、派手さはないがしっかりとおいしかったのだった。なんとなくボルドーとかが出そうなところ、ピノ・ノワールの意外性が良い。
こんなところで満腹となり、小菓子は持ち帰って部屋で楽しませてもらった。記録のため残すと宿泊は1960年建造のフォレストウイング。部屋から箱根登山鉄道が見え、夜半に箱根の山を行き交う電車の、まるで航跡のように残るライトになんともいえない銀河鉄道の夜感があっていいお部屋だった。カムパネルラ、ほんとうのしあわせってなんだろうね。
富士屋ホテルのザ・フジヤでミモザを飲む
翌朝の朝食はザ・フジヤ。いくつか選べる中から「サラダブレックファスト」を選択したのだが、飲み物のなかにシャンパーニュのオレンジジュース割であるミモザ(+500円)を発見。
そんなもん頼む一択でしょということで頼んだ。歴史の重みを感じさせるザ・フジヤの、ホテルの朝食会場とは思えない静かで厳かな雰囲気。採れたての野菜。そんななか飲む酒がうまい。
ちなみに使われているのはテタンジェだそうだ。そこはペリエ・ジュエじゃないんだ、となったがこだわりがあるのだろうか。普段朝酒は己に禁じているのだが、ザ・フジヤで飲む朝ミモザはとても良いものだったことを記録しておきたい。
富士屋ホテル滞在を終えて
そんなこんなで富士屋ホテルでの短い滞在は終わった。とても良かったのできっとまた来ると思うのだが、その際にはぜひバー・ヴィクトリアにも伺ってみたい。(夕食後部屋に戻って即寝してしまったので…)
ヴィーガン・メニューがあったり問い合わせはAIチャットbotだったりと、老舗ながらソフトは決して古くない。それが150年続く秘密なのかもな、と思ったりした、満足度の高い滞在だった。
みなさんも箱根にお出かけの際はぜひ、富士屋ホテルへ。
家で飲む用に福袋ワイン買おうかなーと思ってるところ↓