ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

なぜワインの価格は上昇している? 安売りできる理由は!? 社長に聞いてみた

※2024年1月25日大幅に加筆修正しました

「都光」絡みのワインに異変!?

私はワインをネットで買うことが多い。とくに利用するのが楽天市場で、最近ちょっとお得感が落ちたが、ポイントが貯まるのと、多くのユーザが集っているため競争原理が働き、お得なオファーが多いと感じるからだ。

なかでも品質の高いワインがときに驚くような価格で売られているカーヴ・ド・エル・ナオタカ、セラー専科、シャンパンハウスといったショップ群を利用した方も多いと思うが、これらは都光でありイズミセの関連ショップ。もっと大きくいえば小売大手のリカマングループの一員だ。

輸入・流通・小売までをグループ内で一気通貫できることで中間コストを削減できる。そして、価格に弾力性のある自社輸入ワインだからこそ、セール時にお得な価格で販売できる……わけだが、ときにそれにしたって信じられないような値引きが行われている場合がある。なぜなんだ。

というわけで、お友だちでもある都光・イズミセの社長を兼務する偉い人、ナオタカさんこと戸塚尚孝氏にインタビューしてみたところ、めっちゃくちゃ興味深い話が聞けたので共有したい。

以下、インタビュー形式でお届けする。

※ちなみにこの記事は案件とか広告とかではありません。普通に私が興味があったのでXのDMで打診しました。

 

都光/イズミセ社長・ナオタカさんにインタビュー!

世界的なワイン値上げの背景

ヒマ:今回(注:の楽天SS、貴社のワインが非常にお得に買える印象です。今日は、その背景にはどのような環境や戦略があるか、そのあたりを聞かせてください。

 

ナオタカ:わかりました。まずは環境についてお話しさせてください。

 

ヒマ:お願いします。

ナオタカさん

ナオタカ:昨年、コロナ禍が先に収束した欧米でシャンパーニュや高級ワインの需要が増えたこと、そして2020、2021とブルゴーニュシャンパーニュの収穫量が少なかったことに起因し、市場から高級ワインがなくなり、価格が高騰しました。さらに、ロシアのウクライナ侵攻がはじまり、瓶の供給不足による資材の高騰、光熱費高騰、運賃高騰など色々な要因で商品原価があがりました。

 

ヒマ:そうか、日本では「今年から」の印象ですが、欧米では「昨年から」コロナが開けていたわけですね。そこに気候や世界情勢も絡んで価格が高騰したと。

ナオタカ:そのような状況が影響したのか定かではありませんが、昨年7月くらいからモエ・エ・シャンドン、ヴーヴ・クリコ、ドン・ペリニヨンなどのMHD(モエ・ヘネシーディアジオ)輸入商材が市場から消えるという異常事態が起きました。市場の50%以上をおさえていたこの3銘柄がなくなった結果、無名シャンパーニュやフェッラーリなどのスパークリングが大きく売り上げを伸ばします。

 

ヒマ:一時期、「有名シャンパーニュが手に入らない」という声がよく聞かれましたね、たしかに。

 

ナオタカ:アメリカに目を向けると、2020年のナパの大きな山火事により生産量が激減。オーパス・ワンは2020年VTは出荷されませんでした。また、人件費等の物価高でアメリカ産ワインの価格が異常なほど高騰します。

ナパの山火事についてはこの記事で↓

himawine.hatenablog.com

ヒマ:値上げ、値上げでしたよね、この1年は……。やっぱりそれだと売り上げは落ちちゃうわけですか?

 
駆け込み需要と、ナイトマーケットの変化

ナオタカ:それがそうでもないこともあるんです。色々な要因が重なったとは思いますが、昨年末から今年の頭にかけては値上がり前の買いこみ需要が生じ、無名シャンパーニュや、少しだけ割り当てられたモエ(6,000円)やヴーヴ(9,000円)が高値で飛ぶように売れたんです。ナイトマーケットではアルマンド(・ブリニャック)、ソウメイ、(ルイ・ロデレール)クリスタルなども高値で飛ぶように売れ、ワイン業界は非常に好況でした。

 

ヒマ:なるほど、駆け込み需要ってやつですね。

 

ナオタカ:その状況も5月頃に変化します。品薄だったMHD商品が市場に出てきたんです。それに伴い無名シャンパーニュの売上は激減。ポメリーですらうちの売上で昨年の半分以下になってしまいました。一方のナイトマーケットでは、値上がりしすぎた高級シャンパーニュから「オリシャン」と呼ばれる低価格のスパークリングにオリジナルのフィルムやエチケットをつけたものが主流となり、高級シャンパーニュの需要が激減します。

 

ヒマ:「オリシャン」ですか…! 検索してみるとなるほど「オリシャン専門店」とかまであるんですね。知らなかった…。

 

ナオタカ:じゃあブルゴーニュはどうかといえば、生産量減の影響なのか市場から商品が消え、新しいヴィンテージの2021は少量入荷しましたが、異常価格でなかなか売れません。

 

ヒマ:うーん、苦しい。

 

円安と値上げと在庫の関係

ナオタカ:さらに追い討ちをかけたのが円安です。6月くらいから円安が急激に進み、秋以降に入荷したアイテムが大幅に値上がりしたため、10月以降希望小売価格やセットワインなどを大幅に値上げせざるをえませんでした。

 

ヒマ:我々消費者も、季節ごとどころか、毎月のようにワインの価格が上がっていく感覚がありました。

2021年に購入したワインくじに封入されていたリスト。サロン、10万円切ってたんだね…。

ナオタカ:ですよね。そして値上げをしても市場が値上げ前ほど売れるわけがなく、在庫がどんどん増えます。発注時には140円台の為替で計算していたものが、160円で入荷してくる。とくに年末商材は10月11月に仕入れするので、予想以上に厳しい商品原価で入荷してきている状況です。

 

ヒマ:いやー、厳しい。円安だけはなんとかなってもらいたいですね。

 

ナオタカ:ただ、弊社はある程度この情勢を予測していたんですよ。なので昨年前半に前倒しして仕入を行っていた商品もあるんです。とくにヴィンテージシャンパーニュ、2019/2020のお値打ちブルゴーニュなど。

 

ヒマ:お、さすがです。為替レートの悪化を見越していたわけですね。

 

ナオタカ:はい。ただ、予想以上にワイン市況が悪く、とくに9月以降は楽天市場をはじめ、過去20年見たことのないほどワインが売れていません。以上の要因から在庫が最強に膨らんでいるんです。

 

ヒマ:前倒しでの発注、値上げによるダブつき、コロナ明けによる家飲み→外飲みへのシフト……すべてが在庫増に影響していると。

 

「なぜ楽天スーパーセールで都光のワインがめちゃお得になっているか」の切実な理由

ナオタカ:なのでこのスーパーセールでそれを放出し、できるだけ現金化したいという考えから、いつも以上にお買い得なセット、福袋で勝負している状況なんです。

 

ヒマ:「今回ナオタカさんのところすっごくお得だな」という背景には、世界的なワイン流通事情が絡んでいたわけですね……!

 

ナオタカ:それでも昨年に比べ売り上げは芳しくないんです。イエノミ需要でワインなどに支出していたのが、旅行などにシフトしている影響だと考えています。ただ、そんなことも言ってられないので前もって仕入した貴重な在庫を目玉にして、少しずつ放出しながら在庫減につとめている。というのが今回飛ばしている理由。利益が少なくても現金化しないと次の仕入ができませんから。

私が購入したワインよりどり3本セット。この3本でクーポン利用で1万円はエグすぎ

ヒマ:ちなみに、差し障りなければどのあたりの商品が「目玉」なのか教えていただけますか?

 

ナオタカ:シャンパーニュでいえばコレ、A・ベルジェールのフラワーボトル、オルパール。ブルゴーニュでいえばデボワ・マリー、ピエール・ブレ、ローラン・ブセイなどです。

 

ヒマ:要チェックですね。今日はめちゃくちゃ興味深い話をありがとうございました!

いかがだっただろうか。ここまで話してくれていいのかというディープな内容だったが、ワインを「売る側」がこれだけ苦労しているのか…! ということがわかって、個人的には大変興味深いインタビューだった。1月の決算まで走り続けます、というナオタカさんの言葉がなんとも頼もしい。

最後に私・ヒマワインセレクトのお得な福袋やセット(もちろんナオタカさん絡み)を紹介しておきたい。上のような事情から非常にお得になっているようなので、ぜひ手に取ってみてはいかがだろうか。

 

決算福袋、3.3万円はヴィンテージシャンパーニュ3本↓

 

決算福袋、1.1万円はブル赤、アルザス白、ドイツ白の3本。これよさそう↓

 

シャトー・ムートンが当たるワインくじ↓