ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワイン歴2年のワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

シャトー モン・ペラ ルージュはおいしい? 当たり年は? 調べた!

神の雫』とシャトー モン・ペラ

今さらながら漫画『神の雫』を読んでいる。アルプスの少女ハイジのアニメを観れば溶けたチーズを乗せたパンを食べたくなるなるように、神の雫を読むとシャトー モン・ペラを飲みたくなるというのはあるあるを超えたもはや摂理と呼ぶべきもの。

ヴィニョーブル・デスパーニュの公式サイトで売られているシャトー モン・ペラBOX。『神の雫』フランス版のコマがデザインされている

神の雫』第三話でオーパス・ワンと比較され、とくになんの留保もなく(ヴィンテージによっては、とか、熟成させたものであればとか、合わせる料理によっては、とかのエクスキューズなしで)「俺はこの『モン・ペラ』とかって方が全然美味く思えたぜ」と判定されるシャトー モン・ペラ ルージュ。いかなるものかと「酒のやまや」に向かって1本買ってきた。

シャトー モン・ペラは「デスパーニュ家」が造るワイン。まずはデスパーニュ家について調べるところからスタートしていこう。

 

シャトー モン・ペラとデスパーニュ家

ヴィニョーブル(葡萄園・葡萄畑の意)・デスパーニュはボルドーのアントル・ドゥー・メール地区で200年以上の歴史を持つという生産者。アントル・ドゥー・メールは海の間という意味を持ち、ガロンヌ川とドルドーニュ川の間というそれ川の間なのでは……? っていう土地。

アントル・ドゥー・メールの図。上の青線で示されるドルドーニュ川と、下の青線で示されるガロンヌ川で区切られた三角地帯を示す。ちなみにガロンヌ川のガロンヌの元の意味は「川」だそうです。

デスパーニュ家のサイトによれば、「アントル・ドゥー・メールはボルドー最大の地域でありながらもっとも知られていない」とある。wikipediaによれば、アントル・ドゥー・メールの総面積はボルドーのサブリージョンとして最大の3000ヘクタールあるが、森林が多いため総栽培面積は1500ヘクタールもあるのだそうだ。広い。

ただしAOCアントル・ドゥー・メールを名乗れるのは白ワインのみで、基本的には生牡蠣と合う安めの白ワインの産地。赤ワインはAOCボルドー、あるいはボルドー・シュペリウールとなるそうな。そりゃ無名にもなるよなぁ。綺羅星のごとき右岸と左岸のアペラシオンに囲まれた名もなき三角地帯、それがアントル・ドゥー・メールみたいな印象だ。

 

シャトー モン・ペラとカディヤック・コート・ド・ボルドー

シャトー モン・ペラは元々ル・ペラという名前だった。一瞬だけ歴史を整理しておくと、デスパーニュ家が「ル・ペラ」の100ヘクタールの畑と醸造所を取得したのが1998年のこと。それをシャトー・モン・ペラ(ペラの丘)と改称し、品質改善に努め続けて今に至る。

シャトー モン・ペラ2018を飲みました

元ル・ペラ、現在シャトー・モン・ペラが位置するのがアントル・ドゥー・メールのカディヤック・コート・ド・ボルドーと呼ばれるアペラシオン。ガロンヌ川右岸の長さ60キロ、幅5キロの帯状に広がる土地だ。

整理すると、モン・ペラはボルドーの>アントル・ドゥー・メールの>カディヤック・コート・ド・ボルドーのワイン、ということになる。

カディヤック・コート・ド・ボルドーは恥ずかしながら初耳のアペラシオンだったのだがボルドーワインの懐の広さは恐ろしいもので、カディヤックコートドボルドードットコムというオフィシャルサイトが存在する。詳しく見ていこう。

 

カディヤック・コート・ド・ボルドーとキャデラックの意外な関係

さて、カディヤックの綴りは「Cadillac」で、アメリカの自動車メーカーと同じ。そしてなんと、キャデラックの語源はカディヤックだった。

なんでもデトロイトを開拓したフランス人冒険家アントワーヌ・ドゥ・ラ・モテ・キャディラック伯爵という人物に敬意を評し、キャディラックはその名前と紋章を社名とロゴに採用したのだとか。

himawine.hatenablog.com

ところが調べるとラ・モテ自身は貴族ではなく、新天地に移住するにあたり自分の好きなワインの産地である「カディヤック」を勝手に名乗り、紋章も自作したみたい。すごい時代だなあ。

ともかく自動車のキャディラックの名前は、ボルドーワインの産地名由来だったっていうのはいつか使える豆知識。ワイン好きのみなさん、アメ車に乗るならキャデラックですよ。

カディヤック・コート・ド・ボルドーのブドウ畑は南や南西向きの斜面にあって日当たりが良く、水はけも良くて気候は温暖とのこと。栽培品種はメルローが中心(55%)で、以下、カベルネ・ソーヴィニヨン(25%)、カベルネ・フラン(15%)、マルベック(5%)と続いていくようだ。

 

モン・ペラと醸造コンサルタント ミッシェル・ローラン

さて、モン・ペラの話に戻ると、このワインは産地の特徴を反映してメルローカベルネ・ソーヴィニヨンカベルネ・フランブレンドで造られるようなのだがその比率がわからない。

ワインショップソムリエのページによれば、栽培比率はメルロー80%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%、カベルネ・フラン10%とのことなので、その比率をベースに年によって微調整、みたいなことなんだと思うけど、詳細は不明。ただ、メルローが主体なのは間違いないところ。

そしてこのワインの説明文に登場するのが、醸造コンサルタントで「空飛ぶ醸造家」「MR.メルロー」の異名を誇るミッシェル・ローランだ。

ついでなのでローランについても調べていこう。1947年、ワイン生産者の家に生まれたローランは、ポムロールのシャトー・ル・ボン・パストゥールで育つ。ボルドー醸造学校を卒業後、1973年にボルドー右岸リボーヌの町の醸造研究所を買い取り、テイスティングルームを併設するまでに拡張。このあたりいきなりスケールがデカいんだよなあ。

Wikipediaによれば、ローランの「特徴的なスタイルは、果実味に富み、オークの影響を受けていること」であり、「影響力のある評論家ロバート・パーカーも同じ好み」だと指摘している。パーカー好みのワインが世界中で人気を集める流れに乗ってパーカー好みのワイン造りのノウハウを世界中に伝えて回ったみたいなイメージで大筋合ってると思う。

ちなみに、神の雫の原作者である亜樹直氏がローランにインタビューした記事が「神の雫ワインサロン」のアーカイブに残っており、そこではこんなやりとりが交わされている。

亜樹:パーカーポイントの高いワインを作るため、パーカーの好みを意識していますか?

ローラン:私はパーカーさんのためにワインを作っているわけじゃない(笑)。彼とは25年来の付き合いですが、意識はしていない。

ただ「結果的に」ということになるのだろうが、ローランはパーカリゼーションの立役者みたいな評価をワインの歴史に残している。“パーカー好み”を追求したわけでないとしたら、ローランのワインの特徴なんなのか。ふたたび亜樹直氏のブログから引用してみる。

亜樹:あなたのワイン作りのモットーは?

ローラン:まず、自分の好きなワインを作ること。2番目に熟成させてなくてもおいしく飲めるワインを作ること。15年待って飲むワインはコレクターのものだからね。そして3つ目が、飲んで楽しいワインを作ること。


このなかで具体的な記述はひとつ。「熟成させてなくてもおいしく飲める」という点だ。それはすなわち酸味、渋みが少なめで、果実味が強いということだと思われる。

それにしても、08年に執筆された元記事のなかで亜樹氏はローランのワイン造りに対し、「彼の作るワインは、年齢とか体格は違うけれど、どれも似た顔をした兄弟のようだった。」と否定的に書いていて、「20年後、ワインはコカ・コーラのような標準化された飲み物になってしまうのではないか」とまで言っていて興味深い。

そんなローランは2020年に引退。パーカーは2019年に引退。ワイン業界は新たな時代に突入してるわけですね。

とにかく、モン・ペラも若いうちから、そして開けたてから楽しめる果実味豊かなワインであることが期待される。(公式サイトに製法その他記載なし)

 

シャトー モン・ペラの当たり年は?

さて私がシャトー モン・ペラを購入したのは「酒のやまや」でヴィンテージは良年といわれる2018、購入価格は2750円だった。いざ飲む前にモン・ペラの当たり年はいつか? をたしかめるべく、ヴィンテージごとの評価をvivinoで調べてみた。まずは2010年から14年の5年間をみてみよう。

2010 3.5
2011 3.5
2012 3.5
2013 3.5
2014 3.5

ぜんぶ3.5だった。産地などにもよる(vivinoは甘めのワインの点数が高く、すっぱいワインが点数が低くなりがち)のだが、3.5はおいしいかおいしくないかを判定する分水嶺。2010年代前半のモン・ペラはそのエッジを歩み続けている。では2015年以降はどうか。

2015 3.7
2016 3.6
2017 3.6
2018 3.7
2019 3.6

なんか評価が上がってきてる……! そしてやっぱりボルドーの良い年だった言われる2015と2018の評価は高い。ともあれ、評価からは年による品質の上下の少なさを感じる。2010年以降最高評価の2018ヴィンテージのお味はいかがなものか、いざ飲んでみよう。

 

シャトー モン・ペラ ルージュ2018を飲んでみた

スポンと抜栓してグラスに注いでみると、おお、香りがすごいなこりゃ。これぞボルドーと言うべきカベルネ・ソーヴィニヨンの香り……(注:メルロー主体)! あれおかしいな。めちゃくちゃカシスとかの香りがするんだけどな困ったなと思っていると、一拍遅れてバラとラベンダーを合わせたような静かなのに華やかな香りがやってきて、これはメルロー感がすごくある。

いずれにせよとにかく香りが本当にいいワインだ。それに対して味わいは、渋みと酸味がしっかりあって、開けたてからめちゃくちゃおいしい! というわけではあれまじか、必ずしもないな。

香りの良さからはもっと豊かな果実味を想像したんだけどそこまでではなかったし、おいしいワインであるのは間違いないと思う一方、2750円という価格を考えるとほかにもっとおいしいワインはあるよなあというのが正直な感想だった。もう少し熟成させたりしたほうがいいのかな。でもなあ。

評価3.7はおおむね妥当な感じか

ネットの賢人の意見を見ると、「モン・ペラは白もいい」という意見も散見される。次回はシャトー モン・ペラ ブランを買ってみよう。

ともあれ飲めてよかった。 そしてネットだと1000円近く安いのかよ!

2015も飲んでみたいなこうなると