「ノンアルでワインの休日(白)」を買ってみた
前日に飲みすぎてしまった翌日、仕方がないのでワインを飲まない日を設けることにした。さりとて夕食に合わせるのが水では味気ないということで、人気の「ノンアルでワインの休日(白)」を試してみることにした。
「ノンアルでワインの休日」はサントリーが3月1日に発売したノンアルコールワイン。公式サイトには「『ワインらしい味わい』を目指してワインを蒸留し脱アルコールしたワインエキスを使用することでワインらしい“味わいと香り”を実現」したと書いてある。
「ノンアルでワインの休日」と脱アルコールについて
ワインを蒸留して脱アルコール。しれっと書いてあるがこれは一体どういうことなのかが気になったので、困ったときのジェイミー・グッド『新ワインの科学』で調べてみると、13章「アルコール除去とマストの濃縮」のなかに「減圧蒸留法」についての説明があった。
これは真空下で発酵前のブドウ果汁を熱して温度を上げる手法。真空にすることで気圧が下がり、気圧が下がれば沸点も下がるため、約25〜30度(……はどうやらカタログスペックで、実際は約46度くらいになるみたい)でアルコールを蒸留できるんだそうで、EUで許可されてる手法なんだそうだ。低い温度で蒸留することで風味を損なわずにアルコールだけを取り出すことができるんだって。
そして脱アルコールの方法は、ほかにも逆浸透法、スピニングコーン・カラムという装置を使う方法など、いろいろやり方があるようだ。
なぜ出来上がったワインからアルコールを除く必要があるのか?
話は盛大に逸れるが、なぜアルコールをワインから除く(減らす)かといえば、そこには気候変動の影響がある。平均気温が高くなったことによってブドウの糖度が以前よりも早い段階で上昇するようになり、収穫時期も年々早まっている。
しかし、収穫時期を早めると、ワインの香りをつくるブドウの風味成分が十分に成熟できていないうちに収穫を迎えるということが起こる。ならばと収穫時期を遅らせると、今度は糖度が高まりすぎてアルコール度数が異様に高くなってしまったり酸がなくなってしまったりして、これまた良くない。
そこで、高まりすぎたアルコールを取り除く手法として、脱アルコール技術の需要が高まっているようで、本には「カリフォルニア産の高級ワインのうち四五%が(中略)アルコールを除去されている。今や世界中のワイン産地にアルコールの除去が広まりつつある」とある。
ちなみに、マストに水を加えることでアルコール度を減らす生産者もいるそうだが、ズバリ違法だそうだ。このあたり闇が深そうな匂いがしますね……。
以上はアルコールをゼロにするのではなく、高まりすぎたアルコールを減らすための手法のようだが、要するに「ワインからアルコールを除く」ことは技術的に可能だということだ。『新しいワインの科学』は役に立つ本だなぁ。
「ノンアルでワインの休日」の原材料
なんの話だっけ。「ノンアルでワインの休日」の話だった。「ワインから脱アルコールしたワインエキスを使用した本格的な味わい」だというこの商品は、果汁21%という表記。続いて、その主原料を見てみよう。こんな感じだ。
果実(ぶどう)
糖類(砂糖、水あめ)
ワインエキス(ノンアルコール)
酸味料、炭酸、香料、乳酸Ca、酸化防止剤(ビタミンC)、カラメル色素、増粘剤(キサンタン)
※改行は筆者
果実(果汁)に糖類を加え、酸味量などで味わいを整える。そこにワインエキスでワイン固有の風味を加え、炭酸ガスで発泡させているっぽい感じが想像できる。どんな味なのか、いざ飲んでみよう。
「ノンアルでワインの休日(白)」を飲んでみた
グラスに注いでみると、炭酸飲料っぽいシュワーッという音で表現されるような泡立ち。香りは弱めながら、うん、飲むとたしかにちゃんとワインっぽい。ジュース感はあるけど酸味もあるし、なにしろ甘ったるさがないのがいい。スパークリングワイン的感覚でアペリティフにいいし、甘くないから食事とも合わせやすい。なるほど休肝日の選択肢としてはアリだ。
ただ、これは言っても仕方がないことだがやはりアルコール度数ゼロは寂しい。寂しいなあ、と思っていてふと思いついたことがある。
これ、ワインを足したらどうなるんだろう。
思いついてしまったならば仕方ない。冷蔵庫で休日をエンジョイしていた白ワイン選手を急遽呼び出し、ノンアルワインの現場にヘルプで入ってもらうことにした。
「ノンアルでワインの休日(白)」に白ワインを足してみた
スパークリングワイン用グラスに注いだ「ノンアルでワインの休日(白)」100に対して20くらい入れてみたところ、あれ、意外と変化がない。さすがになんていうんですかね。ボディ感みたいなものは出るのだが、本質的にはさほど変化しない。
加えたのはロワールの安ソーヴィニヨン・ブランだったのだが、「ノンアルでワインの休日(白)」の味わいの方向性がそもそもロワールのソーヴィニヨン・ブランっぽいっちゃぽいので、なんていうか美少年を女装させたら普通に美少女になってしまったのだが予想通りすぎて逆につまらん、みたいになってしまった。
「ノンアルでワインの休日(白)」に赤ワインを足してみた
これだと初めっから普通にスパークリングワイン飲めばいいじゃん感がすごい。というわけで二の矢として赤ワインを足してみることにした。打ちてしやまん勝つまではの精神だ。
で、赤ワインを入れてみたところこれが意外なヒット。赤ワインの渋みと甘味が加わったことで味の厚みと複雑さが一気に増した。これはなかなかおいしいぞ……と思ったのだが、そもそもノンアルコールワインにワインを足すシチュエーションが今後の人生でどうも想像できないのが難点だ。無念。
ただ、ノンアルコールワインにワインを足したことで、ワインにおけるアルコールの役割みたいなものはわかったような気がする。「ノンアルでワインの休日」には増粘剤が加えられているが、ワインを足したことで液体の粘度が少し上がったように感じられ、味わいにおいては甘味とか厚みとか、繰り返しになるし専門用語っぽくて使いたくないのだがこれはもうボディ感としか言いようのないものが加わる。
というわけで、もし驚異的にヒマを持て余している人がいたら、試しにやってみてください。ワイン好きならやって面白くないことはないです、たぶん。