ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

ドン・ペリニヨン「P2(プレニチュード2) 2004」飲んでみた! どんな味だった!?

ドン・ペリニヨン「P2(プレニチュード2) 2004」を飲みに亀戸へ

亀戸の名店・デゴルジュマンでドン・ペリニヨンのプレティチュード2がグラスで飲めると聞いたので行ってきた。

ドン・ペリニヨンのプレニチュード2(以下P2)はただでさえおいしいドン・ペリニヨンの良年のものを15〜20年熟成させたというずっと飲んでみたいなあと思っていたワインのひとつ。そんなもんうまいに決まってんじゃん。

ドンペリ「P2」を飲んできました。

以前なにかでドンペリのセラーマスターの方が語っているのを読んだ記憶があるのだが、P2(とP3)はあくまでも澱に触れた状態で15〜20年熟成させることに意味があるのだそうで、デゴルジュマン後のボトルを同じ年数熟成させたものとP2では、やはり味わいが異なるのだそうだ。

デゴルジュマンでの今回の販売価格は1杯7700円。普段ラーメンに70円のトッピングを乗せる乗せないで悩むみたいな日々を過ごしている自分にとってはもちろん超高額だが、無量無辺の広がりを持つこの宇宙のスケールから見れば7700円という数字は無みたいなもんだしな、ということで1万円札を握りしめてこの宇宙にぽっかりと浮かぶ地球の亀戸と呼ばれる領域に存在する複合施設「亀戸横丁」の奥深くに鎮座するデゴルジュマンに向かったのだった。

 

ドン・ペリニヨン「P2(プレニチュード2) 2004」とルイ・ルデレール「ブリュット・プルミエ」

さて、今回の滞在可能時間は(いつもだが)慌ただしくて1時間。P2はおそらく時間経過とともにパフォーマンスが大きく変化するであろうから、着席と同時にオーダーし1時間かけてゆっくり飲むことにしたのだが、さすがに1時間で1杯だけというわけにもいかぬ。

もう1杯、P2のおともになにか飲もう……とメニューを眺めていると「ルイロデレール ブリュットプルミエ NV(旧ラベル)」という文言が目に飛び込んできた。お、こりゃ面白そう。値段も1800円と(宇宙のスケールから考えると)ほぼ無。

こりゃ贅沢だ。

というわけでルイのロデとドンのペリ、両者を飲み比べる贅沢ナイトとあいなった。

「ロデレールは2021年にスタンダードがブリュット・プルミエからコレクションに切り替わりました。コレクション242からはじまって、現行はコレクション244。ブリュット・プルミエはちょうどいま熟成がいい感じなんです」

と、店主の泡大将がグラスにワインを注ぎながら教えてくれた。コレクション242のベースVTが2017とのことなので、ブリュットプルミエ(以下、ロデ)のベースVTは2016以前。必然的にほどよく熟したいい感じの状態になっているというわけだ。楽しみ。

泡大将はロデをグラスに注ぐと続いてP2のコルクをスーンと抜いてくれたのだが、その瞬間に驚いた。ブワワッとボトルの中から香気が溢れ出したのだ。「いい感じのドンペリ香、出てますね!」と泡大将。いやまじかこんなことあるんすね。

とはいえグラスに注がれたP2は長い眠りから覚めて小休止。逆にあんまり香りが出なくなっている。

泡大将いわく「P2などRD系(レサマン・デゴルジュマン=出荷直前まで澱引きしない)の良さは、グラスのなかでフレッシュから熟成までを味わえること。1時間後はきっとガラッと表情が変わっていると思いますよ」とのことで、結果的にこれは本当にそうだった。「変化」こそが良さという印象だ。

仮にグラスに注がれた直後のP2をコールに合わせて一気飲みしたとすれば、感想は「別に普通だったよ」となると思う。酒だし好きに飲んだらいいのだが、時間をかけて飲むという楽しみを教えてくれるシャンパーニュなのは間違いない。

最初の印象は香り弱め、味わいも要素が大きく感じられず、フレッシュでおいしいけれどこれが本領とは思えない。というわけでP2のグラスに待ての指示を出し、ロデ優先で1時間の工期を進めていくこととした。

 

ちょい熟ブリュット・プルミエの衝撃

そして嬉しい誤算というべきか、このちょい熟ブリュット・プルミエが素晴らしい仕上がりだったのだった。明日になったらもう痛み始める熟しのピークにある蜜リンゴみたいな爛熟した果実の感じ、それと裏腹のどフレッシュな酸味が両立し、かすかにカスタードクリーム的な印象が乗っかってくる。これはいいぞ。

これほんとにおいしかった。

P2がポテンシャルは折り紙付きだけどまだ肉体づくりが終わっていないドラ1高卒ルーキー(高校通算80本塁打)だとしたら、こちらは26歳で入団してきたドラフト5位の内野手(甲子園未経験)みたいな風情があり、開幕からいきなりしっかりと「おれには後がないんだ!(熟成ポテンシャル的な意味で)」みたいな気迫とともにパフォーマンスを発揮してくれている。

「ブリュットプルミエを本当においしい状態で飲むと、(プレステージキュヴェの)クリスタルにも通じるおいしさがあるんです」と泡大将が言っていたが納得だ。ブリュットプルミエもクリスタルも豊かな酸が特徴。それだけにリリース直後はすっぱく感じられることもあるのだそうだが、目の前にあるグラスは酸とその他要素のバランスが絶妙だ。

詳しいところは伏せるがこういった熟成ワインを泡大将は自らの脚で探して仕入れているそうだ。「それもそろそろ限界ですよ」と笑っておられたが、このように脚でワインを探すことができるのも専門店の腕前の一部だと思う。1杯のグラスのパフォーマンスは、探して、買って、状態を整えて、適切なグラスを選んで注ぐまでの総合力で語られる。

というわけでこれロデの勝ちまであるぞやっぱり入団時のドラフト順位なんて関係ないよな、イチローもドラフト4位入団だし、と思っていたのだがペナントレースも佳境を迎えた30分経過時点からP2選手がドラフト1位の素質を開花させてきた。

 

ドン・ペリニヨン「P2(プレニチュード2) 2004」のすごさ(の片鱗)

口に含んだ際に「じゅわり」と音が鳴ったような質的変化があり、あの〜僕のグラスに焼きたてのプリンかなんか落っことした人いませんかね? と亀戸横丁中を聞いて回りたくなるくらいにクレームブリュレや焼いた栗のような温かくて香ばしく、そして複雑な香りが漂ってくる。

色にさほどの熟成感はない。むしろフレッシュ!

私が注文して私が飲んでいるのだが、まるで2杯のシャンパーニュがどちらが上かと競い合っているのをハラハラしながら見守っているような感覚(酔ってる)。色も味筋もちょっと似ていると私には感じられ、どちらも黄金でできたなにかなのだが、P2が荘厳な宮殿だとしたらブリュットプルミエは精緻な金細工といった印象。P2のほうがスケールが大きい一方、ブリュットプルミエはまとまり感が半端ない。

ブリュットプルミエが明日も同じようにおいしいだろうなあと予想できる一方、P2は明日どころか2杯目以降どうなっていくのか想像できない。1杯飲んだだけじゃ全体像は把握できないけど、一部しか見てないからこそ想像力を働かせる余地がある。

ちなみにお会計を依頼したあとの最後の一口で、P2はまたさらなる変化を見せてくれた(なんでかコーヒーっぽくなり、これが最高だった)。2004年は泡大将いわく「平凡といえば平凡なヴィンテージ」なのだそうだが、それもまた、とらえどころがないという魅力に変換されている気がした。飲めてよかった!

ちょい熟ブリュットプルミエという予期せぬ名脇役が登場したこともあって、すごく楽しいひとときとなった1時間1本勝負の週末シャンパーニュタイムはこのようにして終わった。いろいろお話を聞かせてくれた泡大将に感謝。この宇宙にデゴルジュマンがあってよかった。またうかがいます。

つーか1杯7700円、破格すぎない…?↓

そしてブリュット・プルミエ、意外と売ってるぞ…?