下北沢ワインショップの試飲会に参加した
下北沢ワインショップの試飲会に参加してきた。毎回ふたつのインポーターが登場する試飲会だが、今回はヘレンベルガー・ホーフとミレジム。
それぞれドイツワインとフランスワインが白中心で集められた初夏にピッタリさわやか白ワイン試飲会、みたいな雰囲気。さっそくレポートしていこう。
印象に残ったワイン1:ドメーヌ・ド・マドンヌ ボジョレー・ヴィラージュ ブラン
まず飲んだのはミレジムの7種類。フランスの泡1種白3種赤2種に加え、イチオシだというイタリアワイン(ガヴィ)が加わったラインナップだ。
私が素晴らしいと感じたのは2種。1種目はドメーヌ・ド・マドンヌのボジョレー・ヴィラージュ ブラン。珍しいボジョレーの白だ。飲んでみたかったんですよボジョレーブラン。
Wikipediaによればボジョレーにおける白ワインの生産は全体のわずか1%。そしてそのほとんどがシャルドネなのだそう(2024年まではアリゴテも認められているとか)。
ただでさえ生産量が少ない上に、畑はマコンとの境界にあることがほとんどで、多くの生産者は「マコン・ブラン」として世に送り出すのだそうだ。ボジョレー、ブランド価値としてはむしろマコンより下ということか……切ないぜ。
ボジョレーはあまりにもヌーヴォーのイメージが強すぎてしまうけれども立地的には要するに南ブルゴーニュみたいなものなので、果実味たっぷりのおいしいワインがそりゃまあできるのも自然。
樽の感じが心地よくあって、たっぷりとした果実味があり、「カリフォルニアワインです」と30分間くらい強引に言い続けていればしぶしぶ信じてもらえそうな雰囲気まである。なんともいえない南ブルゴーニュブラン的風情がすごく気に入った。
印象に残ったワイン2:ドゥニ・デュブルデュー「シャトー・レイノン・ルージュ」
もうひとつ良かったのはドゥニ・デュブルデューのシャトー・レイノン・ルージュ。ボルドーの赤ワインだ。
生産者名に名を残すドゥニ・デュブルデュー教授はボルドー大学の教授でシャトー・シュバル・ブランなどのコンサルタントをしていたという凄い方。2016年に教授が亡くなると、ふたりの息子が跡を継いでいる。
デュブルデュー教授はボルドーの白ワインのスペシャリストだったそうだが、この日飲んだ1本はやっぱり赤のほうが売れるよねということでグラーヴに所有する畑の白ブドウの木を引っこ抜いてメルローとカベルネ・ソーヴィニヨンを植えて作ったという市場経済の申し子的1本なのだがこれが素晴らしかった。
ヴィンテージは2018が現行。ボルドーの2018はとても良い年だったのだそうで、それも納得の豊かな果実味・豊かな酸・豊かな香りの三拍子が揃っている。
品種はメルローが主体で61%。そこにカベルネ・ソーヴィニヨン25%、プティ・ヴェルド14%という構成。メルローの柔らかさにカベルネ・ソーヴィニヨンのミントっぽい香りとジューシーさが加わっていて、誰が飲んでもおいしいっていうタイプの味わい。私は誰が飲んでもおいしいっていうタイプの味わいが好きなのでかなりストライク。
担当の方いわく「10年くらいは熟成可能。2025年頃に飲んだら最高だと思いますが、その頃には売り切れちゃってると思います(笑)」とのことだった。でも買ったらすぐ飲んじゃうだろうなぁ。おいしいから。価格は税別3100円で、価格に対して内容が素晴らしいと感じた。
印象に残ったワイン3:ベルンハルト・フーバー「マルターディンガー シュペートブルグンダー ベルンハルト アチーブ」
ほかのワインもどれもおいしかったのだが続いてはヘレンベルガー・ホーフのワインに移る。フリードリッヒ・ベッカー醸造所を中心としたドイツワイン8種が並べられている。
このなかでむっちゃくちゃうまいと感じたのがベルンハルト・フーバーの「マルターディンガー シュペートブルグンダー ベルンハルト アチーブ」という長い名前のワイン。
ヴィンテージは2014で、この年は寒くて酸が強く出ていたため、飲みごろになるまで待ってリリースされたという1本だがこれがすっぱ旨で最高に良い。
価格が税別6800円と高いのでそれも当然といえば当然かもしれないが、「難しいヴィンテージこそ造り手の実力が問われる」とはまさにこのことなんだろうなという味わいだった。良い造り手は難しい年においしくないワインではなく、無難なワインでもなく、傑出したワインを造ってのけるのだ。
フーバー、ずっと飲みたいと思っていたのに恥ずかしながら未飲だったので、大変良い機会となった。
印象に残ったワイン4:ラッツェンベルガー「バッハラッハー リースリング ゼクト ブリュット」
2017ヴィンテージの熟成ゼクト、ラッツェンベルガーの「バッハラッハー リースリング ゼクト ブリュット」もむちゃくちゃおいしかった。
ゼクトとアイスワイン専用の高標高の畑からのブドウでドサージュには10年熟成させたリースリングのアウスレーゼを使用。瓶内二次発酵5年以上熟成というめっちゃくちゃ手間のかかった造りで、残糖4.4g/lと高くないのに蜜感があり、香りも最高に良い。これ毎日飲みたい。価格は4300円だが、手間と内容を考えると高コスパと言えちゃいそうなワインだった。
印象に残ったワイン5:フリードリッヒ・ベッカー シャルドネ2021
最後にキツネのラベルでおなじみのベッカーは、初めて飲んだシャルドネが素晴らしかった。
85%をステンレスタンクで、残りを大樽で熟成させたというワインで、樽感はほとんどないけれど液体に厚みと少しこなれた感じがあり、ハチミツレモン的なフレッシュなフルーティさと共存している。これで2800円税抜きはお値打ちを超えてちょっと異常というレベル。
南アフリカの白ワインに感じるようなこのお値段でこのお味ですかっていう驚きを感じさせてくれるドイツワインだった。ベッカーはなに飲んでもおいしいですね。
というわけで全15種を駆け足でテイスティングし、前回の試飲会で注文したワインを引き取って辞去。この試飲会で購入したワインを集めたワイン会とか、やってみたくなってきたぞ。