下北沢ワインショップ主催・スイス/カリフォルニア試飲会に参加した
下北沢ワインショップで開催されたスイスとカリフォルニアの試飲会に参加してきた。ちょっと情報量が多い会だったので、記事をふたつに分けてこの記事ではスイスワインについて記す。
出展していたのはスイスワインに強いインポーター・アルコトレード。スイスワインを飲むのはおそらくはじめてなので、スイスのワイン事情について調べつつ当日の模様をレポートしていきたい。
スイスのワイン事情
さて、スイスのワインをなかなか飲む機会がないのはなぜなのか。答えはウルトラ簡単だ。スイスのワイン用ブドウの栽培面積1万5000ヘクタールから生み出される97万9445ヘクトリットルのワインのうち、輸出に回されるのは1万3193ヘクトリットルに過ぎない。
一人当たりワイン消費量がトップ10にランクインするワイン消費大国であるスイス。造ったぶんはほとんど国内で飲まれちゃってるみたいなのだ。
そんなこともあってマイナー産地の印象があるスイスだが、ケルト人によってワイン造りが伝わったのは紀元前のこと。そして1世紀、おなじみローマ人がやってきて本格的なワイン造りの伝統が根付いていく。ここはワインの「オールドワールド」なのだ。
さて、今回の試飲会でなにより印象に残ったのがスイスの地域的な多様性。「九州ほどの大きさに5つの言語が共存する」というスイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語に分かれ、インポーターの方いわく「社内でもスイス人スタッフ同士は英語で会話している」とのこと。その違いがワインの個性にも表れるようだ。
たとえばスイス南部に位置するティチーノ州は、東と南をイタリア・ロンバルディア州と接し、西はピエモンテ州と接している。でもって公用語がイタリア語。それほぼイタリアでは? みたいな印象なのだ。
ここではメルローの栽培が盛んらしく、試飲会ではキアーラ・ディ・ルチーノのメルローで造った白ワイン「ビアンコ・ディ・ティチーノ」を試すことができた。
グリ色的なピンクオレンジの色合いにシャンパーニュのブラン・ド・ノワール的な果実感があってとてもおいしいワインだったのだが、それ以上に「スイスのイタリア語圏でつくられるメルローの白」という情報量の渋滞っぷりがなんとも良い。
ワイン会受けMAXのワインという印象があり、絶対当てられたくないブラインドテイスティング用決戦兵器として用いたりすると面白いかもしれない。
スイスのワイン品種
ティチーノで盛んに栽培されるメルローはスイスでは4番目に多く栽培されている品種で、全体の6.9%を占める。3番目がガメイで10.2%。そして2トップといえるのが赤のピノ・ノワール(29.7%)と白のシャスラ(27.1%)で、この2品種で全体の半分以上を占めている。スイス=シャスラのイメージ、ありますよね。
そのシャスラだが、スイスのほかにはフランス、ドイツ、ポルトガル、東欧諸国、ニュージーランド、チリなどでも栽培されているそう。トルコやハンガリーでは生食用にも栽培されているみたいだ。
「ふくよかで辛口、フルーティーな白ワイン」になる、というそれすべての白ワイン用ブドウ品種に当てはまるんじゃ? という特徴がwikipediaに記載されている。
シャスラのワインも2種類出展されていたので飲んでみたが、印象としては非常にニュートラル。強いていえばボルドーのソーヴィニヨンとかセミヨンとかに近い印象を受けた。
その中で微発泡でセミドライというわかりやすい個性があっておいしかったのがウヴァヴァンという生産者のシャスラ。
産地としてのスイスはインポーターの方いわく「言うほど寒くない」のだそうだが、それでもやっぱりしっかりと酸がある印象で、それがこのワインの少し甘みを引き立てているように感じた。
スイスのピノ・ノワール
もうひとつ、ピノ・ノワールのロゼ、シャトー・ドーヴェルニエの「ウイユ・ド・ペルドゥリ」も良かった。ウイユ・ド・ペルドゥリは「ウズラの目」の意なのだそうで、ウズラの目の色のようなピンク色をしていることから命名されたのだそうだ。
これはむっちゃくちゃ香りの良いワインで、花や木を感想させて柔らかい布に包んだポプリのような、やさしいけれど芯のある香りが色の印象を大幅に上回ってガッツリとくる。
飲んでみるとこれもやはり酸がしっかりと残ったタイプで、ドライだが印象は甘酸っぱく、実においしい。このワインはフランスと国境を接するジュラ州のワイン。ジュラっていう地名は仏瑞両方にあるんですね。ジュラ紀のジュラ。
価格帯的に割と高め(スイスはそもそも物価が高いらしい)なことがハードルになるが、この日飲んだスイスワインにマイナー産地感は皆無。どれも良いブドウの状態と、たしかな醸造技術を感じるクラシックでおいしいワインばかりだった。
スイスワインばかりを飲む機会はなんてそうそうなく、実に貴重な体験だった。スイスワイン、まだ飲んだことないという方は是非一度トライしてみてください。