缶ワイン「アンダーウッド ピノ・グリ」を買ってみた
缶ワインに対する興味が持続している。ワインディレクターでソムリエの田邉公一氏がツイッターで紹介していたのがそのきっかけで、そのとき氏がおススメしていた缶ワインのうちのひとつが、今日飲んだ「アンダーウッド ピノ・グリ」。カーヴドリラックス虎ノ門本店を訪ねた際に売られているのを発見、即捕獲してしばらく自宅の冷蔵庫で眠っていたが、先日、「白ワインをちょっとだけ飲みたいんだけど、中途半端に高いのしかなくてちょっと開けにくい」みたいなタイミングで出番を迎えたその姿は、さながらピンチで左の強打者を迎えた場合にマウンドに送られる左投げのワンポイントリリーフ。左のワンポイント投手が初球を打たれ、1球投げただけでションボリしながらマウンドを降りる。プロ野球は哀しみさえも見どころであるワインの話だった。
アンダーウッドは、アメリカはオレゴン州のユニオンワインのブランドで、日本でもオンラインショップのオレゴンワイン特集とかでよく目にする品。その際はもちろん750ml入りのボトルが紹介されている場合が多いんだけれども米国の公式サイトを訪ねるとブランドのメインビジュアルに使われている画像は缶のほう。オンラインショップのラインナップもメインはあくまでも缶で、ガラスのボトルのほうは蒙古タンメン中本における塩タンメンくらいの位置づけになっている。アンダーウッドはあくまでも缶メインのブランド、というメッセージが強く出ている。
ラインナップも見るだけで楽しく、ロゼ、ロゼバブル、バブル、ピノ・グリ、ピノ・ノワール、ヌーヴォー・ピノ・ノワール……とさまざま。さらにサイトをくまなく見ると、手造りマスクの作り方が載っていたり、全従業員のポートレート(主要社員はプロフィール付き)が掲載されていたり、アンダーウッドのロゼと各種ジュースとガムシロ、ブルーベリーを使ったアイスキャンディのレシピが載っていたりして(これ今度作ってみたい)、なんだかすごく楽しい。逆に、果実をどう摘んで、どうジュースを絞り醸造は……といった情報はほぼゼロ。「気楽に楽しんでよ」というメッセージが前面に出ている割に、必ずしも激安ワインではないという点がユニークっていうかマーケティングの妙だなあと感じる。
アンダーウッド ピノ・グリ、缶で飲むか瓶で飲むか
アメリカでは缶ワインの1本単位での販売は許可されていないため、販売は4本単位。375ml缶が4本(1500ml)で28ドル、約3000円となっている。面白いのは現地では750mlの瓶入りは14ドルと、缶と瓶で1mlあたりの価格に変化がないのに対し、日本だと缶1本が定価900円に対し容量が3倍の瓶入りは3000円する点。缶を選んだほうが、仮に中身が同じなのであればより安く買えるということになるの不思議じゃないですか。ただ、実際の売価を見ると、缶は税込み990円、瓶はその3倍の税込み2970円で売られているケースが多いようで、なにか商慣習的なものがあるのかもしれない。いずれにしても、アンダーウッドに関していえば、缶だから(缶なのに)割高、ということはなさそうだ。安心して飲めるぜ。
アンダーウッド ピノ・グリを飲んでみた
というわけで、プルタブを開ける。プルタブを開ける音といえば「プシュ!」だが、アンダーウッド ピノ・グリはスティルワインであるので開けてもそのような音はせず、なんすかね、ヘコ、みたいな音がする。缶ワインの泣き所、それはワインという存在そのものが持つすべての食事、すべての時間をセレブレートする力、それが若干弱い点かもしれない。とはいえ、遠い夏の日に缶入りポカリスエットとかを開けたときの感じを思い出して、ちょっぴり懐かしい気持ちになれたりもする。
とはいえワインの真価はいわずもがな香りである味である。その実力やいかにとグラスに注いで飲んでこりゃおどろいたンマーイ! この香り、まさに今の季節が旬の桃。それも「桃」と漢字で書くのではなく「もも」とひらがなで書きたくなるかわいらしい香りがする。
そもそも私はピノ・グリで造られたワインを飲むのが初めて。調べてみると、ピノ・ノワールの果皮の色が異なる変異種なんですね。なんかわかるぞ。
さて、エノテカの商品ページを見ると、アンダーウッド ピノ・グリは「フレッシュな白桃や洋ナシのアロマが時間の経過とともにコンポートの香りへと変化します」とあり、飲んだ印象もまったくその通り。一方、公式サイトのテイスティングノートの項には「Lemongrass, green apple, white stone fruit」とあり、桃という記載がない。じゃあホワイトストーンフルーツってなんじゃろなと調べてみると、ストーンフルーツとは「中に大きな石がある果物」のことなんだとか。石とは種のことで、だから白くて中に大きな種が入っている果物=要するに桃のことみたい。じゃあ桃って言って。というわけで、生産者、販売者、消費者、三者がそろって「桃である」と言っているのでこれ桃でいいでしょう。アンダーウッド ピノ・グリはホワイトストーンフルーツ味であります。
ただ、香りは非常に甘やかで、母が桃に包丁を入れてくれているときに台所から漂ってくるようななつかしアロマがするものの、口に入れると甘さは感じずむしろキリッとしてる。私はなにを合わせても過去ロクな結果にならなかった餃子に合わせたのですがこれめっちゃ合った。餃子のあぶらっこさとか豚肉のパワフル具合をサラリと受け流してくれて、ホワイトストーンフルーツ境(桃源郷の意)に連れて行ってくれた。さすが250mlで900円だぜ。
とまあこのように、餃子、ピノ・グリ、ピノ・グリ、餃子とエンドレス餅つき状態が大変はかどりつつも、大昔、自動販売機で売られていた不二家のピーチネクターを思い出したり、缶ポカリを思い出したり、桃を切る母の姿を思い出したりと、なんだか異様に昔のことを思い出しながら、250mlを大満足で飲み干したのだった。こりゃいいや。次はピノ・ノワール行ってみようと思います。オレゴンだし。