2022年ベスト安白「ドメーヌ・イノソンティ サン・ヴェラン レゼルヴ・ジョベール」を飲んでみた
2022年のベスト安ワイン白部門はドメーヌ・イノソンティという生産者の「サン・ヴェラン レゼルヴ・ジョベール」だった。飲んだのは下北沢ワインショップ併設のバー・フェアグラウンド。そこで開催されたインポーター・ミレジムの試飲会で飲んでこりゃうめえわとなり、のちに注文したものをこのたびあらためて飲んでみた。
下北沢ワインショップの試飲会はプロアマ合同試飲会で、その場で注文もできるので良いし楽しいのでみなさんもぜひ。
ドメーヌ・イノソンティとサン・ヴェランという土地
さて、ドメーヌ・イノソンティはボジョレーのブルイィが本拠地の生産者。ではサン・ヴェランはどういう場所なのだろうか。
ブルゴーニュ委員会のサイトで調べると、それはブルゴーニュ南部、マコネ地区のそのまた南端に位置する村名アペラシオンであることがわかる。
「プイィ・フュイッセを取り囲むようにある白ワインのひとつ」だと説明されているように、土壌はプイィ・フュイッセに似ていてシャルドネの栽培に向き、アペラシオンとしても白ワインのみに認められているようだ。
というわけでれっきとした村名AOC。なのに購入価格は3000円を切っている。えらいっ。
マコネ地区はコート・ドールより南方に位置するため暖かく、果実味が豊か。そのぶん酸のシャープさや複雑な香りには乏しいかもしれないけれども、飲みやすさ・親しみやすさにおいてはむしろ上(な気がしなくもない)。そして安い。ブルゴーニュワインの価格がチューリップの球根みたいになっているように見える昨今、ワインは飲みもの、安いは正義だ。
ドメーヌ・イノソンティはどんな生産者か
ワインに話を戻して、ドメーヌ・イノソンティの輸入元資料にはこんな記述がある。
「(引用者註:サン・ヴェランは)1971 年に独立した AOC として認められるようになるまで南部はボージョレ・ブラン、北部はマコン・ヴィラージュを名乗っていました。」
このようにサン・ヴェランはマコネとボージョレの汽水域であり、サン・ヴェランは限りなくボジョレー・ブランに近いブルゴーニュの白ワインということになる。ちなみにボジョレー・ブランなんてあるんだっけと調べてみたら、どうやらマコネと接する地域のみで認められているみたいです。知らなかった。
ドメーヌ・イノソンティに関しては公式サイトが見つけられなかったので輸入元資料に頼るよりほかないのだが、「有機栽培し、遅摘みし、天然酵母で発酵する」と書いてあり、SO2の使用も最小限とのことなので自然派的な造り。ステンレスタンクで12カ月のシュール・リーを行っているそうだ。
そしてドメーヌ・イノソンティ自体はヴィニュロン・デ・テル・スクレットっていう栽培家協同組合の一部のようだ。ドメーヌ・イノソンティは半ばキュヴェ名みたいなもんなのかな。檸檬堂、みたいに。ともあれ安ワインにおいて協同組合は安心・安全の印です。
ドメーヌ・イノソンティ サン・ヴェラン レゼルヴ・ジョベールを飲んでみた
さて、そんなこんなを調べつつ改めて飲んだみたのだが、最初の印象は「あれ?」だった。試飲会で飲んだ印象はみつみつとろぴか〜るだったのだが、冷やして開けたての印象はもっとはるかに硬質で、シャブリとまではいかないけど、みたいな印象だ。思ったよりトロピカってない。
ただ、このワインが面白いのはそこからの変化幅の大きさ。時間が経って空気に触れて温度が上がると、レモンがグレフルに、グレフルが白桃に……と印象がくるくる変わる。徐々に蜜感が出てきて、ちゃんとトロピカってきた。
試飲会で私は抜栓してある程度時間が経った状態のものを飲んだのだが、それがベストタイミングだったのかもしれないし、自然派っぽい造りなのでもしかしたらボトル差的なものもあるのかもしれない。
シーズン56発本塁打を打つ村上宗隆にも当然ノーアーチの日はある。村上のホームランを楽しみに球場に行ってホームランは出なかったけれどもフェンス直撃のツーベースヒットを目の前で見られたしチームも勝ってご満悦のヤクルトファンみたいな印象をこのボトルからは受けたのだった。私はカープファンだけど。
というわけでこのワインは手元にもう1本ある。夏くらいにまた飲んでみよ。