カリフォルニアのトップ生産者のシャルドネはどんな味なのか?
カリフォルニアの5大シャルドネのうちの4つを飲み比べる、というすごいワイン会にお誘いいただいたので行ってきた。会場は東京・新橋のイタリアンレストラン、ピアット・デル・ベオーネ。
さて、いきなりぶっちゃけますとまずカリフォルニアの5大シャルドネがわからないわけなんですよ私レベルだと。それは、以下の5生産者のようだ。
・キスラー
・ピーター・マイケル
・コングスガード
・オーベール
・マーカッサン
このうち、マーカッサンを除いた4生産者の2011年ヴィンテージを飲み比べるというのが会の趣旨だ。この会には以前にもお邪魔しており、その際はキスラー、ピーター・マイケル、オーベールの2004ヴィンテージのシャルドネをいただいている。そのため、今回はコングスガードが初体験。うーん、楽しみ。
この日いただいたシャルドネは全部で8種類。そのすごい内訳は以下のようなものだ。
ウィリアムズ・セリエム ロシアンリバーヴァレー ドレークエステートヴィンヤード
ポール・ラトー サンタルチアハイランド ピゾーニヴィンヤード “イースト・オブ・エデン”
キスラー カーネロス ハドソンヴィンヤード
キスラー カーネロス ハイドヴィンヤード
コングスガード シャルドネ ナパヴァレー
ピーター・マイケルナイツヴァレー ベル・コート
オーベール ソノマコーストUV-SLヴィンヤード
※すべて品種はシャルドネで2011ヴィンテージ
おい、舌! 今日は特別だからな! と己の舌によくよく言って聞かせておく必要があるレベル。明日からまたコンビニとかで売ってる感じのワインだからなっ。
というわけでカリフォルニアの最高峰シャルドネの世界に飛び込んでいこう。今回も驚きの味覚体験が待っていた。
【1杯目】ウィリアムズ・セリエム シャルドネ ロシアンリバーヴァレー ドレークエステートヴィンヤード2011
さて、まず1杯目はウィリアムズ・セリエム シャルドネ ロシアンリバーヴァレー ドレークエステートヴィンヤード2011をいただいた。
ウィリアムズ・セリエムは1970年代にウィリアムズさんとセリエムさんというふたりのワイン好きが作りすぎたブドウを農家からタダでもらって自分たち用のワインをガレージで造りはじめたという純度100%の趣味からスタートしたにも関わらず、その後カリフォルニアを代表するカルトワインのひとつになっていったというアメリカンドリームな感じの造り手。
「ピノ・ノワールで有名な生産者ですが、ロバート・パーカーは昔からシャルドネを評価していました」と主催のMさん。飲んでみると「これがシャルドネ!?」というほどの酸味。色は熟成したシャルドネらしい琥珀みたいな色なのに味わいはブラインドだったらシャルドネって回答しないと思うサッパリ具合。
Mさんいわく、「ウィリアムズ・セイレムのシャルドネは本来は黄金糖のような砂糖系の甘さが特徴」とのことで、今日いただいた2011ヴィンテージは造り手の特徴が出ているわけではないとのことだったが私は酸味の星からやってきた酸味星人。事前情報がゼロだったこともプラスに作用し、とてもおいしく飲むことができたやったぜ。
カリフォルニアのいいシャルドネというと飲む黄金みたいなゴージャスな味わいを想像するが、これは樽詰め岩清水、みたいな淡いおいしさ。そしてこのワイン、時間経過とともにどんどん味わいのふくよかさが増していった。1杯目からおいしすぎるんだよなあ。
【2杯目】ポール・ラトー シャルドネ サンタルチアハイランド ピゾーニヴィンヤード “イースト・オブ・エデン”
続いて2杯目はポール・ラトー シャルドネ サンタルチアハイランド ピゾーニヴィンヤード “イースト・オブ・エデン”というカッコいい名前のワインをいただいた。
ポール・ラトーはポーランド出身。カナダでソムリエをしていたが、オー・ボン・クリマの故ジム・クレンデネン氏のシャルドネに憧れてワイン造りを志したという人物。
畑は私でも知ってる有名畑・ピゾーニヴィンヤードで、飲んでみるとこれもため息が出るほどおいしい。原材料にブドウだけじゃなくて宝石かなんか入れた? という明るく輝くような色と味わい。熟成した複雑さと、昨日搾りましたみたいなフレッシュさが同居しているような印象を受けた。
ポール・レトーの公式サイトを見るとワイン造りにおいてなるべくブドウに介入しないことを志向しているのだそうで、実際にすごくキレイな仕上がり。これもくっきりとした酸があり、大好きな味だ。
ピゾーニが位置するサンタルチアハイランズは海からの風によって谷の入り口は涼しく、谷の奥は暖かいという土地なのだそうで、スマホでサンタルチアハイランズの有名畑の位置を確認し「ピゾーニは谷の奥側かつ斜面側なんですね」なんて言いながら飲むの楽しすぎる。
「2011年は寒くて雨もよく降った年。カベルネ・ソーヴィニヨンには厳しい年だったようですが、シャルドネはあまり影響がなかったようです」とMさんはおっしゃっていたが、開幕からキレイでハッキリとした酸味があるシャルドネが2連発となり「これはヴィンテージの影響もあるかも」「涼しい印象を受けますね」といった声が参加者の方々から挙がっていた。
ヴィンテージごとに同一生産者のワインを飲み比べ、ヴィンテージ差や生産者の造りの変遷などを検証しているというこの会は長い歴史を誇り、その堆積した時間の厚み・深みが参加者の方々の言葉の端々から感じられる。
そんななか私はといえば「うまいっす」「おいしいっす」「やばいっす」とかしか発語しないポンコツAIロボみたいになっており、思い返すと私はあの場にいてよかったのだろうかと不安になってくるのだが気にせず続けようそうしよう。次はいよいよキスラーだし。
【3、4杯目】キスラー シャルドネ カーネロス ハドソンヴィンヤード2011&ハイドヴィンヤード2011
3杯目と4杯目は“カリフォルニアシャルドネの王”キスラーの「シャルドネ カーネロス ハドソンヴィンヤード2011」と「シャルドネ カーネロス ハイドヴィンヤード2011」で、ほぼ同時に供された。
ハドソンとハイド、ナパとソノマにまたがるAVA・カーネロスに位置するふたつの畑の飲み比べ。さらにこのあと出てくるコングスガードはハドソンとハイドのブレンドだそう。ふだんはチリワインの谷違いとかを飲み比べている私がカリフォルニアの畑違いの飲み比べをすることになるとは……。
「一般的にはハドソンのほうが厚みがあると言われますが、ヴィンテージによっては逆だったりもして、このふたつの畑の特徴はつかみきれていないんです」とMさん。
地図で見てもこのふたつの畑はそう離れていないのだが、ハドソンは火山性土壌と牡蠣殻などの海洋堆積物が混合した土壌、ハイドは海洋性砂質ロームと土壌の違いがあるみたい。「アントニオ・ガローニはハドソンのほうにヨード感があると書いています」(Mさん)とのことだ。
運ばれてきた瞬間「キスラーにしてはいい色!」と盛り上がるみなさん。なんでも、キスラーは熟成すると色が濃くなりがちなのだそうだがこの日の2キュヴェはどちらも琥珀系ではなく銀色がかった輝くような透明なゴールド。
でもって両方を飲ませていただいたのだがハドソンのほうは香りがすさまじい。なんの香りかと問われたならば「いい香り」としか言えない香りだ。本当にいい香りを前に言葉は無力だ。強いていえばえも言われぬ香り、略してエモい香りです。
しかし黄金の香りを発するハドソンを前にして、私の好みはハイドのほう。こちらは正しく飲む黄金で飲んだ瞬間クリムトの「接吻」が脳裏に浮かんだ。
絵画自体が発光しているような黄金色の印象と、すごく豊かな果実の甘さと静けさを感じる酸味のシャープさが同居しているワインの印象が合致したんだと思う。ワインが瓶のなかで過ごした10年超の時間の経過を感じさせる複雑さもあってお口のなかが黄金郷である。
ハドソンとハイド、どちらが好みかは参加者の方それぞれ全然違って面白かった。ゴージャスで華やかな(Mさんいわくビッグ&ボールドな)カリフォルニアワインらしいシャルドネが好きな方はハドソン、酸味強めのブルゴーニュ的スタイルが好きな方はハイド、というふうに票が分かれた印象だ。
【5杯目】コングスガード シャルドネ ナパヴァレー2011
そして続いて出てきたのが「コングスガード シャルドネ ナパヴァレー2011」でこれまたすごいワインだった。今回飲んだ中でもっともビッグ&ボールドだったのがこれだったと言っていいのではかろうか。
ともかく果実の印象が豊かで、グラスのなかで宇宙がはじまっちゃうじゃないか、というビッグバン的味わい。『鬼滅の刃』遊郭編の主要キャラ・宇髄天元的な明るさのある弊ブログ用語でいうところのミッツィーな(蜜々しい)ワインだった。
コングスガードは元々はクラシック音楽家を目指していたジョン・コングスガードさんが創始。有名なトップキュヴェ、ザ・ジャッジはジョンさんのお父さんがナパの高等裁判所の判事だったことに由来するんだそうだ。
ザ・ジャッジに使われるのは自社畑のブドウだが、この日いただいたワインはハドソンとハイド、両ヴィンヤードのワインをブレンドしているという。メインはハドソンのほうで、なんでもハドソンヴィンヤードのハドソンさんとジョン・コングスガードはUCデーヴィス校の同級生なんだって。
いずれにせよ、前に飲んだキスラーのハドソンとハイドをブレンドしても絶対この味にはならないよね、という味なのが面白い。
野生酵母発酵、低温長時間マセラシオン、自発的マロ発酵、ノンフィルターでの瓶詰めなどが特徴なのだそうで、字面だけ見ると「自然派」という感じだが、このような造りでも味わいはド派手なんだからワインは多様性の塊だよなあ。
そして驚くべきことにここまでシャルドネだけを飲み続けているわけだが全然飽きない。むしろもっと飲みたい。料理もおいしいしいい夜だなあ。
ピーター・マイケル「シャルドネ ナイツヴァレー ベル・コート2011」
さて、そんな夜もクライマックスへと向かい、残るシャルドネはふたつ。次に登場したのはピーター・マイケル、専門用語でいうところのピーマイのナイツヴァレー ベル・コート2011。
ピーター・マイケルはロバート・パーカーがフランスのコンクールにこっそり持ち込み、目隠し試飲でロマネ・コンティやコント・ラフォンを破ったという生産者(この話、ピーマイもすごいがどちらかというとこの荒技をやってのけるパーカーがすごいと私は思う)。2杯目に飲んだポール・ラトーも創設期からパーカーが絶賛していたというし、カリフォルニアワインについて調べるとパーカーの凄さがよくわかるなあ。
さて、ナイツヴァレーはピーター・マイケルの自社畑のある本拠地で、標高は1700〜1800フィートというから600メートル弱とけっこう高地。木々によって午後の日差しから守られた地でゆっくりと熟成したブドウで造られたワインだそうだ。
これは冷えた状態でのおいしさがここまででもNO.1というくらい、バランスが良く、キレイでエレガントな味。うますぎる。
Mさんによれば、キスラーが00年代から10年代にかけてSO2の使用を減らし、新樽率を下げ、バトナージュを少なめにしてエレガントな造りに移行していったのに対し、ピーター・マイケルは同時期に濃い造りに移行していったのだという。00年代なかば前後を境に両者の味わいが逆転していく、そのスタイルの変遷を追うのがこのワイン会のテーマのひとつなのだというが、今回いただいたピーマイは「90年代に回帰したようなスタイル」と言えるそうだ。エレガント系ね。寒い年だからあえて濃くしなかったのか、あるいは濃くならなかったのか。もちろん私にはさっぱりわからないが、想像しながら飲むのは楽しい。
「2011年ヴィンテージは総じて細身で、いわゆるカリフォルニアのスタイルではありません。でも、そのぶんブルゴーニュ好きも楽しめるかも」とMさん。私は「◯◯好き」と言えるほど特定の地域のワインを飲んでいないが、ともかくカリフォルニアの2011ヴィンテージをここまでガッツリ楽しめているのはたしかだ。
オーベール シャルドネ ソノマコーストUV-SLヴィンヤード2011
さて、この日最後のシャルドネはオーベール シャルドネ ソノマコーストUV-SLヴィンヤード2011。UVはユリシーズ・ヴァルデスというヴィンヤードマネジャーの名前に、SLはストーツ・レーンという畑のなかの区画名に由来するそうだ。
オーベールのシャルドネは以前同じ会でいただいて2021年ベスト白ワインとなったワイン。前回あまりにも感動してしまったのでそれを上回ることはなかろうと思っていたのだが今回もやべえ。
Mさんいわく「ときにトゥーマッチなオーベールにしては細身で、やはり2011というヴィンテージのスタンプを押されている」とのことで、実際、昨年いただいた2004ヴィンテージの果実味常温核融合的印象は2011ヴィンテージには感じなかった。しかし、その分だけ酸味やエレガントさがあって、私的には甲乙がつけがたい印象。
あくまでも私個人の好みの問題だが、この日のベストはこのシャルドネ。それに次ぐのがキスラーのハイド、次いでコングスガードが好きだったが、人によって順番は全然違うと思う。どれも間違いなくすごいワインだったし、最後にMさんが「シャルドネだけだと飲み疲れるから」と出してくださった赤(ピーチーキャニオン インクレディブルレッド パソロブレス)もおいしかった。
2011年はカリフォルニアのオフヴィンテージ。シャルドネにも、本来のビッグ&ボールドなスタイルは現れていない。けれども、それがゆえにエレガントで酸も楽しめる、ユニークなヴィンテージとなっている……以上のようなところが、このワイン会の結論といっていいのかなと思う。
それにしてもすごいワイン会だ。ヴィンテージ・造り手・現実の時間の3軸でカリフォルニアワインの理解を進めるというのはちょっと途方もない試みだと思う。その一端を垣間見させていただいて、なんとも光栄だったのだった。またお邪魔させてくださいっ!
以下、同一ヴィンテージではないので参考までに。
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