ワリュボジョレガメイモルコシとクリュ・ボジョレーとガメイとモルゴン
コンビニで「ワリュボジョレガメイモルコシ」という謎のポップがつけられたワインを見つけたので買った。
気になってたワリュボジョレガメイモルコシ、コンビニの棚で寒そうに震えてたのでお迎えすることにしました。 pic.twitter.com/3kDzSk7osq
— ヒマワイン|ワインブロガー (@hima_wine) 2022年11月29日
正確には「クリュボジョレー ガメイ モルゴン」と言いたいはずのやつで、価格は1650円。ちなみに商品名は「フランソワ マルテノ オスピス・ド・ボージュ モルゴン」というもの。
ボジョレーには「ボジョレー」「ボジョレー・ヴィラージュ」「クリュ・ボジョレー(クリュ・デュ・ボジョレー)」と3つの格付けがあり、モルゴンはそのクリュ・ボジョレーのうちのひとつでたぶんムーラン・ナ・ヴァンとかサンタムールとかと並ぶ有名村。それが1650円は普通に安い。
上に挙げたのはボジョレーワイン公式サイトのスクショ。ボジョレーには12の地域があり、薄い緑が「ボジョレー」で見ての通りボジョレー地区の南に多く分布している。濃い緑がボジョレー・ヴィラージュ。残りの10個がクリュ・ボジョレーで、ボジョレーの北側に集中していることがわかる。オレンジで示されているモルゴンはその中央部に位置するボジョレー最大のクリュだ。
ボジョレーは地区全体で1万4500ヘクタールの畑があるが、驚くべきことに植えられている品種はわずか2種で、赤のガメイと白のシャルドネだけ。しかも97%がガメイという種田山頭火もビックリの分け入っても分け入ってもガメイ状態。ボジョレーの赤はすなわちガメイだし、ボジョレーのワインはそもそもほぼ=ガメイだ。
ワリュボジョレガメイモルコシに話は戻るのだが、このコンビニの発注者の方はワイン好きなのだと思う。なぜならばこの商品はすでに述べたように「フランソワ マルテノ オスピス・ド・ボージュ モルゴン」なのだ。つまり「ワリュ ボジョレ」も「ガメイ」も商品名にはない。
つまり、発注者の方の判断でこのワインはクリュボジョレー格付けであり品種はガメイであることをPOPに記したということになり、これは実にワイン好きムーブなのではないかと思うのだ。グッジョブ、セブンイレブンの方。完全に売れ残ってたけど。
オスピス・ド・ボーヌならぬ「オスピス・ド・ボージュ」とは?
次に気になってくるのが「オスピス・ド・ボージュ」のところだ。オスピス・ド・ボーヌじゃないんだ、となる。オスピス・ド・ボーヌといえばブルゴーニュの中心地であるボーヌに所在するワインのオークションで有名な元慈善病院。てっきりそれかと思いきや「ボーヌ」ならぬ「ボージュ」なわけです。オスピス違い。
himawine.hatenablog.comじゃあオスピス・ド・ボージュってなんだろうと生産者であるフランソワ・マルテノの公式サイトをチェックすると解説を見つけることができた。話はシンプルで、オスピス・ド・ボーヌの物語とほぼ同じ。設立は1240年。篤志家の寄付による慈善病院がブドウ畑を寄進され、やがてワインオークションを開催し、その収益を病院の運営費に充てるようになったのだそう。
そして現在フランソワ・マルテノはオスピス・ド・ボージュの独占パートナーになっているのだそうだ。ドメーヌ・オスピス・ド・ボージュのワインをネゴシアンであるフランソワ・マルテノが売ってる、みたいなことなのかな。
フランソワ・マルテノとGCFグループ
さらに調べてみると、フランソワ・マルテノは現在GCFグループの傘下に入っているようだ。GCFグループは本ブログにたびたび出てくるフランスの大手企業で、フランスの安ワインについて調べるとしばしば出てくる名前。
Googleマップで見る限り、ムルソーに所在するフランソワ・マルテノの本社もピカソのコレクションを中心とした現代美術を中心に展示する美術館、と言われれば「なるほど」と納得しそうな外観だ。「生産者が巨大企業である」は国、産地、品種を超越した安ワインをおいしくするもっとも重要なレシピ。自ずと期待が高まってくる。巨大企業、だーい好き。
フランソワ・マルテノ社はオスピス・ド・ボージュと独占契約をしており、そのワインはおそらくGCFグループの流通網によって世界中に運ばれている。クリュ・ボジョレーのワインがニッポンのコンビニで1650円で買える理由はこのあたりにあるのかもしれない。うーん、スッキリした。あとは飲むのみだ。
フランソワ マルテノ オスピス・ド・ボージュ モルゴンを飲んでみた
外観は明るいけど深みのあるガーネット。香りはけっこうあからさまにイチゴですねこれは。飲んでみるとまだちょっと青い野イチゴのような少しの青みと酸味と果実味。そこになんだろこれ。ピンクペッパーみたいなニュアンスとしての甘味を伴うスパイシーさみたいなのも感じる。
総じてこれはすごい! 2000円台後半の味わい! とかではないのだが価格なりにキチンとおいしく「1650円で買ったワインがこの味だったら納得だわ」という味。主力の怪我でスタメンとして出てるときのチームは弱いがベンチには欠かせない選手、みたいなサードの守備固め的味わい。
モルゴン、というと名前の力強さに引っ張られて味わいも力強い気がしてしまうが、味筋は甘渋スムース&エレガントで、マッシュルームを入れずにシメジ、しいたけ、まいたけを大量に投入したキノコまみれハヤシライスとめっちゃくちゃ合った。そういや液体にもほんのわずかにキノコ感があるかもしれない。果実味、渋み、酸味のどの要素も突出しない調和の妙という意味で、個人的にはブルゴーニュよりむしろボルドーを感じるワインのようにも思えた。
コンビニで1650円で買えるクリュボジョレーはどう考えても貴重。万が一見かけたらお手に取ってみてください。
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