ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

「日本ワイン会」でミエ・イケノを飲みながら“日本の国際品種”について考える

「プルール」主催の日本ワイン会に行ってきた

ワインショップ・プルール代表のYukariさんにお誘いいただいてワイン会に参加してきた。お店を貸し切って日本ワインの試飲会を開催、せっかく1日借りていることだし夜の時間はワイン会をしようという趣旨。

プルール主催のワイン会に参加してきました。

試飲会で残った日本ワインを飲み干しつつ、参加者持ち込みのワインも飲みつつ、みんなで持ち寄った食事と会話を大いに楽しむという楽しいに決まってるでしょこんなもん度2万%の会であり、確率が2万%なのでもちろん最高に楽しい会だった。

会の詳細は同席された安ワイン道場師範の稽古日誌に詳しいのでそちらを参照いただくとして、私は今回のワイン会を通じて深く印象に残ったことについて書きたい。

 

「プルール」主催・日本ワイン会のラインナップ

と、その前にこの日飲んだワインをまとめてみた。こんな感じだ。

レ・ヴァン・ヴィヴァン「シードルあお2021」
ブラインドA
ブラインドB
木谷ワイン「奈良ワインヌーボー2022」
ベルウッドヴィンヤード「コレクションスペリオール 2021 CH et SB」
カーブドッチ「ぺんぎん(ケルナー)2021」
ブラインドC
ココファームワイナリー「こことあるシリーズ ぴのろぜ2020」
ココファームワイナリー「こことあるシリーズ ピノ・ノワール2019」
ドメーヌ ミエ・イケノ「ミエイケノ八ヶ岳ピノ・ノワール2019」
ル・サンク ワイナリー「ピノ・ノワール2019」
レ・ヴァン・ヴィヴァン「デラ2021」
カーブドッチ「おうむ(ツヴァイゲルト)2021」
ドメーヌ ミエ・イケノ「ミエイケノ月香シャルドネ2019」

このうちブラインドA、Bは参加者のおひとり・ミケさんのお持ち込みで、ブラインドCと表記したワインはワインマーケットパーティ店長・沼田さんが持ち込まれたワイン。まずはこの3本のワインについて記していきたい。

 

ワイン会ならではのお楽しみ。ブラインドにみんなで挑戦

まずブラインドA&Bだ。「飲み比べたら面白いと思って」と持ち込まれたこちらのワイン、

・品種はともにシャルドネ

・片方は日本ワイン

・片方はスーパーで買うことができる

・両者の価格差はおそらく1000円程度

と、ガッツリ目のヒントをいただいてのブラインドとなった。銘柄まで当てにいこうみたいな雰囲気のなか私は以下のように予想した。

「AもBも樽が効いているがAのほうがよりたるたるしてるので意表をついてAが日本ワインと予想。スーパーで買える樽の効いたシャルドネはルイ・ジャドかシャブリかカリフォルニアくらいしか思いつかずカリフォルニアほどの樽具合ではなくシャブリほどの酸がないようが気がすることからBはルイ・ジャドのソンジュ・ド・バッカスと予想。ソンジュ・ド・バッカスはスーパーなら3500〜4000円くらいすると思うので同価格帯で樽の効いた日本のシャルドネで味わいにものすごい安定感があるからおそらくは大手ということでシャトー・メルシャン 椀子シャルドネ! いっけえええッッッ!」と予想したのだが外れた。カスリもしなかった。

正解は
A ルイ・ジャド ムルソー 2017
B 熊本ワイン 菊鹿シャルドネ樽熟成 2019

正確にいえばルイ・ジャドだけ一応なんとなくカスってる風なのが逆に残念な惨敗具合。ちなみに同じブラインドに挑んだ安ワイン道場師範はBではなくAを「熊本ワイン 菊鹿シャルドネ樽熟成 2019」と予想。造り手・キュヴェ・ヴィンテージまで言い当てておきながらAとBの2択でミスるという脅威の惜し具合を発揮、この絶妙なもどかしさを出題者のミケさんが「オフサイドですね」と表現しておられて至言だと感じた。幻のゴール感すごかった。

さて、続いてはブラインドCで、恵比寿の名店・ワインマーケットパーティ店長の沼田さんのお持ち込みだ。ほんの少し濁ったような少し自然派感のある外観。こちらはほぼノーヒントでのブラインドとなった。

私は以下のように予想した。

「普通にめちゃくちゃおいしい自然派ピノ・ノワール。酸が強いのでニュージーランドと予想。なんだけど沼田さんの遊びゴコロ的にピノ・ノワールかと思いきや実は違う品種でしたみたいなサプライズを用意している可能性は高く、ゆえに正解はピノ・ノワールと似たなにかと予想。ピノ・ノワールと誤認する品種はいろいろありそうだけど……品種は(なんとなく)サンソー! そして産地は(なんとなく)南アフリカっ! これで決まりだあああああッッ 」と予想したのだが外れた。カスリもしなかった。

正解はなんと中国のピノ・ノワール。「ピノ・ノワールかと思いきや違う」っていうサプライズではなく「原産国がサプライズ」だった。もとより当てられる確率は0%だったが無念だ。

ブラインドの中身が判明し、今回飲んだ14本の品種内訳は以下のようになった。
シードル 1
ケルナー 1
シャルドネ/ソーヴィニヨンブラン1
ツヴァイゲルト 1
デラウェア 2
シャルドネ 3
ピノ・ノワール 5

日本ワイン中心のワイン会ながら、ピノ・ノワールシャルドネ過半数を占めて14本中11本が国際品種。振り返ってみるとその点すごく興味深い会だったのだった。

 

中国ワイン「シルヴァー・ハイツ Jiayuan ピノ・ノワール 2020」の衝撃

沼田さんが持ち込まれた中国ワインは「シルヴァー・ハイツ Jiayuan ピノ・ノワール 2020」というもの。すごくおいしいピノ・ノワールで、沼田さんいわく「あるソムリエの方に飲んでもらったら、『タカヒコ?』と言っていた」というのも納得の味わい。出汁感・梅感を伴う甘酸っぱさがあって非常においしいワインだったのだったサンソーと予想した奴がなにを言っているんだテメーと思われるかもしれないけれど。

これほんとにおいしかった

公式サイトで確認するとビオディナミで栽培、野生酵母で発酵させているようで、全体的に「きれいな自然派」という印象。いただいた2019ヴィンテージはジェームズ・サックリング93点、ジャンシス・ロビンソン16.5+と高得点も獲得しているみたい。わかる。

沼田さんがこの中国ワインを持ち込まれた意図はシンプルで、「日本じゃないけど、アジアワインということで」ということだった。ドメーヌ・タカヒコの名前が出たときに一同「たしかに〜」みたいになったのだが、日本ワインと一脈通ずる感はたしかにあったように思う。

 

中国のピノ・ノワールと日本のピノ・ノワール

この衝撃的な中国ワインを迎え討つカタチとなったのが日本のピノ・ノワールたち。結果的に日中ピノ・ノワール比較試飲みたいになったのが非常に面白かったのだった。

雰囲気的に近い感じだったのが北海道で造るココファームの「こことあるシリーズ ぴのろぜ2020」と「こことあるシリーズ ピノ・ノワール2019」の2本。ともに北海道余市町登町の木村農園のブドウを使用し、10R(トアール)ワイナリーのブルース・ガットラヴさんが醸造するというワイン。木村農園はかつてドメーヌ・タカヒコにもブドウを提供していた余市の有名農園で、それもあってか前述の中国ワインとなんとなくの共通点を感じたような気がする。

ぴのろぜ。前ヴィンテージも飲んでいるがこれは本当にいい。

じゃあその共通点って味わいにおいてはなんだろうとなるのだが、それはピアノの鍵盤の右端のほうをポンと押し下げたときに出る音のようなハイトーンな酸にある気がする。どれも酸味の外殻がしっかりとあり、そのなかに果実味だったり旨みだったりが封じ込められている印象だ。

とくに「ぴのろぜ」は3月の初めの春の野原みたいな温度感の控えめな甘さをビシッとした酸が引き締めてひたすらスムーズ。飲むというより勝手に入ってくる、みたいな感覚に陥る味わい。

全体的に感じる自然派っぽい感じも含めてシルバー・ハイツの雰囲気に似ているような気がしたのだった。もうひとつのロゼじゃないピノ・ノワールのほうも酸味のなかに果実味と旨みが滲んでおいしく、両キュヴェともに北海道のピノ・ノワールの理想形のひとつという気がする。

そして、長野県のミエ・イケノのピノ・ノワールは北海道的な方向性とは異なる王道的な(どちらかといえば)ブルゴーニュ方面を向いたような味わい。酸味主体の味わいではなく渋みと果実味が阿形(あぎょう)・吽形(うんぎょう)金剛力士像的にワインという名の山門を支えるビシッとした構造感があっておいしい。金剛力士像(作画:大島弓子)みたいなイメージだ。どんなイメージなんだよ。

ミエ・イケノ。人気なだけあるおいしさ

一方、新潟県のル・サンク ワイナリーのピノ・ノワールはより日本ワインらしいというか、どこかマスカット・ベーリーAを思わせるかわいらしい香りがあり、ストレートな酸味が魅力の味わい。赤ワインなのにタコの酢の物とか合わせられそう。

といったように、この4本のピノ・ノワールは日本のピノ・ノワールの多様性みたいなのを感じられてすごく面白いなと感じたのだった。僕らが暮らすアジアには、ピノ・ノワールの沃野が広がっている。ような気がする。

 

ミエ・イケノと日本のシャルドネ

この日はシャルドネ単一のワインも2種いただいた。ひとつはすでに記したミケさん持ち込みの「菊鹿シャルドネ樽熟成2019」であり、もうひとつはミエ・イケノの「月香シャルドネ2019」。

月香シャルドネ。さっぱりとクリーミーが両立したような不思議な味わい。

どちらも王道感のある味わいでおいしく、日本でも国際品種から世界基準のワインが造れる証拠感があってこれまた興味深かったのだった。価格がそれなりに高かったり、入手難度が高かったりといったこともあるんだろうけれども。

これまで日本ワインはなんだかんだラブルスカ種だったり甲州とかマスカット・ベーリーAといった日本固有感のある品種を選んだほうが無難みたいに正直思っていたのだが、その認識を改めねばならないと感じられたことがなんだかすごく良かったのだった。国際品種は日本の気候風土に必ずしも合うわけではないかもしれないが、生産者の方々の努力によって国際品種の日本の気候風土への最適化は着実に進んでる気がした。

というわけで、「日本における国際品種」についてつらつら考えつつ、みなさんが持ち込まれたおいしい料理を楽しみつつ(しろさんが持ち込まれたクスクスが異様においしかったことを記しておきたい。武蔵小山のTokyo-Souriumというお店のクスクスだそうで、クスクス観が根底から覆される逸品だった)飲んだワインはどれもとてもおいしかったのだった。カーブ・ドッチの「おうむ」もおいしかったし、そもそもジャドのムルソーってこんなにおいしいんだ、とも思った。

お招きいただいたプルールご夫妻、ワインを持ち込んでくれたミケさんと沼田さん、そしてご参加のみなさん、楽しい時間をありがとうございました。また飲みましょう!

 

Amazonブラックフライデーセールで買ったやつ↓