ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

「ニッポンのいいお酒。第13回 甲信越ワイン」で31種類のワインを試飲。なにがおいしかった!?

「ニッポンのいいお酒。第13回 甲信越ワイン」とは

東急プラザ渋谷で開催中の「ニッポンのいいお酒。第13回 甲信越ワイン」に参加してきた。甲信越のワインを中心としたお酒が200種類ほど集められ、そのうち50〜60種を試飲できるという凄まじいイベントだ。

過去に長野編にも参加しています↓

himawine.hatenablog.comこのイベントが最高なのは、「60分試飲し放題」というプランが用意されていること。さらに、2000円、3000円、3500円、4000円と4つの料金プランに分けられており、飲めるワインが異なってくる。もちろんワイン好きとしては4000円コース一択だ。

 

「ニッポンのいいお酒。第13回 甲信越ワイン」で31種類を試飲した

前回は18種類を飲んだが、今回はまさしく飲むわんこ蕎麦状態で、31種類ものワインを試飲させてもらった。それらすべてを振り返り、厳選of厳選してBEST3を発表していきたい。なお、試飲できるワインは訪問のタイミングによって異なる。以下に挙げるワインが必ず試飲できるわけではないことにご留意いただきたい。

で、結局なにがうまかったの? っていうところだけ知りたい方は、一番下のほうまでスクロールしていただければ幸甚だ。以下の目次の「BEST3発表」のところをクリックしていただくのがオススメです。それではさっそくいってみよう。

 

シャトージュン ジュン スパークリング ロゼ

アパレルメーカーのジュンが山梨県勝沼市で運営するシャトージュン。これはデラウェアをベースにマスカット・ベーリーAをブレンドしたという甘口ロゼ泡で、甘口ながらベタベタした感じはなく、よく冷やして夏の昼間に飲んだら最高だろうなという味だった。

 

シャトー勝沼 スパークリング巨峰

巨峰のロゼ泡だが甘ったるい感じはなく、セミドライくらいの感じだろうか。スッキリした味わいにほのかに生食用のブドウを皮からちゅるんと食べたときのような香りがして、おいしい泡だった。

 

ドメーヌ・ショオ Why don't you go to beach?/ ビーチ行かない?

新潟ワインコーストの一角、ドメーヌ・ショオが早摘みデラウェア=青デラで仕込むという「すっぱさがウリ」のワイン。私はすっぱいワインが大好きだがここまですっぱいワインを飲んだのははじめてってくらいすっぱい。ガチのマジでレモン味。

話のタネにも一度は飲んでいただきたい、というレモン。じゃなかったワイン。

 

モンデ酒造 甲州

つづいて缶ワインのイメージが強い山梨県のモンデ酒造の甲州。同社の缶スパークリングはセブンイレブンの缶ワイン売り場で何度手にとったか数えることもできないが、ボトルに入れられたスティルワインを飲むのは考えてみるとはじめてだ。ツイッターでいつもやりとりしてるけど会うのは初めての人、みたいな雰囲気。

ワイン造りのたしかな実力を感じる超オーソドックスうま甲州でした。

 

シャトー・ジュン 甲州2021

これも非常にオーソドックスな甲州。2021年は雨が多く難しい年だったとスタッフの方が教えてくれたが、それでもしっかりとおいしいワインに仕上げられていた。

 

白百合醸造 ロリアン勝沼甲州2019

デキャンター誌でプラチナ&97点を獲得したことが大きなニュースとなり、市場からすぐに姿を消したロリアン勝沼甲州2019。スタッフの方がセラーで保存していたものを「自分も飲みたいから」と供出してくれた。え、マジすかありがたすぎる。

熟成も経て、濃密で妖艶な甲州離れした味わい。なんというかのヴィニフェラ感があり、つまりロリアン(L'ORIENT)なのにどこかヨーロッパ感があって、海外でウケるのもわかるかも、という味がした。

 

越後ワイン ケルナー<白>2022

新潟の豪雪地帯・南魚沼市産のケルナーを使ったというワイン。カーブドッチを中心とする新潟ワインコーストとはやっぱり気候条件がちょっと違うんだろうな、これは、という冷涼ケルナー味ですごくよかった。

香りはアロマティック。雑味は少なく、よいケルナー。ケルナーは北海道がうまいと思うけど、これも負けてない。

 

とちお農園 T 100K

そしてさらに驚いたのがこちら。「とちお農園」が越後ワインに委託醸造して造ったというワインだが、たとえるならばこれはケルナー純米吟醸まるで水を飲んでいるように引っかかりのないただただ良い香りのする液、という感じ。単一畑、ならぬとちお農園の「単一農地」でとれたブドウが原料だそうだ。単一農地、いい言葉すぎるんだよなあ。

とちお農園はなんでも醸造免許を最近取得し、今後自家醸造へと切り替えていくようだ。「注目の生産者です」と教えてもらったが、はなはだ同意だ。みなさん、とちお農園を覚えておきましょう。

 

越後ワイン セーベル<白>2022

自分では選ばない品種のひとつ、セイベル。こういうところで試飲させてもらえるのは大変ありがたい。

これもとてもいいワインで、前2種類と同じように引っかかりがなく、スルスル喉を通ってくれるスムーズな液体。香りのアロマティック感がケルナーに比べると弱めのため、さらに食事に合わせやすそうな印象。

 

越後ワイン 雪季 セッキ<白>

こちらはシャルドネとセイベルのブレンドシャルドネが入っても印象は大きく変わらず、香り良く、雑味ないアルプスの雪解け水的味わい。個人的にはケルナー単独、セイベル単独のほうが好きだった。

 

安曇野ワイナリー 安曇野ソーヴィニヨン・ブラン 2022

シャルドネに行く前にソーヴィニヨン・ブランいっておきましょう」と注いでもらったのがこのワインだがこれは素晴らしいワインだった。ブラインドで飲んだら長野のソーヴィニヨン・ブランとは答えられないと思う、グローバル感あふれる味わい。

標高700メートルの高いところで採れたブドウでつくっているのだそうで、非常に香りが良く、一方で味わいには草っぽさがなくて適度な厚みがある。いや驚いた。そもそも片手で数えるほどしか飲んでないので参考記録だが日本のソーヴィニヨン・ブランでベストかもと思った。

 

リュードヴァン ソーヴィニヨン・ブラン2022

同じ長野のソーヴィニヨン・ブランでこうも違うかという個性があったのがリュードヴァンのソーヴィニヨン・ブラン。うまみたっぷり、すっぱみもたっぷり、というワインで、好き嫌いがはっきり分かれそうな印象を受けた。

 

岩の原葡萄園 深雪花(白)

続いては再び新潟に戻り、日本ワインぶどうの父こと川上善兵衛が開いた岩の原葡萄園の白。品種はシャルドネと「ローズ・シオター」のブレンド

ローズ・シオターは「ベーリー♀」×「シャスラー・シオター♂」の交雑によって1927年に生まれた品種で、「ふくよかで飲みごたえのあるタイプの白ワイン」になるとあるが飲んでみるとなるほどふくよか。

経営はサントリーとのことで、さすが大手という安定感のある味だった。日本ワイン売り場でどれを買えばいいかわからない場合にこれを選んでおけば間違いない、という味がした。

 

カーブドッチ シャルドネ・ノンバリック2022

新潟ワインコーストの中心的存在といえばカーブドッチ。ノンバリックとあるだけに、すごくすっきりとしたシャルドネだった。

 

イルフェボー SARASモンターニュ シャルドネ2021

今回飲んだなかでもっともコントロバーシャル(議論を呼ぶ)なワインだと感じたのが長野県千曲市のイルフェボーがつくるこのワイン。バニラ感・樽感を個人的には今回飲んだなかでもっとも強く感じるシャルドネでした。

 

フェルミエ ホンダヴィンヤーズアンドワイナリー 田園 新潟シャルドネ 2022

過去に飲んだワインがどれもおいしくて好印象の新潟のフェルミエ。これはフレンチーク樽で熟成したシャルドネ

とはいえ味わいは樽熟成のわりにはスッキリしていて、いかにも日本のシャルドネという印象を受けた。

 

サントネージュ 山梨牧丘倉科畑 シャルドネ 2019

今回飲んだシャルドネのなかでベストだったのがこれ。これまたスタッフの方がセラーに入れていたのをもってきてくださったという一品なのだがこれ今度からキャッシュオンにしてくださいねマジで。

シャブリのいいやつ(樽熟成)といった印象で、日本ワインだからどうこうを抜きにしておいしいワインで、定価の4400円も妥当と感じられるワインだった。これはすげえ。

 

ルサンクワイナリー デラウェア2019

続いては新潟ワインコースト5番目のワイナリーなので「ル・サンク(フランス語の5)」と名付けられたルサンクワイナリーのデラ。

デラウェラらしい甘やかな香りはもちろん、味わいにもすごく素直にデラウェアの果実の味がするワインだった。

 

いにしぇの里葡萄酒 「シンア」樽熟ナイアガラ 2021

ナイアガラを樽塾させたというワインで、これもコントロバーシャルかと思われる。香りはわりと普通にナイアガラなのだが、味わいにはかなり強烈な樽の風味がついていた。

 

ドメーヌ・Q 甲州 黄金色2022

白ワインをたくさん飲ませていただいて、ここからはオレンジゾーンに突入していく。まずはドメーヌ・Qの甲州。「黄金色」という名前の通りのキレイな色合いで、ラベルの雰囲気もよい。

味わいは色のわりにはスッキリとした感じでした。

 

楠ワイナリー デラウェア オレンジ2022

楠ワイナリーはハズレがない印象があるが、これも非常によくできたデラウェアだと思った。

調べてみるとこのワイン、売値は1000円台のようだえらいっ! すごく飲みやすく、色良し香り良しというワインだがこれで3000円すると購入には少しハードルが高い。1000円台の気楽に買える価格でこの品質は大変ありがたいと感じた。

 

旭酒造 ソレイユ甲州2021

オレンジゾーンに突入したはずが一歩戻って飲んだ山梨県のこのワインに私はけっこうガチでビビった。あれ、これライフタイムベスト甲州じゃね……?

ホールバンチでやさしく絞り、タンクでシュールリー。ノンフィルターで詰めたというワインなのだが果実味、酸味に「うまみ」が加わってこれは他のブドウ品種ではなかなかない甲州ならではのおいしさ。日本で甲州ワインを購入して飲む理由はなんだろうという問いに対する答えのようなワインだと感じた。定価1980円は素晴らしいの一言。

 

ユイットヴィンヤード 甲州 黒駒

これは! というワインのあとに飲むワインは印象が弱まりがちだがこのワインはしっかりと印象が残るおいしい甲州だった。

初耳だったのだが、「JAふえふき」が運営するニュー山梨ワイン醸造株式会社のブランドなのだそうだ。農協がつくるワインだけにブドウの品質はお墨付き。やっぱりフルーツそのものの良さがワインの品質を決めるよな、と思える質の高い味。

 

シャトージュン ジャパンセレクト・巨峰ピオーネ

巨峰とピオーネという生食用ブドウを使いながらも味わいはドライ。普通においしく飲めるワインだった。1650円という価格からも、気楽に飲めそう。

 

ルサンクワイナリー ロゼ

ルサンクのロゼは公式サイトには情報が出ていないのだが、セイベルとマスカット・ベーリーAのワインになった状態のものを混ぜたロゼなのだそう。

それを聞いてから飲んだからなのだろうが、まさしく「白ワインと赤ワインを混ぜた味」がした。これもクセ強め。

 

錦城葡萄酒 錦ーにしきー赤 2022

ここでオレンジ・ロゼゾーンを抜けて赤ゾーンに突入していく。最初に飲んだ山梨県甲州市の錦城葡萄酒の「錦」はマスカット・ベーリーAそのものの味、という印象。

 

塩山洋酒醸造 Japanese Blend 2021

続いては9か月熟成させたブラッククィーンとベリーアリカントにマスカットベーリーAをブレンドしたというワイン。ボルドーの赤、カリフォルニアレッドブレンドならぬ、これぞ日本の赤ブレンドという味わい。

これはかなり面白いワインだった。飲んだ印象はまさしくニッポンの赤ワインで、凝縮度がさほど高くない、ボトルの裏に「ミディアムボディ」って書いてある感じなのだが品種のブレンドの妙なのだろうか、樽のニュアンスも加わって複雑で複層的な味わいがある。

数年寝かせて飲んだらどうなるんだろう? みたいなことまで考えさせる奥行きを感じた。非常に面白いワイン。

 

ケアフィットファームワイナリー Ruby2021 〜 ルビー 2021 〜

旭酒造のソレイユ 甲州甲州過去イチだとすれば、これはマスカット・ベーリーAの過去BEST5に入りそうなワインだった。

品種特有のキャンディ香は無理やりマスクするわけではないけれども程よく抑えられ、それでいて味わいはものすごくピュア。果実がぴっちぴち。

ケアフィットファームワイナリーは障がい者の就労支援などを行う公益財団法人 日本ケアフィット共育機構が運営するワイナリーで、栽培から瓶詰めまで障害のある方と行う「農福連携」で造られている。

このワインもSO2無添加、無濾過、野生酵母発酵というゴリゴリのナチュラル。なのだが、ネガティブな香りはなく、味わいはクリーン。価格も2750円と3000円を切ってくるしすごくいいと思った。

 

VIN VIE(ヴァンヴィ) VinVieルージュ 山葡萄 2021

続いてはヤマブドウで造ったワインなのだが、私は大変申し訳ないことにヤマブドウに苦手意識があるんです……。普通においしいワインだと思うのだが、ヤマブドウにえぐみを伴う苦味みたいなものを私はどうしても感じてしまう……無念。経験を積んでおいしく飲めるようになって出直してきます。

 

坂城葡萄酒醸造 猫なで声2021

続いてはスタッフの方々から「ねこなで」と呼ばれていた「猫なで声」だがこれも素晴らしいワインだった。

標高550、710、480メートルの高標高の畑で採れたメルローを60%を樽、40%をステンレスタンクで7か月熟成させたワイン。メルローwikiには「芳醇でまろやかな味わい」と書かれていて、世の中でもそういうふうに解説されているのをよく見る。

なのだが、少し涼しい地域で栽培されたメルローは甘ずっぱ系にもなることを私は知っている。そしてそういった甘ずっぱメルローが私は大好きで、このワインはまさにディスイズイット。やはり長野のメルローはうまい。

甘ずっぱメルロー好きにオススメしたいワインだった。

 

ルミエール シャトールミエール赤2015

メルロー、タナ、カベルネ・ソーヴィニヨンを樽で15か月熟成させたという気合の入ったワイン。

このセパージュだとガツンと濃く、重いワインに違いないと思うわけだがアルコール度数12%とことのほか軽く飲める。このプロフィールでありながら軽やかなのが、日本ワインの個性なんだと思う。

 

BEST3発表!

というわけで、好みのものも、そうでないものもあったのだが、どれも個性あふれる31種類は日本ワインの多様性をまざまざと示すものだった。とくに新潟(の山側)はわりと明確に冷涼産地なんだなーと感じたのが発見だった。

さて、では最後にBEST3を発表していこう。

まず第3位はケアフィットファームワイナリーの「Ruby2021 〜 ルビー 2021 〜」。全体ベスト3というよりも、赤ワインのベストという観点から選んだ。風土にフィットして収量の高いマスカット・ベーリーAの可能性みたいなことをどうやら日本中の生産者が模索していて、これから品質はさらに上がっていくようだが、このナチュラMBAもひとつの方向性を示している感じがした。

第2位は旭酒造のソレイユ甲州2019。デイリー価格帯の甲州のひとつの到達点なんじゃないかという味わいで、甲州はなかなか「これだ」というものに出会えていなかったが、今後これが私のなかでひとつのベンチマークになっていくと思う。

そして今回のベストはサントネージュ 山梨牧丘倉科畑 シャルドネ 2019だった。普通に本当においしいシャルドネで、これは熊本ワインの菊鹿シャルドネとか、ドメーヌ・ミエ・イケノのシャルドネとかと飲み比べてみたい。日本にもおいしいシャルドネはあるのですなあ。

なお、次点として「とちお農園 T 100K」「安曇野ワイナリー 安曇野ソーヴィニヨン・ブラン 2022」「坂城葡萄酒醸造 猫なで声2021」を挙げておきたい。どれも素晴らしかったなあ。

 

いやはや、今回も素晴らしい体験だった。さんざん飲んでワインを2本買って、今回も大満足。次回の開催も楽しみにしたい。