ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

「パンパネオ テンプラニーリョ ナチュラル」について調べたことと味の感想まとめ。【PAMPANEO TEMPRANILLO NATURAL】

「干上がらない川はない」ラ ・マンチャという土地

先日、インポーター・ラシーヌの試飲会で飲んでおいしかったスペインはラ・マンチャの生産者、エセンシア・ルラルのワイン「パンパネオ」を改めて自宅で飲んだ。

エセンシアはスペイン語で「本質」。ルラルは「農村」なんだそうだ。「本質農村」。「塚田農場」みたい。あとちょっと「島崎藤村」感もあるな字面的に。すみませんワインの話をします。

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エセンシオ・ルラル「パンパネオ テンプラニーリョ エコ」を飲みました。

さて、ラ・マンチャは「干上がらない川はない」と言われるほどの乾燥地帯なのだそうだ。調べてみると、ラ・マンチャの年間降水量は300-400mm。年間の日照時間は3000hほどもあるのだという。

気象庁によれば東京の年間降水量は1528.8mm、年間日照時間は1876.7h。東京だってそこまで雨ばかりという印象があるわけではないが、ラ ・マンチャと比べれば年間降水量は5倍近くあり、日照時間は半分近くまで短いことになる。

なんなら最近だと「明日朝までの予想雨量が300mmなので厳重にご注意を」みたいなニュースをよく見るから、下手すると日本の1日の降水量くらいしか年間を通して雨が降らないことになる。

そりゃあ乾くわラ ・マンチャの大地。Google マップで航空写真を見ると全体に茶色っぽく見えて、乾燥具合が目視できる。

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エセンシア・ルラルのあるケロ村周辺の航空写真(Google Mapのキャプチャ)。乾燥してる感じする。

 

ラ ・マンチャの生産者エセンシア・ルラルとは

乾燥しているラ ・マンチャだが、ワイン用ブドウの栽培には向いているようで、かつては灌漑を行うことで地元消費用ブレンドワインに使うブドウが大量に生産されていた。

エセンシア・ルラルもそのようなブレンドワイン用ブドウを大規模に生産していたが、2002年に高品質な輸出用ワインをつくることを決意、現在は灌漑を行わず、ビオディナミ農法に切り替え、なるべく自然に近い状態でのブドウ栽培とワイン造りに切り替えているのだそうだ。

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すると、もともとが痩せた土地であるため自然と面積あたりの収量が下がって良質なブドウがとれるようになるんだそうだ。それでいて畑自体は40ヘクタールもあるからスケールメリットで価格は安い。これ強いパターンだな。ワイン造りで規模は力であります。

しかも、この地でのワイン造りの歴史自体は非常に古いため、植えてあるアイレンやテンプラニーリョのなかには樹齢が100年を超えてるものもあるのだとか。強〜!

標高が高く、台地になっているこの土地には地平線の彼方までブドウ畑が広がり、耕作放棄地やらワイナリーの遺跡みたいのも散在しているらしく、初期投資少なめでワイン事業ができるってんで「大企業型ワイナリーの関心の的になっている」と輸入元の説明にはある。

川も干上がる土地にあるワイナリーの遺跡ってなんだかすごくロマンチックだなー。もし自分がハリウッド映画のプロデュースをすることになったら、『マッドマックス 怒りのデスロード』の世界観でイモータン・ジョーがワイン造りの跡取り問題で苦労するみたいな映画をつくる。ロケ地はラ・マンチャで。

 

「パンパネオ テンプラニーリョ ナチュラル」を飲んでみた

さて、今回飲んだ「パンパネオ」にはブドウの葉が風に揺れる様子、みたいな意味があるらしく、ラベルに描かれたフランメンコダンサーの複雑なドレープが絡み合うように見えるスカートがブドウの葉になっていて洒落てる。

このワインにはナチュラルとエコ、ふたつのシリーズがあり、前者はノンフィルター、酸化防止剤無添加だそうだが今回飲んだのは前者だ。品種はテンプラリーニョ100%。購入価格は1620円税別だ。

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で、飲んでみるとこれがやっぱり試飲会での印象そのままにめちゃおいしい。

まず香りはイチゴとかラズベリーとか梅とかアセロラとかのチーム・甘ずっぱのみなさん。

で、飲んでみるとイチゴとかラズベリーとか梅とかアセロラの味がするんですよそのまんま。香りと味の印象がほぼイコールなの珍しいな。とにかく甘ずっぱくてゴクゴク飲める。黙って出されて品種を当てろと言われたら悩んだ末に「……ガメイ?」とか言いそう。ラ ・マンチャばりに暑い日なら氷入れたり炭酸で割ったりしちゃっても良さそうな気がする。

つい先日飲んだ同じスペインワインの「Psi(プシー)」がテンプラニーリョ90%、ガルナッチャ10%みたいなブレンドだったけど、同じテンプラニーリョでもまったく味の方向性が違って面白い。

パンパネオがステンレンスタンクで発酵・熟成を行うのに対して、プシーは熟成に樽も使うから、その違いも大きいんだろうなあ。価格はプシーの半分だけど、好みでいえば私が好きなのはパンパネオのほうだ。これおいしい。

 

「パンパネオ テンプラニーリョ ナチュラル」と澱とつぶつぶ入りジュース

ただ、アルコール度数が13%と高くないこともあり、甘ずっぱさがあとを引いてグイグイ飲めるんだけど、げ、なんだこりゃ。澱がすごい。澱っていうかもはや実じゃない? ってくらいデカい。「粒入り」って書いてあっても不思議じゃないレベル。

昔よくありましたよね粒入り缶ジュース。最後引っかかって出てこない粒を、首を直角に曲げて垂直に立てた缶の底面をポンポン叩いて出したりするの懐かしいなーワインの話だった。

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ノンフィルターなので澱があるのは当然といえば当然で、私はもちろん気にならないが、シラスの中に小型のタコが入っているかの如くにデカめの澱(?)が入っていました私の買ったボトルには。それもまた一興だ。

いずれにせよ、1000円台後半で買えるワインとしてのコスパは非常に高く、年末開催予定の日本コスパ大賞にノミネートされる可能性まで十分にありえる。惜しむらくは購入時に「麻婆豆腐に合いますよ」って教えてもらったことをすっかり忘れてチキンカツと一緒においしくいただいてしまったこと。またいずれ、麻婆豆腐と一緒に飲みたいワインだ。

 

※記事公開時「パンパネオ テンプラニーリョ エコ」と誤認して執筆していましたが、後日、飲んだのが「パンパネオ テンプラニーリョ ナチュラル」だったことがわかったため、内容を修正しています。