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Amazonのセールで安い! 「ペンフォールズ6本セット」の実力は? 【オーストラリアワイン】

ペンフォールズはどんな生産者か

Amazonでオーストラリアの名門「ペンフォールズ」の6本セットがセールになっていたので買った。



で、飲んでみたらこれがなかなかどうしてすごく良い内容だったので、生産者のことや産地のことも含めて調べてみましたというのが本記事の趣旨だ。

さて、ペンフォールズの歴史は1844年、クリストファーとメアリーのペンフォールド夫妻がイギリスからオーストラリアにやってきたことに端を発する。クリストファーは医者でもともとは患者のためにシェリーやポートなどの酒精強化ワインを造っていた。

このメアリー・ペンフォールドさんがどうやらワイン造りに特異な才能を持っていたようで、夫亡き後に経営を引き受けると、複数のヴィンテージを「彼女個人の判断と好みに従って(wikiより)」ブレンドして市場に送り出すというテイスティング能力を発揮した上に、病害対策やらワイン生産方式の改良やらにも着手。

結果的に引退する1884年までに南オーストラリア州全体のワインの1/3を生産するまでになったというからすさまじい。「医者の妻」だったはずがオーストラリア最強のワイン生産者になった女性の一代記、司馬遼太郎の筆で読みたい。

クヌンガ・ヒルはペンフォールズの創業地の名前だそうで、オーストラリアは南オーストラリア州バロッサ・ヴァレーに位置するブドウ栽培地だ。

 

ペンフォールズとバロッサヴァレー

オーストラリアといえば元イギリスの植民地、なのだが、バロッサヴァレーだけは例外的に現在のポーランドから迫害を逃れてこの地にやってきたドイツ人入植者によって築かれたっていうのが面白い。

バロッサヴァレーの白ワインにリースリングが多いのはそのあたりにも理由がありそうで、購入した6本セットにもリースリングが含まれる。

バロッサヴァレーは南オーストラリア州のワインリージョンのひとつ(画像はwikipediaより)

ちなみにバロッサヴァレーのおとなりのイーデンヴァレーはより冷涼で、よりリースリングの栽培に適しているそう。なのでボトルに「バロッサ」とだけ書かれていたらそれはイーデンのブドウも使われているケースが多いのだそうだ。へー。

フランスにAOCアメリカにAVAがあるようにオーストラリアにもAGIなる地理的表示があるのだが、バロッサヴァレーとイーデンヴァレーはそれに認定されており、これらふたつの産地とその周辺をまとめたバロッサ・ゾーンもAGI認定されている。

オーストラリア

南オーストラリア州

バロッサ・ゾーン

バロッサヴァレー

みたいな感じだ。

himawine.hatenablog.com

 

シラーズとバッロサヴァレーとグランジと私

先に白の話をしてしまったがこの地はもともとシラーズの一大産地。20世紀半ばにシラーズ=テーブルワイン用ブレンドワインの産地みたいな評判が一般化したことで評価を落とすものの、どっこいそれらのブドウが古木化するなかで独特の“バロッサ・シラーズ”のスタイルを獲得することがわかり、世界的評価をグングン高めていった。

himawine.hatenablog.com

その立役者が言うまでもなくペンフォールズであり、そのフラグシップワインでありシラーズで造られる世界最高峰のワインのひとつ「グランジ」だ。

私はグランジが提供されるワイン会に行った先でどうしてもすぐさまその場を離れなければならない急用が生じ、主催者の方のご厚意で先に用意していただいたグランジをクッと一息に飲み干してその場を辞去したことがある。悲しみの味であった。以上余談です。

 

ペンフォールズのクヌンガ・ヒル6本セットの内容は?

ここでクヌンガ・ヒルの6本を確認してみると、いかにもバロッサ・ヴァレーの産地の特徴が表れていることがわかる。以下のような感じだ。

クヌンガ・ヒル シラーズ・カベルネ
クヌンガ・ヒル シラーズ
クヌンガ・ヒル カベルネ・ソーヴィニヨン
クヌンガ・ヒル セブンティシックス シラーズ・カベルネ
クヌンガ・ヒル シャルドネ
クヌンガ・ヒル オータム・リースリング

赤は4種類あるのだが、よく見ると使われている品種はシラーズとカベルネ・ソーヴィニヨンの2種類で「この2種がたくさん植わってるんだね」というのがはっきりとわかる。白はリースリングシャルドネの2種類だ。

シャルドネはバロッサでは「しばしば樽熟成され、マロラクティック発酵が行われる」ために「フルボディのクリーミー」なものになるようだ。ビッグ&ボールド系ね。好きなやつです。以上、ざっくりと調べられたので、飲んだ順に紹介していきたい。

 

ペンフォールズ クヌンガ・ヒル シャルドネ

まず、「クヌンガ・ヒル シャルドネ」だ。散々バロッサ・ヴァレーについて書いておいてあれだがこのワインはマルチリージョン、マルチヴィンテージ。

アルコール度数は12.5度、酸は6.1g/L、PH3.28。テイスティングノートにライトからミディアムボディと書かれているわりにはクリーミーさも感じられ、とにかく飲みやすさおばけみたいな印象。

しっかりフルーツ、適度に酸味、適度に樽感。安シャルドネはこれでいいんだよ、というお手本のようなワインだった。

 

 

ペンフォールズ クヌンガ・ヒル シラーズ・カベルネ

続いては「クヌンガ・ヒル シラーズ・カベルネ」を飲んだ。こちらもマルチリージョンだが、バロッサ・ヴァレー、マクラーレン・ヴェール、ラングホーン・クリーク、クナワラ……といったように、産地名も付記されている。

アルコール度数は14.5%と高く、酸は6.2g/L、pHは3.61。10カ月間オークの「Hogshead」で熟成と書いてあってhogsheadとはなんぞやと調べてみると要するに木製の容器のことのようだ。「イギリスとアメリカの植民地時代にタバコの輸送と貯蔵に使われた非常に大きな木製の樽」だそうです。

飲んでみると、おお、これはもう大変わかりやすくパワフルうまい。似ている飲料はなにかと問われたら下手すると「コーラ?」と言ってしまうかもしれないわかりやすさでスパイシーな風味があって果実味もそらもうたっぷりあって大変おいしい。

いやすごいなペンフォールズ。小売1000円台とは思えない味、というよりも、ここまでは小売1000円台の最適解みたいな味わいだ。

 

ペンフォールズ クヌンガ・ヒル オータム リースリング

3本目は「クヌンガ・ヒル オータム リースリング」を飲んだ。前述したバロッサ・ヴァレーのお隣、イーデン・ヴァレーのブドウで造った、ここにきて初の単一リージョンのワイン。92%のリースリングと8%のトラミナーのブレンド。アルコール度数は12.5度。酸は6.9g/LでpHは2.93。

飲んでみるとデータが示す通りというかなんというかかなり酸味が強く出ているタイプで、樽熟成していない甲州みたいな印象がある。つまりすっぱ系。

すっぱいのは好きなのだが、個人的にはもう少し果実が欲しいなあという感想になる。ホタテの刺身に塩とレモンを振ったものとは異様に合ったので、海鮮特攻機として使用するのが吉かもしれない。

 

ペンフォールズ クヌンガ・ヒル カベルネ・ソーヴィニヨン

続いてはカベルネ・ソーヴィニヨン。これはふたたびマルチリージョンのワイン、なのだがこのワインは公式サイトに記載がなく、詳細は不明。個人的にはこのワインはかなり好きだった。

印象としては果実味にかなり寄せた安うまボルドー(2000円台前半)という印象。複雑さとか重厚さにはほんの少し欠けるけど、少しの青っぽさがアクセントになって非常に飲みやすい。

バーベキューにこれを持っていったらとくにウンチクを垂れずとも瞬時にみんなが空にしてくれそうな1本だった。良い。

 

ペンフォールズ クヌンガ・ヒル シラーズ

オーストラリアを代表する品種、シラーズは、アルコール度数14.5度、酸は5.8g/LでpHは3.61。11か月間フレンチオークとアメリカンオークで熟成させたというワインだ。

これは前出のカベルネ・ソーヴィニヨンをさらにパワフルにしたようなワイン。データを見ても酸が少なく、墨汁めいた濃さがある。これはこれでおいしいのだが、個人的にはカベルネ・ソーヴィニヨンのほうがおいしかった。

度数も高いが濃くて強いワインなので、相当パートナーを選ぶ。スパイスを効かせた羊かなんかを流し込むのに使いたいワインだ。

 

ペンフォールズ クヌンガ・ヒル セブンティシックス シラーズ・カベルネ

1976年に発売されたワインへのオマージュとして、レトロなラベルと「セブンティシックス」という名前を与えられたのがこのワイン。

これはテクニカルシートが置いてなくて詳細不明だが個人的にセットの6本のうちでもっともいいと思った。

無印のシラーズ・カベルネの渋み、酸味、果実味をそれぞれ1.1倍して複雑さを増した単純な上位互換といった印象で、無印にあったコーラ感は減退し、堂々たる赤ワインらしさが前に出てくる。うまいなあ。

というわけでペンフォールズ、さすがの安定感なのだった。通常価格だと6本で1万1859円がセール価格で1本1500を切る価格で買えたのはかなりお得な買い物だった。オーストラリアワインの親しみやすさは異常。引き続き、飲んでいきたい。

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