三国ワインとアルトリヴェッロのスパークリングワインを試飲
月に一度のお楽しみ感のある下北沢ワインショップでの試飲会に今月も参加してきた。今回は夏らしくスパークリングワイン回だ。
イタリアワイン専門のインポーターであるアルトリヴェッロがイタリア泡、そして三国ワインがフランスをメインにスペインの泡、そしてなぜかカリフォルニアの赤白スティルワインを一種ずつ出展している。
私は三国ワインのワインから試飲をスタートした。さっそく見ていこう。
おいしかったワイン1:アヤラ「ブリュット マジャール」
飲んだ順番を無視して語っていくと、この試飲会全体のハイライト的存在になっているのがシャンパーニュ「アヤラ」のワイン3種類だった。スタンダードのブリュット マジュール、そのロゼ、そしてドザージュをしていないブリュット・ナチュールが試飲できた。うーん、豪華。
三国ワインの方いわく、アヤラは最近醸造家が女性に変わったのだそうで、それに伴いボトルの形状も変更、年々シャルドネ比率が高まっているなど、変化の渦中にあるそう。
とくにボトルが太くなった理由が面白く、「より澱と液体が接触する面が増えるから」なのだそうだ。ほえー。
裏ラベルの情報も豊富で、ブリュット・マジュール(税抜き7800円)はシャルドネ55%、ピノ・ノワール30%、ムニエ15%というブレンド。リザーヴワインを43%と多めに使い、ヴィンテージは2019をベースに18、17、16が混ざっているご様子だ。ドザージュは6g/L。
飲んでみると果実のフレッシュさがありながら、ボトルが太くなったおかげなのかどうなのか、ふくよかさとか複雑みもたっぷり感じられるグッドバランス。
果実たっぷり甘ずっぱのロゼ、酸がキリリのブリュット・ナチュールもいいが、このスタンダードのバランスはえっこれがスタンダードなんすかと驚くような良さだった。
おいしかったワイン2:ロジャー・グラート「カバ グラン・レセルバ アニバーサリー・キュヴェ2017」
ただ、三国ワインでもっとも印象的だったのは「ドンペリに勝った!」 的POPでおなじみのロジャー・グラートだったマジか。
今回の試飲会にカバとして唯一参戦していたキュヴェは創業140周年記念で造られた、その名も「カバ グラン・レセルバ アニバーサリー・キュヴェ2017」。気合の50か月熟成だ。おぎゃあと生まれた赤ちゃんが来年小学生になるだけの時間を熟成に費やしていることになるすごい。
セパージュはチャレッロ80%、ピノ・ノワール20%。カバの主要品種であるマカベオ、チャレッロ、パレリャーダのなかで、チャレッロは酸と骨格担当で、全然知らなかったのだがもっとも長期熟成に向くのだそうだ。長期熟成は酸がカギなんだなあやっぱり。
エクストラブリュット表記でドザージュは5g/Lと少なめだが、飲んでみると果実の甘やかさが溢れ出す印象。その上で酸もあって、熟成由来っぽい複雑みがあって、味わいが層になっている印象もある。
価格は税抜き4300円と余裕でシャンパーニュが買える価格だが、同価格帯のシャンパーニュでこれに勝てるのってなにがあるんだっけ……? みたいになる味だった。同じ値段なら消費者はシャンパーニュを選ぶ。ならば味で凌駕せねばならぬの心意気を感じる。本日最高のサプライズ。
おいしかったワイン3:ジョッシュ・セラーズ 「バーボン バレル エイジド カベルネ・ソーヴィニヨン」
あと、スパークリングワイン試飲会なので軽く余談感が出てしまうのだが、バーボンの樽で熟成させたというジョッシュ・セラーズのバーボン バレル エイジド カベルネ・ソーヴィニヨン(税抜き3300円)が意外に甘ずっぱい感じでおいしかった。
印象に残ったワイン:セルヴァノーヴァのフリッツァンテ
そんなこんなでお隣のアルトリヴェッロのブースに移る。並んでいるのは8種類のワイン。すべてイタリアワインだ。
まず飲ませていただいたのはナポリを擁するイタリアのブーツのスネ部分、カンパニア州はモッツァレラ発祥の地として知られるカゼルタの生産者、セルヴァノーヴァのロンドロ ビアンコフリッツァンテとロンドロ ロザート フリッツァンテの2本。どちらも少し濁っている。
どちらもメトド・アンチェストラーレこと田舎方式こと瓶内一次発酵で造る微発泡ワインで、造り手はブドウやオリーブ栽培を通じて社会的弱者を支援する持続可能なシステムを目指すプロジェクトを推進しているそう。
ロゼのほうはインポーターの方曰く「モッツァレラチーズとバジルと一緒に飲むと、(口の中で)勝手にカプレーゼができあがる」というワインで、なるほどプチトマトみたいな酸と少しの渋み、ほのかな甘さを感じる。
一方の白は自然派白らしいわずかな農家のバックヤード的香りがしたような気がするが、旨味成分強め、果実味もあっておいしい。自然派ペティアン好きに刺さりそうなワインだった。
おいしかったワイン4:レ・マンザーネ「ソリダーレ プロセッコ スペリオーレ エクストラドライ」
さて、アルトリヴェッロで一番好きだったのはヴェネツィアでおなじみのヴェネト州の生産者、レ・マンザーネのソリダーレ プロセッコ スペリオーレ エクストラドライ。これは素晴らしかった。
レ・マンザーネは世界遺産にも登録されているプロセッコの中心地、コネリアーノ・ヴァルドッビアデーネDOCGのエリア内に40ヘクタールの畑を持っていて、DOCGのワインはすべて自社畑のブドウから造るというプロセッコメーカー。
プロセッコの記事ぜひ読んでください。超長いけど↓
今回のキュヴェは一般の方を招いての収穫イベントでタンクひとつ分を仕込んだというスペシャルキュヴェ(収益は寄付に回されるそうだ)。収穫が2022年9月なので非常にフレッシュなワインということになる。
「プロセッコは青リンゴにたとえられることが多いのですが、これは蜜の入った赤いリンゴのイメージです」というインポーターの方の言葉の通り、たっぷりとした蜜感とそれを支える酸があり、私が子どもの頃に小学校の前の文房具屋の自販機で買って飲んで感動したファンタ グリーンアップルをどこか思わせる、郷愁を感じる味わいだ。
プロセッコのエクストラドライはブリュットよりも甘め。熟成していないことによるフレッシュさ、北の産地ならではの酸もあっておいしく、熟成してない良さってあるよなぁとしみじみ感じた。価格も2700円と手頃。いいワインだ。
おいしかったワイン5:テヌーテ・フェッロチント「ヴィーノ スプマンテ シャルマ クラーヴェ」
最後にひとつ取り上げたいのが「カラブリア州に空振りはない」と担当者の方が豪語した一言をスタッフのつびぃさんが「今のは絶対に書いてください」と念を押されたカラブリア州の生産者、テヌーテ・フェッロチントのヴィーノ スプマンテ シャルマ クラーヴェ。空振りは本当にないのか、いざ真相解明のお時間だ。
カラブリアはイタリアのブーツのつま先部分。なので暖かいんだと思うのだが、このワインはカラブリア最北のポッリーノ山脈が生産地のようで、高標高感のあるシャープな酸がある。
イタリアのスプマンテ(泡)は果実味はそりゃまあたいがいあるので、あとは酸があるかどうかが決め手になる気がする。このスプマンテにはそれがあり、少しの蜜とレモン、ほんのわずかにナッツ的なニュアンスも感じてつまりおいしかった。
言わせていただこう、カラブリア州にカラブリはないと……!(今日はこれを覚えて帰ってください)
下北沢ワインショップのスパークリングワイン試飲会を終えて
三国ワイン、アルトリヴェッロともにほかにもおいしいワインがたくさんあったのだが、以上挙げたものが個人的にはとくにおいしいと感じた。
ワインの個性、生産者の個性はもちろん、インポーターさんの個性まで感じられるのがこの下北沢ワインショップの試飲会のいいところ。またお邪魔します!
プロセッコのエキストラドライはほんとおいしい。↓
このロジャー・グラートはカバの自己ベスト更新してきた↓