ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

神田に自然派ワインを飲みに行ったらなぜか高級ワインを飲んでいた話。

【1軒目】味坊で自然派ワインを飲む

お友だちと6人で羊を食べに行ってきたら、なぜかコングスガードやクリュッグを飲んでいた、という異常体験をしてきた。時系列に沿っての詳細なレポートは安ワイン道場師範の稽古日誌をご覧いただくとして、私はこの日とくに印象に残ったワインの話をメインに記事をまとめていきたい。

さて、この日の私にとっての一軒目は神田の「味坊」。自然派ワインと本格中華がめちゃくちゃ安い値段で楽しめる名店で、ここで「板春雨と羊串、そして自然派ワインをガブガブ飲む」がなんとなくのこの夜のコンセプト的なもののひとつ(だった)(はずだった)。

板春雨。はじめて食べたけどこれは食べるべき一皿。白いごはん食べたい。

さて、私以外のメンバーは有楽町駅前の多種類のワインが低料金かつ飲み放題で楽しめるお店・ノムノエクスプレスで0次会を実施していたため一足先にお店に着いて冷蔵ケースのワインを物色していると、お店のお姉さんが「ワインたっくさんあるよ〜! 6人だったらニーサンボン飲めちゃうヨ!」と笑顔でサジェストしてくれた。味坊は店員さんが明るくていいんだよな。

結局我々はこのお店で4本のボトルをワインの輸送容器からただの産業廃棄物に変え、さらにブテイユ(フルボトル)3本、マグナム1本をこの夜開けることになる。どうしてこうなったのヨ…!

さて、味坊では唯一の泡(ペティアン)であるヴァンサン・リカールの「ムスー(2021)」、シチリアの土着品種で造る白ワイン、ヌース協同組合の「テッレ・シチリアーノ カタラット」、ラルコの「ロッソ・デル・ヴェロネーゼ(2018)」そしてピエモンテの造り手、トリンケーロ「テッラ・デル・ノーチェ(2016)」を飲んだ。

このなかで抜群に素晴らしかったのがラルコのロッソ・デル・ヴェロネーゼ。味坊ではふちが分厚く直径が小さいグラスならぬコップでワインを飲むので香りはイマイチわからないのだが、味わいはこれはもう完全に飲むイチゴ狩り農園。イチゴ狩りを楽しんでお会計をしようとしたらおまけですと採れたてのベリー類、自生してるハーブもいただいちゃいました! 感謝! みたいな味だ。

このワインは素晴らしかった。

このワインがネットで3000円を切る価格で購入できるのは正直驚きで、3000円以下最強に挑めるポテンシャルを持つワインだと感じた。普段使ってるグラスで飲んでみたいのでこれは近々改めて購入してみたいと思うし、3000円くらいするワインに5500円って値札が貼ってある味坊に改めてリスペクトだ。お店の電卓、壊れてない…?

もうひとつ、トリンケーロのテッラ・デル・ノーチェ2016もすごく良かった。品種はピエモンテの私の好きな品種・バルベーラ(DOCGバルベーラ ダスティ スペリオーレ)。

このバルベーラも好きな味。

おいしいんだよなあバルベーラ。このワインは初見で「良いボルドー?」と思うようなしっかりした酸味と渋み、そしてたっぷりの果実味と香り高さがあって羊肉によく合った。こちらはネットでの売価が4000円弱だが、貼られた値札は5500円。だいたい5500円なんですよ、味坊は。

味坊の予約が17時半、次のお店の予約が脅威の19時で、滞在可能時間は75分。我々はいまパック旅行でヴェネツィアかどこかに来て分刻みの観光スケジュールをこなしているのか? というほどのスケジュール感のなかで4本を飲み干し、タクシーへと乗り込んだ。

 

2軒目:ワインショップ&ダイナー フジマルでマグナムシャンパーニュを飲む

続いて向かったのは浅草橋の神田川沿いにある「ワインショップ&ダイナー フジマル」。ワインショップ併設のレストランで、ワインセラーで購入したワインを小売価格+抜栓料で楽しむことができる。島之内フジマル醸造所、清澄白河フジマル醸造所などを運営する株式会社パピーユのレストラン業態みたいな感じ。

店内のドアから入れるウォークインセラーへは、お友だちのとりゅふさん、TKさん、そして亀戸の名店・デゴルジュマンのマスター・泡大将が向かった。残された安ワイン道場師範、NO.5さん、そして私の3名はしばし歓談という運びとなったのでしばし歓談していたのだがしばし歓談してもおかしいな全然ワインが来ない。これが大学生の飲み会の二次会のカラオケボックスだったら「アイツら、ひっとしてフケた……!?」となるところだが、ここはワインだけが共通点で年齢も性別もバラバラの男女が集う限りなく健全すぎる飲み会。そんな心配はない。フジマルのセラーの圧巻のラインナップ、そのなかで遭難しているに違いない。

シャンパーニュ棚の一部。飲みたいのしかない(飲めるとは言ってない)

というわけで救助、じゃなかった様子を見にセラーのドアを開くと、「このアイテムがこの価格……うーーむなるほど」みたいな感じで泡大将がガチでワインを物色していた。常在戦場、これぞプロ。一方、「今からみんなで飲むワイン」を探すTKさんととりゅふさんは懸念された通りセラーを埋め尽くすワインの森の中で遭難しており、最終的に「これしかない……!」と選んだワインが店員さんに「非売品です」と一蹴される事態に。ややこしい夜になってきたな。

そして、なんやかんやがあって最終的にマグナムシャンパーニュを飲む運びとなった。どんな運びなんだよ。ここで私の考えた格言を再掲しておこう。マグナムが出る飲み会はいい飲み会だ。故に今宵はいい夜だ。二次会でマグナム飲むのはじめてだ。

セラーにあったマグナムいろいろ。一番左を飲みました。

飲んだのはモンターニュ・ド・ランスのグランクリュ村・ブージィの生産者ジャン・ヴェッセルのエクストラ・ブリュット。ドサージュ(補糖)しない造りだそうで、私はドサージュなしのシャンパーニュに対して軽く身構えるみたいな気分があるのだが、これはとってもおいしいシャンパーニュ。先発の味坊選手が勝ち投手の権利を持って5回でマウンドを降りた後、6回を無難に抑えてくれたみたいな印象だった。

 

3軒目:ワイン厨房Daimasuでコングスガードを飲む

さて、マグナムシャンパーニュも空になり、次に向かったのは泡大将が案内してくれた浅草の「ワイン厨房 Daimasu」。酒屋が経営するというワインショップ併設のワインバーで、地下のワインショップ(セラー)で購入したワインは+1000円で席で飲むことが可能という2軒目のワインショップ&ダイナー フジマルと同じ形式のお店だ。

地下に広がるワイン空間。(写真ブレてます)

さて、「セラー」という言葉を耳にすると無条件でそこに入り込んでしまうというのがワイン好きの習性。泡大将に案内されて、地下セラーを探検することにした。

小さめとはいえビルのワンフロアがそのままセラーになっているので、内部はかなり広い。以前は掘り出し物も多く眠っていたのだそうだが、現在は普通のショップ的な品揃えになっているようだし、酔いが脳に回り切ったこのタイミングでラベルを吟味してしっかり選ぶのはほぼ不可能。ここは泡大将に選んでもらおう……と思っていると、広いセラーのそこだけ光り輝いているような存在感を放つボトルがひとつ。You、コングスガードじゃないの!

ラッキーコングスガード

こりゃ掘り出しモノですよと泡大将がすかさずお店の方に金額を聞くと「大優勝です…!」と一言。プライス的にも十分に手の届く、かなりお得な値付けがされていたのだそうで、晴れてコングスガードのナパヴァレー シャルドネ2019の開栓とあいなった。

コングスガードのシャルドネ自体は以前飲んだことがあったが、今回もやはりおいしい。圧倒的においしい。ほんのわずかにくすんだ、どことなくシルバーを思わせるゴールドの外観に、グラスからふつふつと湧き出る蜜と柑橘と樽の香り。バターのようなハチミツのような粘性を伴う液体は、ちょっとした喉の炎症とかこれ飲みゃ治るんじゃないのと思わされるようなおいしさだ。コングスガードは飲む薬。喉と精神に効く(少なくとも精神には効く)。

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お金はあればあるだけもっと欲しくなるものなので私はお金持ちになりたいとはとくに思わないのだが、毎日コングスガードが飲みたいので今の10倍年収が欲しいと思った次第だ。100倍でも構わない。

このワインは楽天で見つけられなかったが最上位キュヴェのザ・ジャッジはあった。

このお店ではオー・ボン・クリマのイザベル ピノ・ノワール2018も飲んだ。2021年に亡くなったワインメーカー、ジム・クレンデネンさんの愛娘の名前を冠したキュヴェ。「娘名(むすめめい)キュヴェにハズレなし」の格言に則り、このワインも大変おいしいワインだったのだった。

ここでもワインを2本飲み、累計ではマグナム1本、ブテイユ6本。私以外のみなさんはグラスワインも数杯飲んでるはずだが元気いっぱいだ。みなさん肝臓どうなってるのヨ!

しかし、さすがにこのあたりで解散ですかね常識的に考えてという固定概念を打ち破り、狂瀾怒濤の会はさらにもう一軒へと突入していく。この夜の終着駅、そこはまさかの本日は休業日のはずの亀戸の名店・デゴルジュマン。さっきまで一緒に飲んでいた泡大将が、ご好意で急遽お店を開けてくれた。

締めクリュッグ

ここで飲んだのはなんとクリュッグ。同行のTKさんがご提供してくれたのだった神……! クリュッグの現行ヴィンテージにあたるエディション170は現行ヴィンテージなのにあまり出回っていないのだそうで、実に大変ありがたい。

私はお酒の席の締めにこれまでラーメン、そば、お茶漬け、ペペロンチーノ、といったものを過去に摂取してきたが、この日はなんとクリュッグで締めた。締めクリ。締めクリってなんだよ。

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とにもかくにも、「味坊で自然派ワインを飲もう!」くらいのノリで集まったはずが後半にいくにつれてヘビー級のワインが次々に登場した不思議で最高な夜はこうして終わった。髪の毛の頭頂部の1本から足の親指の爪先までアルコールが沁み渡り時間の概念は溶け切っていたがなんと電車はまだ東京の街を走っていたことから、ものすごく短い時間でのハシゴ酒だったことがわかる。これがYOASOBI……!

クレージーな飲み会をともにできる友人は最高の友人。みなさん、また飲みましょう…!