ボデガス・イ・ビニェードス・ポンセ ブエナ・ピンタと私
ボデガス・イ・ビニェードス・ポンセ ブエナ・ピンタを飲んだ。先月なぜか突然スペインワインが気になりだし、なにかオススメがあれば教えてくださいとお願いしていたところ、ワインブロガー・KOZE氏よりオススメいただいたのがこのワインだ。
私はおいしいワインを知らないが、おいしいワインを知っているお友だち(主観)はいる。他人のふんどしでハッケヨイのこった状態でホント恐縮だがありがたい話である。KOZEさんありがとうございます。
このワイン、もともとはちょうど1年前くらい前に開催された「モトックスワールドワインフェスティバル 20春」なるイベントで見つけたワインだったのだそうだ。今年はコロナ禍で開催されないようだがモトックスが輸入する200ものワイン飲める一大試飲会なのだそうでうらやましすぎるなこれ。行きたかったなあ。コロナが終息したらぜひ復活をお願いしたいイベントだいきなり余談だけど。
ボデガス・イ・ビニェードス・ポンセとラ・マンチャ
ボデガス・イ・ビニェードス・ポンセはどんな生産者か。まずは輸入元のモトックスのサイトでざっくり把握してみると、マイナー産地のD.O.マンチュエラでマイナー品種のボバルを用い個性的なワインを生み出すスペインワイン気鋭の造り手、みたいな感じみたい。
ワイナリーが位置するのはスペイン中央部のカスティーリャ・ラ・マンチャ。ラ・マンチャといえばドン・キホーテだがラ・マンチャってそもそもなんだっていうと、アラビア語で「乾いた土地」を意味する言葉なんだとか。知識は荷物にならないので是非持ち帰っていただきたい。ラ・マンチャは「乾いた土地」です。
ラ ・マンチャの造り手の話を別の輸入元の方に聞いた折、「とにかく暑い土地なので灌漑をしないと自然に収量が落ちる(≒いい感じのブドウになる」みたいなことを言っていたが、ボテガス・イ・ビニェードス・ポンセも灌漑を行っていないのだそうだ。ラ・マンチャは灌漑をするとバルクワイン用ブドウが大量にでき、しないといい感じのブドウが実る土地(雑な理解)。
ラ・マンチャのワイン。これはとてもおいしかった↓
さて、スパニッシュワインラバードットコムなるサイトによると、醸造家、フアン・アントニオ・ポンセの目指すのは、「メイクアップなしのクリーンでピュア、シンプルでダイレクトなワイン」なのだそうで、「台地のなかの台地」だという標高の高い石灰質土壌を生かし、化学物質を使わない栽培をしているようだ。
輸入元のモトックスのサイトによれば、ワイナリーには「必要最小限の設備しかないセラー」しかないと記述があるが、スパニッシュワインラバードットコムによれば2017年に「広々とした機能的なワイナリー」を新設し、それは「質的な飛躍を意味する」とある。今回飲むワインのヴィンテージは2017なので、あら楽しみじゃない。
謎の品種モラビア・アグリアとブエナ・ピンタ
以上のように調査が進むほど期待が高まっていくわけだが今回飲んだ「ブエナ・ピンタ」の問題は品種だ。メイン品種が「モラビア・アグリア」なんですよ。知ってますかモラビア・アグリア。知らないですよモラビア・アグリアは普通。moravia agliaで検索してもなんにもヒットしないもの。
もちろん検索結果はあるんだけど、どんなブドウかを示す資料が全然ない。カタカナで検索するとブエナ・ピンタのページが表示されたときの私の気持ちは「アンサイクロペディア たらい回し」で検索していただくと理解していただけるだろう。
アリアニコの綴りがaglianicoで、アリアニコの名前の由来はラテン語の「ヴィティス・ヘレニシア(vitis hellenicia、ギリシャのブドウ)」がなまったもの。かつモラビアはチェコの地方名(かつてのモラヴィア王国)という検索結果があったから、「チェコらへんで栽培されてたギリシャ由来のブドウでアリアニコの親戚」みたいな強引な仮説が立てられなくもないけどどうにも無理がある。アリアニコのシノニム一覧にもアグリアの名前はないし。
お手上げなので詳しい方教えてください。わかったのは前出のスパニッシュワインラバードットコムによる「酸度の高い品種」であるという点だけだった。
ともかくそのブドウをメインに、ガルナッチャを10〜20%加えて作るのがブエナ・ピンタのようだ。ブエナは「良い」。ピンタは「見た目」。ルックスグッドとかサウンズナイス的な意味っぽい。どんな味か、いざ飲んでみよう。
ボデガス・イ・ビニェードス・ポンセ ブエナ・ピンタを飲んでみた。
というわけで抜栓してみると、香りがすごくて驚く。子どものころ、自宅にお中元かなにかが届き、すわ甘いものの類かと親にねだって開封したら花の香りの石鹸の詰め合わせだったときに失望とともに鼻腔を満たしたいい香りってあるじゃないですか。あれ。石鹸の匂いがするわけではないが、封印を解かれた瞬間に香りが溢れ出す様子が似ている。
かつてあった私の実家の庭にはスミレが自生していたのだが、その頃に嗅いだようなスミレとか、タンポポとかの春を告げる野草系のワイルドいい香り。あふれてんなあ、野趣。2000円台前半の香りでこれだけ香りの量が多いのってなかなかない感じがする。ルックスグッドっていうかサウンズグッドっていうかスメルズグッド。
飲んでみると、意外と果実味は主張せず酸味を中心に渋みもキリッと効いてる。でもって意外と薄い。ピノ・ノワールです。って言われたら「そうですか。」って私は確実に言う感じの薄さで、パワフルっていうより上品な感じだなこのラ・マンチャの地品種。まさかの薄うま。アルコール度数も「12%以上13度未満」と軽めだし。
というわけでボデガス・イ・ビニェードス・ポンセはブエナ・ピンタは香りが非常に良くて大変楽しめるワインだったのだった。いつか上位キュヴェも飲んでみたいなー。
探せば1000円台でも買えるっぽい↓