ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

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北海道原産のブドウ品種「旅路」とは? リタファーム&ワイナリー「HANABI 田舎式スパークリング 旅路」を飲みながら調べてみた。

北海道原産のブドウ品種「旅路(紅塩谷)」とは?

ゴールデンウィークに旅に出ることができないので「旅路」という名のブドウ品種で造られたワインを飲むことにした。選んだのは私の推し自治体である北海道余市町登地区のリタファーム&ワイナリーの「HANABI 田舎式スパークリング 旅路」だ。

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リタファーム&ワイナリーの「HANABI 田舎式スパークリング 旅路」を飲みました。

さてこの「旅路」という品種だが、その名はドラマ及び映画『旅路』には由来するようだ。

『旅路』は1967-1968年に放映されたNHKのいわゆる“朝ドラ”で、平均視聴率45.8%、最高視聴率は56.9%だったそうで、最高視聴率は1983年の「おしん」に次いで歴代第二位なんだそうですよなにそれすごい。ちなみに原作・脚本は『御宿かわせみ』の平岩弓枝だ。

その映画版の舞台となったのが函館本線塩谷駅。塩谷駅は北海道小樽市にあり、旅路はもともとこの小樽市塩谷の自生品種だったようで、「紅塩谷」と呼ばれていた。それが、映画『旅路』きっかけで「旅路」と呼ばれるようになっていったようだ。

兵庫県の六甲山は、もともとの名前である「武庫」の「むこ」が「六甲」となり、転じて「ろっこう」になっていったという。でもってそもそもなんで「むこ」なのかというと、近畿から見て「むこう」だったからなんだそうだ諸説あり。名前ってたどっていくと面白いですよね。ちなみに「塩谷」はアイヌ語のスヤ(鍋・岩)あるいはソヤ(草・岩)に由来すると言われているそうだ諸説あり。

ともかく、小樽に自生していた生食用ぶどうはやがて旅路という名で呼ばれるようになった。公益財団法人食の安全・安心財団が運営するウェブサイト「地方特産食材図鑑」にはこのブドウが「旅路(紅塩谷)」と記載されており、「来歴は不明であるが、古くから栽培されていたぶどうを生産者が『旅路』又は『紅塩谷』と名付けた。 」と解説されている。なるほどっすね。

じゃあ「紅塩谷」と呼ばれる前はなんと呼ばれていたのかが気になってくるのだが、ここから先は現地取材して土地の古老、とかに話を聞かないと解明できそうにないのでここで調査を終える。お金とヒマがあったらそういうお金にならない仕事したい。

 

旅路と余市とリタファーム&ワイナリー

「JAよいち」のブログでこの品種が紹介(生食用としてだが)されており、そこには「よいち町で多く栽培されているぶどうです。」という記述がある。旅路は現在余市の特産品的立ち位置になっているようで、余市町の「藤本観光農園」のサイトによれば「余市と仁木でしか栽培されていないので希少価値が高」いと書いてある。余市から仁木は電車で4分、余市から塩谷は同じく14分とかそんな感じの距離感だ。

さて、リタファーム&ワイナリーは1998年に余市リタファームとして開園し、2013年6月、余市町内で3番目となるワイナリーを完成、2014年に自社畑のワインを初出荷したというご夫婦で営まれているという生産者。

「ふじまつ」のワイナリー紹介ページによれば、栽培・醸造責任者の菅原由利子さんは前職であるワインのインポーター時代にシャンパーニュで研修を受けた際に「北のぶどう生産地で造られる酸の強いワインを何とか飲みやすく加工したのがシャンパーニュ製法」だという気づきを得、地元・余市で「白ワインとシャンパーニュ製法のスパークリングワイン造りに特化」した生産者となったのだとか。すごくいい話だ。

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リタファーム&ワイナリー「HANABI 田舎式スパークリング 旅路」を飲んでみた。

というわけで旅路をめぐる旅路もこのあたりがひとまず終着駅っぽい。というわけで野生酵母で醸された田舎方式で5〜6気圧だというこのワインをよく冷やし、王冠をスポンと外し、とくとくとくとグラスに注いで飲んでみた。

色はオレンジと黄色の間くらい、ノンデ ゴルジュマンで濁りのある山吹色みたいな色。でもって香りがですねこれゴマだな。すりゴマ。かなりゴマ。マジでゴマ。ゴマは初めてだなあ。不快な香りではなく、むしろ香ばしいと感じる。そこに野菜みたいな香りが混ざる。家庭菜園で採ったばかりのきゅうりをその場でポキッと折ったみたいな青くてフレッシュな香り。

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デゴルジュマンしてないので濁りあり。ボトルの底にはオリも見えるけど、それも全部飲んじゃいました。

飲んでみると過去に飲んだドメーヌ・モンやドメーヌ・ユイといった余市町の生産者のスパークリングワイン同様、やっぱりトロピカルな香りがする。ドメーヌ・モン(モンペ)、ドメーヌ・ユイ(T6+254ロゼ ペティアン)は亜熱帯のジャングルや南の島みたいな爛熟した香りがしたけど、これは八重山諸島くらいのいわばセミトロピカル感セミトロピカル感ってなんだよ。いずれにせよ、この味の感じが私は非常に好きだ。トロピカルフルーツの香りと若干の苦味。

価格は2695円で、フルーツとしての生食用ブドウの価格を考えると高くないように思える。世界には2695円で飲めるおいしいワインが無限にあるが、「旅路」という品種で造られたワインは日本ならではの感があって、それも買う理由となる。「旅路」の特徴がどのようなものかは初めてなので正直まだよくわからないけど。

そして、余市町のワインにはガチのマジでハズレがないという私のなかでの余市不敗神話がまたひとつ継続されたのであった。

 次はなに飲もうかな。推し自治体があるって素晴らしい。

 

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