ピーター・レーマン ポートレイト シラーズを飲んでみた。
3000円以下のおいしいシラー/シラーズを探す「安うまシラーMAP」という企画を本ブログではやっているのだが、今回飲んだのはtwitterでおしえていただいた安うまシラー。その名も「ピーター・レーマン ポートレイト シラーズ」だ。
たぶんピーター・レーマンその人なんだろうけれどもその人の横顔がデザインされているなにかしら・ワン的なラベルが印象的なこのワイン、果たしてどのようなものなのか。
“バロッサを救った男”ピーター・レーマンとは何者か
さっそく生産者サイトを見ると、ピーター・レーマンその人の歴史が詳しく紹介されている。ときは1977年、ピーターがワインメーカーとして所属していたソルトラム社は、生産の余剰を理由にブドウの購入を拒否し、1978年ヴィンテージを生産しないことを決定。
そうなると、140軒もの家族経営の生産者の生活が破綻してしまう。そこで立ち上がったのがピーターで、ローンを組んで設備を整えると小さなワイナリーを設立。「The Futures」と呼ばれるワインをリリースするに至る。
なぜ「The Futures」かといえば、それはピーターが「ワインが売れたらお金を払う」という約束を交わしていたからなんだそうだ。かくして生産者は救われ、輸入元のサッポロビールの説明によれば、ピーター・レーマンは「バロッサの男爵」と呼ばれる地元の名士になったそうな。男爵といえばバロン。バロンといえばバロン・フィリップ・ド ・ロスチャイルド。バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドといえばオーパス・ワン。つながった……!?
バロッサ(バロッサ・ヴァレー)はどんな産地か
バロッサという産地についてもサクッと調べようと検索してみると、バロッサ・ヴァレーのwikiページがヒットした。それによると、この地にドイツ人入植者の500家族がたどり着いたのは19世紀半ばのこと(オーストラリアへの入植者はほとんど英国人だが、この地は例外的にドイツ人が入植したそう)。ほどなく、温暖で肥沃なこの谷がワイン栽培に理想的であることを知った彼らがブドウの木を植えたところからこの地のワイン造りの歴史ははじまっているそうな。
彼らが植えたのは、最初は故郷の代表的品種であるリースリング。次いでシラーズを植えた。ブドウの木はすくすく育ったが、20世紀半ば、カベルネ・ソーヴィニヨンが流行したことで、当時あまり人気のなかったシラーズはブレンド用ワインの扱いとなっていった。
潮目が変わったのは20世紀後半で、バロッサ・ヴァレーのブティックワイナリーがつくるシラーズが国際的な評価を受けるようになったこと。それによりバロッサ・ヴァレーのシラーズは人気となり、やがてオーストラリアを代表する産地としてみなされるようになっていったのだそうだ。
バロッサとピーター・レーマン
このバロッサ史をピーター・レーマンの個人史と重ねてみると、まさに絶妙のタイミングでワイナリーを設立し、生産者との関係を気づいたことがわかる。不況でみんなが不動産を手放していたころに逆張りで物件を買収しまくり全国チェーンを築き上げた某ホテルグループ的な動きを無意識にしていたみたいな。
ちなみにバロッサ自体はバロッサ・ヴァレーとエデン・ヴァレーから成り、ピーター・レーマンはその両方の農家と契約しているようだ。
ポートレイトシリーズはピーター・レーマンのポートフォリオのなかでもっとも廉価なレンジのワインのようで、現地価格は約1629円。日本での希望小売価格が2000円だからさすがサッポロビールの調達力。
バロッサ男爵、ピーター・レーマンの味わいはいかがなものか。いざ、飲んでみよう。
ピーター・レーマン「ポートレイト シラーズ」を飲んでみた
さてこのワイン、飲んだ印象としてはやっぱりうまいよオーストラリアのシラーズは、と、浪花節だよ人生は、みたいな感じでしみじみ思う味だった。
馬鹿みたいな言い方になってしまうのだがものすごくシラーズっぽい味なんですよこれ。果実味たっぷり、スパイス香しっかり。渋みと酸味もちゃんとある。このワインの特有の個性はなんだと問われると困るのだけれどシラーズ特有の個性はこのワインにすごく特徴的に示されている、という感じがする。
というわけでピーター・レーマン ポートレイト シラーズは1000円台で買えるお手本的なシラーズだったのだった。シラーズって本当においしい品種だよなあ。