イエローマジックワイナリー「パンプアップ オレンジ」を買ってみた
イエローマジックワイナリーの「パンプアップ オレンジ」を飲んだ。以前ワインショップ・ウィルトスの試飲会で飲んで気に入り、後日同ショップを訪ねた際に購入した1本だ。
イエローマジックワイナリーというインパクトの強い名前は以前から知っていたけれど飲むのははじめて。せっかくなのでどんな生産者なのか調べてみたら公式サイトに面白い話がいっぱい載ってたのでサクッとまとめてご紹介します。
さて私は自然派みたいに呼ばれるような感じのワインも好きなのだが、ボロボロの小屋の中のあまり清潔そうに見えないタンクにブドウを詰めてあとは放置、ブドウ自体の力を信じてるんだ、僕は、みたいな感じの生産者はちょっと苦手(私の思い込みのなかにしかそのような生産者はいないかもしれないが)。
そうではなくて、科学や醸造のたしかな知識とともに、味わいを良くするための無数の方法の中から、ベストの選択肢として農薬を撒かず、培養酵母でなく天然酵母を使い、結果的に自然派みたいに呼ばれるような感じのワインを造っている生産者をよりリスペクトしたいと常々思っているのだが、イエローマジックワイナリーはそのうちの後者という印象を受けた。
イエローマジックワイナリーはどんな生産者か
醸造家の岩谷澄人さんは1965年生まれ。アパレルメーカー就職後、1990年から葡萄栽培&ワインメーカーとして28年従事した後、2019年に醸造免許を取得し、イエローマジックワイナリーをオープンさせたとある。滋賀の「ヒトミワイナリー」に立ち上げからいた方なんですね。
「『ラブルスカ(生食用葡萄品種)』には日本固有のDNAが刻み込まれている」という岩谷さんが、「今までの経験の集大成」として独立して選んだ土地が「デラウエアの聖地『山形南陽市赤湯』」。その地の契約栽培葡萄から生まれる「身体にしみるうま味を感じるワイン作り」を目指しているのだそうだ。
葡萄栽培は無農薬。それは、果皮や果梗に住みついた自然酵母を生かすためであり、厚く育てた皮や果梗、そして種も含めて醸すことで土地に根差した味覚を引き出すためなんだそうだ。
理想とする味を出すために農薬を使わないという選択をしていて、理念が先行していない印象を受ける。しかもそのためにブドウをビニールで被覆するなど独自の工夫もしている。そうして育てたブドウをゆっくりと、時間をかけて醸していくのだそうだ。
今回飲んだパンプアップ オレンジは山形県産のナイアガラ、ロザリオビアンコ、甲州で作る微発泡のオレンジワイン。「除梗破砕したものと全房を層にした「ミルフィーユ式」のマセラシオンカルボニックを4週間した」というワインだ。「ミルフィーユ式」、字面が問答無用でおいしそうである。
<追記 2021.8.6>
このミルフィーユ式に関して、公式サイト上のチャットツールを通じて質問したところ、以下のような回答をいただいた。(注:一部ヒマワインが文言を補っています)
破砕した房と破砕してない房を交互にタンクに積み上げることによって 4週間以上放置してもスムーズに発酵が進むように、もう20年以上前からやってる独自方式です。 この方法によって 過度な醸しから由来する「苦さ」を軽減できフルーティな味わいにしてくれます。
20年以上もの間磨き上げられた醸造技術だったとは……! そして、お忙しい中ご回答いただいたことを、この場を借りて感謝申し上げたい。ありがとうございました。
<追記おわり>
アルコール度数は9度。製造本数は1450本、価格は2640円だ。いざ飲んでみよう。
イエローマジックワイナリー「パンプアップ オレンジ」を飲んでみた
よく冷やして王冠をぺこりと外し、グラスに注ぐとシュワシュワとほどよい泡立ち。色はオレンジ感はあまりなく、なんつーんですかねこれは。山吹色みたいな赤みを帯びた黄色という印象だ。
香りはデラウェアらしい甘い香りはやや控えめで、5月の新緑と7月の草いきれと9月に実る果実の中間地点みたいないい匂い。少しシソっぽい。おいしいデラウェアから造られたワインはいつも子どものころに母が作ってくれた素麺の味を思い出すんだがこれは私の脳内だけに発生する固有のエラーなのだろうか。
飲んでみると甘さはなくドライで、これまたデラウェラらしいゴマみたいな香ばしさがある。そしてこれぞ日本人の心だよ、っていうUMAMI的な味わいもたっぷり。アルコール度数9%だから無理なく飲めるしこれ本当いいな。決してストロングじゃない、どこまでもやさしいアルコール9%。
それらがシュワシュワの泡にくるまれて、飲み口はあくまでさわやか。なるほどこれがバブル方式……!(違う)
ともかく、試飲会で飲んだ印象そのままにとってもおいしかったのだった。国際品種的な味わいを積極的に目指さない、日本の気候風土に合ったブドウを使った地酒としてのワイン。私はそういったワインが明らかに好きだな、と改めて確信した次第。