【ゆる募:若干名】
— アフリカー店主 ToshiKoizumi (@Toshi_Koizumi) 2023年4月11日
4/14(金) 夕方に南アからワイナリー(シャノン)が営業に来ます。一緒にテイスティングしたい方。
4/16(日) 南アの隣国の隣国アンゴラ共和国のワインテイスティング。
アンゴラ共和国さんの初ワイン。テイスティングして欲しいとの依頼。
共に数名です。ご興味おありでしたら。
ツイッターを眺めていたら南アフリカワイン専門店・アフリカー店主の小泉俊幸さんが「今度シャノンが来るから一緒に飲む人いない?(大意)」とツイートしているのを発見したので光の速さで応募したら「来て良い」という返事を受信したので行った。
南アフリカ・エルギンの生産者「シャノン」
シャノンは南アフリカの冷涼産地・エルギンを本拠地とする生産者。以前、同生産者の「ロックンローラー ピノ・ノワール」を飲んだときに異常においしいと感じたことがあったのだが、実はメルローで有名な生産者なのだそうだ。そのあたりのことは後々詳しく述べていく。
さて、なんかこう消費者を交えたプチ生産者来日イベントみたいな感じかな? と思ったら異なり、生産者が輸入元(コノスルでお馴染みのスマイル)の営業とともに販売店を訪問するという純度100%のB2Bの場。私は「えーっと、あなたは……どちら様?」みたいな立ち位置での参加だ。私はこういう状況がまったく気にならないタイプです。(結果、生産者の方にもスマイルの方にもすごく親切に対応していただきました)
シャノンのワイン4種をテイスティング
さて、この日用意されたワインは4種類。
シャノン セミヨン 希望小売価格3800円
シャノン カパルバン 希望小売価格5000円
シャノン エルギン ピノ・ノワール 希望小売価格3100円
シャノン マウント・バレット 希望小売価格8000円
3000円台から8000円までの赤2種白2種。コスパが爆発している南アフリカワインにおいて8000円は一部の例外(シャノンには『ブラック』という希望小売価格1万1000円のプレミアムワインもある)を除いたほぼ最高レンジと言ってよく、一体どんな味わいなのか期待が膨らむ。
説明をしてくれるのは栽培家ジェームス・ダウンズさんの実の兄・スチュアートさん。なんと私の大好きなワイン・チリの「コノスル」の輸出部長を務めていたという人物だ。えっ、すげえ人じゃないの。そんなスチュアートさんと自称ワインブロガーの私がグータッチで挨拶を交わし、いざ試飲スタートだ。
シャノン セミヨン2015
まずいただいたのは「セミヨン 2015」(ティム・アトキン93点)。
「ハーフヘクタールの畑に植えられたひとつのクローンだけを使用し、100%野生発酵を行なっています。発酵は500リットルの樽。新樽率は50%です」(スチュアートさん)
スチュアートさんいわく、セミヨンは南アフリカではあまり植わっていない品種。それをなぜ造っているかといえば、それは「最初にソーヴィニヨン・ブランありき」だったそう。ソーヴィニヨン・ブランだけだと草っぽくなりすぎるため、補助品種として取り入れたのだそう。
そうして、次に飲む「カパルバン」に使っていたところ、「セミヨン単独おいしくないか?」となり、晴れて単独ワインとしてリリースされるに至ったという。
今回飲ませてもらったのは2015で、4種のなかで唯一のスクリューキャップ。なぜかと聞いたところ「スクリューの熟成の感じをチェックしたかった」とのことで、2016からはコルクに変更。さらに2017からは「トライアングルブロック セミヨン」という名前に変更になるそうだ。
なんかこう、年々本気になってる感じがするというか飲めるタイプの出世魚、みたいな感じがしてすごくいい。
飲んでみると、樽発酵ならではの厚みがありながら非常にフレッシュな果実も感じられる。それでいて後味はエレガント。冷涼地域・エルギンならではの高い酸がワイン全体の緊張感を高めていてとてもおいしいワインだった。いきなりすごくいい。
シャノン「カパルバン 2016」
続いてはそのセミヨンを70%、ソーヴィニヨン・ブランを30%使ったボルドーブレンド「カパルバン 2016」(ティム・アトキン92点)。
「カパルバンは南アフリカの言葉で『白い馬』の意味。シュヴァル・ブランも白い馬っていう意味ですよね。これが我々のホワイトホースなんです」とスチュアートさん。なるほど。
さて、このあたりからワインの説明のなかに「クローン」という言葉が頻出するようになる。なんでも醸造家のジェームスさんは大学時代にサーモンの養殖と品種改良を専攻しており、ワイン造りにおいてもクローンへの関心が強いのだそうだ。
スチュアートさんに聞いたところ、シャノンで植えているクローンの数はピノ・ノワール4、メルロー5、シャルドネ3、ソーヴィニヨン・ブラン3、セミヨン1の(たぶん)16種類。「クローンが違えば収穫時期も違う」とのことで、それをどうブレンドしていくかがシャノンのワイン造りの核になっている。
この「カパルバン」にはソーヴィニヨン・ブランの「316」と「317」のふたつのクローンを使用。
こちらも樽発酵で、セミヨンは500リットルの大樽、ソーヴィニヨン・ブランは225リットルの小樽を使う。
「2016ヴィンテージはちょうど今がパーフェクトな飲み頃です。マンダリンの皮をブレイクしたときのような香り、白い花、レモンなどが感じられると思います」(スチュアートさん)
ソーヴィニヨン・ブランが混ざった分だけハーブっぽさやレモン感が増し、これも非常においしいワインなのだが、個人的には無印セミヨンのほうが好き。
ソーヴィニヨン・ブランが好きならこちら、よりボルドー・ブランっぽい感じが好きならセミヨン単一、といったところだろうか。
シャノン エルギン ピノ・ノワール2017
さて、ここからは赤ワイン。まずは「エルギン ピノ・ノワール 2020」
「このピノ・ノワールは、115クローンと667クローンを使用しています。115は古くからあるディジョンクローンで、高い酸、薄い色、緊張感が特徴です。667はニュー・ディジョンクローン。高いアルコール、男性的(マスキュラン)、構造感(ストラクチャー)が特徴です。」
なんでもピノ・ノワールのクローンは100番台がクラシックでエレガント。数字が大きくなるほど一般にニューワールド的といわれるニュアンス、すなわち明るい感じになっていくそうだ。
クローンに関してはわかってるような、全然まったくわかってないような、と感じる人がほとんどのはずなので、私の友人で醸造家のNagiさんのこちらの記事を参照いただきたい。同じ品種でもクローンが違えば、クルマでいうところの同じ車種でもオートマかマニュアルかくらいの違いがあることもあるそうですよ。↓
nagiswine.comシャノンのエルギン ピノ・ノワールに話を戻すと、このワインはアフリカーで3000円を切る価格で売られているが、これは3000円以下の最強ピノ・ノワール戦線の最前線で戦うべきワイン。非常に良い。
スチュワートさんの言う通り色は薄めだがソプラノ歌手の発声練習のような高い酸と、それとは裏腹の子猫的親しみやすさが共存している。単なる薄うまではない、薄うまかわいいピノ・ノワールといった印象だ。
ちなみに、「色は薄め。緊張感と凝縮感(コンセントレーション)があります。ストロベリーやチェリーのパフュームを感じられると思います。美しい酸があり、余韻も非常に長いですね」とスチュアートさんが言っていたのでマトモなテイスティングコメントとしてはこちらをご参照ください。
シャノン マウント・バレット2019
最後に飲んだのが「マウント・バレット 2019」。シャノンは南アワインガイドでメルローNO.1を4年連続で獲得しているというメルローの名手。その特徴は「ソフト」であることのようだ。
「メルローやカベルネといった品種を、多くの人は抽出を強めて色やストラクチャーを引き出そうとしますが、このメルローはすごくソフトにピジャージュ(櫂<かい>で発酵槽の液面に浮かび上がる果房を押し入れる作業)を行っています。20カ月の樽熟成を経て、ラブリーでソフト、ベルベッティでシルキーになっていると思います」
使用しているクローンはフレンチクローン2種、イタリアンクローン3種。3ヘクタールの畑を5区画に分け、区画ごとにクローンを植えているのだそうだ。
ワインは100%野生発酵で、新樽率25%の225Lのフレンチオーク樽をマロ発酵と熟成に使用という贅沢な造り。
で、飲んでみるとこれはもう紛れもなくやべえやつなんですよ。2019ヴィンテージなので今飲むにはもちろん早い。しかし、まだなにも成し遂げていない花巻東高校時代の大谷翔平だって既に十分にすごかったのだ。それと同様、ポテンシャルが完全開花とはほど遠い状態のこのワインもすでに十分に素晴らしいと私は感じた。
すごいワインは風景を見せるというがこれもそれ系。思い浮かぶのは桜の盛りを間近に控えた春の上野公園(しかもなぜか江戸時代)。緋毛氈の敷かれた茶店のベンチに腰をかけ、ポカポカ陽気の下で桜餅を食べている情景だ。
冷涼な産地から生まれたとは思えないほどの温もりがあり、あんこや餅を思わせるような甘みがあり、桜の葉の塩漬け的なハーブ感があり、全体を締め上げる酸もしっかりとある。まだ全体に8分咲きで、真の見頃はまだ先だが、すでに十分に楽しめる。
メルロー100%というと思い浮かぶのはやはりボルドー右岸だと思うが、ボルドー右岸の印象よりも個人的には丸くて温かくて柔らかい。スチュアートさんはそれを「フェミニン」と表現しておられたが、たしかにな、と感じた。本ブログではジェンダー表現を意識的に使わないようにしているが私の表現だとふわふわでぽよぽよ、なのに酸。みたいになってしまって埒があかないし、ここは「フェミニン」でいかせてください…!
「本国で2012年ヴィンテージを飲みましたが、フレッシュネスとアシディティがあり、同時にパワーもある。ボルドースタイルらしいタンニンと構造感もあって、すでにクラシックと呼べる味わいでした。ただ、2019も南アではすでにレストランでサーヴされていますし、アプローチャブルな状態だと思います」とスチュアートさん。2012、やっべえだろうなぁ。
シャノンのテイスティングを終えて
というわけで冒頭にグータッチで挨拶を交わしたスチュアートさんと最後はガッチリ握手を交わして、試飲会は終わった。ナイスガイだったなあスチュアートさん。いつかまたどこかでお会いしたいものである。
そして、ピノ・ノワールやシャルドネ、リースリングといったブルゴーニュ品種の印象があった冷涼地・エルギンにあって、メルローやセミヨン、ソーヴィニヨン・ブランといったボルドー品種を中心に成功を収めているシャノンのテイスティングは、南アワインへの理解をさらに深めてくれるものだった。
シャノンのワインの数々はアフリカーで売っているので、みなさんぜひ東京・水天宮のアフリカーへ。グラスを選んで試飲ができて、生ハムをその場で切ってもらえて、チーズや食品もたくさんあり、コーヒーまで飲めちゃいますよ。
そして素晴らしい機会をくれたアフリカーの小泉さん、丁寧に説明してくれたスチュワートさん、そして株式会社スマイルの皆様に感謝。シャノンはガチ。
アフリカーでマウント・バレット2018が5830円で売ってるけど絶対買いですよこれ
売り切れたようで7300円に。買い逃した……涙
af-liquor.comアフリカーで品切れになってるエステート ピノ・ノワールはこちら↓