南アフリカワイン販売解禁。禁止期間に起きたこと
南アフリカのワイン販売が解禁になったことを受けて、ウォールストリートジャーナルにかなり詳しい解説記事が掲載されていた。
タイムラインをおさらいすると、南アフリカのワイン販売禁止は3月26日から8月17日まで、6週間(6月1日〜7月12日)の緩和期間を除いて4カ月間くらい続いた(タバコの販売や、犬の散歩も禁止されたそうです)。
ただ実際は、ティポットからお茶の代わりにワインが注がれ、コーヒカップにシラーやピノ・ノワールが注がれて客に提供されていたのだとか。メッセンジャーアプリでの“取引”も盛んに行われたみたい。なにかを禁止すると禁止されたなにかは地下化する。ステレンボッシュのある家族経営のワイナリーは「従業員に給与を払うためにそれをしなければならなかった」と語ったそうだ。
「酔っていては、兵士は戦いに勝つことはできません」
これが、南アフリカが2度目のアルコール販売禁止時に担当大臣が口にした台詞だそうだ。その是非は、実際に禁止措置がCOVID-19の患者数や、ベッドの病床の空き状況にどういう影響を与えたかが記事中にないのでわからないが、ともかく大変な影響が起きたことはわかった。
ワイン販売「禁止」と人間のサガみたいなことについて
私が南アフリカのワイン販売禁止に興味があるのは、もちろんワインが好きでワインのニュースに興味があるからなのだが、国による「禁止」がどんな影響をもたらすのか、そこに興味を覚えたから。ストレス下で人は不寛容になり、気に食わないものを目にすると「禁止しろ!」と思ってしまう。そう思ってしまうのは仕方がないけれど、「禁止」がなにをもたらすかを知っておくことは今のご時世すごく大切だと思う。
予想もつかないことは起こる。ワインの販売禁止が、ワインビジネスと雇用に影響を与えるのは考えるまでもないし、それによって倒産が起こればワインの多様性が失われることも予想できる。ただ、コーヒーカップにピノ・ノワールが注がれるというディテールまでは想像できない。
苦しんでいる生産者の方を思えば不謹慎のそしりはまぬかれないが、ワインの販売が禁止されても、コーヒーカップにピノ・ノワールを注ぐ人がいて、そのルビー色のコーヒーを渋い顔してすする人がいる。人間っていうのはつくづくおかしくて、悲しい存在だ。「ミルクは入れるかい?」なんてジョークを言う人はいただろうか。「禁止」されたらそれで問題のすべてが解決するわけではなく、物事はもう少し複雑だ。そのことを、今回の南アフリカにおけるワイン販売禁止から私は学ぶことができた。
WSJの元記事は下記。今なら2カ月間100円で全記事読めるみたいなので良かったら。
As South Africa Lifts Ban on Wine Sales, Many Vintners Fear It’s Too Late - WSJ
記事のタイトルに「サウスアフリカのワイン販売が解禁されたが多くの生産者は手遅れだと感じている」とあるように、引き続き南アフリカのワインを買って応援したいところ。もちろん、世界中の生産者がコロナの影響で苦労されているのだろうけれども。
南アフリカワイン解禁を南アフリカのシラーとボルドーブレンドで祝う
さて、本記事は南アフリカワインといえばこの人という有名ブロガー・KOZE氏にご教示いただいた南アフリカの3000円以下でオススメのワインを飲む、という記事の最終回を兼ねている。
本記事は、KOZE氏のこのツイートを元にワインを選んでいます↓
南ア3千円以下打線組んだ
— KOZEのワインブログ (@kozewine) 2020年8月2日
1 (遊) アタラクシアSB
2 (二) ヴィリエラジャスミン
3 (右) グラハムベックBdB
4 (左) ポールクルーバーCh
5 (一) グレネリーリザーヴ赤
6 (三) ジョーダンCh
7 (中) ポークパインリッジシラー
8 (捕) マイルズモソップ イントロ赤
9 (投) シモンシッヒカープスヴォンケル
KOZE氏が選んだ「南ア3千円以下打線」のうち、私が獲得したのは1番、2番、5番、7番、8番の各選手。ここまでの成績をおさらいすると、まず1番ショートのアタラクシア ソーヴィニヨン・ブラン選手がめちゃくちゃおいしくて先頭打者ホームラン、2番ヴィリエラ ジャスミン選手がセーフティバントの処理に焦った三塁手が悪送球でもたつく間に圧倒的飲みやすさで3塁到達、 3番と4番が連続敬遠(飲んだことがあったので今回未購入)のあと、5番グレネリー エステート・リザーブ・レッド選手が重厚感あふれる構えから走者一掃の2ベースヒットを放って2塁塁上でガッツポーズしたところである。
そして今回飲んだのは、7番センターのブーケンハーツクルーフ ポークパインリッジ・シラー選手と8番マイルズ・モソップ・ワインズ ザ・イントロダクション・レッド選手。本来であればそれぞれに紙幅を割きたい素晴らしい選手、もといワインたちであったが南アフリカの販売ワイン解禁を受けて、南ア月間もひと段落ということでまとめて紹介するのが今更ながら惜しまれるようにホント美味しかったです両方。
さて、5番、7番、8番と赤打者(右打者、みたいなイメージで)を飲んだのが、私にとっては南アフリカの赤ワインをちゃんと飲んだほぼ初めての機会だったのだが、いい意味で思ってたのと違った。もっとニューワールドっぽいと思ってたんです。選者であるKOZE氏のお好みという可能性も当然あってしかるべしとは思うけれども、驚くほど「ぼくの考えるフランスワイン」っぽかった。フランスの格付けシャトーの元オーナーが造るグレネリーはもう思いっきりそうで今回飲んだイントロダクション選手もそうだった。
とはいえ私は自分の味覚を1ミリも信用していない。本当に南アのワインとフランスのワインには共通点があるのか、
「南アフリカワイン フランスワイン 似てる」
という知力16くらいの検索ワードをクエリにぶち込んでみたところ、購入元のショップ・アフリカーの「南アフリカワインの特徴」という記事がヒットした。そこに、「なぜ南アフリカワインを選んだのか?」というアンケート結果が掲出されていた。
・フランスワインの半額で、同等品質のワインが飲めるから!
・アメリカワインに疲れたから。
・南アフリカは、アメリカとフランスの中間くらいの味わいで、程よいから。
そこには以上のような文言を見つけることができた。ですよね。
ザ・イントロダクション・レッドとポークパインリッジ・シラーはどんなワインか
今回飲んだうち、「イントロダクション」はメルロー46%、カベルネ・ソーヴィニヨン35%、カベルネフラン15%、プティヴェルド4%で果実味、酸味、渋みのバランスが非常にいい感じ。ボルドーワインのことをほぼなにも知らない私でも「ボルドーっぽい感じですかねこのワインひょっとして?」って小声で言っちゃう感じである。今アフリカーのサイトを見たら「エレガントで酸の効いた綺麗なボルドースタイルのワイン」って書いてあったので自信を持って言い直そう「ボルドーっぽいワインです」と。
また、「力強さと果実味豊かなニューワールド的なニュアンスと、エレガントな旧世界的な両方のニュアンスを持ち合わせている」のがもう1本のブーケンハーツクルーフのワインの特徴だそうで、「ポークパインリッジ・シラー」はまさにそのような印象を受けた。
今回飲んだ赤2本、どれも美味しかったけど1本だけ選べと言われたらこれかなぁ……という感じ。1年前の自分に勧めるのであれば間違いなく「ポークパインリッジ・シラー」で、1年後の自分がもしボルドーワインの経験値を積んでいるとしたら「ザ・イントロダクション・レッド」を選ぶような気もする。南アフリカワインの懐の深さを感じられるセレクトさすがっす。
ブーケンハーツクルーフのワインも、マイルズ・モソップ・ワインズのワインもまた間違いなく飲む。各ワイナリーについては、そのときにさらに詳しく調べてみようと思った次第だ。