ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

テイマーリッジ ピノ・ノワール。タスマニアのU3000円ピノの実力は? 【Tamar Ridge Pinot Noir】

オール・ユー・ニード・イズ・ラブ(そしてピノ・ノワール

ワインの公式サイトを訪れると時折いい感じの言葉と出くわすことがあるが、今回飲んだオーストラリアはタスマニアの「テイマーリッジ」の公式サイトにもいい言葉があったので冒頭にご紹介したい。

All you need is love (and Pinot Noir)

これである。いいこと言うじゃないテイマーリッジ。愛とピノ・ノワールがあれば人生は大体なんとかなる。

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テイマーリッジ ピノ・ノワールを飲みました(レモンに意味はありません)。

さらに公式サイトはこう宣言する。

We're Pinot Noir makers first, winemakers second.

大丈夫かな? ちょっと言い過ぎてない? そっと肩を抱きながらそう問いかけたくなってくる気合の入り方。バスケ部の先輩のことが好きすぎるもうダメ死ぬみたいになってる17歳みたいな勢いのピノ・ノワール愛がなんともアツい。

タスマニアピノ・ノワール「テイマーリッジ」はどんなワインか

で、なんだっけ。そうだ3000円以下の世界のおいしいピノ・ノワールを探すという弊ブログのポリシーにのっとって、今回はテイマーリッジのピノ・ノワールを飲んだのであった。

輸入元の都光のサイトによれば、テイマーリッジの設立は1994年。実業家、ジョセフ・クローミーがが設立したとある。ジョセフ・クローミーのワインは過去に飲んだことがあってそのとき調べたところによればクローミーはチェコ出身で第二次大戦後の祖国の混迷を逃れてオーストラリアに移住し立身出世を果たした人物。そのデイリーレンジのピノ・ノワールペピック」も大変おいしいワインだったのだった。

himawine.hatenablog.com

その後2010年にテイマーリッジはブラウンブラザーズなる会社に買収され、今に至る。同じ都光が輸入するタスマニアワイン、デヴィルズ・コーナーもブラウンブラザーズのブランド。タスマニアの比較的温暖な地域で造られるのがテイマーリッジ。冷涼な地域でつくられるのがデヴィルズコーナーみたい。

タスマニアの気候を調べてみると、夏でも最高気温21度とかで涼しく、島全体は降水量が多いがテイマーリッジがある北部では少ないようで、要するにピノ・ノワールを栽培しやすい気候のようだ。いいじゃないタスマニア。国連が認める「世界で最も空気のきれいな場所」なんだそうだタスマニア。吸いに行きたい、その空気。ワイン片手に。

テイマーリッジ ピノ・ノワールが妙に安い件

さらにこのテイマーリッジ ピノ・ノワールで特筆すべきは価格だ。私は今回飲んだ無印ピノ・ノワールを2145円で買ったのだが調べてみると現地価格は34豪ドル=2700円くらいで現地価格より安く買えたことになる。2019年9月の都光のプレスリリースを調べると、テイマーリッジの価格は3900円。デヴィルズコーナーの価格は2800円で、デヴィルズコーナーの販売価格は2020年1月7日現在で2728円だから、テイマーリッジは異様にお得だ。現地価格を考えれば元々の値付けも妥当というか良心的に感じられる上に、そこからさらに45%オフということになる。
公式ページによれば、ワインは発酵後新樽率15%のオーク樽で9カ月熟成させるという。ヴィンテージは2017。アルコール度数は13.0度とある。その味わいはいかがなものか、いざ飲んでみよう。

「テイマーリッジ」ピノ・ノワールを飲んでみた

グラスに注いでみると、色はやや赤みがかった紫色で、なんというか新世界のピノ・ノワールだなあという印象。なんだけど、飲んでみるとそこまで濃い・甘い・樽っ! という感じではなくちょうどいいバランス。すっぱ、甘、渋がうまい具合に正三角形。

味わいは三角形だがそれぞれの頂点は丸みを帯びていて、のどに引っかからずにするすると飲める。ベリー、バニラ、ちょっとの草っぽさとバラみたいな香り。ピノ・ノワールらしさを構成する要素が一通りバランスよく手の内に収まってる印象の香りと味わいがする。これは鳴かずにメンタンピン系のアガリまでいけそうだなっていう手牌みたいな味だ唐突に麻雀にたとえると。

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無理に悪く言えば際立った個性がないとも言えるかもしれないが、私のようにワイン単独で食前に飲み、とくにペアリングを考えずに超適当に食事に合わせ、食事のあともテキトーなつまみとダラダラ飲む、みたいな雑飲み・駄飲みに非常に上手く対応してくれる。元サッカー日本代表監督のイビチャ・オシムいうところの水を運ぶ人的なユーティリティ性。守備もできればパスも出せ、たまに点も決めるミッドフィルダーのように、ワイン単独でも飲め、どんな料理とも合わせやすく、たまに超合うものと出くわすとググっとポテンシャルを発揮したりもする。残り物の八角の効いたチャーシューとはそんな感じで良くあった。さらに、中庸とも言えるバランスの上に、昭和なドリンクに添えられたシロップ漬けのチェリーみたいにちゃんと果実味が残されてるのがありがたい。

全体に、元値3900円の感じはたしかにあって、2145円の味ではないな君ィ、みたいな感じがする。お得感ある。オーバー3000円の実力を持つU3000円感。いわばオーバーエイジ枠。

そしてなんといっても忘れてはならないのはこの言葉だ。
All you need is love (and Pinot Noir)

人生には愛と、そしてピノ・ノワールが必要だ。「空気と光と友人の愛、 これだけ残っていれば気を落とすことはない」はゲーテが語ったとされる言葉だが、そこに私は蛇足を加えたい。

「空気と光と友人の愛、 これだけ残っていれば気を落とすことはない。あとピノ・ノワール

というわけで、3000円以下のおいしいピノ・ノワールを探す旅は、まだまだ続いていく。

<つづく>