田原町「101 ichi maru ichi」で日本ワイン会
ヒマワイン会@101と題し、久しぶりにワイン会を主催した。会場は東京メトロ銀座線田原町駅すぐそばの101 ichi maru ichiというおしゃれダイニング。
お友だちのとりゅふさんがお酒のディレクターをしておられる関係で紹介してもらい、この場所での開催となったのだった。
私のセラーの日本ワインを飲んでいただく形式で、集まっていただいたのは私を含めて11名の方々。一瞬で終わってしまったような感覚のある会を、記憶のあるうちに振り返っておきたい(いろいろと気忙しく、メモはない)。
日本ワイン会 ワインリスト
ちなみにワインリストはこんな感じ。私がワインにハマるきっかけとなったドメーヌ・モンのモンペを中心に、LOW BLOW CRAFT、山田堂とドメーヌ・タカヒコ出身の生産者の飲み比べがいわば第一部。
そして元気ワイン、ドメーヌ・ミエ・イケノ、マンズワインはすべてフランス国家醸造士の資格を持つ(目指す)方々が造るワイン。〆に私が飲んだことがなくて人気のセイズファーム、というのが第二部みたいな雰囲気だ。
このリストはtwitterなどでも公開していたのだが、当日の配布資料には実は「裏リスト」がある。それが、参加者の方のお持ち込みリストだ。それがこんな感じ。
持ち寄りワイン会ではないのだが、持ち込みたいという申し出は歓迎というスタンス。
ただし事前にこのリストも公開すると他の参加者の方が「自分も持ち込んだほうがいいのかな…?」みたいになっちゃうかもということで当日まで伏せていた次第で、結果的にはこの「裏リスト」によってワインリスト全体がビシッと引き締まることになる。ありがとうございます。
鈴木ソムリエが準備してくれた席には、店中からかき集めたというグラスが一人三脚。グラスをリンスする用の水とバケツも用意。飲み会と試飲会のハイブリッドみたいな多種類比較試飲最適セット、みたいな状態になっている。
そして料理もすごい。見てくださいよこの前菜。
「映え散らかしてますね……」と思わず参加者みんなでつぶやくほどの映え具合だし映えだけじゃなくてこれ……食べられるんだぜ…!(そりゃそうだ)
LOW BLOW CRAFTの「ナイアガラ」と「旅路」
こんな素敵前菜に合わせ、LOW BLOW CRAFTの「ナイアガラG 2022」と「Road to Nowhere TABIJI 2022」の飲み比べからスタート。「ナイアガラ」は昨年の余市町のふるさと納税で入手したワイン。「旅路」のほうは参加者の一人・いのてぃーさんが余市を訪問された際に現地で購入されたという1本だ。
参加者の方々から「旅路って品種なの?」みたいな声が聞かれるが品種なんですよ、旅路。またの名を紅塩谷……(昔調べた)!
LOW BLOW CRAFTはドメーヌ・タカヒコでの3年の研修を経て2022年に余市に誕生した新しい生産者。
ナイアガラは非常にオーソドックスな、これぞ北海道のナイアガラ、という味わい。香りはトロピカル、そして味わいはドライだ。そして旅路のロゼ泡はアセロラみたいな清涼感のある香りがしてこれもいい。
今回のワイン会は日本ワイン縛りのため日本ワイン好きの方が参加してくれるかなと思っていたのだが、あにはからんや、「普段日本ワインはまったく飲まないのでどんなもんか飲みに来た」みたいな方がほとんど。
なので、乾杯の泡がシャルドネでもピノ・ノワールでもムニエでもなければマカベオでもグレラでもなく「ナイアガラと…旅路……!?(なんだそりゃ)」みたいな感じがすごくよかった。みなさん、これが北海道の割と展開的な泡なんだぜ…!
ドメーヌ・モンの「モンペ2020」と「モンペ2021」
ドメーヌ・モンのモンペ2020と2021も品種はナイアガラなので、雰囲気としてはナイアガラ3種飲み比べ。
私がワインにハマるきっかけとなったワインのひとつである「モンペ」は、明らかにオレンジ色で、やはりトロピカル度が一段階高い。
この記事もう3年前か……↓
そう考えるとナイアガラは果皮にトロピカル成分があるのだろうか。2020は8%、2021は10.5%と1年違いでアルコール度数が2.5%違うという振り幅の大きさも含めて非常に楽しいモンペ垂直飲み比べだった。冷涼産地なのに出来上がるワインがトロピカってる、このギャップが好きなんすよ。
私の人生を変えたワイン、モンペも手持ちは残すところあと1本。そのうち飲みましょう、みなさん。
ドメーヌ・モン「モンケルン2021」
ドメーヌ・モンは「モンケルン2021」も飲んだ。モンがつくるペティアンだから「モンペ」。モンがつくるケルナーだから「モンケルン」。ちなみにフラグシップのピノ・グリは、ドメーヌ・モンがつくるピノ・グリだから「ドングリ」だ。
ケルナーも北海道を代表する白品種(念のためだがリースリングを親に持つヴィニフェラ種だ)で、これはオレンジ仕立て。ケルナーのアロマティックな香りにオレンジならではの酸化ニュアンスが加わって独特なうまみがあった。これもおいしいワイン。
元気ワイン「キュヴェRi 2021」
次はブルゴーニュ大学で学ぶゲンキさんが造る「元気ワイン」のリースリングを飲んだのだが、それに合わせてブルゴーニュに住むゲンキさんにLINEのビデオ通話で登場してもらった。
日本とフランスをつなぎ、造り手の苦労話を聞きながらワインを飲むのは非常に貴重な経験だった。ゲンキさんありがとうございました! 残糖なし、マロなし、タンク発酵&熟成と、むちゃくちゃシャープで酸が効いたリースリングだった。
このあたりでカルパッチョも出していただいているのだがこれが「えっ!?」と思わず声が出るレベルでおいしい。
脂の乗った白身の旨味がオイルでブーストされ、そこにピンクペッパーがいいアクセントになっている。これは白ワイン泥棒。すいません、白ワインください(出てる)!
山田堂「ヨイチミュラー2021」
というわけで予定の順番と前後したが続いてはやはりタカヒコ門下生の山田堂のミュラー・トゥルガウ「ヨイチミュラー2021」を次に飲んだ。余市町登地区「三氣の辺(みきのほとり)」のブドウを使っているのだそうだがこのワインが素晴らしかった。
三氣の辺(粟飯原ヴィンヤード)はドメーヌ・タカヒコのパストゥグランなどにもブドウが使われるワイン用ブドウ農家(昔調べた)。なのだが、粟飯原(あいはら)さんが離農され、2022がラストヴィンテージなのだそうだ。
日本ワインの白ワインは、しばしば酸が強くて果実が弱めなのが問題になるケースがあると思うのだが、これは少しオイリーさがあり、芯の部分にしっかりと白桃のような果実がいる。今回飲んだ白ワインのベストのひとつだと感じた(写真は撮り逃し)。
このあたりでリゾットとオムレツも出てきた。どちらも素晴らしくおいしく、とくにリゾットの味わいは感動的だった。
ソムリエが最近SNSなどでたまに見る「オムレツの中央にナイフを入れると中からトロ〜っとした卵液がこぼれ出るやつ」をやってくれたのだが、思ったよりも火が入っていてトロっとならず、参加者のみなさんに「生の卵はワインと合わせにくいから!」「この状態がベスト!」「これが食べたいんですよ僕は」等フォローされていて優しい世界だった。いや101、ホントに料理おいしいわ。
ドメーヌ・ミエ・イケノ シャルドネ2019
こんな感じで怒涛の北海道(&アルザス)飲み比べが終わり、続いてはこれまた人気生産者であるドメーヌ・ミエ・イケノのシャルドネを飲む順番。
2022年にリゾナーレ八ヶ岳に宿泊した際にメルロー、ピノ・ノワール、シャルドネを試飲し、もっとも気に入って購入したのがこのシャルドネ。
himawine.hatenablog.comこれはやはりパワーのあるワインで、粘性高め、香り強め、酒質も強い。樽と軽く熟成した酸化したニュアンスが複雑味に昇華していて、ふだんはブルゴーニュワインしか飲まないという参加者の方も「これはおいしいです」とおっしゃっていた。普通にワールドクラス的な印象を受けるワインだと思った。
紫藝醸造の翠翠 スズ・ルージュ 2021
ここから、どKUDUさんが持ち込んでくれた赤ワイン2本を飲むことにした。もともとのリストに赤が2本しかなかったのでこの2本の登場で全体のバランスがグッと良くなったのだった。ありがとうございます。
まずはドメーヌ・オヤマダで修行し最近独立された紫藝醸造の翠翠 スズ・ルージュ。紫藝醸造、飲んでみたかったので飲めてうれしい。
これはマスカット ベーリーAを中心にタナ、メルロー、カベルネ・フラン、シラーなどをブレンドしたというワインで、マスカット・ベーリーAらしいキャンディ的な香りは非常に少なく、タナがいい仕事しているのか、ずしっとした渋みを感じられつつ、全体の印象は甘ずっぱくてチャーミング。
雑にまとめると「マスカット・ベーリーAにヴィニフェラ系品種を混ぜた味」で、そういったワインを飲むのはほぼ初めてだったがこれは大いにアリだなと感じた。「日本にもタナがあるんですか!」と参加者の方が驚かれていたが、あるんですよこれがまた。メルローにプティ・ヴェルドにカベルネ・フランにタナに……欧州赤用品種、意外と日本にしっかり根付いてる。
でもって次はトミハラヴィンヤードのミンツチ2021を飲んだのだがこれがこの日のベスト争いに加わる1本だった。北海道上富良野町でビオディナミ栽培された山幸(やまさち)を使ったSO2無添加のゴリゴリ自然派美発泡赤だ。
「ミンツチ」は「アイヌに伝わる半人半獣の水の精霊です」という説明文があったので、透明な液体が擬人化したような幻想的存在をイメージしていたのだがミンツチで画像検索してみると……あっ、カッパですねこれは。カッパ・イン・北海道、それがミンツチ(あるいはミントゥチ)だ。カッパはどこにでもいる…!
味わいだがこれは完璧に私好みの甘ずっぱ味。栽培品種ではない里山に生った野生の果実めいた少しの苦味と酸があり、残糖がわずかに残っているのか少し甘みも感じて飲みやすい。いやこれは驚いた。一切忖度を交えず言葉も選ばずに書くならば山幸のワインで初めておいしいと思ったかもしれない。耐寒性がウリ(だと以前聞いた)山幸でおいしいワインが造れたら最強だ。
北海道ワインファンにはおなじみの山幸だが、日本ワインを飲まない方には当然ながら耳馴染みがないそうで、「やまさちっていうんだ〜」みたいな会話が聞こえてきてうれしい。国際ブドウ・ワイン機構(OIV)に登録された甲州、マスカット・ベーリーAに続く3番目の日本品種なんすよ、山幸。
マンズワイン「ソラリス千曲川メルロー2019」
いよいよラストの赤2本となり、まずはマンズワインの千曲川メルローだ。マンズワインが誇る醸造家・フランス国家資格醸造士の資格を持つ西畑徹平さんの造るワインで、歌舞伎の女形を思わせるような力強さと優美さの両方を感じるワイン(このあたりで私は酩酊状態に突入しており写真はない)。
長野のメルローは日本ワイン感みたいなものがもっとも少ない土地と品種の組み合わせな気がするが、これはまさしくそういうワイン。日本ワインならではの、みたいな注釈がつかない王道のおいしさを感じるワインだった。
このあたりで「星空の黒牛」がメインで出た。北海道標茶(しべちゃ)のブランド牛なのだそうだが泥酔した状態で食べても鮮明に記憶に刻まれるおいしさ。
「星空を見て育った牛です」みたいな説明をいただいて「牛が星空を見ることと肉質には因果関係があるのだろうか…?」と思った記憶がある。とにかくおいしい牛でした。
セイズファーム 「ヨカワルージュ2020」
そして大トリはセイズファームのヨカワルージュ。マンズのメルローはメルロー100%のワインだったがこちらはメルローを中心に、カベルネ・ソーヴィニヨンとサンジョヴェーゼをブレンドしたというワイン。能登半島の付け根、富山湾に面した富山県氷見市で栽培されたブドウからのワインだ。
アルコール度数は12.6%。30%が全房発酵ということもあってか、カベルネ・ソーヴィニヨンが入っているからか、少し青っぽいニュアンスを感じる。あとはちょっと海の感じ。こちらは「日本の赤ワインならではの」感が大いにある無濾過の滋味深い味わいといった印象だった。
ヒマワイン会@101を終えて
以上、11人で12本を飲み、残ったワインは101のスタッフの方々にも飲んでいただいてこの日の会はお開きとなった。最後、会場全体がひとつになる的な感じがあってなんかすごく良かったなあ。半数以上の方々は初対面だったが、会が終わるころには初対面感が全然なくなってるのがワイン会のいいところだ。参加者の皆様に恵まれたおかげで良い会になってうれしい。
ここ101では今後もワイン会などを定期的にやらせていただく予定だ。日本ワイン会第二弾、世界のピノ・ノワール飲み比べ会など、企画をいろいろと練っているのでみなさんご興味と日程の合うタイミングでぜひご参加ください。
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こちら昨日のワイン会でお世話になった田原町のおしゃれダイニング「101 ichi maru ichi」の映え散らかしてると話題のお料理の数々。映えだけでなくめちゃくちゃうまいしワインに合う。オススメ!#ヒマワイン会 pic.twitter.com/oT6T7jbevQ
— ヒマワイン|ワインブロガー (@hima_wine) 2023年7月15日
マンズワインのソラリス 千曲川メルローはふるさと納税でも入手可能です↓