ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

「ホームワイン(Homewine)」とは? 話題のワインサブスクについて、事業責任者に聞いてみた。

ワインサブスクサービス「ホームワイン」とは?

ホームワインというサービスをご存じだろうか。ワインのサブスクリプションサービスで、契約すると100ml入りのワインが毎月4本自宅に届き、佐々木健太ソムリエによる各ワインの解説動画や、ワインのことが体系的に学べる「バイブル」と呼ばれる冊子もついてくる。キャッチコピーは「自宅に届くワインスクール」だ。

毎月1万3800円+送料(初回9800円送料無料)と決して安くない金額のかかるサービスながら、スタートして1年半、すでに3000人規模の会員数を獲得しているという。

私はワインの「学び」とは縁遠い無学・無資格・無節操なただの酒飲みに過ぎないが、ビジネス的にも興味深いなあとボンヤリ思っていたら縁あって関係者にお会いして話を伺う機会を得た。

というわけで、ワインビジネスとしてもサブスクサービスとしても面白い「ホームワイン」について、事業責任者の岡前亮介さんに話を聞いてきた。ちなみに本記事は広告宣伝の類ではない普通の編集記事なのでご安心ください。(PR案件を受けないとは言ってない)

以下、私・ヒマワインと岡前さんのインタビュー形式でお届けする。

 

ホームワイン立ち上げの経緯

ヒマワイン(以下、ヒマ):まず、ホームワインを立ち上げた経緯から教えてください。

岡前亮介さん(以下、岡前):新規事業をなにかできないかと考えていたタイミングで、海外のD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー。製品の製造・販売を一貫して行うビジネスモデル)モデルのなかで、マーケットフィットして伸びているものを20個ほど選定したんです。そして、それらを日本にもってきたときにどうなるかを考えました。

ヒマ:なるほど、まず海外の成功事例を調べたわけですね。そのなかにワインのサブスクモデルもあったわけですか?

岡前:100ml入りの小瓶に入ったワインが3か月に9本届くっていうサービスがあったんです。ただ、それはその年のワインの出来を知るためのサービスで、玄人向けでした。

ヒマ:ちょっと日本でやるにはパイが小さそうですね。

岡前:はい。そこで日本人は「学ぶ」ことが好きな点に注目しました。ワインスクール市場が人口の割に多いこともあり、ワインと「学び」をくっつけようと考えたんです。

ヒマ:ていうか岡前さん、もともとワイン業界の人だったわけではないんですね! てっきり、ワインに精通している方が立ち上げたビジネスだと思っていました。

岡前:サービスを立ち上げたタイミングではまだ早稲田大学在学中で、ワインのことはなんにも知らなかったです(笑)。立ち上げのパートナーに至っては赤ワインが嫌いで、「自分のワイン嫌いを覆すサービスをつくろう」と話していたくらいです。今ではふたりともワインが好きですが。

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ホームワインと佐々木健太ソムリエの出会い

ヒマ:佐々木健太ソムリエとはどのように出会われたのですか?

岡前:ワインのことを学ぶのに、よく知らないソムリエから教わっても感動がないですよね。なので、ホテル、レストラン、ワインスクール……それぞれのトップの方全員にメールをしました。当時僕は早稲田大学の学生で、このサービスでワイン業界を変えたいとお伝えしたところ、6割くらいの方が話を聞いてやろうと言ってくれたんです。佐々木との出会いもそれを通じてですね。

ヒマ:行動力エグすぎますね……。佐々木ソムリエと他のソムリエでは、どこに違いがあったのでしょうか。

岡前:たとえばブルゴーニュボルドーはめちゃくちゃ詳しいけど他は知らない、という方もいたのですが、佐々木の場合世界中のワインのことを知っていました。そして固定ファンが既にいて、なおかつ独立直後で動きやすかったなど、もろもろの条件が揃った感じですね。現在は佐々木が経営する株式会社WINE TRAILが事業主体で、私はその事業責任者という立場です。

ヒマ:私は面識がありませんが、ファンが多くて有名な佐々木ソムリエが前面に出ているのは愛好家にとって安心感につながるし、新規の方でも「なんか良さそう」ってなりそうです。

岡前:YouTubeでも大人気ですし、いまやワイン業界の神的ポジションになってくれていますよね。すごくCVR(コンバージョンレート。成約率)が高い人だと思います。

 

ホームワインと100ml入りの小瓶

ヒマ:ホームワインのサービスを拝見していてすごいと感じるのは、ひとつひとつの事業パーツの精度です。たとえば100mlの小瓶に詰める機械、あれも1から作ったわけですよね?

岡前:そうです。機械学習を使ってプログラムから創薬する会社のCTO(最高技術責任者)を務めている興野悠太郎さんという方がいるのですが、その方と独自開発しています。ただ、これは簡単ではありませんでした。まず機械を試作して100mlの小瓶に詰め、1か月後に私、佐々木、別のソムリエの3人で同じワインの開けたてと小瓶入りの比較試飲を行ったのですが、佐々木には飲んでももらえませんでした。

ヒマ:ああ、香りでわかってしまったわけですね。

岡前:はい。僕は飲んでもわかりませんでしたが(笑)。これではリリースできないと、機械に改良を加えて同じテストを実施して、佐々木が香りだけで判断できずにワインに口をつけたときは「飲んだ!」と内心ガッツポーズでした。オッケーが出るまでには半年かかりました。

ヒマ:100mlに小分けするというと、やはり劣化であったり、味が変わってしまわないかな? という部分が心配。そこに問題がないというのは一番大切な部分だと思います。また100mlという量が絶妙ですよね。

岡前:冒頭に申し上げたように、海外で100mlのワインのサブスクサービスはすでに成功事例としてありました。日本人よりお酒の強いアメリカ人が100mlで満足するという検証がすでにあったので、100mlで問題ないと判断できました。

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ホームワインの動画サービスの秘密

ヒマ:なるほど。ホームワインのもうひとつの柱である動画についても教えてください。

岡前:動画をつくる上で佐々木にお願いしたのは、「僕が知りたい情報だけにしてください」ということと中田敦彦さんに近づけてください」というふたつです。

ヒマ:どういうことなんですか(笑)。

 

岡前:僕はソムリエになりたいわけではなく、ワインのことを楽しく知りたいだけ。そこに向けた情報をくださいということですね。中田敦彦さんはYouTubeの解説動画が人気ですよね。それを徹底的に参考にしてもらいました。「ワインに関してはちんぷんかんぷんだけど、その方針に従って厳しくフィードバックさせてもらいます」と佐々木には伝えて、納得してもらえました。

 

ホームワインと同梱テキスト「バイブル」

ヒマ:ホームワインの3つ目の柱がワインのテキストだと思いますが、これはどういう経緯でスタートしたのですか?

岡前:「バイブル」と呼ばれるものですが、もともとはサービスに含まれていなかったんです。でも、「動画だけだと忘れちゃう」という利用者の声があり、専門のチームを編成して1000万円くらいかけて制作しました。バイブルがない状態でも顧客は増えていて、CPA(顧客獲得単価)も良かったんですが、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の満足度を高めることも重要と判断しました。どんどんサービスが拡充されていくほうが、既存顧客としてはうれしいですから。

ヒマ:継続率にもつながりそうですね。

岡前:はい。ホームワインはもともと毎月1回、全12回で完結するサービスでした。D2Cサブスクサービスの平均継続期間は4か月が業界標準と言われますが、ホームワインの場合継続率が非常に高く、12回を終えてもまだ継続したいという声もありました。そこで、もっとよいワインを同じ月額料金で楽しめる13か月目以降限定のサービス「ホームワインプロ」をリリースしたりもしています。

ヒマ:ホームワインにはすでに高級ワインのルーチェとかブルゴーニュの一級畑、シャブリの特級畑なんかも入ってるわけですよね。それよりいいワインが同価格で届くとなるとすごく魅力的です。

岡前:そこはソムリエである佐々木の力が非常に大きいです。佐々木が世界中の良いワインを調達してくれるので、あっと驚くワインをサービスに組み込むことができています。

ヒマ:ワインの選定は佐々木ソムリエにお任せ、という感じでしょうか。

岡前:はい。その上で、「初回はなるべくわかりやすいものにしてください」といったように、僕らのほうでリクエストを出しています。ロバート・パーカーの点数が……と言われても「それ、誰ですか?」という感じなので(笑)。社会とか歴史の授業みたいな小難しい感じにならないように、わかりやすさを重視しています。

ヒマ:いやー、ワインの裾野を広げる上でもすごくいいサービスだと思いますし、ビジネス的にもすごく勉強になりました!

 

ホームワインについてのインタビューを終えて

というわけで岡前さんとのインタビューをお届けした。岡前さん、なんと早稲田大学を2022年9月に卒業したばかりの23歳とめちゃくちゃ若い。しかし、成功する人に年齢は関係ないんだなと感じさせる知性と行動力を併せ持つ方だった。日本の未来は明るいですよみなさん。

ホームワインはまだまだこの先もあっと驚くサービスを拡充させていく予定とのこと。少しだけ話を聞かせてもらったが、「それがあったら絶対いいわ」というものだった。ホームワインがワイン業界をこれからどう変えていくのか、引き続き注目していきたい。

a.r10.to

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