サイゼリヤでワインを飲みたい(ボトルで)
サイゼリヤが好きだ。安くておいしいからだ。もちろんワインは欠かせない。もっぱらグラスでオーダーして、哺乳瓶にも使われるというtritanなる素材で作られた「割れないグラス」でよく冷やされた白・赤ワインをこれぞ大人の粉ミルクだと料理とともにチュウチュウ吸ってはいい気分になっていた。いずれボトルも頼んでみたいものだ、と常々思ってもいたところ、飲み残したワインは持ち帰ることができるという情報を耳にした。持ち帰り可能なのであればボトル1本を飲みきれない私でも気兼ねなくオーダーできる。というわけで近所のサイゼリヤへと向かった。
サイゼリヤのワインメニューとは
入店して座席に腰を落ち着けてメニューを開くと、ボトルワインとしてメニューに掲載されているのは以下(店舗によってワインリストは異なるようです)。
ハウスワイン・マグナム(白/赤)1100円
ランブルスコ セッコ(赤泡)1100円
ランブルスコ ロゼ(甘口ロゼ泡)1100円
ドン ラファエロ(白泡)1100円
ベルデッキオ(白)1100円
キャンティ(赤)1100円
キャンティ ルフィナ レゼルバ(赤)2200円
うーん、安い。しかもほぼ1100円(税込)均一。普通の飲み屋なら生ビール2杯とかの価格でワインのボトルが頼めてしまう、それがサイゼリヤという国家の物価水準である。
さて、赤ワインのボトルを頼もうと思っていた私が熟考の末に私がオーダーしたのは「キャンティ」である。マグナムはハウスワインなのでグラスで散々飲んでる。となるとキャンティで1100円か2200円の二択となる。1100円→2200円にステップアップは容易だが、2200円→1100円にステップダウンは難しい。よってまずは1100円である。初見は竹、しかるべきのちに松というのが日本人の基本的ストラテジーであろうし、私は石橋を叩いて得たデータをいったん自宅に持ち帰ってワイン片手にじっくり検証したいタイプだ。
サイゼリヤで1100円の赤ワイン「キャンティ ラファエロ」はどんなワインか
というわけで1100円のキャンティを頼んだら来た。ボトルの首には目立つように「DOCG」のシールが貼られている。デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・コントロッラータは声に出して読みたい日本語。1100円だけど、どっこいキャンティDOCGだそうです。
さて、ボトルのラベルに「Raffaello」と書いてあるので名前で検索してみると、キャンティ地方で19世紀末から続く生産者、カンティーナ・ベリーニ、カンティーナはイタリア語でワイナリー的な意味、のサイトがヒットして、ご丁寧に日本語でワインの紹介がされていた。正式名称は「キャンティ ラファエロ」であるようだ。
キャンティDOCGの規定では、使用ブドウはサンジョヴェーゼが70.0-100.0%、当地域特産の他のワイン用ブドウは0.0-30.0%、カベルネ・ソーヴィニヨンおよびカベルネ・フラン0.0-15.0%(一品種あたり10%まで)とあるが、このワインはサンジョヴェーゼ80%、コロリーノ10%、カナイオーロ10%を使用しているとのこと。コロリーノとカナイオーロはトスカーナ州の特産品種で、コロリーノはワインに濃い色を、カナイオーロはサンジョヴェーゼを補佐して果実味を足したり、タンニンを和らげたりするそうな。ボルドーにおけるカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローの関係に似ているそうです。
ラベルにはサイゼリヤのマークが印刷されているのだが、公式サイトに載せられた写真にもサイゼリヤのマーク入りのボトルが載っているのホント異例。OEM品というかこういうオリジナルワインは自社サイトに載せない会社が多いなか、カンティーナ・ベリーニの会社的人の好さ、みたいなのが滲んでなんかほっこりする。ワイン自体は手摘みしたブドウを用い、澱の上で18日間マセラシオン。マロラクティック発酵後、ステンレスタンクで6カ月間熟成するとのこと。
「キャンティ ラファエロ」を飲んでみた
さて、まずは哺乳瓶と同じ素材のグラスに注いでみると、うーん香りが弱い。サイゼリヤのワインは冷蔵庫で冷やされた状態で出てくるので温度の問題かも知れぬと気にせず飲むと、うーんすっぱい。酸味が主体っていうか普通にすっぱい。これもきっと温度の問題なんだそうなんだと一瞬ワインのことを忘れ、グランドメニューを読み込む作業に没頭、注文後、チョリソーと合わせて飲んでみると、おし、いける。香りは相変わらず弱いけど、酸味の殻から果実味が顔を出した感がある。これはこれで一興だわ1100円だしと食事を楽しみつつ半分ほど飲み、予定通りの残りは持ち帰ることにした。
お楽しみはこれからで、帰宅後にテーブルに載せてみると自宅に「サイゼリヤ」って書いてあるボトルが存在しているのがいきなり面白い。なんだろうこの違和感。芸能人とかが知ってる風景の中にいると妙な面白違和感を覚えるものだがその感じに似てる。で、自宅で飲むメリットはなんといっても「割れないグラス」じゃないグラスで飲めるという点。というわけで普段使ってるグラスに注いでみると……あれおかしいな。サイゼリヤのアレよりはいいグラスで飲んでるはずなのにサイゼリヤで飲んだほうがおいしいような気がする。まさかあの割れないグラスに合わせて味がチューニングされている? それとも我々の秘められた胎内回帰願望、バブーに戻りたいみたいな気持ちをグラスの哺乳瓶素材が呼び起こすのか…… !?
とかなんとか適当なことを考えつつも、なんだかんだでチーズやらなんやらと合わせて愉快に完飲。テーブルと椅子とグラスを用意してくれるレストランで1100円なので、もし店頭で買うならばいくらくらいが妥当なのだろう。仮に半額とすれば550円。3桁円クラスのワインなのは間違いがないはずだ。その値段を思えば十分に楽しめたような気がする。最初をサイゼリヤ、残りを自宅で飲むという二毛作的プレイも楽しかったし。次は値段が倍の「レゼルバ」を試し、またご報告したいと思う次第だ。
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