ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

みんな月にワインいくら使ってる? 月3万円でどんなワインが何本買える? 2万5152円で14本買ってみた

2020年5月のワイン予算

ワインの悪いところはそれなりにお金がかかるところで、良いところはそれ以外すべてだ。コスト、みたいなものは俗事であり、本質的なものではない。とはいえ、私の場合不労所得が月に2億円あるみたいな暮らしをしているわけではないため、現実的にはおアシがないとワインは買えない。というわけで、今月から予算を決め、その範囲でワインを楽しむことにした。

さて、予算だが、ズバリ3万円とした。多いような少ないような、中途半端な金額だがこれには数字的根拠がある。

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ワインに月いくら使ってますか?(Arek SochaによるPixabayからの画像)

月のワイン予算3万円で15本のワインを飲む

まず、月に飲むワインを15から16本とする。その根拠は書籍『イギリス王立化学会の化学者が教えるワイン学入門』の記述「男性ならボトル半分、女性ならそれよりもやや少なめが適量だろう」による。1日ボトル半分のワインを飲むと、健康が増進され、ハッピーになり、彼女ができ、受験に合格し、身長も伸びる(伸びない)。というわけで2日で1本飲むペースをベースとする。

デイリーワイン1500円、週末ワイン3000円、プラスα

デイリーワインの価格は世界的に20ドル以下くらいが相場っぽい。そして、1000円以下のワインは、私の眼力では良いもの・そうでないものを見分けることが難しく、人生で飲めるワインの総量が有限である以上、1000円以下のワインに投資するのはリスクを考えるとコストパフォーマンスが悪くなる可能性があるので、リスクとリターンのバランスを勘案し、デイリーワインの基準を1500円前後とする。

平日はデイリーワインを飲むとすれば、ひと月に約22日ある平日に11本のワインが必要だ。ゆえに1500円×11本で1万6500円のコストがかかる。すると残りは5本。少なくとも4回くる週末には多少いいワイン飲みたいよね、ということでここに3000円前後のコストをかけると1万2000円。15本で2万8500円となる。うーん、妥当。残った1500円でデイリーワインをもう1本買うもよし、週末のワインに追加で課金して5000円程度のワインを飲むもよしである。私はワインを主に楽天市場で購入するため、ポイントで5〜10%程度が還元されるので、それを利用するのもまたよし。ポイントが溜まったら1万円を超える高額なワインにも挑戦したい。

14本のワインを2万5152円で買ってみた

以上が予算だ。というわけで、早速月のはじめにワインをいろいろ買ってみた。

まず、エノテカで「トレジャーハンティング 赤」を買った。赤ワインくじですね。送料が1000円くらいかかる感じなので、「今月の送料無料ワイン」である「カイケン ウルトラ マルベック」をついでに購入。マーケティング施策には積極的に乗っかるスタイルである。

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エノテカで買ったのがこちら。トレジャーハント楽しみだなあ

6000円で2本買えたので、これは週末分とする。となると、必要なのはデイリーワインだ。というわけで、しあわせワイン倶楽部でいろいろ買う。

先月アメリカのワインを中心に飲んだので、今月はいろいろな国の、いろいろなブドウを味わおうというのがなんとなくのテーマ。選んだのは以下のワインだ。

ヴァイン・イン・フレイム ピノ・ノワール デアルマーレ(ルーマニア、赤) 1408円エラスリス“エステート”カルメネール アコンカグアヴァレー(チリ、赤) 1397円

バード・イン・ハンド“ピノ・ロゼ” ピノ・ノワール アデレードヒルズ (オーストラリア、ロゼ)2398円

サイクルズ・グラディエーター プティシラー カリフォルニア(アメリカ、赤) 1628円シックス・エイト・ナイン“サブミッション”カベルネ・ソーヴィニヨンアメリカ、赤)2178円

スピアー ソーヴィニヨンブラン ウェスタンケープ(南アフリカ、白)1298円

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しあわせワイン倶楽部で購入したのがこちらのみなさん。

うーん、どれもうまそう。プティ・シラーだけとか、カルメネールだけといったワインは飲んだことがなく、非常に楽しみだ。総額は6本で1万977円。

しかしここで痛恨のミス。これらのワインをすべて5月1日に注文したのだが、配送がまさかのごごご、GW明け。このままだと連休に飲むワインがない。こまった。

というわけで、5月2日にGWも毎日発送の葡萄畑ココスで追加注文したのが、以下のメンバー。ここまでの注文が赤6本、ロゼ1本、白1本と偏っていたため、白を中心に選抜した。

ソアーヴェ クラッシコ2018 サンミケーレ(イタリア、白)1518円
ミッシェル トリノ クマ オーガニック トロンテス(アルゼンチン、白)1012円
リントンパーク76 シャルドネ南アフリカ、白)1584円
イントゥ シャルドネ2018(アメリカ、白)1452円
ペッパーウッドグローヴ オールドヴァイン ジンファンデル(アメリカ、赤)1100円
ベンド カベルネ・ソーヴィニヨンアメリカ、赤)759円

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葡萄畑ココスで購入したのは単価低めのこの6本。

セール品を中心にやや安めの価格帯で選び、総額は6本で8125円となった。

まとめると、3つのショップで赤8本、ロゼ1本、白5本の計14本のワインを購入し、総額は2万5152円となった。今月の残りの予算は4848円。うーん、いいじゃないっすか。

とはいえ、こんなもん厳密に運用できるわけがなく、実際は来月に繰り越すワインもあるだろうし予算もあるはず。さらに、街を歩いていていい感じのワインを見つけて買う、ネットで魅力的なワインを見つけて買う、といったイベントが頻繁に起こるため、すぐにグズグズになる確率は自慢ではないが100%だ。

ともあれ予算は重要だ。5月が終わったときに、また検証してみたいと思う。

 

サブスタンス カベルネ・ソーヴィニヨンを飲んで味と価格と感想をまとめてみた。【SUBSTANCE Cabernet Sauvignon】

サブスタンス カベルネ・ソーヴィニヨンとチャールズ・スミス

昨夜はワシントン州のワイン、ワインズ・オブ・サブスタンスの「サブスタンス カベルネ・ソーヴィニヨン」を飲んだ。

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サブスタンス カベルネ・ソーヴィニヨンを飲みました

公式サイトによれば、ワインズ・オブ・サブスタンスの歴史はチャールズ・スミスという一人の男の歴史だ。

カリフォルニア州サクラメントに生まれたスミスの人生が動いたのは1989年、彼が29歳のときのこと。デンマーク人の恋人を追ってデンマークに移住した彼は、その後の9年間をロックバンドのマネジャーとして過ごす。

1999年、アメリカに帰国したスミスはワインショップをオープン。そして同年、二人のワインメーカーとの出会いをきっかけにワイン造りに身を投じ、2001年には初めてのワインをリリース。瞬く間にスター生産者の地位に上り詰めた彼が、「アメリカでいちばんコストパフォーマンスの良いカベルネ・ソーヴィニヨンを造る」というコンセプトのもとで作り上げたのが、ワインズ・オブ・サブスタンスなんだそうだ。うーん、人生のクセが強い。

元ロックバンドのマネジャーで、本人もメガデスでドラム叩いてませんでした? みたいないかにもロックな風貌だけに、その造り出すワインのレベルもどこか音楽アルバムのジャケットのよう。ワインズ・オブ・サブスタンスのセカンドアルバム「CS」から、聴いてください、曲は“タンニン”みたいな感じ。

サブスタンスってどんな意味?

サブスタンスっていうワードがわかるようなわからないような感じなので調べてみると、物質、なんだけど、どこか概念的というか、本質とか実質、みたいなニュアンスを含んでいるみたいで、これまた公式サイトによれば"This is Cabernet Sauvignon.”っていう意味合いなんだとか。ディス・イズ・イット。マイケル・ジャクソンかよ。

原産地はワシントン州のコロンビアヴァレー。カベルネ・ソーヴィニヨン100%、フレンチオーク樽にて12カ月熟成とのこと。

サブスタンス カベルネ・ソーヴィニヨンの味と価格

飲んでみると、思ったよりも味がド派手じゃなく、むしろ質実剛健な印象を受ける。もっとこうなんつーか、グミの中に高濃度のジュースを凝縮させて口に入れた瞬間にそれが弾けるみたいな味かと思いきや、すごく真っすぐで奇をてらっていない印象。金髪でロン毛で服は空手着に黒帯、「一番」と書かれたバンダナを巻いたアメリカ人男性の握った寿司を食べたら極めて真っ当な江戸前の寿司だった、みたいな印象だ。スミス、締めるところは締める系の仕事できる人と見た。

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vivinoの点数は3.8点。1.7万弱っていうレーティング数が人気を物語る

私はしあわせワイン倶楽部で2728円で購入したので、決して激安ワインってことはないんだろうけれども、味とコストはしっかりと見合ってると思う。和牛のステーキを食べずに迎える明日は今日の俺にはないぞ、みたいな日には十分に選ぶ価値があるんじゃなかなあと思います。

ヘッドクォーターの近くにはワインを飲めるテナントも出展しているみたいで、その内装がまたオシャレ。

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チャールズ・スミス・ワインの直営店的なもの。会社帰りに毎日寄りたい。(写真はグーグルマップより)

マット・ディロン主演の「シングルス」(1992年)という映画の舞台はシアトルで、マット・ディロンは当時流行っていたグランジ・ロックのロッカー役だった。シャレてんなぁ、シアトル。行ってみたいなあと思ったものだがそれから四半世紀以上の時を経て、「シアトルにワインを飲みに行きたい」と思うことになるとは思ってもみなかった。人生って不思議だ。

1万円のワインくじ買ってみた。当たったのは何等のいくらのワインだった!?

いつものようにネットでワインを探していたら、「極赤ワインくじ」なるものに目が留まった。お値段1万円。うーん、高い。

いくらのワインが手元に届くかは神のみぞ知るところだが、いずれにしても1本のワインに支払う金額としては自分市場最高額。なのだが、5月は私の誕生月。たまにはいいよねってことで課金を決意(わたしは楽天の『セラー専科』で買いました)。

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リカマングループの「極赤ワインくじ」のお姿

このブログは、1万円のワインくじが手元に届き、開封するまでのドキュメントだ。さっそくいってみよう。

さて「くじ」というからには、これは広義のギャンブルだ。一定の金額を投資して、投資額以上のリターンを期待するのがギャンブルならば、勝つも負けるも期待値次第ということになる。

公営ギャンブルの期待値は総務省が発表していて、それによれば宝くじは45.7%(売り上げ1兆419億円、当選金4758億円)、地方競馬競艇、競輪、オートレース公営競技で74.8%とある。宝くじを買う行為は、基本的に1000円で457円を買う行為。残りの543円分が「夢」の代金ということになります。

では、今回の「極赤ワインくじ」の期待値はどうなっているのだろうか。まずは、各賞とそのプライズを見ていこう。

極賞 ドメーヌ ド ラルロ/ロマネ サン ヴィヴァン2017(8万円、確率1/100)
特賞 オーパス ワン2005(6万円、確率1/100)
1等 パルマッツ ヴィンヤーズ/カベルネ・ソーヴィニヨン2015(3万5000円、48/100)
2等 4種類(平均価格2万1500円、14/100)
3等 4種類(平均価格1万3700円、36/100)

100本の合計金額(概算値)は307万1000円。
というわけで1本あたりに均すと3万7円。
期待値307%……!
このワインくじを買うことは、1万円で3万円を買う行為……! これは勝つとわかっている勝負! 1等が妙に多いのが逆に気になるけれどもそれは言わぬが花というものだろう。なにはともあれ、確率1/2で1等以上である。

というわけで、買った。
そして、届いた。

ここで重要なのは、極賞、特賞、といったものはこの世に存在しないとまず割り切ることだ。それを期待してしまえば98%の確率でハズレを引くことになるからだ。

1/100になけなしのカネを張れるのがギャンブラーなのだろうが私はギャンブラーではなく、しがないワイン好きに過ぎない。

ハズレはズバリ、3等だ。確率36%で、当選するワインの金額は平均1万3700円。もちろんどれも素晴らしいワインだろうし、1万円で買えるならば27%OFFくらいの計算でお得はお得だ。しかし、せっかく1万円払うなら自分で選びたい。ここを引いたら負けで、それ以外なら勝ちというのが今回のルールだ。確率は36%……!

さて、いざ開封だ。南無東照大権現、とくと御照覧あれ!

ラルロこいラルロ!(言ってることが違う)

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チラシ同梱。一瞬「極賞」当たったかと思った……!

なにがくるんだうらあああああとと裂帛の気合とともに開封。「1/100」の文字が目に入る。ラルロきたあああああ! と思いきや違う! これは同梱のチラシ!

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これは一体……?

出てきたのは2等「メテオール ペルセイド カベルネ・ソーヴィニヨン 2013」でした。パーカーポイント97点とのこと。あらいいじゃない。

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当たったのは2等、売価2万5000円のメテオール ペルセイド カベルネ・ソーヴィニヨン

2万5000円から1万8000円の幅のある2等4種のなかでは最高額で、これは非常にいい結果だったのではないでしょうか。私は宇宙が好きなので、流れ星のラベルもなんともいい。うーん、うれしい。期待値は下回ったけれども、期待値なんてどうでもいいんですよ。大切なのは夢とロマンであります。

というわけで、せっかく当たったこのワイン、5月の誕生日にでも飲もうと思います。楽しみすぎる……!

まだワインを飲んでいないのでなんとも言えないけれども、ワクワク込みで楽しめた「極ワインくじ」。また買います。あー楽しかった。

ロッソ・ディ・カモミを飲んで味と価格と感想をまとめてみた。【ROSSO DI CA'MOMI】

イタリア移民史とカリフォルニアワイン

在宅で仕事をしていたはずが、気がついたらアメリカにおけるイタリア移民史を調べていた。まるで山奥の一軒家で美女の饗応を受けていたはずが朝起きたら馬の糞を枕に寝ていた、みたいな話だが事実だ。おそらく昨夜飲んだワイン「カモミ・ディ・ロッソ」のせいである。

話は19世紀にさかのぼる。北部サルデーニャ王国を中心に、オーストリアハプスブルク君主国に対するイタリア独立戦争が勃発。1861年イタリア王国が建国される。

ただ、サルーデニャ王国中心の統治体制だったため、イタリア南部や島嶼部の住民は冷遇される日々を送ることに。うーん、統一あるある。

日本では四民平等となり食い詰めた武士たちの不平不満が西南戦争を引き起こしたけれども困窮した南イタリアの人々は新天地・アメリカへ向かった。けっこうたくさん向かった。

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ロッソ・ディ・カモミを飲みました。

結果、現在は人口全体の5.9%にあたる1780万人ほどのイタリア系移民が合衆国に暮らしており、新型コロナウイルス関連のニュースで目にする機会の多いニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモもイタリア系移民の子孫なんだとか。へー。

エンタメ業界に目をやれば、フランシス・フォード・コッポラアル・パチーノロバート・デ・ニーロレオナルド・ディカプリオフランク・シナトラに、と枚挙にいとまがない。イタリアの種馬こと映画『ロッキー』の主人公、ロッキー・バルボアもイタリア系移民の子孫。主演のシルヴェスター・スタローンも同じくで、子供の頃は虚弱体質で悩んでいたそうです。へ〜。

そしてなんといってもワイン界におけるイタリア系アメリカ人にはカリフォルニアワインの巨星ロバート・モンダヴィがいる。19世紀にイタリアが独立したことで、21世紀の僕はおいしいカリフォルニアワインが飲めている。ワインの味は歴史の味。

カモミ・ディ・ロッソはどんなワインか

さて、昨夜飲んだ「カモミ・ディ・ロッソ」は3人の現代イタリア人が夢を抱いてカリフォルニアにわたり、そして造り出したワイン。

CA’MOMIはモミの家って意味で、モミっていうのはもともとあったワイナリーの所有者の名前なんだとか。CA(カ)はCASA(家)のCA、なんですかね。

公式サイトによれば、ロッソ・ディ・カモミはカベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデル、メルロー、プチシラーを使用。フレンチオーク樽で6カ月熟成しているのだとか。

プチシラー、あるいはプティ・シラーはカリフォルニアの特徴的な品種のひとつで、シラーとプールサンなる品種の交配種であるデュリフという品種と同一品種なんだとか。単一のワインもあるようなので、今度飲んでみる。

イタリア人が作るワインらしく、合う料理としてスパゲティカルボナーラマルゲリータピッツァなどが挙げられている。とはいえ、合わせたのは焼き鳥。スクーザ(イタリア語でサーセン)!

カモミ・ディ・ロッソはどんな味か

飲んでみるとこれがまあ本当にこんなおいしいものが税込1500円を切る値段(買い値は1298円!)で飲めていいのかよっていう味わい。新鮮な果実というよりも、フレッシュなレーズンっていう感じの甘苦い味。天気のいい日曜日の朝、木陰のテーブルでトーストにたっぷりのバターとロッソ・ディ・カモミを塗って食べたい。それでついでにロッソ・ディ・カモミを飲みたい。朝から。朝から飲んでいいのは正月だけであります。

これはカルボナーラに合う。ベーコンじゃなくてパンチェッタ、生クリームじゃなくて卵とチーズと黒胡椒だけで作るやつ。

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vivinoの点数は3.7点。コスパ最高。

カルボナーラはイタリア独立の前、自由と憲法制定を求めて結成された秘密結社・カルボナリに由来するとか。カルボナリが活動していた時代から200年。自由の国アメリカでイタリア人が作ったワインが目の前のグラスに入ってる液体なのかと考えると味わいもひとしお。つまみは焼き鳥だけど。

クリムゾン・ランチ シャルドネを飲んで調べて味と価格と感想をまとめてみた。【CRIMSON RANCH CHARDONNAY】


クリムソン・ランチ シャルドネでぼくらはしあわせになることができるか

中国のことわざにこんなものがある。

一日幸せになりたければ酒を飲みなさい
三日幸せになりたければ結婚しなさい
七日幸せになりたければ豚を殺して食べなさい
一生幸せになりたければ釣りをおぼえなさい

最近このことわざをふと思い出してこう思った。「これワインでいけんじゃね?」と。試しにやってみよう。
まず、おいしいワインを飲めばその日は幸せだ。
そして、それを三日に分けて飲めば三日幸せだ。
さらに、次の週末にこれを飲むぞといいワインを購入すれば七日間幸せになれる。
最後に、ワインの勉強をしたり歴史について調べるのはスーパー楽しいので一生幸せになれる。うん、ワインでいけた。

ただ、このように幸せになろうと思ったら、なにしろ毎日ワインを飲まなければならない。ウチの庭、湧くんだよね、石油が、みたいな人でない限り、通常の人民の資力ではデイリーワインには毎日飲んでも借金・破産・一家離散みたない悲劇を招かないだけの価格設定が必要とされる。

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クリムゾン・ランチ シャルドネを飲みました

というわけで、1000円台でおいしいワイン、みたいなものを探求する旅路へと、多くのワイン好きは誘われていく。ような気がする。そして私も、その長い長い巡礼の列の末尾を歩み始めた一人だ。

そんな私が頼りになる中継ぎ投手みたいに信頼している選手、じゃなかったワインがクリムゾン・ランチ シャルドネだ。お値段は1000円台半ばで、およそ1500円を切る価格。ネットで調べると、1408円で売ってた。うーん、お値ごろ。

クリムゾン・ランチ シャルドネの使用ブドウ

購入したしあわせワイン倶楽部の販売ページによれば、ブドウはシャルドネ86%、ミュスカ6%、フレンチコロンバール1%、その他、とのこと。

名前が「ホワイトブレンド」とかじゃなくて「シャルドネ」なので調べてみると、アメリカのワイン法でワインにブドウ品種を表示する際にはその品種を75%以上使う必要があるとのことなんですね。なるほどなぁ。ミュスカはマスカットのことなんですね。

フレンチコロンバールっていう品種も知らなかったので検索すると英語のwikipediaが翻訳された文言が出てきて、「コロンバールは、シュナンブランとグアイブランの子孫である白フランスのワイン用ブドウ品種です。これにより、ブドウはアルマナックメシエサンフランソワの兄弟であり、ほぼ絶滅したコニャックブドウバルザックブランです。」とのこと。なんでしょうかこの聖書の出だし、みたいなわかりにくさ。

しかしこれらの品種をすべて足しても93%。残り7%は「その他」となるわけだけどフレンチコロンバールが1%なわけだから、残りは1%未満のはず。となると、さらに7種以上のワインがブレンドされてるってことになる。

鍋にたとえて考えると、単一品種のワインはクエ鍋、アンコウ鍋、牛鍋といった単一メイン鍋的と考えられ、それに対してこのように複雑にブレンドされたワインはちゃんこ鍋的と考えられる。クリムゾンランチは飲むちゃんこ。

ちなみに相撲界の隠語で金星は「めちゃくちゃかわいい彼女」のことだっていう昔飲みに行ったちゃんこ屋の元力士の店員さんに聞いた豆知識をシェアしておきます。ワイン界におかれましては、異常にコスパの良いワインを「金星」と呼んではいかがかと提案しておきます。

クリムゾン・ランチ シャルドネの味と感想

さてその味わいはといえば、全身全霊をかけてワインを造った結果素晴らしいワインができた、というよりも、まずは価格が決定され、その価格の中でいかに最高のワインを造るかに注力したワークマン方式、という印象を受ける完成度。

樽を直接舐めてます、みたいな濃厚さはないけれどもしっかりと樽の効いたシャルドネ。樽の効いたシャルドネはワイン好きが一度は通る道だそうだけれども、その道のど真ん中にあるって感じの味がする。

そして私がアメリカのワインっていいなあと思うのは、クオリティだけを追求するのではなくて、価格に見合った価値を作ろうとする姿勢を明確にしている点。世界でもっともワインを消費する国は、世界で一番ワインのコスパにうるさい国、っていう印象をワイン初心者の私は受けています。

おそらくちゃんこもちゃんこ担当の力士が予算に合わせて食材を用意、全力を傾注して部屋の全力士の胃袋を満たすべく試行錯誤を凝らしているはず。予算が1食100万円あれば、黒毛和牛、あわび、白トリュフ、などを駆使した絶品ちゃんこが労せずして作れるであろう。しかし、限られた予算のなかでベストを尽くそうという意志のなかにこそなにかは生まれる。ような気がする。

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vivinoの点数は3.7点。めちゃくちゃうまくて死ぬ、みたいな感じではないけれども本当に十分においしいです。

ところでマイケル・モンダヴィ・ファミリーの公式サイトを訪れると、「ステイアットホーム・セラー」なるキャンペーン的なものが実施されていて、この困難な状況下に家でワインを楽しんもらうためと同ワイナリーのワインが安くなっている。そこに付されたロブ・モンダヴィJrのメッセージは、こんな一文で終わる。

「ステイ・セーフ・アンド・ドリンク・ウェル」

いいこと言うぜ、ロブ!

世界がオレゴン州だったなら。プラネット・オレゴン ピノ・ノワールを飲んで調べて味と価格と感想をまとめてみた。【PLANET OREGON PINOT NOIR】

プラネット・オレゴンとはそもそもどこか?

もしも世界がオレゴン州だったら、どうなるのだろうか。

オレゴンの場所がそもそもわからないので調べてみると、カリフォルニア州の北、ワシントン州の南。アメリカで大西洋と面する西海岸三州で主にワインは作られてるってことなんすね。なんだろう、オレゴンの西海岸感のなさ。

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オレゴン州のワイン、プラネット・オレゴンを飲みました

ワシントン=首都(首都はワシントンD.C.)。
カリフォルニア=西海岸。
ときて、オレゴンの印象のうすっぷりがむしろすごい。私の持っているオレゴン州に対する知識は、ナイキの本社がある、以上終わり、というもので、なあオレゴン州さんよ、いっそナイキ州を名乗ったほうが西海岸感が出るんじゃない? と提案したくなるレベル(失礼)。

州都はセイラム。最大の都市はポートランド。最大の企業はやっぱりナイキで、アウトドアウェアのコロンビアのヘッドクォーターもオレゴンにある。映画『グーニーズ』『スタンド・バイ・ミー』の撮影地でもある。出身の有名人で日本で一番なじみがあるのはフィギュアスケートトーニャ・ハーディング。ライバル選手への襲撃疑惑でおなじみ。でもって富山県と姉妹自治体。

うん、世界がオレゴン州だった場合、自分の楽しみはただひたすらワイン、ということになりそうな気配であります。

さて、いまやブルゴーニュに並ぶピノ・ノワールの銘醸地といわれるというオレゴン州のワイン栽培だが、1970年の段階でワイナリーの数はわずかに5軒。しかしときは1979年、オレゴン州ピノ・ノワールがワインオリンピックで最高級の評価を獲得したのをきっかけに発展に次ぐ発展を遂げ、2005年には314にまで数を増やしたのだとか。

プラネット・オレゴンはどんなワインか?

でもって、今日飲むのはソーター・ヴィンヤーズの「プラネット・オレゴン」。ラベルには地球のような青い星に超大陸パンゲアみたいな感じでオレゴン州が鎮座するイラスト。なんともアメリカ的というか、ハードロックカフェっぽいというか、オレゴン州のロードサイドの中古車屋かなんかの隣のハンバーガー屋の看板、みたいなラベル。嫌いじゃないぜ、このダサさ。

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プラネット・オレゴンのラベルのアップ。うーん、ダサい。

ブドウはピノ・ノワール100%。プラネットを名乗るだけあって地球にやさしくサスティナブルな農法で収穫されたブドウを使い、環境に負荷をかけずに新樽5%のフレンチオーク樽で7カ月成熟とのこと。

で、ある日の夜、近所の洋食屋でテイクアウトしたサイコロステーキのおともにグラスに注ぎ、まずは匂いを堪能して仰天。自室の床が突如春の野原に変貌、スミレやらタンポポやらが咲き乱れたみたいな、ダっサいラベルからは想像もつかない華やかで繊細で、でもとっつきやすい香りがする。ブロゴーニュの上品おピノ・ノワールとは一線を画すような気がするフレッシュなピノ・ノワール

味わいがまた素晴らしい。端午の節句ピノ・ノワールで祝うべきってレベルで今の気候にマッチする。酸味が少なくて、果実味もしっかりあるけどあり過ぎず、あれ、誰かおれのグラスにさくらんぼかなんか入れた? っていう感じのチャーミングな味がする。3000円を切る買値で、激安! って感じではないけれども週末をハッピーに過ごすためと思えば全然いける。

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vivinoの点数は3.9点。これは新ラベル。洗練されちゃってちょっと寂しい

「空気と光と友人の愛、 それだけ残っていれば落胆することはない」と言ったのはゲーテだが、空気の光と友人の愛に加えてピノ・ノワールも我は所望す。世界には猫がいるべきだし、オレゴン州があるべき。世界がオレゴン州になってしまうのは困るけどな!

 

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ドメーヌ・ラファージュ「バスティード・ミラフロール ブラックスレート」を飲んで調べて味と価格をまとめてみた。【DOMAINE LAFAGE BASTIDE MIRAFLORS BLACK SLATE】

バスティード・ミラフロール ブラックスレートはどんなワインか

18歳くらいの頃、フリーマーケットに出店するのが趣味だった。
地元のフリーマーケットで購入した商品を翌月のフリーマーケットで売るみたいなサイクルで、それで儲けようというわけではなく、ただ“出店者”という一種特権的な(ように勘違いすることが可能な)立場で、地べたに座って仲間と1日を過ごすのが楽しかった。青春を持て余して、要するにとてもヒマだったのだ。
ある日、私はフリーマーケットの店番をしながら、カミュの「異邦人」を読んでいた。書いていて匿名ながら相当恥ずかしいのだが、フリーマーケットに出店しつつ「異邦人」を読んでいる俺、みたいなものを満天下にアピールしたかったのだと思う。うわあああああと頭をかきむしりたくなるが、ともかく読んでいたんだから仕方がない。そして忘れもしない、一人のフランス人と思しき女性が通りがかり、私に「なにを読んでいるのか?」と聞いた。
その後のやりとりを私は今も鮮明に覚えている。その女性は、「ああ、エトランジェね」と言った後、「これはフランス語で読んだほうがいい」と言ったのだ。これにはやられた。おれはフランス語で異邦人を、いやさエトランジェとやらを読まねばならぬ、フランス語で、絶対にだ、と、そのとき私は誓った。

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ドメーヌ・ラファージュ「バスティード・ミラフロール ブラックスレート」を飲みました。

それから1年後、私は大学生となり、選択する言語として迷わず英語ではなくフランス語を選択した。橋の下を多くの水が流れ私は大人になった。今、私がフランス語で本が読めるかといえば、そりゃまあねえ、アンタ、読めるわけないじゃないですか。人生ってそういうもんだよ、な?(18歳の頃の私の肩を抱きながら)、という体たらく。

さて、とにもかくにも時が経ち、私はワインが好きになった。でもって、今日飲むのは、遠い日の憧れの地、フランスのワイン、ドメーヌ・ラファージュの「バスティード・ミラフロール ブラックスレート」である。調べてみると、ドメーヌ・ラファージュは南フランス・ペルピニャンを拠点とする生産者で、当主ジャン・マルク・ラファージュは世界中から引く手あまたでアッサンブラージュの天才と言われる醸造家なのだとか。

バスティード・ミラフロール ブラックスレートを生んだ土地の歴史

このペルピニャンという土地、「フランス領カタルーニャ(北カタルーニャ)」の中心都市なんだそうで、カタルーニャ語ではパルニビャーと呼ぶんだとか。フランス領カタルーニャっていう言葉に恥ずかしながら聞き覚えがなくてさらにディグしてみると、時は17世紀、プロテスタントカトリックが争い、ヨーロッパ中を巻き込む国際戦争となった三十年戦争に端を発し、1635年から1659年まで続いたフランス・スペイン戦争の果てに、1659年に締結されたピレネー条約により割譲された土地なのだとか。

ピレネー条約に先んずること約10年のヴェストハーレン条約で、フランスはアルザスとロレーヌを手に入れているので、アルザス、ロレーヌ、ルシヨンというワインどころは17世紀半ばのこの時期にどどっとフランス領に入ったことになる。この三地方がフランスにない可能性があったのか……!

アルザスリースリングがドイツと同じ細長いボトルだってのもさもありなん。彼の地は17世紀までドイツだった。そして欧州では17世紀はつい先日である(暴論)。

「バスティード ミラフロール ブラックスレート」の話だった。18歳の頃の自分に恥じぬようにせめてその意味を調べると、ミラフロールはドメーヌ・ラファージュの所在地。バスティードは「中世に建設された新都市」なんだそうだ。フランス領カタルーニャの歴史的経緯を知った上でその意味を知ると、直感的にはよくわからないけれども、ともかくなにかしら歴史的な意味合いがその名に宿されていることが感じられる。つくづく歴史はワインの味わいを高める合法かつナチュラルな添加物。「安定剤(歴史)」みたいに表記すべきレベル。

もうひとつ、BLACK SLATEは直訳すると黒い粘板岩、といったところででよくわからないけれどもおそらく土壌、テロワール的ななにかを表す文言なんですかね。ブドウはシラー70%、グルナッシュ30%とのこと。

バスティード・ミラフロール ブラックスレートの味と価格

飲んでみると、これがもう、ちょっとどうかしてるくらいバカうま。歴史がどうとか調べておいて飲んだ感想が「バカうま」なのは自分でもまったくどうかと思うけれども他にとくに言葉がない。深紫色で、見た目にも濃厚。飲んでみるとやっぱり濃厚。フランス領カタルーニャはフランスでももっとも暑い地方とのことで、いかにもたくさん太陽を浴びたブドウの味という感じがする。チャーミングでグラマラスで女性にたとえるならばそこはかとない壇蜜感漂うワイン。1立方センチメートルあたりに使われてるブドウの量が多い感じがする。ドメーヌ・ラファージュ醸造所は地球上のその他の地点に比べて重力子の作用が強いのかもしれない(わけない)。
買い値2618円でこの内容は最高の一言。ちなみに私はこのワインを京橋ワインで買ったが、京橋ワインの商品ページにはこんなことが書かれている。

これが飲めた人はまさに奇跡!人生最高の幸運を手にした人です!この先、一生分のお買い求めを、強く強くおすすめします!

気持ちはわかるがこの文章を書いた人の肩をポンと叩いて私は言いたい。「落ち着け」と。