ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

南アフリカワインはいかにして日本に根付いたか。仕掛け人にインタビュー!

南アフリカワインはいかにして日本で市民権を得たのか

「安くておいしい」という評価が不動のものとなっている南アフリカワイン。南アフリカワインがこれだけ人気を博している背景には、それを日本に紹介した人々の地道な努力がある。まさにそういった人の一人、南アフリカワインの第一人者である株式会社マスダのバイヤー・三宅司さんにインタビューしてきた。

himawine.hatenablog.com「なぜ南アフリカだったのか?」から語り起こしてもらった話はめちゃくちゃ興味深い内容だったのだった。さっそくいってみよう。(※三宅さんは関西弁でお話ししてくれていますが、私は関西弁話者でなく、正確にニュアンスが出せないので標準語ナイズドしています)

 

アメリカの大学院に合格していた若者が南アフリカに行った理由

ヒマワイン(以下、ヒマ):今日はよろしくお願いします。まず、南アフリカに興味を持ったところから聞かせてください。

三宅さん(以下、三宅):町おこしとか村おこしとか、デベロップメントと言われる仕事に10代の頃から興味があったんです。日本で大学を出たあとに、アメリカの大学で学ぼうと思ってアメリカの大学院を受験。ふたつの大学から合格をもらいました。

ヒマ:南アフリカじゃなくてアメリカだったんですね。

三宅:そんな矢先に、南アフリカの女性が南アフリカの黒人の子どもたちを連れてくる交流イベントのお手伝いをすることになったんです。1995年、南アフリカ民主化されて1年後のことです。

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ヒマ:その時代に白人女性が黒人の子どもを連れて来日って、すごく画期的な気がします。

三宅:その女性は気合の入った人でね。アパルトヘイトの時代から、「アパルトヘイトはおかしい!」と声を挙げていた人で、黒人居住区で先生をしていたんです。黒人居住区が勤務地だとクルマの保険料が一気に高くなる、そんな環境です。その先生とお酒を飲んでいたら「アメリカに行くより、南アフリカに来たほうがいい」と言われた。それで南アフリカケープタウン大学教育学部に進むことにしたんです。

ヒマ:うーん、行動力がすごい。

三宅:デベロップメントの仕事をする上で教育が大事だと思いましたしね。学生で仕事経験もなく、仕事作りができるわけじゃない。なので、がんばって学校生活を送りました。

 

ポール・クルーヴァーとの出会い。南アフリカ1999

ヒマ:そこからどのようにしてワインと出会うのでしょう?

三宅:99年2月のことですね。ポール・クルーヴァーやニュー・ビギニングスといった生産者の取り組みを知る機会があったんです。

ヒマ:取り組みというと?

三宅:ポール・クルーヴァーがいち早くはじめたのですが、労働者にチャンスを、という取り組みです。黒人労働者にワイン造りを教えたりしはじめたんです。ニュービギニングスは、98年に生まれた南ア史上初の黒人が生産したワインです。

三宅さんはポール・クルーヴァーのバッグを携えて営業活動に勤しんでいる

ヒマ:教育とか開発とか、三宅さんのテーマと重なるような取り組みをしている生産者が南アフリカにいたと。

三宅:まさに、デベロップメントへの興味にビビッときたんです。ワインは素人として飲んでいただけでしたが、さっそくポール・クルーヴァーに見学に行きました。そしてこのワインを輸入したら飲む人も作る人もハッピーだなと思って、輸入させてもらうことにしたんです。

ヒマ:やっぱり行動力がすごい(笑)。でも日本人の学生がきて「輸入させて欲しい」って、失礼ながらよくオッケーがもらえましたね。

三宅:時代ですね。南アフリカにはKWVという協同組合がありますが、これは日本でいう農協のような組織で、各ワイナリーはKWVを通じてワインを流通させていたんです。そのKWVが97年に民営化されたため、生産者が自由に取引できるようになった。それは一方で、ポール・クルーヴァーもそうでしたが、「自分たちで売り先を探さなくちゃいけない」ということでもあったんです。

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ヒマ:国営企業の民営化のタイミングだったとは……。日本はワインの大きな市場ですし、ケープタウン大学の学生なら信頼度もあったはず。だからこそ、取引が可能だったわけですね。しかしすごい時代に飛び込みましたね。

三宅:すべて偶然なのですが、あとから考えると明治維新のまっただなかの日本に行ったようなものだったと思います。ものすごくいいタイミングでしたし、大きな流れのなかに入っていくことができました。

 

学生を終えて即起業。そして株式会社マスダへ

ヒマ:ともあれ、学生が終わってすぐに南アフリカワインの輸入をはじめたというわけですか?

三宅:そうですね。幸いなことに、雑誌のAERAに載せてもらい、新聞にも載って、最初に輸入した6000本は一瞬でなくなりました。野球でいえば初回に2連続で満塁ホームランが出たようなものでしたね(笑)。しかし、それからはサッパリ。自分の給料の出ない状態が1年半続きました。

ヒマ:給料の出ない状態が1年半……!(絶句)

三宅:ほんまに大変でした。結果的にはボランティアで、にっちもさっちもおカネが残らない。それで、事業を小さな卸しの会社に売却。そこが株式会社マスダと合併して、私もマスダの社員となり、今に至ります。

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ヒマ:なるほど! 失礼ながら三宅さんにはあまりサラリーマン感がないと思っていたのですが(笑)、そういった経緯だったんですね。元は一国一城のあるじだった。

三宅:南アフリカワイン事業は、もちろん会社から稟議書にハンコを押してもらって進めている事業なのですが、もともとマスダに南アフリカ事業があったわけじゃありませんでしたから、失敗できないというプレッシャーはすごくありました。サラリーマンだけど、この事業は失敗させられないっていう意味では社長みたいな気分でしたし、事業のスタート当初は「失敗したら借金してでも自分で買い取らなアカン」と思っていました。会社を代表して商品を引っ張ってくるわけですからね。

ヒマ:バイヤーというお仕事は華やかなイメージもありますが、実際はプレッシャーもキツいわけですね。

三宅:今でこそバイヤーもふたりになり、プレッシャーも半分になりましたが、20年前は南アフリカワインの知名度が今に比べてもはるかに低い時代です。ソムリエの人でも「南アフリカでワインつくってるんですか!?」と驚かれる時代でした。

ヒマ:今でも我々モノ好きな愛好家は知っていても、一般の人の認識はそうだったりしますもんね。

三宅:だからこそ、将棋でいえば飛車角クラスの駒でないと競争相手を倒すことはできませんでした。私はバイヤーであり営業でもあったことで大きな失敗がなかったのかもしれませんね。バイヤーと営業の間の溝があるとなかなか難しいですから。

ヒマ:今日も「ポール・クルーヴァー」のバッグにワインを6本入れてらっしゃいますし、インタビュー場所の焼肉屋さん、六本木の「みやび」も三宅さんのお客様なんですよね。みやびさん、ワインリストがすべて南アフリカワインというすさまじいお店です。

焼肉店「みやび」にズラリ並んだ南アワイン。選んだのは三宅さんだ。

三宅:みやびさんは南アフリカでシェフをされていた方が帰国して開業された焼肉店。現地で飲んだワインに感銘を受けたそうで、ワインは南アフリカのものをとマスダに問い合わせをいただいたんです。このお店のワインはすべて私が選ばせてもらっています。

ヒマ:もちろんご苦労もすごくあるとは思うのですが、充実したお仕事をされているように思います。

三宅:小さなころから外国と仕事したい、誰かがやったことのない事業をやってみたい、そして開発の仕事をしたいと思っていて、今はそれが全部できているなあと思いますね。営業の仕事でいえば、20数年やってきて、私はスーパー営業マンでもなんでもありませんが、トランプでいえば強いカードが手元に揃ってはいます。だから僕自身の腕前に関わらず、そんなに負けることはないと思っています。

 

ワインと社会貢献とハーテンバーグと「ペブルスプロジェクト」

ヒマ:たしかに。今日いただいたワインもどれもすごくおいしいです。

三宅:南アフリカにワインがあること自体が知られていなかった時代から、オセロを一枚ずつひっくり返してきたのが僕の仕事。全面が黒な上にオセロがボンドでくっついてるんじゃないかっていうお店もありましたが、少しずつ白に変えていっています。今52歳で、あと仕事をするのはひとまず8年弱。残りの8年も、オセロを変える作業を続けていこうと思っています。

ヒマ:その三宅さんのお仕事が結果的には南アフリカワイン産業の振興とか、社会貢献につながるわけですもんね。

三宅:はい。ぜひ知っていただきたいんですが、ハーテンバーグという生産者がペブルスプロジェクトというNGOを支援していまして、2022年の12月までハーテンバーグのワインを買っていただくと1本あたり一定の金額が寄付されるんです。南アフリカの小学校は2月入学なのですが、寄付されたお金は新小学生の制服やカバンや教材を買うお金に充てられます。

ヒマ:飲むだけで寄付できるっていうのはいいですね。

ハーテンバーグのワインを買うとポストカードがついてくる。飲むだけでできる教育支援だ。

三宅:ペブルスプロジェクトは、もともとアルコールの影響を受けた子どもたちのためのプロジェクトなんです。南アフリカにはアパルトヘイトの時代にワイナリーの生産者への賃金をワインで支払う「ドップ・システム」という悪習があったのですが、結果的にアルコール中毒患者が増え、女性が妊娠してもアルコール摂取が止められないことで胎児性アルコール・スペクトラム障害という病気にかかる子どもが世界で一番多いと言われていて、今もそれは変わっていません。ペブルス自体はいまはその病気の子ども以外の子どもも支援していますが、そういった子どもたちへの教育支援を行なっているNGOなんです。これはぜひ知っていただきたいです。

ヒマ:「知っていただきたい」のが商品である前に寄付プログラムっていうのが三宅さんらしいです。と、いろいろお話をうかがっていたら長くなってしまったので、肝心のワインの話は記事を分けさせてください!

 

南アフリカワインに思いを馳せる

というわけで三宅さんの半生についてのお話をうかがった。三宅さんの体験談は聞くだけで南アフリカワインへの理解度・解像度が高まる内容。「開発の仕事がしたい!」という10代の若者の夢は、南アフリカ民主化という大きな時代の波に乗り、日本に南アフリカワインを紹介するという仕事へと結実した。

目の前にある南アフリカワインのボトル。このワインが日本に来るまでにはさまざまな人の、国のドラマがある。そう考えるとおいしさもひとしお。次回は、このボトルの「中身」についてさらに詳しくお話を聞いていく予定だ。

みんなで飲もう、ハーテンバーグ↓

 

 

「ミレジム」「MONACA」のイタリア&フランスワイン試飲会に参加! 印象に残ったワイン4選

 下北沢ワインショップの試飲会に参加した

先月参加して楽しかったので今月も東京・下北沢の下北沢ワインショップ主催の試飲会に参加することにした。今回も参加インポーターは2社。「ミレジム」がフランスしばり、「MONACA」がイタリアしばりでの参加だ(MONACAはイタリア専門のインポーター)。

himawine.hatenablog.com用意されていたのはMONACA9種類、ミレジム6種類の計15種類のワイン。内訳は泡3、白5、赤7だ。前回同様今回も、そのなかでとくに印象に残ったものに絞って記録しておきたい。

 

MONACA出展ワイン:ジョバンニーニ「GGGビアンコ デル シッラーロ」

まずはMONACAの出展していたワインから。イタリア20州のうち18州の生産者と取引があるといい、いろいろな州のさまざまなスタイルのワインを揃えたというなか、非常に特徴的だったのがエミリアロマーニャの生産者・ジョバンニーニの「GGGビアンコ デル シッラーロ」。白ワインなのにアルコール度数が15度あるんすよこれすげえ。

発酵前に皮皮も一緒に醸しているのだそうで、それもあってか外観は白っていうかオレンジゴールド。香りにはこれはもう甘口ワインなんじゃないかっていうくらいの蜜感がある。使用品種は土着品種のアルバーナで、糖度が上がりやすい品種でもあり甘口に仕上げられることも多いのだそうだ。

香りには甘口を感じながら飲むとトロトロ系ながら味わいはドライで意外と酸もあるという不思議なバランス。果皮からタンニンも抽出されているため渋みもあり、なんならステーキまで合わせられるんじゃないのというパワフルさがあった。販売価格は3500円。

 

MONACA出展ワイン:フランコーネ「ドルチェット ダルバ ヴィニェート メントリュン」

MONACAのワインで個人的に好きだったのがピエモンテの生産者、フランコーネの「ドルチェット ダルバ ヴィニェート メントリュン」。ピエモンテといえばその最高峰のワインはネッビオーロから造られるバローロ、そしてバルバレスコ。その下のランクにバルベーラがあり、そのまた下のランクに位置づけられるのがこのドルチェットという品種だといってたぶん問題なく、私はそれぞれ全部が好き。

たとえるならばバローロとかバルバレスコネッビオーロ)は千疋屋なかんかで一粒単位で売られている大粒の佐藤錦。大正義。絶対うまい。それに対してバルベーラはスーパーでパックに入れられて、それでも1パック598円とかで売られているさくらんぼ。ではドルチェットはなにかといえばソメイヨシノが散った後に出てくるアレ、みたいな感覚だ。

粒は小さくてすっぱくて渋いのだがそれでもどうしても愛さずにはおられぬなにかが確実にあるみたいな感じ。今から数十年前、春がくるたびに学校の校庭の木に登って食べたんですよアレを。おいしかったなあ。

その印象と重なるように、このワインも渋みがしっかりあって酸味も強い。しかし、味わいの核にはキッチリ硬めで青めの果実味があって、全体のこじんまりとした味わいがなんとも良い。バローロの甲に対してドルチェットは明確に「乙」の良さがあり、そのドルチェットの良さを体現している印象のワインだった。販売価格は2600円だ。

 

ミレジム出展ワイン:ドメーヌ・イノソンティ「サン・ヴェラン レゼルヴ・ジョベール2018」

そんなこんなで続いてはフランスワイン6種を出展しているミレジムのワインを飲んでいくのだが、この日の最大の驚きとなったのがドメーヌ・イノソンティの「サン・ヴェラン レゼルヴ・ジョベール2018」だ。サン・ヴェランはブルゴーニュの南のマコネのそのまた南端にある人口181人(2009年時点)のコミューンで、ほぼボジョレー、みたいな立地。

このサン・ヴェラン、どっこい紛れもないブルゴーニュの村名アペラシオン。その香りも味わいもちゃんとブルゴーニュワインなんだけど、フルーツ&トロピカル&サンシャイン要素が強くあり、なんつーんですかね。最近のスマホゲームでよくある「水着イベント開催中」みたいな印象を受ける。ブルゴーニュのワインたちが海で水着に…!?

先月の試飲会で飲んで素晴らしかったドルーアンオレゴンシャルドネの印象とも重なる部分があって、それはつまり完熟し切ったブドウで造ったエレガントな白ワイン感、みたいなものだと思う。それぜったいうまいやつ。

となると、でもお高いんでしょう? となるわけだが安いのだ、このワイン。お値段なんと2860円税込なんですよお嬢様。安ワインの条件を税込3000円以下で買えるワインだとするならばこれは「安ワイン」なのだやべえ。2022年のコスパ・オブ・ザ・イヤーの最有力候補と言ってよく、ブルゴーニュが高いならこれを飲めばよろしいじゃないのという精神性の発露・具現化といって差し障りがない。いや、これもブルゴーニュなんだけど。

続けて飲んだシャブリ(ドメーヌ・ド・シャントメルル フランシス・ブーダン)も素晴らしかったのだが、前述したドメーヌ・イノソンティの圧倒的なコスパ感の前にやや霞んでしまった印象だった。

 

ミレジム出展ワイン:ラ・ジブリヨット「ブルゴーニュ・ルージュ2019」

もうひとつ印象的だったのがラ・ジブリヨットのブルゴーニュ・ルージュ。これはクロード・デュガのネゴシアン部門。買いブドウでワインを造るのかなと思いきやさにあらずで、樽でワインを買ってきて瓶詰めするというスタイルなのだそうだ。つまりは買いワイン。私は自社畑だろうが買いぶどうだろうが買いワインだろうがおいしければそれで良い。良きに計らってくださいという立場。

で、このワインはさらに面白いことに広域名ブルゴーニュのワインでありながら、使っているのはジュヴレ・シャンベルタンのブドウなのだそうだ。ジュヴレ・シャンベルタン村に生えてるブドウなのにジュヴレ・シャンベルタンを名乗れない畑のブドウで作られてるんだって。

ミレジムの方いわく、味わいは「デュガの味に寄せてきてる」とのことで、なんならデュガのワインも混ざってるんじゃないかという味なのだそう。飲んでみると渋みと酸味が静かに存在し、果実味はまだつぼみの状態であることを思わせる味わい。2019というヴィンテージの良さもあっていかにもこれからおいしくなりそうな気配。おいしさがクラウチングスタートの構えをとっている印象で、これもとても良いなと感じた。

というわけで今回も実に勉強になる試飲会だったのだった。インポーター2社が出展するのが良く、異なるスタイルのワインを楽しめるのがすごくありがたい。また参加します。

MVPはこれ↓

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【フェアグラウンド】甘口ワイン特化のお店で甘口ワインを飲んでみた

下北沢ワインショップ併設のバー・フェアグラウンドで甘口ワインを飲む

先月、下北沢ワインショップで開催された試飲会で購入したワインを引き取りに、再び下北沢に向かった。下北沢ワインショップにはバー・フェアグラウンドが併設されているため、ついでに一杯飲もうという魂胆だ。「ワインを買うついでに一杯飲む」のってなんでこんなに楽しいんですかね。

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フェアグラウンドは珍しい甘口ワイン特化型のバー。ツイッターでつながりのあるつびぃさんが働いておられるので、彼女にいろいろとお話をうかがいながら普段比較的飲む機会の少ない甘口ワインの世界を垣間見ようというのが趣旨だ。

下北沢ワインショップではデザートワインテイスティングもできる

 

謎のドリンク「マチュドニア」の正体は?

伺ったのはまだ少し暑さの残る天気の良い10月のある日。まずいただいたのは南アフリカはロバートソンのゲヴュルツトラミネールに凍らせたシャインマスカットの粒を沈めた「マチュドニア」なる飲み物。なにこれおしゃれか。

マチュドニア、というものだそうです。


マチュドニアは多様な民族が暮らす土地・マケドニアにちなんで名付けられた要するにフルーツポンチなのだそうで、それをアレンジしたのがこのシャインマスカット入りのゲヴュルツトラミネール。

店内満席のため3階テラスで飲ませていただいたのだがさわやかな甘口ゲヴュルツにシャインマスカットの皮の苦味がアクセントになっておいしかった。いいぞいいぞ。

 

ダーレンベルグ「マッドパイ」2017/2021を比較する

そうこうする間に店内が空いたのでカウンターに場所を見つけて甘口ワインをオーダー。つびぃさんの一押しは、ハウスワイン的に提供しているオーストラリアはアデレードヒルズの生産者・ダーレンベルグの「マッドパイ」。マッドパイは泥だんごの意だそうだ。なぜだ。(『このワインをつくるのは、子供のころマッドパイをつくったときのようにワクワクするから』だそうです)

この泥だんごは遅摘みとかではなくて貴腐ブドウを使った極甘口。「2017ヴィンテージがもうすぐなくなるので、2021ヴィンテージと飲み比べてみてください」(つびぃさん)ということで甘口ワインの垂直テイスティングという珍しい体験をさせていただいた。

左が2021、右が2017。色合いがぜんぜん違う!

で、結論を申しますとこのマッドパイ、なるほどとてもおいしいワインだった。このワインきっかけで甘口ワインにハマった人もいるのだそうで、お店では「ワインのことを全然知らないアルバイトの子には、まずこれを飲ませる」というワイン沼に突き落とすための棒、みたいに使われるワインだというが、それも納得の親しみやすさ。

そして並べてみると一目瞭然、2017と2021では色味がまったく異なる。こんなに異なることあんのってくらい異なる。外観だけでなく使っているブドウも異なり、2017はヴィオニエ、ソーヴィニヨン・ブランセミヨン、ピノ・グリ、2021はヴィオニエ、セミヨン、リースリングで造られているのだそうだ。

とはいえ色味の大幅な違いと使用品種の違いがあれどそこは同じ名前のワイン、味の系統は似ていて、つびぃさんいわくの「濃く淹れた紅茶にマーマーレードを入れた感じ」という印象を両者に受けた。2017のほうが紅茶要素が濃く、2021のほうが薄い。2021のほうがマーマーレード感があり、2017はそこに少し酸味のあるハチミツを加えたような印象だろうか。それぞれに良さがあって、どちらもおいしい。

 

おすすめの甘口ワイン「パンテレッリア」

この日は時間が足りなくて飲めなかったのだが、最後につびぃさんにほかにオススメの甘口ワインはないか聞いてみたところ、「パンテレッリア」という耳慣れない名前が出てきた。なんすかねそれ。

パンテレッリアで造られるワイン、パッシート・ディ・パンテレッリア

つびぃさんいわく、パンテレッリアはパンテレッリアという名前の地中海に浮かぶ火山島で造られるワインで、ズビッボなる地ブドウを用いたパッシート(陰干しを使うやつ)が有名なのだそうだ。ズビッボってなんだよ!? となるわけだが要するにこれはマスカット・オブ・アレキサンドリアなのだそうでいわゆるひとつのマスカットだ。

マスカット、フランス語でミュスカ。スペイン語でモスカテル。イタリア語でモスカート。それがいったいなにをどうしたらズビッボになるんだ、となるわけだが、それはともかくズビッボで造られたパンテレッリアの甘口ワインは、(トスカニーの商品ページによれば)「カサノヴァも女性を籠絡するのにパンテッレリーアのパッシートを利用していた」という逸品なのだそうだ。女性を籠絡するにはパンテレッリア・ディ・パッシートですよみなさん。

というわけでフェアグラウンド再訪も実に楽しい時間だったのだった。甘口ワインが好きな方、クリスマスシーズンの贈り物に甘口ワインを探している方は、ぜひ一度訪ねてみてはいかがか。30種類というすげえ数の甘口ワインを飲みくらべできますよ!

私の推し甘口↓

 



 

1976年のコート・ド・ボーヌはどんな味? 2020と飲み比べ!

コート・ド・ボーヌ 1976-2020

「コート・ド・ボーヌの熟成ワインと買ったばかりのワインを飲み比べる会」に行ってきた。この会の詳細は主催者のひとりである「ますたやさん」のnote、同席した安ワイン道場師範の稽古日誌などにすでに詳しく書かれているので省く。屋上屋を重ねた上にペントハウスを建てるがごとし感があるものの、せっかくなのでこの日飲んだワインについて記録しておきたい。

この日飲んだワインのみなさん

 

コート・ド・ボーヌのワインをいろいろ飲む会にやってきた

さて、以上のような経緯から私は秋晴れの日曜日の午後に会場である東京・根津の「自然派ワインと小皿料理 Amilas」にいる。10名のワイン好きが集まって、コート・ド・ボーヌの同じ造り手の1976年と2020年ヴィンテージのワインを飲み比べつつ、主催者でありインポーター勤務のあきもさんが用意してくれたコート・ド・ボーヌの村々のワインも飲むという流れだ。贅沢。

 

コート・ド・ボーヌの地図を示すあきもさん。

「コート・ド・ボーヌのワインはムルソーやシャサーニュ・モンラッシェ、ピュリニー・モンラッシェといった白のイメージはあるけど、それ以外はあまり飲むことがないかもしれません」とあきもさん。恥ずかしながらおっしゃる通りで、ブルゴーニュの主要生産地であるコート・ドールには北のニュイと南のボーヌがある。以上おわり。くらいしか知識がない私にとって、コート・ド・ボーヌの知見が一気に深まるであろう大変ありがたい会になりそうだ。

 

「業スー」シャンパーニュの衝撃

乾杯の泡はブリジット・デルモットというシャンパーニュの生産者の「ブリュット ブラン・ド・ノワール」。参加者の全力豆乳さんが持ち込まれたワインで、「業務スーパーで1999円(税込2198円)で売っている謎の、そして妙においしいシャンパーニュ」としてますたやさんがTwitter上で推していたワイン。

業スーシャンパーニュ、フツーにおいしいワインだった。

全力豆乳さん、複数の業務スーパーを探し歩いてこのワインを購入されたのだそうだ。その手間賃で普通のシャンパーニュが買えたんじゃないか、という気がしなくもないが飲んでみるとその労にきっちり見合う果実の厚みとシャンパーニュらしい泡の細かさ、そしてふくよかな香りを兼ね備えたおいしいシャンパーニュだった。つーかシャンパーニュのブラン・ド・ノワールが税抜きとはいえ2000円アンダーはヤバすぎる。どうなってるんだ業務スーパー

安ワイン道場師範の「シャンパーニュは『シャンパーニュ』って書いてあるだけでうまい」という決め台詞も飛び出して、いざコート・ド・ボーヌにレッツゴーである。

 

コート・ド・ボーヌの村を飲み比べる:その1「モンテリー」

あきもさん提供してくれたのは、モンテリーで5代続いているという造り手・シャンガルニエのコート・ド・ボーヌのワイン4種。その第一弾が本拠地であるモンテリーの村名白。これがいきなり素晴らしいワインだった。

モンテリー。これいきなり良かった。

樽のボリュームと豊かな果実感にグレフル的な酸味とあるかないかのごくかすかな苦味。開けた瞬間から全力疾走でおいしく、ブルゴーニュのワイン、もしかしたら白のほうが好き……? みたいになる。

シャンガルニエ、造りはオーセンティックながら栽培においては近年ビオディナミに移行しているのだそうで、あきもさんが現在取り扱っているワインの共通点だという「ナチュール&オーセンティック」を地でいくワインだと感じた。造りはナチュラルだけど味わいはオーセンティック(“自然派”っぽくない)ワイン、流行りそう。流行るとかじゃないか。

 

コート・ド・ボーヌの村を飲み比べる:その2「オーセイ・デュレス プルミエ・クリュ レ・デュレス」

つづいてはオーセイ・デュレスの一級畑。モンテリーから西南西みたいな位置にある村のワインだがあきもさんいわく「スタイルは全然違う」とのことで飲んでみるとたしかに前に飲んだモンテリーと違う。

オーセイ・デュレス

私にはモンテリー比で酸がシャープに感じられ、どことなくあともうちょっと寝ててもらったほうが良さそうな印象。仕事で徹夜して朝帰りしたパートナーをそれとは知らずに午前7時半に起こしてしまったとき感があるような気がした。

ともあれ参加者の中にはこちらのほうが好み! という方もいらっしゃったので、単純に好みの問題なのだろう。どちらもおいしいワインなのは間違いがない。

 

コート・ド・ボーヌの村を飲み比べる:その3「ポマール レ・ヴィーニョ」

続いては赤ワインに突入し、まずはポマール。「ポマールはヴォルネイと並んでコート・ド・ボーヌ屈指の生産地です。ただ、スーパースター的生産者がいないこともあって、いまいちマイナーなんです」とあきもさん。師範いわく「特級(グランクリュ)がないのも弱点だよね」とのこと。なるほどなあ。

ポマール。

しかし、飲んでみるとこれが香りがめちゃくちゃいいわけなんですよ。漂うのはバラというより果実の香り。エレガントというよりも濃密といった香りだ。味も渋み>果実>酸の順番に並ぶしっかりとした味わいでパワーがある。ブルゴーニュのワイン、ついさっき白のほうが好きかも……? みたいになったけどやっぱ赤だわ、みたいになるなこりゃ。私は目の前のグラスに注がれているワインの産地と品種が好きです。

ちなみに、ポマールの生産者としては「コント・アルマン、ジャン・マルク・ボワイヨといった生産者が有名」とあきもさんが教えてくれた。メモメモ。

 

コート・ド・ボーヌの村を飲み比べる:その4「ヴォルネイ プルミエクリュ レ・ブルイアード」

続くヴォルネイは「ヴォルネイ プルミエクリュ レ・ブルイアード」。今回用意していただいたシャンガルニエのワインのなかで、唯一ラベルにドメーヌ表記の入らない、買いブドウで造られたというワイン。

ヴォルネイ プルミエクリュ レ・ブルイアード

「買いブドウと自社畑だと自社畑のほうが上というイメージを持つ方は多いと思いますが、最近のブルゴーニュではマイクロネゴシアンといって、醸造に集中するため畑は信頼できる契約農家さんに任せるという生産者も多いんです。農家がワインも造るシャンパーニュのレコルタン・マニピュランと逆の流れですね」(あきもさん)

ワインはおいしいし勉強にもなるし最高だなこの会と思いながらグラスをくんくんしてるみると、これはかなりいいワインの気配がするぞ…! 

前に飲んだポマールが濃密だとしたらこちらは妖艶といった領域にまで足を踏み入れている怪しさ全開具合。勤続30年の庭師が丹精込めて作り上げたバラ園になぜか南方の食虫植物が住み着いてしまったみたいな印象の、酸と渋みで施錠された扉をこじあけるようなじゅくっとした果実の感じ。

余談だが、ブルゴーニュは2020、2021という収穫量の少ない年を乗り越えて、2022がいい年だったことから続く数年がいい年であれば価格が下げられるかもしれないとのこと。20、21の不作が価格高騰の一因なんだって。なるほどなあ。

さて、そんなこんなでシャンガルニエの4本を飲み終えた。いやほんと、村ごとの違いやコート・ド・ボーヌの魅力の一端がよくわかる、素晴らしいプレゼンテーションだった。

コート・ド・ニュイのワインと比べられるほど飲んでいないので比較はできないが、ブルゴーニュのイメージを軽やかに覆すような親しみやすさがすべてのボトルにあったように思う。これで価格も相対的に安いならコート・ド・ボーヌでいいじゃんとなる。

いやーおいしかった、さて帰ろう。みたいな満足度がすでにあるのだが、会はこれからが本番。いよいよドメーヌ・ブサンスノのショレイ・レ・ボーヌ2020とぺルナン・ヴェルジュレス1976の飲み比べという時を超えた垂直落下型テイスティングがはじまる。

 

ショレイ・レ・ボーヌ2020

まずは2020。ますたやさんが現地で購入しフランスからハンドキャリーされたため、裏ラベルはないショレイ・レ・ボーヌは「ドメーヌで購入する際、8種の選択肢からこれを選んだら、『イッツ・クール』って言われました」(ますたやさん)というワイン。私が好きな歌の歌詞に「間違った道などない。心から選んだならば(直訳)」というものがあるのだがそれだ。

ペルナン・ヴェルジュレス1976(左)とショレイ・レ・ボーヌ2020。

でもってこれが実にパワフルなワイン。もちろんピノ・ノワール100%なのだが、師範の「シラーが混ざってるんじゃない?」という感想が至言で、ピノ・ノワール的な酸味の上にシラー的な果実とスパイスが乗っかったなんともいえないコンプランタシオンみのある味わい。ペットは飼い主に似るというが、ワインは買い主に似るんじゃないかという陽性で楽しいワインだった。

ちょっと獣的なワイルドさも(まったく不快ではなく)感じて、「ドメーヌで飼っている犬のテロワールも反映しているのではないか」みたいなテキトーなことをみんなで言い合いながらダハハと笑って飲むワインが最高においしい。

裏ラベルなし。これぞドメーヌ直販の証…!

そしてますたやさんお手製の「グジェール」というチーズを混ぜ込んだシュークリームの皮的なブルゴーニュの名物だというお菓子とも合いまくる。これと合わせるとワインが一気にスムーズ&エレガントになるのなんなのみたいになる。

グジェール、初めていただいたけどおいしかったなあ。めちゃくちゃ好みのおつまみで、減量苦に耐えかねて深夜にうどんをかきこむマンモス西的勢いでガツガツいただいてしまった(不躾)。

 

ペルナン・ヴェルジュレス1976

そしていよいよ1976だ。明らかにオレンジ系の色合いへと変化していることがボトルに入った状態でもわかるが、グラスに注がれるとやはりワインと紅茶を一対一で割りましたといったような淡いオレンジ系統の色合い。

左が1976、右が2020。コルクの状態はもちろん、上から見ても色合いの違いがわかる。

そして、色のイメージからも想起される紅茶的な香りと果実的な香りが線香から立ち上る一筋の煙のように漂ってくる。

師範いわく味わいが好みが激しく分かれるワインとのことだったが、私は「好」のほうに激しく振れていた。好(ハオ)だった。なんていうか、熟成ワインならではの玄人好み感を感じず、わかりやすく「甘酸っぱくておいしいワインwith紅茶感」くらいの感じで楽しめたのだった。

わかりにくいたとえになってしまうが、若いブルゴーニュを飲んで得られる快感がグッスリ眠った朝の目覚めの気持ちよさだとすれば、このワインから得られるのはそのあとに待っている二度寝の快感。ベッドと己が溶け合うように、酸味も渋みも果実味も、ひとしく液体にぬるりと溶け込んだような味わい。油断するとすぐに目が覚めて台無しになっちゃう儚さも含めて、私は好きだった。私は二度寝が好きですワインの話だった。

沖田修一監督の映画『滝をみにいく』のなかに「40過ぎたら女はみんな同い年」といった趣旨の名言があるが、私とこのワインも生誕から40年を過ぎたいわば同い年。私は男性で、このワインに関してはもはや人類ですらないが、互いの来し方に思いを馳せられるという点でも古酒は素晴らしい。この40数年間、俺もあなた(ワイン)もなんかいろいろあったよね(雑)。

 

ヴィンテージワインとぼく

ところで、このワインをご提供くださったあきもさんいわく、「古酒にハマった! となったら、オススメはピエモンテです。70〜80年代のバルバレスコは探せば2万円しないくらいで手に入りますが『すげえ!』があります」とのこと。こんなおいしいの飲んじゃうとどうしても古酒に興味が芽生えてきちゃうのでいい情報だなあ。

ちなみにこのワイン、おそらくはリコルクされていて、リコルクの際に長期熟成に伴って目減りした分のワインを補填しているだろうとのことだった。いわばドーピング。私はおいしければそれでいいのでなんでもいいが、それもあってフレッシュさが残っていたのかもしれない。

 

ヴィンテージポートで締める

会は、「とおるの安ワイン」さんが持ってこられたヴィンテージポートを飲んで見事に締まった。しっかり甘く、しっかりハーブ的な香りがするヴィンテージポートは正しく飲むデザート。とおるさんにこの場を借りて感謝したい。こうして素晴らしい会は幕を下ろした。

クローン ヴィンテージポート2009。甘くておいしく、根津のテロワールを反映した塩大福によく合った

にしても重ね重ね、貴重なワインを提供してくださったあきもさんに感謝だし、たまたま同じドメーヌを訪ねるというますたやさんの起こした奇跡的偶然にも感謝だ。おいしかったなぁ。みなさん、なた飲みましょう!

探したら私の生まれ年のバルバレスコ2万円アンダーで普通に売ってたマジか↓

シャンガルニエ、とてもおいしかったのでみなさんぜひ↓

 



ワインマーケットパーティでエグリ・ウーリエを飲んでみた

ワインマーケットパーティでテタンジェ ブリュット レゼルヴ(バルタザール)を飲む

東京・恵比寿のワインマーケットパーティ(以下、WMP)がリニューアルオープン初日にテタンジェ ブリュット レゼルヴの12リットルボトル(バルタザール)の振る舞い酒をすると聞いたので行った。振る舞いテタンジェをいただきつつ、お買い物もしつつ、リニューアルしたテイスティングバーも偵察しようという魂胆だ。

テタンジェ振る舞い酒の条件はアプリ登録。事前にアプリをインストールし、それを提示することでグラスに注いでもらえる。ありがてえありがてえとそれをいただいて驚いた。これ…めっちゃくちゃうまいな!

バルタザールボトル。右下にちょこんとあるのが通常の750ml入りのブテイユ。

ありがたいことにお友だちの沼田WMP店長が忙しいなか接客してくれたので、なんでこんなにおいしいのか聞いてみた。

「実はこのボトル、普通にお店で売っていたんです。2012年頃のワインかな。ドザージュがしっかりあるからこその熟成感があって、モカのようなパンのような香りがして、ちょっと上位キュヴェのコント(・ド・シャンパーニュ)みたいな雰囲気がありますよね」(沼田店長)

マグナムは熟成がゆっくり進んでおいしいみたいな話をよく聞くが、マグナムより8倍大きいバルタザールはさらにゆっくり熟成が進むのかどうなのか、ともかく大変素晴らしいシャンパーニュだったのだった。

 

ワインマーケットパーティでエグリ・ウーリエを飲む

こんなにいいワインを飲んでしまうと続くテイスティングバーでの試飲で下手なワインは頼めぬ。というわけで、魅力的すぎるメニューのなかから、かねて飲みたいと思いながら未飲だったエグリ・ウーリエのブリュット トラディショナル グラン・クリュ(デゴルジュマン2021)をいただくことにした。価格は60mlで1870円。アンボネイ村のピノ・ノワールを70%使い、残りはシャルドネというセパージュ。

エグリ・ウーリエ初体験でした

エグリ・ウーリエは5200社あるシャンパーニュメゾンのなかで9社しか選ばれないクラスマン(現レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス ※2016時点)3つ星に選ばれているんだってすげえ(ちなみにほかはジャック・セロス、ボランジェ、サロン、クリュッグ、ジャクソン、ポル・ロジェ、ルイ・ロデレール、アグラパール)。

同じ樽発酵・樽熟成が特徴のジャック・セロスのワインを最近立て続けに飲む機会があり、いずれもホームラン級においしかったことからエグリ・ウーリエも飲みたいものだと思っていたのだった。ふたたびありがてえありがてえ、と飲んだ。

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さてそれから数日、私のiPhoneには「戦国時代ならこの酒を巡って一国が滅亡するレベル」というメモが残っている。おいしかったなあこれ……。鼻から入って頭頂部に突き抜けるようなすごくシャープな酸がありながら、果実味、複雑み、旨みが強くあることで酸だけが突出しない三点倒立的バランス。熟成したらさぞかしやべえ液になるんでしょうという期待感がありながら、まだ若い感じのする今こそが良いのだという気もする、のちに名球会入りする偉大な打者の高校時代、みたいな良さがある。

とくにやべえのは香りで、飲んでしまうと液体がなくなってしまって香りを楽しめなくなるから最終的に「飲みたくない」という感情にさえなる。じゃあ飲まなきゃいいじゃんと言われて「飲みますよ!」と顔真っ赤にして逆ギレしたくなるタイプのワインだ。どんなワインなんだよ。

 

エグリ・ウーリエはなんでこんなにおいしいんだ問題

再オープン初日で多忙を極める沼田店長をつかまえ「エグリ・ウーリエってなんでこんなにおいしいんですか?」という知力12くらいの質問をぶつけてみたところ、「樽に耐えうる原酒であることが重要」という答えが返ってきた。

シャンパーニュは1ヘクタールあたりの収量がブルゴーニュなどに比べると多いのですが、エグリ・ウーリエの場合ブルゴーニュグランクリュレベルの1ヘクタールあたり30〜40ヘクトリットルまで収量を落としています。そのため、原酒そのものにワインとしての濃さがあるんです」(沼田店長)

シャンパーニュのベースワインはそれ自体すっぱくて飲めないみたいな話を聞くことがあるが、エグリ・ウーリエの場合、瓶内二次発酵前のヴァン・クレール(ベースワイン=原酒)が強い。そのため長期に渡る樽熟成を経ても樽に負けない味わいが保てるのだそうだ。

たしかに、実際に飲んでみても味わいの濃さと樽に負けない果実のパワーの片鱗は感じられた。1杯じゃなくて1本を時間をかけてゆっくり飲んだら、味わいの変化をすごく楽しめるだろうなあこれ。

樽発酵・樽熟成、長期熟成、そして最低限のドサージュ(2〜4g/L) といったところがエグリ・ウーリエの特徴。最初に飲んだ「ドザージュがしっかりされているからこそおいしい」と沼田店長が言ったテタンジェと好対照を示し、結果的にすごく興味深い比較試飲となったのだった。一杯目は振る舞い酒だけども。

というわけで、振る舞いテタンジェをおいしくいただき、テイスティングバーでエグリ・ウーリエを飲み、ついでにクレマン・ド・ブルゴーニュを1本買って、大満足でWMPを後にしたのだった。買うのはシャンパーニュじゃないのかよ。

宣伝してくれと頼まれたわけでもなんでもないが勝手に宣伝すると、WMPのアプリはテイスティングバーで「今開いてる」ボトルを確認することができる。仕事中の休憩時間にチェックすると、「仕事終わったらこれ飲みにいくぞ…!」みたいにモチベーションを高める効果があるので、オススメだ。

gardenplace.jp

 

 

神戸・元町のワインバー「リシュリュゥ」でフュ・ド・シェーヌを飲んできた

神戸・元町のワインバー「リシュリュゥ」に行った

神戸に出張に行ってきた。夜までスケジュールがびっしり詰まるなか、ようやく体が空いた20時過ぎ、行ってみたかったワインバーを訪問することができた。元町駅からほど近い「サロン デュ ヴァン リシュリュゥ(以下、リシュリュゥ)」だ。

とある方から訪問した際のお話を聞き、別のプロの方からも「あのお店はガチ(要約)」と聞いたお店。ちょっと緊張しながらドアを開けてみると、波型のカウンターには先客が3名ほどおられ、みなさん静かにグラスと向き合っている。みんなでワイワイ盛り上がるというよりは、キャンドルの灯りに照らされながらゆっくりとワインを楽しむ場であるようだ。

メニューはなく、マスターから「どんなワインがお好みですか?」と聞かれ、答えた中身に応じてワインを選んでもらえる問診スタイル。

ここで私はハタと思った。私はどんなワインが好みなのだろうか。正直に言うととくになく、私のなかにある一定の「おいしい値」みたいなものを超えていればなんでも好きだ。産地も品種も究極のところ、なんでもいい。

強いて言語化すれば、「甘ずっぱ赤ワイン」「ちょい熟とろとろ泡」「たるたる白ワイン」とかなのだが、いずれも一見で訪問した雰囲気あるワインバーで発語されるのは憚られる低知能ワードばかり。

かといって「普段は税抜き798円くらいのワインを飲んでます、その時々のバイブスで」とも言いにくいというか言う意味がなさすぎて震える。結局、最終的には「ブルゴーニュピノ・ノワールとか好きですかねゴニョゴニョ」みたいなことを曖昧に発語した気がする。我ながらつまらん回答だ今は反省している

 

ピエール・ダモワ ジュヴレ・シャンベルタン2012

さて、いよいよ本題だ。ほぼ手がかりなしみたいな情報しか提供できないなか、出していただいたのはジュヴレ・シャンベルタンの生産者、ピエール・ダモワのジュヴレ・シャンベルタン2012。いいワインが出てきたぞ……!

ピエール・ダモワはブドウを遅摘みするのが特徴の生産者なのだそうで、そのぶんなのかどうなのか、グラスの色調はやや濃いめに見える。

やわらかなブドウをやわらかく搾った結果やわらかい液体になりましたといった印象を受けるワインで、こちらを攻撃してくるのではなくやさしく受容してくれるような雰囲気がある。酸も渋みもおだやかで、やわらかい果実味が温度が上がるほどに高まってくる。うまいなあ。

なんかこう、1日働いた緊張がほぐれるといった点で温泉に入浴したような効果。肩の力が抜けて、お店の雰囲気にもほんのわずかながら馴染んできたような気がする。

 

アンリ・ジロー フュ・ド・シェーヌ MV09

続いてはシャンパーニュをお願いした。「アンリ・ジローのフュ・ド・シェーヌのMV09を今から開けるところですが、ほかにお好みがあればおっしゃってください」とのこと。ふゅ、フュ・ド・シェーヌ!? プレステージシャンパーニュなわけなんですよそんなもんは。私の脳内電卓的には1杯5000〜1万円。マルチヴィンテージ09とのことで熟成もしっかり経ている……となるとスーパーサイヤ人を計測したときのスカウターよろしく脳内電卓が爆発雲散霧消状態。でも飲みたい。

「もうちょっとお安い感じのやつありますか?」と聞くのもなんかアレだしせっかく神戸まで来てるわけだしと、東の絶対飲みたい山と西のでもいくらするんだよ海が土俵の中央でがっぷり四つのハッケヨイのこった状態。どっちが勝つんですかね、解説の北の富士さん…!

最終的には出張とはいえ旅先のガバガバ経済感覚。ここは行くしかないでしょうということで、ここまでの脳内ドタバタ劇を表情筋には一切出さずにニッコリ微笑み、「いいですね、お願いします」とオーダーしたのだった。絶対飲みたい山つよい。

フュ・ド・シェーヌMV09。お店の名前とロゴ入り!

「マルチヴィンテージ」ってそういやなんなんだろうなーと思って聞いてみると「MV09は09ヴィンテージを中心にリザーヴワインを加えたもの」とのことで、飲んでみるとこれがもう本当に素晴らしい。フュ・ド・シェーヌはつい先日長期熟成を経たものを飲んだばかりだが、注いでいただいたMV09はこれまさに今が飲み頃なんじゃないだろうかという味わい。

突き刺さるようなシャープな酸にリンゴのような果実味、そこにパン窯の扉を今まさに開いたような香りでうっめええええええと思ったのだがここは一見でお邪魔しているワインバー。「おいしいです(にっこり)」程度のリアクションしかできぬ。ああ、叫びたい。シャウト級のおいしさだ。結果的にはまさにどストライクのちょい熟とろとろシャンパーニュだった。樽を使ったシャンパーニュっておいしいですよね。

a.r10.to

 

ヴァイングート・パウリンショフ リースリング・シュペトレーゼ

甘口ワインもいただいた。「ドイツの甘口でもいいですか?」と出していただいたのはヴァイングート・パウリンショフ(※paulinshof 発音は謎)のリースリング・シュペトレーゼ2019。

むちゃくちゃキレイな黄金水(と書くとアレだが)的ワイン。輝くような色合い、八つ切りのまだ青いレモンをチュッと絞ったような香りに、甘さと酸味が体感値1:1のバランスのプレミアム蜂蜜レモン的味わいで非常においしい。

やわらかでたっぷりしたピノ・ノワール、トロじゅくシャンパーニュ、すっきり甘酸っぱ白と、なんかもうお好みは一切お伝えしていないのに結果的には好みのワインばかりいただいて大満足。最高だな神戸。

さてお会計タイムだ。アンリ・ジロー フュ・ド・シェーヌとピエール・ダモワ ジュヴレ・シャンベルタンはいずれも今買おうと思ったら数万円するワインだと思うが一体いくらになるのか……と、届いた伝票に記された金額は、友よ、驚きの7200円だったんですよこれがまた。どうなってんだこれ。フュ・ド・シェーヌ1杯分の値段じゃなくて? 次回はもっと腰を据えて飲んじゃうぞ? 

「今度来ていただけたら、もう少しお好みのワインをお出しできると思います」というマスターの言葉に見送られ、大満足のリシュリュゥ初訪問を終えたのだった。私は人生であと何度神戸を訪れるかわからないが、その回数だけ行きたいお店となったのだった。

a.r10.to



神田に自然派ワインを飲みに行ったらなぜか高級ワインを飲んでいた話。

【1軒目】味坊で自然派ワインを飲む

お友だちと6人で羊を食べに行ってきたら、なぜかコングスガードやクリュッグを飲んでいた、という異常体験をしてきた。時系列に沿っての詳細なレポートは安ワイン道場師範の稽古日誌をご覧いただくとして、私はこの日とくに印象に残ったワインの話をメインに記事をまとめていきたい。

さて、この日の私にとっての一軒目は神田の「味坊」。自然派ワインと本格中華がめちゃくちゃ安い値段で楽しめる名店で、ここで「板春雨と羊串、そして自然派ワインをガブガブ飲む」がなんとなくのこの夜のコンセプト的なもののひとつ(だった)(はずだった)。

板春雨。はじめて食べたけどこれは食べるべき一皿。白いごはん食べたい。

さて、私以外のメンバーは有楽町駅前の多種類のワインが低料金かつ飲み放題で楽しめるお店・ノムノエクスプレスで0次会を実施していたため一足先にお店に着いて冷蔵ケースのワインを物色していると、お店のお姉さんが「ワインたっくさんあるよ〜! 6人だったらニーサンボン飲めちゃうヨ!」と笑顔でサジェストしてくれた。味坊は店員さんが明るくていいんだよな。

結局我々はこのお店で4本のボトルをワインの輸送容器からただの産業廃棄物に変え、さらにブテイユ(フルボトル)3本、マグナム1本をこの夜開けることになる。どうしてこうなったのヨ…!

さて、味坊では唯一の泡(ペティアン)であるヴァンサン・リカールの「ムスー(2021)」、シチリアの土着品種で造る白ワイン、ヌース協同組合の「テッレ・シチリアーノ カタラット」、ラルコの「ロッソ・デル・ヴェロネーゼ(2018)」そしてピエモンテの造り手、トリンケーロ「テッラ・デル・ノーチェ(2016)」を飲んだ。

このなかで抜群に素晴らしかったのがラルコのロッソ・デル・ヴェロネーゼ。味坊ではふちが分厚く直径が小さいグラスならぬコップでワインを飲むので香りはイマイチわからないのだが、味わいはこれはもう完全に飲むイチゴ狩り農園。イチゴ狩りを楽しんでお会計をしようとしたらおまけですと採れたてのベリー類、自生してるハーブもいただいちゃいました! 感謝! みたいな味だ。

このワインは素晴らしかった。

このワインがネットで3000円を切る価格で購入できるのは正直驚きで、3000円以下最強に挑めるポテンシャルを持つワインだと感じた。普段使ってるグラスで飲んでみたいのでこれは近々改めて購入してみたいと思うし、3000円くらいするワインに5500円って値札が貼ってある味坊に改めてリスペクトだ。お店の電卓、壊れてない…?

もうひとつ、トリンケーロのテッラ・デル・ノーチェ2016もすごく良かった。品種はピエモンテの私の好きな品種・バルベーラ(DOCGバルベーラ ダスティ スペリオーレ)。

このバルベーラも好きな味。

おいしいんだよなあバルベーラ。このワインは初見で「良いボルドー?」と思うようなしっかりした酸味と渋み、そしてたっぷりの果実味と香り高さがあって羊肉によく合った。こちらはネットでの売価が4000円弱だが、貼られた値札は5500円。だいたい5500円なんですよ、味坊は。

味坊の予約が17時半、次のお店の予約が脅威の19時で、滞在可能時間は75分。我々はいまパック旅行でヴェネツィアかどこかに来て分刻みの観光スケジュールをこなしているのか? というほどのスケジュール感のなかで4本を飲み干し、タクシーへと乗り込んだ。

 

2軒目:ワインショップ&ダイナー フジマルでマグナムシャンパーニュを飲む

続いて向かったのは浅草橋の神田川沿いにある「ワインショップ&ダイナー フジマル」。ワインショップ併設のレストランで、ワインセラーで購入したワインを小売価格+抜栓料で楽しむことができる。島之内フジマル醸造所、清澄白河フジマル醸造所などを運営する株式会社パピーユのレストラン業態みたいな感じ。

店内のドアから入れるウォークインセラーへは、お友だちのとりゅふさん、TKさん、そして亀戸の名店・デゴルジュマンのマスター・泡大将が向かった。残された安ワイン道場師範、NO.5さん、そして私の3名はしばし歓談という運びとなったのでしばし歓談していたのだがしばし歓談してもおかしいな全然ワインが来ない。これが大学生の飲み会の二次会のカラオケボックスだったら「アイツら、ひっとしてフケた……!?」となるところだが、ここはワインだけが共通点で年齢も性別もバラバラの男女が集う限りなく健全すぎる飲み会。そんな心配はない。フジマルのセラーの圧巻のラインナップ、そのなかで遭難しているに違いない。

シャンパーニュ棚の一部。飲みたいのしかない(飲めるとは言ってない)

というわけで救助、じゃなかった様子を見にセラーのドアを開くと、「このアイテムがこの価格……うーーむなるほど」みたいな感じで泡大将がガチでワインを物色していた。常在戦場、これぞプロ。一方、「今からみんなで飲むワイン」を探すTKさんととりゅふさんは懸念された通りセラーを埋め尽くすワインの森の中で遭難しており、最終的に「これしかない……!」と選んだワインが店員さんに「非売品です」と一蹴される事態に。ややこしい夜になってきたな。

そして、なんやかんやがあって最終的にマグナムシャンパーニュを飲む運びとなった。どんな運びなんだよ。ここで私の考えた格言を再掲しておこう。マグナムが出る飲み会はいい飲み会だ。故に今宵はいい夜だ。二次会でマグナム飲むのはじめてだ。

セラーにあったマグナムいろいろ。一番左を飲みました。

飲んだのはモンターニュ・ド・ランスのグランクリュ村・ブージィの生産者ジャン・ヴェッセルのエクストラ・ブリュット。ドサージュ(補糖)しない造りだそうで、私はドサージュなしのシャンパーニュに対して軽く身構えるみたいな気分があるのだが、これはとってもおいしいシャンパーニュ。先発の味坊選手が勝ち投手の権利を持って5回でマウンドを降りた後、6回を無難に抑えてくれたみたいな印象だった。

 

3軒目:ワイン厨房Daimasuでコングスガードを飲む

さて、マグナムシャンパーニュも空になり、次に向かったのは泡大将が案内してくれた浅草の「ワイン厨房 Daimasu」。酒屋が経営するというワインショップ併設のワインバーで、地下のワインショップ(セラー)で購入したワインは+1000円で席で飲むことが可能という2軒目のワインショップ&ダイナー フジマルと同じ形式のお店だ。

地下に広がるワイン空間。(写真ブレてます)

さて、「セラー」という言葉を耳にすると無条件でそこに入り込んでしまうというのがワイン好きの習性。泡大将に案内されて、地下セラーを探検することにした。

小さめとはいえビルのワンフロアがそのままセラーになっているので、内部はかなり広い。以前は掘り出し物も多く眠っていたのだそうだが、現在は普通のショップ的な品揃えになっているようだし、酔いが脳に回り切ったこのタイミングでラベルを吟味してしっかり選ぶのはほぼ不可能。ここは泡大将に選んでもらおう……と思っていると、広いセラーのそこだけ光り輝いているような存在感を放つボトルがひとつ。You、コングスガードじゃないの!

ラッキーコングスガード

こりゃ掘り出しモノですよと泡大将がすかさずお店の方に金額を聞くと「大優勝です…!」と一言。プライス的にも十分に手の届く、かなりお得な値付けがされていたのだそうで、晴れてコングスガードのナパヴァレー シャルドネ2019の開栓とあいなった。

コングスガードのシャルドネ自体は以前飲んだことがあったが、今回もやはりおいしい。圧倒的においしい。ほんのわずかにくすんだ、どことなくシルバーを思わせるゴールドの外観に、グラスからふつふつと湧き出る蜜と柑橘と樽の香り。バターのようなハチミツのような粘性を伴う液体は、ちょっとした喉の炎症とかこれ飲みゃ治るんじゃないのと思わされるようなおいしさだ。コングスガードは飲む薬。喉と精神に効く(少なくとも精神には効く)。

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お金はあればあるだけもっと欲しくなるものなので私はお金持ちになりたいとはとくに思わないのだが、毎日コングスガードが飲みたいので今の10倍年収が欲しいと思った次第だ。100倍でも構わない。

このワインは楽天で見つけられなかったが最上位キュヴェのザ・ジャッジはあった。

このお店ではオー・ボン・クリマのイザベル ピノ・ノワール2018も飲んだ。2021年に亡くなったワインメーカー、ジム・クレンデネンさんの愛娘の名前を冠したキュヴェ。「娘名(むすめめい)キュヴェにハズレなし」の格言に則り、このワインも大変おいしいワインだったのだった。

ここでもワインを2本飲み、累計ではマグナム1本、ブテイユ6本。私以外のみなさんはグラスワインも数杯飲んでるはずだが元気いっぱいだ。みなさん肝臓どうなってるのヨ!

しかし、さすがにこのあたりで解散ですかね常識的に考えてという固定概念を打ち破り、狂瀾怒濤の会はさらにもう一軒へと突入していく。この夜の終着駅、そこはまさかの本日は休業日のはずの亀戸の名店・デゴルジュマン。さっきまで一緒に飲んでいた泡大将が、ご好意で急遽お店を開けてくれた。

締めクリュッグ

ここで飲んだのはなんとクリュッグ。同行のTKさんがご提供してくれたのだった神……! クリュッグの現行ヴィンテージにあたるエディション170は現行ヴィンテージなのにあまり出回っていないのだそうで、実に大変ありがたい。

私はお酒の席の締めにこれまでラーメン、そば、お茶漬け、ペペロンチーノ、といったものを過去に摂取してきたが、この日はなんとクリュッグで締めた。締めクリ。締めクリってなんだよ。

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とにもかくにも、「味坊で自然派ワインを飲もう!」くらいのノリで集まったはずが後半にいくにつれてヘビー級のワインが次々に登場した不思議で最高な夜はこうして終わった。髪の毛の頭頂部の1本から足の親指の爪先までアルコールが沁み渡り時間の概念は溶け切っていたがなんと電車はまだ東京の街を走っていたことから、ものすごく短い時間でのハシゴ酒だったことがわかる。これがYOASOBI……!

クレージーな飲み会をともにできる友人は最高の友人。みなさん、また飲みましょう…!