ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

ラ ・グランド・コリーヌ「S12」日本人醸造家がローヌで造るシラーを飲んでみた。【La Grande Colline S12】

「土とワイン」と大岡弘武さん

大岡弘武、という人物の名前を初めて知ったのは書籍『土とワイン』(X-Knowledge)を読んでいるときだった。なるほどなー、表層土の下にある基盤岩、これがワインの味に影響を及ぼすのかー、ホントかよ、みたいに読み進めていったら、急に日本人の名前が出てきたのであった。

この本は、ニューヨーク在住のワインジャーナリストが書いた、ワイン用ブドウを育む土壌の特徴と、それぞれの土地でいわゆる自然派的な造りをする生産者を紹介するといった内容の本。大岡弘武さんは、その第1章「火成岩(変成岩を含む)」のなかで、ローヌ北部を代表する造り手の一人として紹介されている。450ページを超える厚い本だけど、それでも8ページにわたり紹介されているからすごい。本によれば、現在は岡山県でワイン 造りしているという。

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ラ・グランド・コリーヌ「S12」を飲みました。

スポーツで日本人選手が海外で活躍しているニュースを見ると自分とはなんの関係もないにも関わらずなぜか誇らしい気分になるという奇妙な現象があるが、その現象が本を読んだ私の心中に生じ、私はさっそく大岡弘武、という名前をGoogleの検索クエリに入力していた。すると、ラ ・グランド・コリーヌ・ジャポンの公式ページがヒットしたのだった。

ラ ・グランド・コリーヌ・ジャポンと醸造家・大岡弘武さん

その時点でラ ・グランド・コリーヌ・ジャポンのワインはネットには出回っていなかった。しかし、公式サイトによれば会員登録をするとその年の年末にワインが発売される際に案内してもらえるということ。こんなもん登録一択だわと即座に会員登録。しばしの時間が経過した2020年末、差出人「大岡弘武」というメールが私のメールボックスに飛び込んできた。待ちに待ったラ ・グランド・コリーヌ・ジャポンからの発売開始の案内であった。今回飲んだのは、そのときに買ったうちの1本だ。

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大岡弘武さんは1974年生まれ。明治大学卒業後渡仏。北ローヌの生産者・ギガルのエルミタージュ地区栽培長を務めたのち北ローヌを代表する自然派生産者、ティエリー・アルマンの栽培長を任せれたのち独立、2016年に帰国し、2017年1月に岡山市北区にワイナリーを設立して今に至るという人物。

さて、朝日新聞の2018年3月8日の記事によれば、東京生まれの大岡さんが岡山を拠点に選んだのは「雨が少なく、ブドウ産地としての実績があり、土壌が仏ローヌと似ていたから」。「使われていない米蔵を改装し、タンクなどはネットオークションで購入」して経費を節減したという。畑は近隣の耕作放棄地。

費用は計600万円で、これは「醸造家への夢を持つ若者の手本のためにも、初期投資を極力抑えた」(2018年1月18日/朝日新聞関西版夕刊)とある。ワイナリーって初期投資600万円ではじめられるんだ! という驚きと、タンクってネットオークションで売ってるんだ! という驚きがある。世界は驚きで満ちている。600万円ほしい。

さて、大岡さんは「有機農法を行い、一切の添加物をいれずにワインを造る。100%葡萄からできたワイン」を造っているのだと公式サイトには書かれている。自社畑ではヤマブドウ系品種の小公子とローヌ原産のシラーを栽培しているそうだ。

ラ ・グランド・コリーヌ「S12」はどんなワインか

そんなラ ・グランド・コリーヌ・ジャポンのワインが2020年12月10日、メルマガ登録者限定で販売された。私が購入したのは、マスカットオブアレキサンドリアで造られた白の微発泡、「ル・カノン ミュスカ・ダレクサンドリー2020(2800円税込)」と、今回飲んだシラーで造られた赤ワイン「S12(4600円税込)」だ。

「S12」は大岡さんのフランスの畑、の隣の畑の生産者が譲ってくれたブドウを使い「自分の畑とどのような違いがでるのか見たくて」造ったというワイン。ブドウを丸ごとタンクに入れて10日おき、足で潰すと野生酵母による発酵がスタート、1日1回タンクに入って足でブドウの皮を沈め、10日ほどしたらワインを抜いて1日かけてゆっくりプレス。小樽にいれて、72カ月の長期熟成を経ているそうな。もちろんノンフィルター、無清澄、亜硫酸無添加の「ブドウ100%」。瓶詰めは2018年11月「まさに今が飲み頃」と商品説明ページにはある。

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「人生もワインもいつだって今がピーク」(by田邉公一ソムリエ)ということで、木曜日の夜にワインを我慢したことを記念して金曜日の夜に開栓することとした。フランスが認めたナチュラルワインの味はいかがなものか。さっそく飲んでみよう。

ラ ・グランド・コリーヌ「S12」を飲んでみた

というわけでグラスに注いで飲んでみたわけですが……これは……すげえうまい。なんだこりゃ。感想がのどが乾いてるときにファンタオレンジを飲んだときの中学1年生みたいになってるぞ。改めてもう一度飲んでみよう。うん、超おいしい。ヤバい。ダメだこりゃ。おいしすぎて語彙が崩壊しているのでテイスティングノートをコピペします。

色調は深いガーネット
香りの強さは強いです。果実味が主体でブラックベリー、少しスミレの花の香りもあります。そこに、スパイス(ヴァニラ、シナモン、丁子、なめし皮、コショウ)が加わり、複雑さを出しています。時間が経つとブルーベリーに変わります。
口に含むと、綺麗な酸が全体をすっきりとさせながら
果実味がふくらみます。バランスがとても良く、熟成させたシラーの良さが素直に感じられます。余韻も長いです。

これは個人的に感じていることなのだが「公式のテイスティングノートと味の印象が一致するワインはおいしい」という気がする。「え、全然そんな味しないけど」ってワインもあるじゃないすかどれがとは言わないけども。

このワインに関しては、本当にテイスティングノートそのものの香りと味。色が濃いわりに味は甘酸っぱ系。シラーらしいスパイシーさもあって、鶏肉の香草焼きと鬼アージュ(鬼のようにマリアージュしたの意)した。これは端的に言って最高。めちゃうまい。アルコール度数12%と軽いこともあってこれは好みof好みだ。4600円と高いけど、おいしさでしっかりと元が取れている。濁ってもいないし、澱もまったく気にならないし「ブドウだけ」という感じも変な話だが全然ない。

なにかしらAOCの規定から外れているのか、どうなのか、ワインの格付けはヴァン・ド・ターブル。でもほんと、このワインに関しては格付けなんて関係ないですまったく。

というわけで、ラ ・グランド・コリーヌ・ジャポンのワインのファンに私は一発でなってしまったのだった。このワインはフランスで造られたものだから、正確にいうとラ ・グランド・コリーヌのワイン、ということになるのかな。

大岡さんが自社畑で育てているのはヨーロッパブドウのビティス・ヴィニフェラ種ではないヤマブドウビティス・コアニティーっていうんだそうですよ)の「小公子」。公式サイトに書かれている、ヤマブドウにこだわる理由もすごく納得がいくし「小公子」、がぜん気になるなー!

強くオススメのスペインのナチュラルワイン。

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ソーヴィニヨン・ブランで学ぶニュージーランドワイン史。【ティンポット・ハット ソーヴィニヨン・ブラン】

ニュージーランドワインの歴史について調べてみた

ニュージーランドソーヴィニヨン・ブランが好きで白ワインを買うときはいつも有力な選択肢となる。さわやかでおいしいんですよねニュージーランドソーヴィニヨン・ブラン

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ティンポット・ハット ソーヴィニヨン・ブランを飲みました。

好きでよく飲むわりに、ニュージーランドのワインの歴史とかって全然知らないな、と思い、せっかくの機会だしと調べてみることとした。

まずニュージーランドワインのwikipediaを見ると、2019年の時点でニュージーランドには3万8680ヘクタールのブドウ畑があり、そのうち3/4がソーヴィニヨンブラン専用。輸出用ワインのおよそ90%がこの品種なのだという。

ニュージーランドでワイン産業が発展した理由

すごく面白いと思ったのはニュージーランドでワイン産業が発展した理由で、1973年にイギリスから食肉と乳製品の貿易条件の終了を要求されたからなんだとか。乳製品、食肉、羊毛のような“一次産品”だと儲けが少なくなることから、高い経済的リターンの期待される製品の開発が求められたわけですね。なんだけど、目の前には広大な牧草地があるばかり。

しかし、チャンスはまさにその牧草地にあり、水分が少なく、土壌の肥沃度が低くてもよく育つブドウの木が牧草地で育てるのにピッタリだと考えた人がいたようだ。そして、それがブレークスルーとなった。

ニュージーランドソーヴィニヨン・ブランは世界的に高い評価を得て、オークランド、セントラル・オタゴ、ホークスベイといった名産地が次々に開拓され、ニュージーランドワインドットコムによれば2019年の輸出額は18億6000万ドルに達しているというからすごい。

同じ土地に牧草を植えるか、ブドウの木を植えるかの違いが、国の産業の構造的変化を起こしたっていうことに私は果てしない歴史ロマンみたいなのを感じるんだけど伝わっておりますでしょうか。

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ニュージーランドソーヴィニヨン・ブラン

沖積谷で水はけが良いこと、海の影響で夏は涼しく、冬は穏やかで、またどんな暑い夏でも夜が涼しく、その一貫して冷涼な夜は酸味の強い果実を生み出すことになるのだそうだ。そして、この国にあった乳業の伝統から、ステンレスタンクを使う文化があったことが、ワインのスタイルに影響を与えたのだそうだ。

乳製品作りには当然だったステンレスタンクが、樽の味に慣れた人々に、酸味が強いのに果実味があり、それでいて甘くない! みたいに評価されたみたい。なるほどな〜。すべての要素がソーヴィニヨン・ブランに向いている感じする。畜産とか酪農の文化と土壌があればこそ、ワイン産業が育ったわけですね。すごく面白い話だと思いました(おわり)。なぜか大泉洋あたりが主演で映画化されそう。

ティンポット・ハット ソーヴィニヨン・ブランはどんなワインか

今回飲んだティンポット・ハット ソーヴィニヨンブランは、2016年ヴィンテージがデキャンター誌でソーヴィニヨン・ブラン史上最高得点の98点を獲得したというワイン。とかいうと「でもお高いんでしょう?」となるかと思うけどご安心ください奥様。税込2178円でのご案内! というわけでコスパがいいとはちょっと言いにくいニュージーランドワインのなかで、コスパも良さそうなのを魅力に感じて買ってみた。

ティンポッド・ハットは、ニュージーランドの女性醸造家、フィオナ・ターナーが2006年に立ち上げたワイナリー。「環境を保護しながら、効率的かつ経済的にプレミアムなブドウとワインを生産するための実践である、サステイナブルなワイン生産」を行っていると公式サイトには書いてある。いまどき感あるなあ。

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自社畑の3区画から収穫されたブドウを使い、培養酵母を用いて冷温発酵。ブレンド後、すぐにスクリューキャップで瓶詰めするとある。熟成とかはこれ一切しないわけですかね。さぞかしフレッシュに違いない。

ティンポット・ハット ソーヴィニヨン・ブランを飲んでみた

というわけで冷やしたそれをグラスに注いで飲んでみたところ、まず感じたのはなんなんですかねこれは。「広さ」の感覚だった。だだっ広い草原とか、行ったことないけど飛行機の格納庫とか、そういうとにかく広い場所が脳裏に浮かぶというバグが起こった。

これはなんでなんだろうか。たぶん飲み口が異常にさわやかだからで、私の貧脳で処理できるさわやか信号をこのワインのさわやかさが凌駕、「なんて広いのだろう!」という珍感想としてアウトプットしたのだと思う。

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vivinoの口コミ点数も4.0点と高い。そりゃそうだ。

ソーヴィニヨン・ブランはネギとか青草とかグレープフルーツとか言うけれど、このワインに関しては果てしなくおいしい水、みたいな印象だ。もしくは飲む海風。さわやかなんだけど、どこか塩っけもあるみたいな。

というわけで、なるほど高評価を得るだけあって大変おいしいワインだったのだった。これが超ギリギリとはいえ1000円台はかなりいい(ただ、2日目にあの感動をもう一度、と飲んだらなんだか味が抜けてた感があった)。

本格的にワインが造られ始めてわずか50年にして、ソーヴィニヨン・ブランという絶対的な武器で世界と勝負しているニュージーランドワイン。引き続き、飲んでいきたい。

「パンパネオ テンプラニーリョ ナチュラル」について調べたことと味の感想まとめ。【PAMPANEO TEMPRANILLO NATURAL】

「干上がらない川はない」ラ ・マンチャという土地

先日、インポーター・ラシーヌの試飲会で飲んでおいしかったスペインはラ・マンチャの生産者、エセンシア・ルラルのワイン「パンパネオ」を改めて自宅で飲んだ。

エセンシアはスペイン語で「本質」。ルラルは「農村」なんだそうだ。「本質農村」。「塚田農場」みたい。あとちょっと「島崎藤村」感もあるな字面的に。すみませんワインの話をします。

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エセンシオ・ルラル「パンパネオ テンプラニーリョ エコ」を飲みました。

さて、ラ・マンチャは「干上がらない川はない」と言われるほどの乾燥地帯なのだそうだ。調べてみると、ラ・マンチャの年間降水量は300-400mm。年間の日照時間は3000hほどもあるのだという。

気象庁によれば東京の年間降水量は1528.8mm、年間日照時間は1876.7h。東京だってそこまで雨ばかりという印象があるわけではないが、ラ ・マンチャと比べれば年間降水量は5倍近くあり、日照時間は半分近くまで短いことになる。

なんなら最近だと「明日朝までの予想雨量が300mmなので厳重にご注意を」みたいなニュースをよく見るから、下手すると日本の1日の降水量くらいしか年間を通して雨が降らないことになる。

そりゃあ乾くわラ ・マンチャの大地。Google マップで航空写真を見ると全体に茶色っぽく見えて、乾燥具合が目視できる。

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エセンシア・ルラルのあるケロ村周辺の航空写真(Google Mapのキャプチャ)。乾燥してる感じする。

 

ラ ・マンチャの生産者エセンシア・ルラルとは

乾燥しているラ ・マンチャだが、ワイン用ブドウの栽培には向いているようで、かつては灌漑を行うことで地元消費用ブレンドワインに使うブドウが大量に生産されていた。

エセンシア・ルラルもそのようなブレンドワイン用ブドウを大規模に生産していたが、2002年に高品質な輸出用ワインをつくることを決意、現在は灌漑を行わず、ビオディナミ農法に切り替え、なるべく自然に近い状態でのブドウ栽培とワイン造りに切り替えているのだそうだ。

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すると、もともとが痩せた土地であるため自然と面積あたりの収量が下がって良質なブドウがとれるようになるんだそうだ。それでいて畑自体は40ヘクタールもあるからスケールメリットで価格は安い。これ強いパターンだな。ワイン造りで規模は力であります。

しかも、この地でのワイン造りの歴史自体は非常に古いため、植えてあるアイレンやテンプラニーリョのなかには樹齢が100年を超えてるものもあるのだとか。強〜!

標高が高く、台地になっているこの土地には地平線の彼方までブドウ畑が広がり、耕作放棄地やらワイナリーの遺跡みたいのも散在しているらしく、初期投資少なめでワイン事業ができるってんで「大企業型ワイナリーの関心の的になっている」と輸入元の説明にはある。

川も干上がる土地にあるワイナリーの遺跡ってなんだかすごくロマンチックだなー。もし自分がハリウッド映画のプロデュースをすることになったら、『マッドマックス 怒りのデスロード』の世界観でイモータン・ジョーがワイン造りの跡取り問題で苦労するみたいな映画をつくる。ロケ地はラ・マンチャで。

 

「パンパネオ テンプラニーリョ ナチュラル」を飲んでみた

さて、今回飲んだ「パンパネオ」にはブドウの葉が風に揺れる様子、みたいな意味があるらしく、ラベルに描かれたフランメンコダンサーの複雑なドレープが絡み合うように見えるスカートがブドウの葉になっていて洒落てる。

このワインにはナチュラルとエコ、ふたつのシリーズがあり、前者はノンフィルター、酸化防止剤無添加だそうだが今回飲んだのは前者だ。品種はテンプラリーニョ100%。購入価格は1620円税別だ。

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で、飲んでみるとこれがやっぱり試飲会での印象そのままにめちゃおいしい。

まず香りはイチゴとかラズベリーとか梅とかアセロラとかのチーム・甘ずっぱのみなさん。

で、飲んでみるとイチゴとかラズベリーとか梅とかアセロラの味がするんですよそのまんま。香りと味の印象がほぼイコールなの珍しいな。とにかく甘ずっぱくてゴクゴク飲める。黙って出されて品種を当てろと言われたら悩んだ末に「……ガメイ?」とか言いそう。ラ ・マンチャばりに暑い日なら氷入れたり炭酸で割ったりしちゃっても良さそうな気がする。

つい先日飲んだ同じスペインワインの「Psi(プシー)」がテンプラニーリョ90%、ガルナッチャ10%みたいなブレンドだったけど、同じテンプラニーリョでもまったく味の方向性が違って面白い。

パンパネオがステンレンスタンクで発酵・熟成を行うのに対して、プシーは熟成に樽も使うから、その違いも大きいんだろうなあ。価格はプシーの半分だけど、好みでいえば私が好きなのはパンパネオのほうだ。これおいしい。

 

「パンパネオ テンプラニーリョ ナチュラル」と澱とつぶつぶ入りジュース

ただ、アルコール度数が13%と高くないこともあり、甘ずっぱさがあとを引いてグイグイ飲めるんだけど、げ、なんだこりゃ。澱がすごい。澱っていうかもはや実じゃない? ってくらいデカい。「粒入り」って書いてあっても不思議じゃないレベル。

昔よくありましたよね粒入り缶ジュース。最後引っかかって出てこない粒を、首を直角に曲げて垂直に立てた缶の底面をポンポン叩いて出したりするの懐かしいなーワインの話だった。

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ノンフィルターなので澱があるのは当然といえば当然で、私はもちろん気にならないが、シラスの中に小型のタコが入っているかの如くにデカめの澱(?)が入っていました私の買ったボトルには。それもまた一興だ。

いずれにせよ、1000円台後半で買えるワインとしてのコスパは非常に高く、年末開催予定の日本コスパ大賞にノミネートされる可能性まで十分にありえる。惜しむらくは購入時に「麻婆豆腐に合いますよ」って教えてもらったことをすっかり忘れてチキンカツと一緒においしくいただいてしまったこと。またいずれ、麻婆豆腐と一緒に飲みたいワインだ。

 

※記事公開時「パンパネオ テンプラニーリョ エコ」と誤認して執筆していましたが、後日、飲んだのが「パンパネオ テンプラニーリョ ナチュラル」だったことがわかったため、内容を修正しています。

7本で振り返る私のワイン2年史。

ワイン歴2年のターニングポイントになったワインたち

ワインにハマって2年が経った。なんとなくの興味から始まって、ワインが好きになりすぎてブログまではじめ、今ではすっかりワイン沼に肩まで浸かって良い湯加減である。

そして今回の記事は2年前の自分がこういう記事を読みたかっただろうなあ、という想定で書く。趣旨は、「ワインに上手にハマるための銘柄案内」といったもの。

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ワインにハマるきっかけになったワインってありますよね。

当時私が知りたかったのはひとえに「銘柄」だった。「どれを買えば良いか」だった。それも、RPGの攻略フローチャートがこの順序で進んでいくとラスボスまでスムーズにたどりつけますよといった順番を説明してくれるように、ワインの世界に効率よく分け入っていくための銘柄ガイドを必要としていた。

多くのワイン初心者向けコンテンツは、まず「品種」の説明がある。しかし、私に限っていえばまず「銘柄」を知りたかったのだ。「ギョギョッ、このワインうまーっ!」が先にあり、次に「これ、カベルネっていうブドウなんだ。次も同じの買ってみよ」が発生するというのが正しいフラグの立ち方だと思う。

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ワインにハマって2年間、ターニングポイント的になった7本のワインを選んでみました。

というわけで、極めて個人的ではあるものの、私のワイン2年史を振り返り、ターニングポイント的になったワインを7本選ぼうというのが今回の趣旨だ。もし万が一ワインにこれからハマりたいと思っている人の目に触れてなにかの参考になったら幸甚である。また、ワインラバーの皆様におかれましては、ぜひご自身の「#7本で振り返る私のワイン史」をお教えいただけたら幸いだ(購入の参考にしちゃう)。

 

2019年1月25日。初めてネットで買った2本のワイン

さて、ワインにはまった日付を私は正確に言える。2019年1月25日だ。アマゾンの購入履歴によれば、この日私はスペインワインのエヴォディアと、イタリアワインのカザマッタ・ロッソという1000円台のワイン2本を注文している。それが、人生初の“名指し”でのワイン注文経験だ。

そこに至るまでに私は複雑なマーケティングファネル(認知から決済に至るまでの過程)をくぐり抜けている。ざっくり以下のようなものだ。

→近所のフレンチで前菜に合わせて白、メインに合わせて赤のグラスワインを注文
→ワインも料理も妙にうまい
→ワインへの興味芽生える
→コンビニ・スーパーで適当にワインを購入
→ハズレ連発
→ワインへの興味、薄れる
→冒頭のフレンチ再訪。興味再燃
→ネットで安くておいしいワインについて調べる
→エヴォディア、カザマッタ・ロッソの2本に決め、注文

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「これだ!」というワインに出会うまでの行動イメージ。

と、このように、1月25日の前にはこのような行動を私はしている。人間がある商品を購入する背景には複雑な行動の履歴があることがわかって面白いですね我ながら。

そして、以降の購入履歴はこうだ。

1/30 カサーレ・ヴェッキオ/コノスル レゼルヴァ カベルネ・ソーヴィニヨン
2/5 カザマッタ・ロッソ/カザマッタ・ビアンコ
2/12 カザマッタ・ロッソ/エヴォディア

Youカザマッタ・ロッソ気に入ったね。よほど気に入ったのだろう、2回リピートして白(ビアンコ)まで試している。いいなあ、ハマりつつあるな、この人。ここまで来ればもうハマるでしょ間違いなく感がある。

さらに履歴を辿ると、2月14日、前回の購入日からわずか2日でコノスル・リゼルヴァ・ゲヴュルトラミネール、ならびに「コノスル・リゼルヴァ・シリーズ赤だけ5本セット」を購入している。品種ごとの違いに興味が芽生えてますね……(温かい目)。

ともあれここで私は初めて「必要量」以上を購入しているのがポイントだ。好奇心と知識欲が暴走モードに切り替わったこの時点でポイント・オブ・ノーリターンを華麗に通過し、それから今に至るまで、様々な段階をふたたび私はふむことになる。以下のようなものだ。

→リアルショップ迷走期
エノテカオンライン期
楽天移行期
楽天迷走期
→ワインセット購入期

以上を経て、興味を持ったワインを単品でツモる今のスタイルに落ち着いている。楽しい2年間だったなあ。今は「なに期」なのだろうか。きっとなにかしらの迷走期なのだろう、後から見れば。

 

7本のワインで振り返る私のワイン2年史

さて、前置きが極めて長くなったがここからが本題だ。この愉快な2年間のターニングポイントとなった7本のワインを、すでに登場したものも含めてここから紹介していく。そのワインを飲んだ(購入した)ことでなにかのトビラが開き、新しいワインの世界を覗かせてくれたワインたちだ。

なお、テイスティングやらお店で飲んだやらでほかにも印象的なワインはあるが、挙げるのはすべて自分でボトルを購入したもののみとした。また、ガッツリ印象に残っているけれども現時点でネットで購入できないもの(小布施ワイナリーとかドメーヌ・モンとか)は省いている。

それでは行ってみよう。以下の7本だ。

 

カザマッタ・ロッソ→ワインにハマるきっかけ(イタリア・赤・1000円台)

それまでの私の赤ワインへの印象は、甘いか渋いか酸っぱいか、であった。甘いものは甘ったるくて飲めず、酸っぱいものは渋酸っぱくて飲めない。ところがこれは、甘み、渋み、果実味がどれも突出せず、調和していて明らかな違いを感じられた。そしてラベルも素晴らしく、食卓に絵が飾られているように、置くだけで場が華やぐ。ワインをゼロから知りたい場合に勧めるかと言われれば今思うと微妙なんだが私はこのワインがハマる最初のきっかけ。

ちなみにカザマッタ・ロッソはビー・ビー・グラーツという元芸術家がイタリアのトスカーナで造るワインで、サンジョヴェーゼという雑にいうと甘ずっぱいブドウでできてる。同時に買ったエヴォディアもオススメ。こちらは1000円切る価格で買える。

 

コノスル・レゼルヴァ・ゲヴュルツトラミネール→ワインにハマる原因(チリ・白・1000円台)

これは何度も書いているのだが私がワイン沼にハマりこんだときに背中を押してくれたのがこのワインだ。グラスに注いだときのグラスの底から漂ってくる華やかな香りをたぶん私は一生忘れないと思う。残念ながら終売となってしまったが、下位互換のはずのコノスル・ビシクレタ・ゲヴュルツトラミネールがめちゃくちゃおいしいのでひと安心。

コノスルは安うまワイン界で知らぬ者のない自転車のマークでおなじみのチリの生産者。なにを飲んでもおいしいが、はっきりと「ライチ味」のゲヴェルツトラミネールは初心者キラーとして有名。

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デ ウェホフ バトラー シャルドネ→ワインってすごいかも、という衝撃(南ア・白・9000円台)

ワインショップ、カーブ・ド・エル・ナオタカのセットに入っていた“南アのモンラッシェ”。2019年の春、モンラッシェがなにを意味するかを知らないタイミングで飲んだんだがびっくりするほどおいしくてびっくりした語彙力。『ジョジョの奇妙な冒険』第三部で初めてラスボスのディオと接触した際のポルナレフの気持ちといえばお好きな方は理解していただけるはずだ。「恐ろしいものの片鱗を味わった」という感覚だ。また飲みたい。

デ ウェホフは南アフリカの生産者。バトラーはそのハイエンドの白ワインで、後から考えると私は白ワインの「樽」のニュアンスをこのワインではじめて感じ、それが衝撃へとつながったのだと思う。単体だと高いがセットだと比較的安く買える。

 

シックス・エイト・ナイン サブミッション カベルネソーヴィニヨン→「濃い赤」との出会い(アメリカ・赤・2000円前後)

「濃い赤」がおいしいから濃い赤ワインしか飲みたくなく、どうやらその欲求は南イタリア、あるいはカリフォルニアのワインを購入すると高確率で満たされるらしいと思っていたのがワインにハマって約1年のタイミング。このワインは一時期ハマって複数回リピートしたワイン。「これ以上おいしい(と自分が感じることのできる)ワインはこの世にないんじゃないか」と真剣に悩んだのはいい思い出。

シックス・エイト・ナインセラーズは689という数字が中国で縁起がいいとされるからとその名を冠したというカリフォルニアの生産者で、その名のとおりの「689」というワインもめちゃくちゃおいしい。サブミッションはカリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンらしいたっぷりとした果実味、豊かな樽香、濃い甘味が感じられて最高においしい。しかも高くない。最高。えらいっ。

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グラハム・ベック ブラン・ド・ブラン 泡大好きになったきっかけ(南ア・泡・2000円台)

赤、白、泡と大きくワインが分かれる中で、いちばん購入する頻度が低かったのが泡だったのだが、ワインにハマって1年半経過のタイミングでこのワインを飲んだことでその認識が激変、2020年の夏は泡ばっかり飲んでた記憶しかなくなるという事態になった。泡まみれ。2000円台半ばという価格ながら本当にシャンパーニュを凌駕しかねないような味がする。これほんとすごい。

「泡」にハマったきっかけはなにかといえばこれで間違いなく、その後、シャンパーニュへの興味がふくらんでいくことになる。南アのワインってすごいな! と思ったきっかけのひとつ。

 

クルーガー・ファミリー・ワインズ パーリーゲーツ ピノ・ノワール→安うまピノを探し求めるきっかけ(南ア・赤・2000円台)

ピノ・ノワールというワインは非常に個性的かつ魅力的なワインだが、本場であるフランス・ブルゴーニュで私のワイン1本に対する平均支出レンジである2000円台のおいしいワインを探すのは難しいため、あるときから私は非ブルゴーニュのおいしいピノ・ノワールを探すのをある種の独立した趣味として楽しんでいる。

でもってこれは現時点での私のベスト2000円台非フランスのピノ・ノワール・イン・ザ・ワールド。南アフリカの生産者で、パーリーゲーツとは聖書に登場する天国への扉のこと。これを飲んで「世界には2000円台のおいしいピノ・ノワールがあるんだ!」と感動し、それを探すのが趣味化した。おいしいピノ・ノワール情報は@ヒマワインまでお願いします。

 

ポワルヴェール ジャック→1000円台でシャンパーニュが買えるヤバさ(フランス・泡・1000円台)

でもって最後はシャンパーニュだ。開けたらすぐに飲み切っちゃわないといけないもんに何千円も払えるわけないじゃん(笑)というマトモな思考ができた頃が私にもかつてあったはずなのだが、シャンパーニュシャンパーニュにしかない魅力を知ってしまうともうダメ。財布のヒモがおじいちゃんのジャージの腰のゴムくらいゆるくなってしまうのを避けることは不可能だ。

とはいえ、5000円とか払うのはさすがに勇気がいるしデイリーに飲むのは普通に無理。というわけで、2000円を切る価格で買えるシャンパーニュ、ポワルヴェール・ジャックのヤバさが際立つということになる。ただ、より趣旨に忠実なターニングポイントという意味では初めて5000円+の巨費(弊社比)を投じて買って価格に見合う価値を感じることができたボランジェ スペシャルキュヴェであることを付記したい。

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以上の7本がわりと決定的な7本だが、私が飲んでいるのはそのほとんどが3000円以下のデイリーワインという狭い世界に過ぎず、1本あたりの平均支出額を増やせばより豊かなワインの世界が味わえると思う。私自身、仮に庭から石油が湧いてる系男子であればきっともっと高額なワインをデイリーに飲んでおり、必ずしも3000円以下にこだわっているわけではない。ただ、それでもワインは十分に、存分に楽しめている。1000円台、2000円台のワインを日常で飲み、たまのハレの日にいいやつを飲む。それでもワインはアホほど楽しめるから本当にすごいなあと思う次第だ。

みなさんの #7本で振り返る私のワイン史 はどのようなものだろうか?

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10万円するスペインワイン「ピングス」の3000円台で買えるサードワイン「プシー」を飲んでみた【Psi】

スペイン屈指の“高いワイン”「ピングス」について

スペインワインのことを知らなすぎるので飲んでみよう、と思い立ち何本か買ってみたなかから、今回はスペインを代表する高級ワイン、ピングス……じゃなくてそのサードワイン的位置づけの「Psi(プシー)」をチョイスしてみた。プシーを記号化すると「Ψ」で、ギリシア文字の23番目の文字にして、心理学、超能力をあらわす包括的な単語/記号、だそうですよwikipediaによれば。カッコいい。

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「Psi(2016)」を飲みました。

さて、なぜこのワインを選んだかといえば、以前書籍『高いワイン』(ダイヤモンド社)でピングスが紹介されていて、1995年設立、1996年にファーストヴィンテージがパーカーポイント100点を獲得したと思ったらスペインからアメリカに向かうピングスを積んだ船が沈没、デビューヴィンテージの2割が消失したことで価格が高騰したっていう壮絶すぎるエピソードが書かれていて、それが印象に残っていたから。

でもって、生産者の定義によれば、ピングス(高くて買えない)がクリュワイン、セカンドワインのフロール・デ ・ピングス(高くて買えない)が村名ワインで、このプシーはリージョナルワイン的な位置づけ(買える!)なんだとか。少し高いけど3000円台前半で買える。いける。

ピングスとプシーとロバート・モンダヴィ

彼らの本拠地はリベラ・デル・ドゥエロ。その土地自体に、ワインメーカーのピーター・シセックはコミットしているようで、Rare Wine Coの資料にはこんな記述がある。

「彼は、この地域の古いブドウ畑には大きな可能性があるにもかかわらず、地元の農業の質が低いことを常に感じていた。歴史的に、生産者はトン単位、つまり量で支払われており、品質ではなく量で支払われていた」

ここで思い出したのは『最高のワインを目指して ロバート・モンダヴィ自伝』(早川書房)である。オーパス・ワンでおなじみのボブさんの自伝ですね。マジでまったくワインと関係ないけどロバートがなんでボブになるかって、ロバート→ロブ→ボブ、っていう三段活用みたいですね調べたら。ボブ・サップの本名はロバート・サップ。マジかっ。

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というわけで話は戻ってボブの自伝の中にこんな記述がある。
「それまで栽培業者は、収穫物をトラックで運び込み、荷を降ろす前と後のトラックの重量を量っていた。(中略)そこでわたしは、もっと質の高いワインを生み出すブドウを育ててくれれば、ナパ・ヴァレーでの相場価格以上を支払おう、と栽培者たちに約束した」
これがおよそ半世紀ほど前のナパ・ヴァレーでロバート・モンダヴィがやった改革のひとつ。ピーター・シセックはそれをリベラ・デル・ドゥエロで再現したかのようだ。

収量を増やすために化学薬品を過剰使用し、「サハラ砂漠よりも微生物が生きていないブドウ畑の土壌」を技術的アドバイスにより健全化し、良いブドウは高値で買い取ることをすることで、「地域全体のブドウ畑の健全性(と、所有者の財布の中身を)高めることにもつながる」とし、その結果集まったブドウで造られたのがプシーということになる。

長崎県に明治期にフランス人宣教師が技術指導して生まれ、今に伝わる名物「ド・ロさま そうめん」なる乾麺があるけどそれ的な感じか。私は「ド ・ロさま そうめん」という名称がすげえいいなと思う者の一人ですこれもワインと1ミリリットルも関係ないけど。いやでも弥生時代の日本に起きたのってこれのさらに決定的バージョンだよねとか考えると急に歴史スケールになって楽しい。

さて、プシーは生産者の主要品種であるティント・フィノ(テンプラニーリョ)を中心に、ガルナッチャを10%前後ブレンドして造られるのだとか。発酵後、コンクリートタンク、オークの小樽、大樽で18カ月以上熟成の後リリースされるというその味わいはいかなるものか、飲んでみた。

プシー(2016)を飲んでみた

色は濃い目の紫なんだけど、やや赤みもあってうっすらと向こう側が透けて見えるくらいのほど良い具合。で、飲むと、果実味、渋み、酸味がまさしく三位一体の正三角形。「機動戦士ガンダム」におけるガイア、オルテガ、マッシュの黒い三連星の如くに一糸乱れぬフォーメーションでもっておいしさのジェットストリームアタックをしかけてくる。バランスいいなこれ。うまい。

三角形は回転すると円になり、平面上を回転する円の回転軸がなにかマジカルな作用で立ち上がると球になる。プシーの印象は(もちろん非常においしいのだが)あくまでも平面の三角形にとどまるんだけれど、フロール・デ ・ピングスやピングスはこれがより立体的になっていくのだろうか。

ワイン単体として非常においしく、さらに「その先」の存在まで感じさせる。プシーはそんなワインだった。ような気がするけどどうなんだろうなあ。個人的には、(価格も含めて考えると)ホームランとまではいかず、さりとて凡退ということもなく、技ありの進塁打、みたいな印象を受ける1本であった。

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カルム・ド・リューセック。ソーテルヌ格付け第一級のセカンドワインの実力は? 【Carmes de Rieussec】

甘口ワインとカルム・ド・リューセックと私

甘口ワインがすっかり生活のなかに定着してクオリティ・オブ・ライフが上がっている。1日の終わりに飲むと気持ちがスーッとして疲れがとれて幸福感が満ちてきて……とまるで摂取しちゃいけないタイプの薬物の説明かな? みたいな気分になる。甘口ワインが合法で良かった。

調べたところアルコールは眠りを浅くすると言われているため寝る直前に飲むことは本当は推奨しちゃいけないっぽいのだが、夜就寝前に少しだけ飲むと気分が落ち着いて本当にいい。まさに飲む風呂。リラックス効果としては風呂大なりイコール甘口ワインくらいの威力を持っていると私は思っており、風呂上がりに甘口ワインをちびちび飲みつつ本かなんか読んで眠くなったら寝る、みたいなルーティンを生活に取り入れることで毎日笑顔で暮らしている次第だ。ワインと空気がうまいなあ。f:id:ichibanboshimomojiro:20210122114311j:plain

カルム・ド・リューセックを飲みました。

しかも甘口ワインは劣化しない。今回飲んだ甘口ワインはかれこれ2週間くらい飲んだらコルクを適当に差して冷蔵庫の牛乳の隣っていう甘口ワイン様には申し訳なさすぎる場所に戻すのを繰り返しているが、私の味覚レベルでは味の変化はほぼ感じられない。もちろん厳密にはもっとキチンと管理しなければならないんだろうけど、私のようなズボラな人間には運用がラクなのは大きなメリットだ。見た目はあざと系ギャルみたいな新人の女の子がトラブル発生時に長い髪を後ろで束ねるとモンスターエナジー片手に徹夜も辞さない覚悟を見せてこっちが逆にビビるみたいなところがある。い、意外とタフだねキミみたいな。

 自己ベスト甘口はこれ↓

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というわけでこのブログにもしばらく定期的に甘口ワインが登場すると思う。そして今回飲んだのがカルム・ド・リューセック。シャトー・ラフィット・ロスチャイルドが所有するソーテルヌの格付け第一級、シャトー・リューセックのセカンドワインで、そんなもう完全に貴族の飲み物みたいな出自のわりに750ml入りが3000円台で余裕で買える。私はセール時期に買ったこともあり、正直ハーフを買ったつもりでフルボトルが届いてビビッたというお手頃具合だった。ハーフだったら1000円台で変えちゃうんですよ奥様!

ラフィットとソーテルヌとカルム・ド・リューセック

「ソーテルヌのワインはすばらしいから自分たちでも所有したいと思った。そしてリューセックのワイン畑は並外れている」

(バロン・エリック・ド・ロスチャイルド

これはラフィットドットコムのリューセックカテゴリをクリックすると出てくる文言だ。「欲しいと思ったから買った」感があってすごい。

18世紀の修道士にちなんで名付けられたというカルム・ド・リューセックは80-90%がセミヨン、10-20%がソーヴィニヨンとミュスカデルのブレンドで造られ、私が飲んだ2011ヴィンテージは84%セミヨン、12%ソーヴィニヨン、4%ミュスカデルという比率で。樽熟成は18カ月行うとある。ちなみにファーストワインはセミヨンの比率がやや高く、樽熟成期間が18-26カ月と長く、50から55%の新樽を使用するのだそうだ。

さて、ソーテルヌといえばシャトー・ディケムが有名。で、調べたところによればリューセックはそのディケムのすぐ近くにあるんだそうだ。ほほう。どれくらい近いのか、グーグルマップで調べてみた。

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黄色の丸がシャトー・ディケム。ピンク色の丸がシャトー・リューセック。

ちっか。まさにお隣。普通に徒歩圏内。小田急線の下北沢駅世田谷代田駅間を思わせる近さ。もちろんこれだけ近くても土壌やらなにやらに違いはあるんだろうし、近いからどうだこうだみたいなことは軽々に言えないけれどもとにかく近いことはわかり、この地で育ったブドウで造られるワインが3000円とかで飲めるのはなんかラッキー感が出てきた。ソーテルヌのワインを購入したのは初めてで、本場の甘口ワインがどんな味わいなのかとても楽しみ。いざ、飲んでみよう。

カルム・ド・リューセックを飲んでみた

グラスに注いでみると、うーん実に美しいハチミツみたいな色。太陽みたいな陽性のオーラがグラスから漂ってくる。そして、甘口ワインは柑橘系とか梅とかのスッパ系のニュアンスが魅力だと私は思っているのだけど、このワインに関してはわりと真っすぐ蜜路線。甘ずっぱ系ではなくて、甘い飲み物、という印象を強く受ける。お酒を飲んだ経験の少ない人に「これはハチミツでできたお酒だよ」と言って飲ませたら絶対信じるでしょこれっていう味だ。うーん、おいしい。疲れがとれる。

これがハーフなら1000円台っていうのはちょっとおかしいんじゃないかっていうくらいお得感がある。普段飲まない人へのちょっとしたプレゼントとか、甘口ワイン試してみたいなーっていうときに非常にいいんじゃないかなこれは。ちゃんとしたやつだし。

そんなこんなで私が購入した2011ヴィンテージは、毎晩チビチビ飲み続けた結果750ミリリットルがようやくなくなろうとしている。次はどんな甘口ワインを買おうかとネットを巡回する時間がまた楽しかったりするのであった。たまりませんな!

ファーストワインもそこまで高くないのでいつか飲みたい。

エル・カルゴル・トレウ・ヴィを飲んでみた。「カバ品種」で造られたスティルワインの味わいは?【El Cargol treu vi】

スペインワイン「エル・カルゴル・トレウ・ヴィ」を買ってみた

私はこうしてワインブログなどを書いているのだがワインについては完全にド素人だ。ブログをはじめて約10カ月、200以上の記事を書き、そのたびにワインについて産地について調べてきたつもりだが一向に「詳しくなった」という実感がない。感覚的には子どものころ、公園の土を掘って掘って掘り続ければブラジルに行けるんじゃないかっつって友達と1時間くらい必死に掘ったときの感覚だ。ブラジルは遠く、ワインの道は奥深い。

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スペインの白ワイン、エル・カルゴル・トレウ・ヴィを飲みました。

とくに有力産地のなかで飲んでないのがスペインワインで、スティルワインに限って言えば2桁本数飲んでないんじゃないかレベル。これじゃいかんということで今月は急遽スペインワイン強化月間として、何本かワインを入手して飲むこととした。安くておいしいスペインワインをみなさんぜひ教えてください。

飲んだのは白ワイン。カタルーニャはDO(原産地呼称)ペネデスの生産者、アレマイン・イ・コリオのエル・カルゴル・トレウ・ビだ。カルゴルはカタルーニャ語でかたつむり。トレウは取り出す。ヴィはワインだそうです。かたつむりがワインを取り出す……? カタルーニャはかたつむり料理もよく食べるみたいなので鴨がネギしょってくるならぬカタツムリがワインもってくるみたいなことなんですかねわかんないけど。ともかくかわいいかたつむりのイラストが特徴的なラベルのワインだ。

さてペネデスといえばカバの産地で有名なところ。かのフレシネ社の本拠地があり、スティルワインでいえばエノテカのセットを買うとよく入ってた印象があるミゲル・トーレスもこの地でワインを造っているのだそうだ。

エル・カルゴル・トレウ・ヴィはチャレッロ単一ワイン

カバといえばマカベオ、チャレッロ、パレリャーダの3品種。で、今回飲んだかたつむりのワインはチャレッロ100%で造られているバラエタルワイン。チャレッロ単一のワインはもちろん初だ。面白いじゃないの。

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チャレッロってどんなワインだったっけとまずカバのwikiをみると、「チャレッロ種はワインの骨格を作り、マカベオ種は果実香を与え、パレリャーダ種は香りに華やかさを与える」とある。チャレッロ単体での英語版wikiにはもう少し詳しく書かれていて、「チャレッロのワインは強く味付けすることができ、他の2つのカヴァのブドウ品種よりも香り高」く、「ここ20年で進化し、ヴァラエタルワインの形で見られるようになった」とある。今回の生産者がペネデスでワインを造り始めたのがまさに約20年前の1999年だから、チャレッロのような土着品種のバラエタル化にこの生産者も一役買ったりしているのかもしれない。

用いるのはリュット・レゾネ(減農薬)で栽培された樹齢70年以上のブドウ樹から獲れるチャレッロ。300リットルのオーク樽で天然酵母を用いてアルコール発酵を行い、10カ月の熟成を経てリリースされるというこのワインの味わいはいかなるものか、いざ飲んでみよう。

エル・カルゴル・トレウ・ヴィを飲んでみた。

グラスに注いでみると、おお、ことのほかゴールデン。リンゴの蜜色。カバって印象として薄めの色合いな気がするのでちょっと意外で、むしろカルフォルニアの樽の効いたシャルドネ、略称樽ドネ的な色合いだ。

で、飲んでみると蜜色から連想されるような甘さはなくてキリリとした味わい。ワインの味をワインの味でたとえていいのかは知らないが、ソーヴィニヨンブランとシャルドネが激突して融合したみたいなソーヴィニヨンブランとシャルドネがオーク樽の風呂で裸の付き合いしてるみたいな味がする。香りはソーヴィニヨンブランで、レモンwith草原の風。なんだけど、なんていうんですかね。ボディって言うんでしょうか。液体そのものはサラサラというわけではなくて、焦がしバターを入れましたみたいな感があるのはやっぱり樽の作用なんでしょうか。チャレッロ100%だけにたしかにカバ的な味わいがあるんだけれど、カバにはこの樽のニュアンスはあまりないと思うのでこれは初めての味だ。カバの名産地のスティルワインって言われて納得がいく泡のない樽カバっていう印象を受けた。樽カバってなんだよ。

このワイン、バターで焼いて塩で味付けしたシンプルなポークソテーとすごく合ったのだが、カタツムリが描かれたラベルのこのワイン、やっぱりサイゼリヤエスカルゴに絶対に間違いなく合うと思う。

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ちなみに、リュット・レゾネとか天然酵母とかっていうと自然派ワインっぽいけど味わいに自然派感はとくになかったので、清澄とか濾過は普通にやってるんですかね透き通ってるし。酸化防止剤も普通に入ってる。

価格もギリ2000円台とまあまあ高いけど、それに見合うおいしいワインだった。カバに使う品種単一のスティルワインは初めて飲んだが、こうなるとチャレッロ、マカベオの単一ワインを飲んでスペインワイン、そしてカバへの理解をもっと深めたいような気がしてくる。

というわけで、スペインワインも積極的に飲んでいきたいと思う次第。