ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

登るぞ、ピエモンテ! ワインの異空間でネッビオーロ沼に足を踏み入れてしまった話

通称“ピエモンテ”山下家を訪問することになった経緯

きっかけは、書籍『土とワイン』だ。ワインと土壌の関係について詳しく書かれたこの本は、イタリア・ピエモンテと代表品種のネッビオーロについて一章を割いており、それに大変興味を惹かれた私はツイッターで以下のような質問を投げかけた。

これに対してコーラにメントスを投入したが如き熱烈な反応を示してくれたのがネッビオーロ好きとして高名な山下さん。大量のネッビオーロバローロバルバレスコの、だからつまりネッビオーロのオススメを教えてくれてめちゃくちゃ参考になったのだが、実はこのツイートをするにあたって私は「山下さんからメンションいただけたら嬉しいな」と思っていたりした。

つまり先輩の趣味を調べ上げた上で飲み会でさりげなく「私〜、最近カポレラにすごい興味あって〜」みたいに話題を出すとか、サークルの友人の家にわざと忘れ物をして後日単独での訪問アポをとりつけるといったあざとい系後輩みたいなスキルを発揮してしまったことをここに告白しておかなければならない。私〜、最近すごいピエモンテに興味あって〜。

ともかくそこからとんとん拍子で自宅がワインセラー化したことがバズったことで有名な山下さんのご自宅への訪問が決まった。こう書くとマジであざとい系おじさんのように聞こえるかもしれないがその通りである。

同行してくれたのは、北海道での生産者経験を持つ逆理さん、熱心なワイン資格勉強系アカウントとして有名なもふもふさん、ワインユーチューバーとしてご活躍されるTOKYO WINE GIRLさん(以下、TWGさん)といった素敵な方々だ。山下さん家の最寄駅に集合し、迎えにきてくれた山下さんのクルマでご自宅に案内していただいた。

逆理さんのインタビュー記事はこちら↓

himawine.hatenablog.com

 

山下家の衝撃

そこは足を踏み入れた瞬間に脳が誤作動を起こす空間だった。失礼ながら、建物の外観に際立った特徴はない。玄関のドアを開けてもその印象は変わらない。しかし、LDKへと続くドアを開けると……壁一面、いや、壁二面、正確を期すならば壁三面くらいがワイン、あるいはウイスキーで埋め尽くされた異空間が出現する。最近流行りの異世界転生しちゃった……?

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自宅とは…?

手前のダイニングには四人がけのテーブルが配され、入り口を背にして右手の壁にかけられたカーテンを開くと(おそらくその背後に窓があると思われる場所に)一面のワイングラス。その下部と、隣接する壁は大型の棚となっておりワインが所狭しと安置されている。

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グラスの数と種類もすごい

奥の間左手のおそらくもとは物置なのだろうと思われる場所は上段がウイスキー棚に改修され、下段にはなぜか中身がすかすかのワインセラー(山下さんいわく『冷蔵庫』)がある。そして部屋の奥はワインが詰まった段ボールに占領されている。

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「セラーはガラガラなんだ(笑)」となる

「こういう感じになってるワインショップありますよね」とTWGさんがコメントしていたが、まさにその通りだと感じた。中規模ワインショップのウォークインセラー、あるいはなんなら小規模ショップそのものみたいな雰囲気になっている。

その部屋の隅にワインに半ば埋もれるカタチでふたりがけの小さなソファがギリギリ確認でき、聞けばそこが山下家のメインベッドなのだそうだ。完全に酒が主役ですねこの家……!

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ウイスキーもズラリ。山下さんいわく「フリーフローです」とのこと

この続き間の入り口側の左手にキッチンがあり、そこはなんていうか、ふつうのキッチンなわけですよ。そこだけ生活感がある。ワインショップのやや雑然としたセラー兼倉庫に突然一般家庭のキッチンがあるといった印象で、それが脳のバグ感を生むのだと思う。

お金持ちがワインのために建設した家、というのとは異なる、ワインのために魔改造された普通の家という風情。これは男の子なら誰もが夢見るタイプの家だ。趣味がなんであれ、自宅をその趣味全フリ仕様にすることに憧れない人がいるだろうか(いやいない)。

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自宅とは…?(2回目)

というわけでこれが山下家、通称ピエモンテピエモンテはイタリア語で山裾すなわち山の下、つまり山下)の全貌だ。人のご自宅の内部をこんなにつまびらかに描写していいのかわからないのだが感動して筆が走ってしまった次第である許してください。

なんでも山下さん、大学時代に飲食店で働いていたことから「今しかとれない」という理由でソムリエ試験を受験、見事合格したものの、その時点でワインに興味はなかったのだそうだ。好きなのは主にウイスキーそれで本まで執筆されているわけだが、その後ワインへの興味が芽生え「気がつけばこうなってました」のだそうだ。

「興味が芽生え」から「こうなってました」の間に標高8000メートルくらいの高低差があるのがすごい。約800本あるそうですよワイン。今日から1本も買わずに1日1本飲んでも2年後まだ70本くらい残る。2024年までいけるのやべえ。

すでに文字数がすごいことになっているがここからが本番だ。いざ、そんな山下家でのワイン会の様子をレポートしていきたい。

 

【1本目】カステル・ザレッグ「プラトゥム 2012」

ちなみに、今回のワイン会は私が無理を申し上げて「会費制」にしていただいた。単純に私の経験と知識ではこの天外魔境に持参していくワインがさっぱりわからないという理由からの野暮な申し出だったのだが、そんなわけでこの日のワインはすべて山下さんが手出ししてくださったワインだ(料理も)。

その1本目はイタリアはトレンティーノの生産者、カステル・ザレッグのプラトゥム 2012。品種はピノ・ブラン(イタリア名ピノ・ビアンコ)だ。

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ピノ・ブラン、はじめてだったがものすごくキレイで伸びやかな味わい。1時間ほど電車に揺られたあとで飲むこのワインがスッと体に染み入って、「さあ飲むぞ」と目が覚めるような感じがした。いきなりめっちゃおいしいワインだ……!

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料理もうまい! レバーのムース(右)と白身魚のリエット(左)はバゲットとともに

 

【2本目】ドメーヌ・イチ「ペティアン・ナチュラル・ロゼ2020」

2本目は北海道余市郡仁木町の生産者、ドメーヌ・イチのペティアン・ナチュラル・ロゼ2020。

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私の好きな余市・仁木エリアのワインということですかさず「仁木は余市から電車で2駅なんですよ。行ったことないけど」という脱力系知識を披露したのだが正確には「ひと駅」だった。函館本線で4分です。

himawine.hatenablog.com

ワインはナイアガラらしいトロピカルフルーツみたいな香りが強く、ゴマ的香りは抑え目。飲んでみるとフルーツ系の香りとは裏腹にドライで、あまずっぱくておいしい。

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山下さん注ぎ方もカッコいいんですよ

逆理さんは「ナイアガラだとしたらレッド・ナイアガラですかね、色的に」と分析しておられたが、あとで調べたところヤマブドウのジュース・リザーヴを二次発酵用の糖分を補うため、また色を出すために追加しているのだそうだ。

 

【3本目】モヴィア「ルナール2014」

3本目はスロヴェニアの生産者、モヴィアの「ルナール」。品種はイタリアでリボッラ・ジャッラと呼ばれるレブーラ。このワインは逆理さんのリクエスト。理由は「大地を感じられそうだから」とのことだった。

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このワイン、「上のほうは上澄み状態でキレイですが、下にいくほど濁ってきて、底のほうはヘドロみたいになります(笑)」という山下さんの説明通り、ボトルの上のほうはスッキリした味わいだったが、飲み進めていくほど液体に濁りが生じ、それに伴い苦味や旨味が増してくる印象を受けた。

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この牡蠣の料理洒落てる&おいしかった…!

会の終盤まで繰り返し飲んで「おお、おいしくなってきた!」「濁ってる!」「これは大地!」みたいに会を盛り上げてくれる素晴らしいワインだった。

この時点で会がスタートして45分くらいだろうか。スポンスポンと次々にワインの栓が開き、美味しい料理が次々に運ばれてくる。あれこれ目が覚めたら荒地で寝ているとかっていう日本昔話パターン……? といぶかしむほどの桃源郷具合だ。

初対面同士が多数発生した5人のメンバーの緊張もアルコールの摂取量に比例してあっさりほぐれ、元からtwitterでの交流があることもあり、すっかり2週間ぶりに会ったくらいの空気感。個人的にはこのあたりからハイパー楽しすぎモードに突入していった。

 

【4本目】ドメーヌ・ロマノー・デストゥゼ「シラー 2019」

さて4本目はローヌの造り手、ドメーヌ・ロマノー・デストゥゼのシラー。「ゴリゴリの自然派」(山下さん)というだけに少し濁ったくすみのある色調ながらすごくピュアで果実味を感じられる味わいでハイこれ私の好きなやつ。否、大好きなやつだった。

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「ヴィンテージによってはもっと自然派自然派していて、即“マメる”こともあるんです。この19ヴィンテージは例外的にキレイな造りですね」と山下さんが解説してくれたが、適度な自然派感のあるキレイなシラーで最高。

ここまでで4本。「あれ、そういえばネッビオーロ飲んでない……?」とTWGさんがつぶやいたのに対して山下さんが「本番はこれからですよ……?」とニヤリと応じ、ここから怒涛の3連続ピエモンテタイムがはじまっていく。山下家ではネッビオーロが出てからが本番。

 

【5本目】カ・デル・バイオ 「バルバレスコ“アジリ” 2010」

バルバレスコは『バルバレスコ』『ネイヴェ』『トレイーゾ』の3つの村から造られますが、このワインはそのうちのバルバレスコ村のアジーリっていうランクの高い畑のブドウで造られるワインです」

f:id:ichibanboshimomojiro:20211124135556j:plainと山下さんが解説してくれたのはカ・デル・バイオのバルバレスコ“アジリ”の2010ヴィンテージ。もふもふさんが「かわいいお花の香り」と表現されていたが同意で、すごく華やかな香りがする。一方で味わいは酸味と渋みがガッツリ強い。私は酸味の強いワインが好きなので大変好み。

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もふもふさんお手製のタコの燻製。これ足8本分食べられる。

「上のほうがキャピキャプしてるけど、下のほうは重心が低い。時間が経つとキャピキャピ感が減って重厚さが出てきますね……!」と逆理さんがおっしゃっていて、よくわかんないけどなんかわかる、と思ったりした。

 

【6本目】カッペラーノ「バルベーラ・ダルバ2013」

続いてはバローロ屈指の名門だという造り手、カッペラーノのバルベーラ・ダルバ2013。

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豚のハム(左)とローストビーフ(右)。ワインにめっちゃくちゃ合う

「一般的なバルベーラはもっと早飲みタイプなのですが、この造り手はバルベーラをしっかりと造るんです。2013だと開けるのがまだ早いですが……」と山下さんが注いでくれたグラスからは、おお、ブランデーのようなウイスキーのような、要するに蒸留酒のような香りがする。

熟成由来だろうというその香りと繊細で複雑なその味わいは、「新世界の酸味がなくて濃いやつが苦手」という山下さんの言葉のまさしく正反対という印象で、私が普段飲む濃い! 甘い! うまい! みたいな1000円そこそこのイタリアワインとは大きく異なっていて実に面白い。いま、私はイタリアワイン沼の淵に立っている……!?

「6本目」と「7本目」は写真を撮り忘れてしまった。TWGさんのツイート↓の右上が6本目、右下が7本目。

 

【7本目】ブレッツァ「ランゲ ネッビオーロ2018」

そしてこの日最後のワインは樽がかかっていないという珍しいネッビオーロ、ブレッツァのランゲ ネッビオーロ2018。

バローロを造れる畑のブドウを格下げして造るアンオークのネッビオーロ。一般的ではないですが、ピノ・ノワールが好きな人にネッビオーロを好きになってもらえる、エントリーにオススメのワインです」(山下さん)というワインでおっしゃる通りの味わいっていうかおいしいですねこれは!

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むちゃくちゃおいしかったスペアリブ。芯温を計測しながら絶妙な火入れが完璧なひと皿

薄めの色、華やかな香りにピュアな果実の味わいでまさしくピノ・ノワール的な魅力がありつつ、「ネッビオーロピノ・ノワールもどちらも味わいは『陰』だと思いますが、ネッビオーロのほうが骨格がしっかりしていて、複雑です」と山下さんがいう通り、一本芯が通った凛とした感じもある。

重厚、熟成、ピュアと3通りのピエモンテワインが並んだ後半戦は「ネッビオーロ沼に沈めにいっています(笑)」というだけあってどれも違って、どれもおいしかったのだった。

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山下家のスペシャリテ、生クリームを使わないネッビオーロに合うカルボナーラはパンチェッタから手作り…! 

すべてのワインと料理がおいしくて、同席のみなさんとの会話も極めて楽しく、まったくもって立ち去り難い気分だったのだが私は事情があって時間切れ。再訪を約して約3時間半のピエモンテトリップを終えたのだった。

もっと長くいたかったが、あまりにも楽しすぎて終電を逃し、そのへんの床、あるいはテーブルに突っ伏して討ち死にするイメージがたしかに見えたりもしたのだった。恐ろしい……43歳でそれはマジで無理……! 山下家の抗しがたい魅力、まこと竜宮城の如しである。

山下さん、そしてTWGさん、もふもふさん、逆理さん、楽しい時間をありがとうございました。また飲みましょう!

これがとくに好きでした↓

全然関係ないけどこれは安い↓

 

「好きな1500円以下ワイン10選」をご近所で買える中からワインブロガーが選んでみた

「好きな2000円以下ワイン10選」

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選」」という企画をやっていたので乗っかってみることにした。私は基本安ワインばっかり飲んでるワインブロガーなので「好きな2000円以下ワイン10選」とすることにした。

以前に同様の企画をやったことがあるのだが、そのとき選んだワインには通販や専門店でないと買えないものが多く含まれていた。その反省から今回はご近所のスーパーやコンビニなどで買えるものを中心に選んでみた。

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ふだん私のブログはワインをすでに好きば方が読んでくれているように思えるが、今回は普段はワインを飲まない、ワインに興味はあるがなにを飲んだらいいかわからないという人に読んでいただきたい内容を意識して書いていく次第だ。それではいってみよう。

 

1:アンズ味の白ワイン「コノスル ビシクレタ レゼルバ ヴィオニエ」 800円くらい

自転車のマークのボトルが有名なチリワイン「コノスル」。なかでもオススメは“ヴィオニエ”という品種だ。アンズの味がするんですよこれ。ブドウからつくったお酒だってのに。

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ご近所で売ってるワインのなかでも屈指の飲みやすさ。「なんでも酒や カクヤス」にはコノスルがたくさん揃っているので、オレンジのラベルを探してみてほしい。

 

2:ハチミツレモン味の白ワイン「モンテス クラシックシリーズ シャルドネ」1000円台なかば

コノスルのヴィオニエがアンズ味なら、同じチリワインでもモンテス クラシックシリーズの“シャルドネ”はハチミツレモン的なニュアンスのある白ワイン。今回紹介する10本のなかではおそらくもっとも高額で、店頭では1000円台半ばの値札がつけられていると思う。

それだけに本格的な味わいで「おれはいま白ワインを飲んでいることだなあ」と深く満足できる味わい。ワイン棚が充実したスーパーやディスカウントストアなどで見つけることができるはず。

 

3:成城石井最安級赤ワイン。だがうまい!「30マイル シラーズ」1000円ちょっと

赤ワインでオススメなのが成城石井で売ってる30マイル シラーズだ。おいしいんだよなあこれ。スパイスと一緒に煮込んだちょっと大人のジャム、みたいな味わいで基本的には果実味がドカンと弾ける系の赤ワイン。

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このワイン以前もう少し高かったんですよ。それがなぜか突然1000円台前半にまで値下げされている。「昔は安かったのに、今は手の届かない価格になってしまった」という話をよく聞くワイン界において、「さらに手が届きやすくなってしまった」という珍しいワイン。

 

4:カルディで売ってる“象印”赤ワイン「バランス ピノタージュ」800円くらい

KALDI COFFEE FARM、通称カルディには独自輸入ワインが多くあるが、なかでも手をとりやすいのが象のラベルがかわいい「バランス」だ。赤も白も両方おいしい。

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これ、黒いラベルで500円くらい高い上級レンジも売られているのだが、個人的にはこのスタンダードレンジのほうがピュアな味わいでおいしいと感じている。ちょっと奮発して1000円台! みたいに意気込まずとも800円くらいのこれで十分。小瓶でちょこっと買えたりもします。

 

5:SEIYUで買えるスペインのうま赤ワイン「FYI」レッドブレンド 700円台

続いてはスーパーのSEIYUから、スペインの赤ワイン「FYI」をセレクト。おいしいんですよこれ。700円台と値段は安いが味は濃厚で、肉料理なんかと合わせて間違いがない。

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高いワインは味に深みと複雑さがあってそれがなんとも最高なんだけれどもこのワインはその逆。とにかく味がシンプルでわかりやすい。変化球はなんも持ってないけどとにかくストレートが速い投手、みたいな強さがあるワイン。日々の買い物でトイレットペーパー、肉、野菜、お豆腐など買うついでに買い物かごにブチ込みたい1本。

 

6:ローソンで買える安うま赤ワイン「ラ・クロワザード・レゼルブ カベルネ シラー」

ローソンで買えるワインならばラ・クロワザード・レゼルブ カベルネ シラーを推したい。

himawine.hatenablog.com1000円を切る価格ながら果実味たっぷりで安い赤ワインにありがたいなすっぱくて渋い、みたいなエラーが起きてないわかりやすい味。スクリューキャップなので飲み残しても安心なのもいい。からあげクンかなんかと合わせればド平日の夜がちょっとしたパーティ状態に突入だ。

 

7:やまやで買える仏産スパークリングの優等生「ミッション・サン・ヴァンサン クレマン ボルドー」1500円(税抜き)

本ブログは総額表示を採用しており、「1500円以下」の基準も基本税込の実勢価格で選んでいるのだが、これだけインチキして税抜き1500円でセレクト。インチキしてでも10選にねじこみたいおいしさがあるんですよこれ。超有名ワイン産地のボルドーの協同組合がつくるスパークリングワインなんだけどりんごとか梨みたいな爽やかな果実味があってやたらとおいしい。

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小売大手の「酒のやまや」で売っているので、ご近所にやまやがある方はぜひチェックしていただきたい。1000円台半ばを出す価値はある!

 

8:やまやで買えるおいしすぎるイタリア赤「アストラーレ ロッソ」

やまやつながりでもう1本「アストラーレ ロッソ」をご紹介しておきたい。ワインは産地とかヴィンテージ(収穫年)が非常に重要視されるというなか、これはマルチリージョン、マルチヴィンテージ、要するにいろんな場所でとれたブドウと、いろんな年のワインを混ぜてつくるワイン。

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なんでそんなことすんの? という話だがそのほうが品質が安定するわけなんですよ多分。雨多すぎ。詰んだ。みたいな年でも過去の良好な収穫年のワインや、他の作柄の良い地域のものを混ぜればつねに一定の、かつ高い品質のワインをつくれる。賢い。

 

9:セブンで買えるおいしいスパークリングワイン・飛車「レボッレ」

セブンイレブンはPBに力を入れているけれども私はPBでないスパークリングワインがおいしいと思っていて、その1本目はこちらのイタリアワイン。

himawine.hatenablog.comピノ・ノワールという赤ワイン用の品種とソーヴィニヨン・ブランの白ワイン用の品種を合わせたこのワイン、885円ながらフレッシュで果実味と酸味がしっかりあってとてもおいしい。年末年始にかけてスパークリングワインを飲みたいシーンは多くあるはず。これあるいはひとつ下で紹介したものを選んだほうがいいと個人的には思っています。

 

10:セブンで買えるおいしいスパークリング・角「アマヤ カバ ブリュット」1000円弱

スペイン産のスパークリングワインとして有名な「カバ(cava)」。

800円台にもかかわらず18カ月もの間熟成しているというワインで、味わいがやたら本格的なんですよこれ。週末にちょっといい食材を買ってきて若干手の込んだ料理を作る、みたいな場合に最適な1本。

 

「好きな1500円以下ワイン10選」を選んでみた感想

というわけで10本選んでみたけど2000円以下の、それもご近所で買えるワインでもこんなに充実したラインナップが組めるのか! となんか自分でもビックリするような10本となった。これほんとに全部間違いなくおいしいです。

 

ボジョレー・ヌーヴォー2021解禁! ワインショップ4軒をはしごしていろいろ飲んでみた【boujolay nouveau】

ボジョレー・ヌーヴォー2021を探して。

本日2021年11月18日はボジョレー・ヌーヴォーの解禁日だ。昨年同様、今年もボジョレー飲むべきが論争、ボジョレーをビギナーに勧めるべきか論争、ボジョレーそもそもうまいのか論争、ボジョレーって毎年今世紀最高の出来とか言ってますよね発言、等々がSNS上を賑わせている。

私の立場は「すべてのワインをリスペクト」、ブドウの糖分が発酵してアルコールに変わった醸造酒はそのすべてが尊いという立場なので、どの議論とも噛み合わない。ただ、初詣に初雪、初鰹と初物を尊び、新米、新蕎麦、新酒とその年の収穫を祝いつつ味わう文化がある我ら日本人にとって、ボジョレー・ヌーヴォーを初物・新物として喜んで受け入れるのは自然なことだと考えている。
ましてや私はパリピ属性。乗らんとてせむなり、このビッグウェーブをや、ということで解禁日の今日は午後はオフにして東京の街へと繰り出していった。

というわけでまず向かったのは江戸時代から続く酒屋・愛宕小西。去年も寄らせてもらったのだが2年連続2回目の訪問だ。

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愛宕小西ではボジョレー・ヌーヴォーがグラスでいろいろ飲めます。

 

こちらの創業は明治に入った頃。1641年に「小西」という酒屋が江戸にでき、そこが大繁盛したことで江戸中に小西という屋号が暖簾分けで増えていった、そのうちのひとつだったようだ。

そんな愛宕小西ではボジョレー・ヌーヴォーがグラスで飲める。選んだのは、ルロワのボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー1杯1000円。

濃いめの色にチェリーの香り、味はカシスみたいな感じの甘めの味でおいしい。

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とってもおいしい。

いいなあ、フランスでは霜の害が深刻だったようだが、そんな今年もブドウが実ってありがとう。それをワインにしてくれたことに感謝。ボジョレー・ヌーヴォーは飲む感謝。

 

ボジョレー・ヌーヴォー2021を求めてカーヴ・ド・リラックスへ

次にお邪魔したのがカーヴ・ド・リラックス虎ノ門本店。ここでの目的はボジョレー・ヌーヴォーの量り売りだ。

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名店、カーヴ・ド・リラックスでは量り売りを実施

ルー・デュモン ボジョレー・ヌーヴォー 2021 
ジョルジュ・デコンブ ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー 2021 
マルセル・ラピエール ボジョレー・ヌーヴォー  2021 
フィリップ・パカレ ボジョレー・ヴァン・ド・プリムール  2021 

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こんなワインが量り売りされてました

購入したのは以上の4種類各65ml。私にとってボジョレー・ヌーヴォーをボトルで2本、3本と買うのはややハードル高めなのだが、量り売りならいろいろ楽しめていい。今年の私・ヒマワインの戦略は「量り売り+角打ちでいろいろ飲もうよ、ボジョレー・ヌーヴォー!」である。

ちなみに愛宕小西からカーヴ・ド・リラックスまでは徒歩5分くらい。ここからさらに徒歩で銀座方面へとボジョレー・ヌーヴォーさんぽは続いていく。

 

ボジョレー・ヌーヴォー2021を探しに、IMADEYA GINZAへ

首都高速の土橋出口を(徒歩で)通過し、次に向かったのは銀座6丁目、GINZA SIX地下2階のIMADEYA GINZAだ。IMADEYA GINZAの角打ちは毎度ラインナップが良いのだが、今日はボジョレー・ヌーヴォーが飲めることを確認済みである。

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ボジョレー2種類、ラングドック2種類のヌーヴォーが飲めます

ここで飲んだのは、ドメーヌ・デュ・ペール・ギヨのボジョレー・ヌーヴォー。「最高樹齢100年以上の葡萄を持つモルゴンのトップ生産者」だとのことでこれが非常においしかった。色は濃いめで、香りは果実というよりも花の印象。それも小さな花ではなく大輪の花。秋に収穫され秋にボトリングされたお酒なのに、グラスのなかの印象は圧倒的に春の盛りだ。

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ドメーヌ・デュ・ペール・ギヨのボジョレー・ヌーヴォー。これおいしいぞ!

ルロワのボジョレー・ヴィラージュもとってもおしかったのだが、そちらはいかにも私がイメージするボジョレー・ヌーヴォー味だった。言語化するなら少しすっぱく、甘やかで、果実感があってキャンディみたいな香りがする感じ。

ギヨのほうはそのようなニュアンスがありながらパワフルで、複雑で、厚みのある味わいだったのだった。

IMADEYA GINZAではもう一種、“南仏ヌーヴォー”だというラングドックのドメーヌ・ラ・グラーヴのラングドック・ヌーヴォー・ルージュも飲んだ。

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こちらが“南仏ヌーヴォー”

メルローとシラーからつくるヌーヴォーだそうでへー珍しいなと飲んでみたところなんかこう、いわゆるひとつのヌーヴォー味、みたいな味がした。ボジョレー・ヌーヴォーはマセラシオン・カルボニック法で造るみたいな中途半端な知識が私にはあるが、その製法の特性は品種の個性より強く出るのかなあみたいなことをボンヤリ考えたりした。

 

ボジョレー・ヌーヴォー巡りのシメに、ヴィノスやまざき銀座店へ

続いて向かったのは解禁日の2021年11月18日の午前0時、まさにボジョレー・ヌーヴォー解禁の瞬間に合わせてオープンしたというヴィノスやまざき銀座店。

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さすがオープン初日。お花がいっぱい。

あとから聞いた話だが、ヴィノスやまざきボジョレー・ヌーヴォーに非常に力を入れているのだそうだ。

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ヌーヴォーがたくさん試飲できます。

ボジョレー・ヌーヴォー解禁日は、普段はビールを飲む人がワインを飲む絶好のチャンス。この機にワインに触れてもらうのは酒屋の使命であり、だからこそ薄くてすっぱいものではなく、ボジョレー・ヌーヴォーってこんなにおいしいんだ!」と思ってもらえるようなワインを現地に出向き、アッサンブラージュにまで関わってこだわり抜いて用意するのだそうだ。

開店日ということで現場に顔を出していたしかるべき立場の方にお話を伺う幸運に恵まれたのだが、ヌーヴォーにかける意気込みは消費者の想像を超えるものだったのだった。これは心して飲まねばならぬ。

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イチ押しワインを飲んでみた結果…!?

というわけでお店のイチ押しのものを飲んでみた。色は濃いめで香りは大輪の花系。飲んでみるとパワフルさのなかにエレガントさが……ってあれこの味なにかに似てるな。最近飲んだな。最近っていうかさっき飲んだなと思ってワインのラベルを調べると、生産者はドメーヌ・デュ・ペール・ギヨ! まさかのIMADEYAと同じ! 

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ギヨさんに関しては面白い話をいろいろうかがったので、飲んだとき話します!

なんでも同じ生産者の別キュヴェなんだそうで、ジェンダーフリーのご時世にアレだが、同じ親から生まれた姉(ヴィノスやまざきのキュヴェ)と弟(IMADEYAのキュヴェ)という印象がで図らずもすっごく興味深い飲み比べとなったのだった。

ギヨさんはものすごい職人気質の生産者なのだそうで、現地に行くとびっくりするほど収量を下げているのだそうだ。ボジョレー・ヌーヴォーには大体の“相場”があり、ギヨさんのワインも3000円前後とかそれくらいの値札がついている。収量を落とせば、普通に儲けが減るようなのだが、でもやるんだよの精神で、ギヨさんはそのような栽培をしている。

「世界で日本だけが騒いでる(空虚な)お祭り」みたいな文脈で語られることもあるボジョレー・ヌーヴォーだが、ドメーヌ・デュ・ペール・ギヨのヌーヴォーは、そういうの抜きにして覚えておきたい味のワインだなーと思った次第だ。過去にはいろいろあったのかもだけど、ガチで造ってる人もいるのだ。

最後に、これまたドメーヌ・デュ・ペール・ギヨの別キュヴェを樽に入れたという樽酒ならぬ樽ワイン的なものを飲んでこの日は仕上げ。様々なボジョレー・ヌーヴォーと出会い、思いがけない人との出会いもあった。

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これ楽しかった。

というわけで結論。ボジョレー・ヌーヴォー解禁日に港区から中央区に向けてさんぽするのが最高に楽しい。来年はどなたかご一緒しましょう!

 

シャトー・ジンコはどんなワイン? 醸造家・百合草梨紗さんはどんな人? インポーターの担当者に聞いてみた!

「シャトー・ジンコ」について、担当者にインタビュー!

12月10日に東京・豪徳寺のワインステーション+にて「シャトー・ジンコを飲む会」を実施することになった。私が幹事の大役を引き受けることになったのだが、私は醸造家・百合草梨紗さんと面識もないし、ワイステ+は南アフリカワインの専門店。

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まだまだ参加者募集中です!

じゃあなんでお前が幹事なんだよ言え、という話かと思うが話は数週間前、シャトー・ジンコのインポーター・都光のナオタカさんこと戸塚尚孝社長とワイステ+で飲んだときに遡る。話の流れでシャトー・ジンコの話になり、「そういえば今度、醸造家の百合草梨紗さんが来日されるんですよ」「へーお会いしたいなあ」「じゃあイベントやりますか」くらいの会話の手数で開催が決定したのだった。ビジネスに大事なのはスピード感だ。私にとっては100%趣味だけど。

しかし、幹事役に手をあげておきながら私はシャトー・ジンコを飲んだことがなく、知識もほぼない。そこで、イベント前に詳しくワインについて生産者について聞かせてほしいとナオタカさんにお願いしたところ直接の担当者を紹介してくれる運びとなった。同社マーケティング部の部長・竹中康一さんだ。新卒でお酒のディスカウント店に入社、8年間の勤務後、その後10年間のエノテカでの勤務を経て、3年前に都光にジョインしたというワイン界の裏道まで精通する方だ。

以下、シャトー・ジンコについて、そして海外生産者と代理店契約を結ぶことについて、非常に興味深いお話を聞くことができたので、私・ヒマワインとのインタビュー形式でお届けする。

 

シャトー・ジンコと「オープンマーケット」

ヒマ:シャトー・ジンコのインポーターとなった経緯はどのようなものだったのでしょう?

竹中:ボルドーで開催されるヴィネクスポという見本市があるのですが、そこで百合草さんとお会いしたんです。私は元エノテカなのですが、百合草さんもエノテカでの勤務経験があるという縁もあり、そこからお付き合いがはじまりました。

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ヒマ:正規代理店になるまでには、どのような経緯が?

竹中:はい、シャトー・ジンコは2016のファーストヴィンテージから、2017、2018ヴィンテージまではオープンマーケットでの販売でした。5社ほどがシャトーから直接買っていましたが、今後を見据えてパートナーシップを結んでブランドを育てていきませんかと提案しました。ワインを飲んですごく良かったですし、ストーリーもありますから。百合草さん自身すごく悩まれていましたが、最終的にお願いしますということになりました。

ヒマ:いきなり話が逸れてしまいますが、今お話に出た「オープンマーケット」ってなんですか?

竹中:たとえばボルドーのシャトーもの。シャトー・オー・ブリオンとかシャトー・ペトリュスなどには正規インポーターはいなくて、代理店経由で基本的には誰でも買う(輸入する)ことができます。それが「オープンマーケット」です。シャトー・ジンコの場合は生産者が日本人ということもあって代理店は入っていない蔵直でしたが、5社くらいが輸入していたと思います。

 

シャトー・ジンコとインポーター

ヒマ:オープンマーケットで売る場合と正規インポーターがつく場合でどう違うんでしょう?

竹中:独占契約の場合、市場での売価やプロモーションを管理できるのがメリットです。長期的にブランドを育成しようと思えば、雑誌に広告を出したり、イベントを開催する必要がありますが、複数社で輸入している場合、誰もそれをやりたがりません。

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ヒマ:そうか、自社商品であり他社商品でもあるわけだから、自分でお金を払って他社商品のプロモーションに協力することにもなっちゃうと。

竹中:なので百合草さんはお友達を招いてイベントを開催したりと、ご自分でプロモーションをされていたそうです。売価のことをいうと、複数社が輸入する場合、ウチはこの値段で売りたい、ならばこっちはそれより安いこの値段で……となりやすいんです。

ヒマ:価格競争になってしまう。

竹中:都光がインポーターとなることで価格が安定するのは互いにとってメリットですね。一方、インポーターを一社に絞ることで生産者としては販路が狭まるのがリスク。それに対してウチは量を買い取ってあげないといけない。互いにリスクをとるかたちになります。

ヒマ:まだ販売開始したばかりかと思いますが、反応はどうですか?

竹中:都光としては売れると思いましたし、実際にすごい売れています。ここからさらに伸ばしていけるかどうかですね。「日本人女性が造っている」という話題性だけでは一回買っていただいて終わりになってしまいますから。

 

シャトー・ジンコとジー バイ ユリグサ

ヒマ:さて、ではワインについても聞かせてください。シャトー・ジンコには3つのキュヴェがありますが、それぞれどんなワインなのでしょうか。

竹中:まずジー バイ ジンコの赤と白。これは百合草さんが監修し、シャトー・ジンコとは別の畑、別のワイナリーで造るワインです。百合草さんも、ご主人のマチューさんもネゴシアンとしての経験が長くあるため、そのつながりからいいブドウを見つけたり、いい生産者を見つけることに長けている。その人脈をベースに、百合草さんの感性を加えて造るワインです。

ヒマ:セカンドワインとはまた違うんですかね。

竹中:別の畑のブドウから造るワインなので、セカンドではないですね。シャトー・ジンコの畑は1.65ヘクタールしかありませんから、豊作年で5000本くらいしか造ることができず、セカンドをつくることが難しいようなのです。一方で百合草さんにはデイリーに飲めるワインを造りたいという思いがあって、できたのがジー バイ ジンコです。

ヒマ:赤・白、それぞれの特徴は?

竹中:赤はシャトー・ジンコと同じコート・ド・カスティヨン地区のご近所さんが造っているそうですが、樽樽しくないエレガントな味わいです。2、3年落ちの樽で8カ月熟成させているのですが、樽はあくまで骨格をつくるために効かせているだけで、果実がしっかり出ています。メルロー95%、カベルネ・フランが5%使われています。

ヒマ:白はどこで造られているんですか?

竹中:グラーブ地区です。ソーヴィニヨン・ブラン60%、セミヨン40%のブレンド、こちらは10カ月樽熟していて、トロピカルな味わいのなかにパワフルさもあります。クリーム系の料理や、お肉にも合わせられる白ですね。

ヒマ:赤のほうが白より樽熟期間が短いんですね。

竹中:あまり樽を効かせたくないのは、日本食をイメージしていることもあります。樽を効かせすぎると日本食とは合いにくくなってきますから。

ヒマ:なるほど〜。では、フラッグシップのシャトー・ジンコはいかがでしょうか。

 

シャトー・ジンコはどんなワインか

竹中:グランヴァンの資質を備えたメルロー100%のワインです。2019ヴィンテージながらタンニンはシルキーで、口の中で果実を噛んだようなイメージが全面に出てくる、すごくわかりやすくて飲み疲れしないワインですね。「50年でも熟成させたいワインです」と百合草さんはおっしゃっていましたが、それくらいのポテンシャルがあると思います。ブドウは2019年にエコサートのABマーク(オーガニック認証)がついた畑のもの。前の所有者から引き継いだ畑なので取得に時間がかかりましたが、百合草さんが引き継いだ当初から肥料や化学薬品は不使用。百合草さんには大和撫子じゃないですけど、自然と調和するピュアな繊細さがあって、それがワインにも表れていると思いますね。

ヒマ:ボルドーの畑を引き継ぐって、すごくロマンがあります。

竹中:40年以上シャトー・ペトリュスで醸造長を務めたジャン・クロード・ぺルエさんと百合草さんはご近所付き合いがあるそうなのですが、シャトー・ジンコの畑にお墨付きをくれたそうですよ。元々所有していた人もいいし、高台だし、風向きも地質もすごく良くてメルローに向いてるよ、と。その一言が購入の最後の決め手になったそうです。

ヒマ:そんな伝説的な人物がご近所さんっていうのがすごい(笑)。「ジンコ」という名前の由来は?

 

「シャトー・ジンコ」という名前の由来

竹中:ジンコはフランス語でイチョウという意味ですが、イチョウは東洋にしかない品種のため、ヨーロッパでは東洋の神秘的なイメージがあるそうです。そして、生命力がすごく強い木でもある。広島に原爆が落とされたあと、幹を残して焼失したイチョウの木が芽吹いて人々に勇気を与えたということがあったそうですが、その話に百合草さんはインスピレーションを得たそうです。日本のイメージと、末長く生きていくというイメージ。実際、ご自身のお子さんが生まれたときには庭にイチョウの木を植えるくらい、イチョウの木に思い入れがあるそうです。

ヒマ:すごくいい話です……。百合草さんにお会いするのがものすごく楽しみになりましたし、シャトー・ジンコが一刻も早く飲みたくなってきました。

竹中:最初は閉じていますので、飲む2時間前をメドに抜栓していただきたいですけどね(笑)。

 

シャトー・ジンコとブランディングのお仕事

ヒマ:さて、最後に竹中さんのお仕事についても聞かせてください。ご職業的にはワインのバイヤーということになるのでしょうか?

竹中:バイヤー……、そうですね、バイヤーでもあります。ただ、新しいものを探すのだけが仕事ではなく、商品管理やブランディングをメインに、現地と日本をつなぐ橋渡し、ブランドマネージングとマーケティングが主な業務ですね。

ヒマ:なるほど・シャトー・ジンコのほかには、手掛けているブランドはありますか?

竹中:最近でいうとノンアルコールの「ヴィンテンス」ですね。これもボルドーの見本市「ヴィネクスポ」でのことなのですが、タクシー待ちでタクシーがなかなか来なかったんです。そこで一緒に待っている人と会話がはじまって、その人が「ヴィンテンス」の方だった。実はヴィンテンスは私のエノテカ時代から目をつけていたブランドで、このタクシー待ちの縁がつながって日本で輸入できるようになりました。結果、コロナ禍で空前のノンアル市場ができ、大きな需要を獲得することができたのは嬉しかったですね。それと、12月10日のイベントでは乾杯用にお出しするシャンパーニュの「パルメ」もそうです。

ヒマ:なぜか日本に入っていなかった有名シャンパーニュ、っていうやつですね。

竹中:なんで今まで日本に入ってこなかったのか聞いてみたんですが、「正しいパートナーが見つからなかったからだ」との答えでした。都光、リカマングループは規模的にも経営的にもベストマッチだと。私はエノテカ時代にルイ・ロデレールのブランドマネジャーを務めていたのですが、パルメとルイ・ロデレールがご近所なこともあり、「タケナカという男はちゃんと仕事をするのか?」みたいに聞かれたりもしていたようです(笑)。

ヒマ:ロデレールで培った信頼があったからこそ、パルメの輸入が実現したわけですね……。今日はめちゃくちゃ面白い話をありがとうございました!

というわけで当日はパルメの2012ヴィンテージが乾杯用として提供されるので、こちらも要注目だ。さらに、シャトー・ジンコをはじめすべてのワインは当初1本のみの予定だったがブショネ対策兼おかわり用としてそれぞれもう1本ずつ追加されることとなった。竹中さんありがとうございます。さすが部長さんである。

そんなこんなで12月10日の「百合草梨紗さんと、シャトー・ジンコを飲む会」ぜひふるってご参加いただければ幸甚だ。提供ワインはジー バイ ユリグサのブランとルージュ、シャトー・ジンコ×2、乾杯用にパルメ2012、さらに“シメ”のデザートワインの5種10本となっている。かなりたっぷり飲めるので、お得度はむちゃくちゃ高い。ワイステ+助役特製のおいしいおつまみも楽しみだ。

参加希望の方は、twitterの@hima_wineまでDM(どなたでも送ることができます)、あるいはhima_wine@outlook.comまでメールください。楽しみすぎる!

 

ワイン会やってみた! 準備から当日までを詳細レポート【ヒマワイン会#1】

ワイン会への道

ワイン会を主催してみたいな〜と思ったのが2021年のはじめごろ。あいにくのコロナ禍で実施するタイミングを見失っていたのだが、感染第5波の落ち着いた2021年11月11日、豪徳寺のワインステーション+を借り切って、思い切って実施することとした。

ちなみに私はワイン会を主催したことがない。参加したことも数回しかない。なので、なにもかも手作りで実施することとなった。どこかの誰かの参考になるかもしれないので、以下に詳細を記録しておきたい。

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告知のチラシ。会費は実際はワイステ+さんのご好意もあって4000円だった。

会を告知したところありがたいことにほぼ一瞬で予定していた参加人数に達した。ワイステ+の駅長&助役コンビと私を合わせて15名。テーマは「コロナ禍で開けどきを見失ったワインを持ち寄ろう!」というもの。

告知から開催まではひと月ほど時間があったが、その間に参加者のみなさんがtwitterのグループDMに「当日持ち込むワイン」を次々に投稿してくれ、少しずつワインリストが完成していくのがすごく楽しかったのだった(当日はそのリストをプリントアウトして配布した)。

 

ワイン50ccきっちり注げるか問題

さて、しかしそのリストがあらかた埋まった開催数日前になって、私は恐ろしい事実に気づくことになる。参加者が15名なので1グラスあたりの分量は750わる15で50cc。各自が1本ずつもってくるということはかける15本。つまり、15本を50ccずつ15人に、計225杯サーブする必要があるってことじゃないのハイ無理。やっべえ考えてなかった。

というわけでグラスに50ccきっちり注ぐ練習がスタートした。けっこう難しいんですよこれが。すぐ50cc超えちゃう。さりとて誤差のないようゆっくり注いでいれば15名にワインが行き渡るのに時間がかかり、19時にはじまった会が終わってみれば朝5時、みたいな惨事にもなりかねない。

2時間の尺のなかで終わらせようと思ったら、120分わる15人でワイン1杯にかけられる時間は8分だ。7分59秒かけて注ぐので1秒で飲んでくださいというわけにはいかないので「誤差2ccなる早で」をキャッチフレーズに日夜練習に励んだ。多少の誤差は自分のグラスに注ぐ順番を最後にすることで吸収することとした。

深夜、ハカリにグラスを乗せ、スケールの表示をゼロに戻し、50cc注ぐ。水を捨て、グラスをハカリに乗せ、スケールの表示をゼロに戻し……目標をセンターに入れてスイッチ……みたいなノリでグラスに水を入れては捨てるその姿、はたからみると完全に狂人なのは知ってる。

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これめっちゃ練習した

グラスをどうするんだ問題と飲む順番どうするんだ問題

続いての問題はグラスだ。飲むペースもアルコール耐性もまちまちな15名が15杯を飲み切るのに、ひとりあたりグラスひとつの運用では不可能だ。そこでお店にお願いしてひとり2個のグラスをご用意いただくこととした。すると問題になるのは個人のグラスをどう識別するかとなり……と課題が連鎖していく。

そしてなんといっても飲むワインの順番を決めるという難易度高すぎの作業が待っている。いやこれ無理でしょう。飲んだことないし。しかし、じゃあたとえば当日くじびきで決めましょう! みたいになると、乾杯からいきなりボルドーの濃いやつ、みたいにもなりかねない。

泡→白→橙→赤の順番に組み上げつつ、後述するが赤はブルゴーニュの凄いワインが登場するのでそれをクライマックスに回し、二部構成的な順番にした。ライブでいうセットリスト、いわゆるセトリってやつ。ライブの成否はセトリが大きく影響する……ライブじゃないけど……!

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完成したヒマワイン会#1のセトリがこちら

これ考えるの楽しかったなあ。白→赤→白→赤みたいにしても良かったのでは? 等、当日はさまざまな意見が聞かれて、それがまた楽しかった。

 

いざ、ワイン会当日へ

ケータリングの手配に参加者の方々への連絡等々当日まで準備に追われて迎えた当日、ポワラーやソムリエナイフ等の準備を万端に整えさあこれでなんとかなるだろうと会に向けて出発、駅に着いたところで持ち込むワインを忘れたことに気がついた。サザエさんかよ。ワインを忘れて愉快なヒマワインさん状態である。あるある(ない)。

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慌てて取りに帰ったワインがこちら。ボスアグリワイナリー「桜夢雫 清舞」をお持ち込み。

そんなこんなでなんとか会のスタートに漕ぎ着けることができたのだった。当日は快晴。細々とした買い物をして17時に会場に入り、駅長ご夫妻のご協力(なんとこの日におふたりは入籍された!)の元、準備を整えていく。19時の開会に向けて、参加者の方々が続々とやってきてくれる。みなさんtwitter上でやりとりをしているので、「本物だ!」感が毎回あるの楽しい。

こうして集まった15名の方のうち、実に10名の方は私にとって初対面。主催者がこの状態なので参加者の方同士も初対面が多く、会のスタート前後は「あれ、これどうやって盛り上がるんだっけ?」みたいなどことなくぎこちなさの漂う状況。こんなときに一番いい方法を私は知っている。みなさんもご存知だ。ワインを飲むことである。

というわけで、するべきはワインの用意だ。抜栓はプロ(駅長)にお任せし、私は練りに練り上げた50cc注ぎに専念しつつ、15グラスを飲み進めていった。というわけで自分の能力リソースの半分を50cc注ぎに割いていたため一部記憶が不明瞭だが、15のワインを光速で振り返ってみたい。

 

ヒマワイン会#1 15のワインを振り返る

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ひたすらワイン注いでたので個別の写真はありません

まず乾杯は、かしたくさんが持ってきてくれたマイィ・シャンパーニュ「エクセプシオン・ブランシュ グラン・クリュ ブラン・ド・ブラン ブリュット」2007。良いシャンパーニュに適度な熟成香が加わった、実においしいシャンパーニュ。14年前に収穫されたブドウで造られたワインがなんでこんなにフレッシュなのか。謎だがともかく大変贅沢な乾杯となった。

続いてはいさみさんが持ってきてくれたジリ・ウヘレク パラヴァチェコモラヴィア地方のワイン。いさみさんは海外旅行が趣味で、現地にも行ったことがあるのだそう。ゲヴュルツトラミネールのような花の香りとキリッとした酸味があるワインでスマッシュヒットだった。

3杯目は南アフリカワイン好きで知られる澤村さんが持ってきてくれたアシュボーン サンドストーン2007。85%ソーヴィニヨン・ブラン、15%がアンフォラ熟成のシャルドネというちょっと珍しいワイン 。熟成感を伴った厚みがあってこれもとても良いワインだった。みんなおいしいワイン知ってるなー!

4杯目はゆのさん(16)さんが持ってきてくれたジャン・ルイ・シャーブのシャーブ・セレクション エルミタージュ・ブラン2015。「シャーブのネゴスものなんですけど、8割はドメーヌものなんです」とのこと。品種はマルサンヌ100%。これがまた素晴らしいワインで、スッキリした味わいのなかに複雑みとボリュームが隠されていてむちゃくちゃおいしいですねこれは……。

いやお前さっきから全部おいしいうまいしか言ってないじゃなのと思われるかもしれないが、本当にどれもおいしかったんですよこの日のワイン。1本ずつ参加者の方にそのワインに関するエピソードを披露してもらいながら飲むワインは格別だ。続けよう。

5杯目は千堂りおさんが持ってきてくれたパッツ&ホール ハイド・ヴィンヤード シャルドネ2016。これがもうこれぞカリフォルニアのリッチで上品なシャルドネ ! という味。「専門はクラフトビール」とのことだが、さすがお酒の小売の現場にいる方はおいしいワインを知ってるわ……!

6杯目はでぃーえいちじーさんが持ってきてくれたマルセル・ダイス シェネンベール2003。白ワインのラストを飾る1本となったが2007年に購入してセラーで眠っていたというこのワイン、峻厳な山奥の岩石から染み出した水みたいなみずみずしさがありながら、味わいの輪郭がとれ、まさに甘露といった極上の味となっていた。でぃーえいちじーさんの14年間に感謝。

7杯目からはオレンジゾーンに突入していく。南アフリカとオレンジワイン専門店のワインステーション+に合わせてアレンさんが持ってきてくれたのはアルチルズ・ワインズ エカツィテリ・ムツヴァネ2017。これぞオレンジ! という色合いで、複雑で芯のある味わいだった。オレンジワインは普段あんまり飲まないが、たまに飲むと独特の味わいがクセになる。

8杯目はワインステーション+の駅長が提供してくれたヴァイス・ホワイト2014。ここは南アフリカワイン専門店。造り手はもちろん南アフリカのザ・サディ・ファミリー・ワインズだ。なんとアルコール度数15%というワインで、オレンジながら色合いはほぼ白というワイン。しかし飲んでみると味わいは豊かでフルーティでたしかにオレンジ。アルコールの強さが感じられる非常にパワフルなワインだった。この1杯で酔いが加速、スーパー楽しすぎモードに個人的には突入していった。

9杯目、後半戦のスタートだ。赤ワインの1杯目はぬーさんが持ってきてくれたテルースというワインでこれはリポヴァッツというモンテネグロの造り手のワイン。いったいどんなワインか!? と飲んでみると私の好きな甘酸っぱい系でこれもすごくよかった。モンテネグロ行ったことあります! という声が挙がったりして会話が盛り上がるのもこういう会の醍醐味だ。うはー、超楽しい。

10杯目はフランスはボルドーシャトー・フォジェールで、持ってきてくれたのはヌーの群れさん。安ワイン道場師範いわく「昔よく飲んだんだよなあ、これ」というワインで、これが実に親しみやすい良いボルドー。2018とヴィンテージも若めながら渋すっぱ果実味のバランスがとれてすごく飲みやすく、おいしいワインだった。

11杯目はワインステーション+の助役さんご提供のシャトー・ド・レイニャック。これが図らずも10杯目のワインと風神雷神あるいは阿形像・吽形像みたいな感じでいい感じによく似ていて、ここぞとばかりに残してあった肉系のつまみとよく合った。渋み酸味どっしりに果実味もムワンとあってボヨンボヨンなワインだった。なにを言ってるか一切伝わってない自覚はあるが、私の好きなタイプのボルドーワインだ。おいしい。

12杯目は私・ヒマワインが持参したワイン。北海道北見市、オホーツク地方という日本でも北限とも思える地にあるワイナリー、ボス・アグリ・ワイナリーの「桜夢雫 清舞」と書いてさくらゆめしずく・きよまいと読む演歌みたいな名前のワインだ。道外には一切流通していない一方で、地元ではコンビニ(セイコーマート)で買えるというワイン。流氷が流れ着く地で造られるワインはやっぱり酸味がかなり強かったが、すっぱいワインが好きな私は意外と楽しめた。オホーツク地方はしばしば行くので、また買ってみよ。

さていよいよ会も終盤。気がつけば2時間近くの時間が一瞬で流れ去っている。ここからはクライマックス。怒涛のブルゴーニュのいいワイン3連発だ。どれも凄まじいワインだった。

13杯目はMAMIさんが持ってきてくれたドメーヌ・ド・ラルロのコート・ド・ニュイ・ヴィラージュ "クロ・デュ・シャポー" 。2017とヴィンテージが若いことでまだ固いかなとMAMIさんが心配しておられたが、どっこいグラスからは春のはじめの花畑のような爽やかで華やかな香りがバチンと漂い、味わいもバランスが良く、それはそれはおいしかった。すげえなラルロ。有名生産者に理由あり。

14杯目はルー・デュモンのコルトン グランクリュ2013。あれやばいなこれ。とんでもないワイン出てきちゃったな。この会は「3000円めど」で持ち寄るワイン会のはずだけど持ち込んでくださったmoritanさん、まさか桁をひとつ間違えられたのでは……? というほど素晴らしいワインをありがたく頂戴することとした。私はつい最近ルー・デュモンのブルゴーニュ・ルージュをうまいうまいと飲んだのだが、ブルゴーニュ・ルージュの味わいが山の五合目から見た景色だとすれば、このワインが見せてくれるのは同じ山の山頂から見る景色という印象。言わずもがな、素晴らしいワインだった。

そして迎えた最後の1杯、15杯目は安ワイン会の大御所、安ワイン道場師範がもってきてくれたとんでもないワイン、ドメーヌ・グロ・フレール・ エ・セールのクロ・ヴージョ "ミュジニ" である。「安ワイン道場」の記事を見ると師範がこのワインを買われたのは2011年で当時は8000円台だったのだそうだ。今の価格は……いやはやすごい。そしてなにより味わいが素晴らしい。溶けた宝石を飲んでいるような滑らかで硬さと柔らかさが同時に存在するような味わい。すげえなこれ。ここまでボトル1本分を飲んできていい加減へろへろなのだが、最後の最後でハッと目が覚めるような味わいだった。

というわけであっという間の2時間ちょっと、15杯の世界一周旅行だったのだった。「コロナ禍で開けどきを見失ったワイン」というお題だったが、ほぼ「開けどきを見失ったワイン」が並んだ15本。長い年月をセラーで眠って過ごしたワインも開けてしまえば一瞬だ。「やっと飲めた」という安堵感と少しの寂しさ、15人のワイン好きの15本のワインへの思いが渦巻いて、結果なんだかすごく温かい会になったような気がする。本当に参加者に恵まれた会だった。

 

ワイン会終了。そして2次会へ。

と、いい感じで記事が締まりそうだったのだがここから2次会に突入していく。まずはかしたくさんが持ってきてくれた第二のワイン、マルゴー・デュ・シャトー・マルゴーが登場した。シャトー・マルゴーのサードワイン。ワイン会終了後の2次会のため、飲みたい人はお店に寄付というスタイルで飲ませてもらったのだがこれも非常においしかった記憶がある(会が無事に終わった安堵で気が抜けまくった瞬間だったため、ここだけ記憶があやふや。すみません……)。

さらに、千堂りおさんからはナウエン レゼルバ・エスペシアル ピノ・ノワールというチリの1000円台ワインの差し入れ。これも1000円台にこんなおいしいピノ・ノワールがあったか! という味だった。さすがお酒の小売りの現場に(2回目)

最後に飲んだのはワイステ+駅長が「ウチのお店の一番人気」といって出してくれた南アフリカの生産者、シャノンのロックヴューリッジ ピノ・ノワール2018。一番人気にふさわしく、南アのピノ・ノワールの底力を思い知る一杯だった。

あとなに飲んだっけな。あ、会が始まる前にデモーゾンゲンのシュナンブラン100%の泡を飲んだ。だから1本以上飲んでるのか。「よいとき」をはじまる前に一袋、会の途中でブースト投与したものの、翌日は軽めの二日酔いだった。

そんなこんなでヒマワイン会#1、大盛況のうちに幕を下ろしたのだった。ご参加いただいたみなさんに心から感謝申し上げたい。ありがとうございました。みなさん、また飲みましょう!

 

桜夢雫 清舞はふるさと納税で手に入ります↓

a.r10.to

 

ジャン・ミラン トラディション ブリュット。かつて“シャンパーニュの王”も使ったぶどうで作るブラン・ド・ブラン【Jean Milan】

ヴィノスやまざきの角打ちに行った

先日ヴィノスやまざきの店頭を通りかかったところ角打ち営業していたので光に群がる虫もかくやのナチュラルな動きでカウンターに座った。

選べるのは4種類。以下のようなものだった。

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泡 ジャン・ミラン トラディション ブリュット/1050円(100cc)
白 静岡産シャルドネヌーヴォー2021/600円(100cc)
赤 メモリアルワイン1913 メリタージュ ラザフォード2018/1600円(100cc)
甘 スリーブリッジズ 貴腐ワイン2018/250円(30cc)

うーん、なるほど。時は夕方、食事前。おやつ代わりに意表をついて甘口もいいし、シャルドネヌーヴォーも気になる。有料試飲では「一番高いやつ」を頼むと満足度が高いので一杯1600円の赤もいいが選んだのは泡だ。シャンパーニュですよ、なんつったって。

 

ジャン・ミランシャンパーニュの王様

品種はシャルドネ100%。お店の説明によれば、あの「シャンパーニュの王様」も惚れ込んだぶどう農家が、当店のお客様のために特別に仕込んだシャンパーニュなのだそうだ。その説明を読んで私は思った。シャンパーニュの王様って誰だろう。と。わからないことは先生かお母さんに聞けと小学生時代に言われて育ったのでグーグルに聞いてみることにした。「シャンパーニュの王様」で検索だ。すると、以下のような検索結果が表示された。

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3人いた。王様3人いた。クリュッグドン・ペリニヨン、そしてサロン。3人の王が割拠するまさにシャンパ三国志状態。たしかに全部王様感ある。このなかのうち誰がこの場合の王様かの結論は先送りし、まずは飲んでみることとした。

 

ジャン・ミラン トラディション ブリュットを飲んでみた

注いでくれているところを見逃したのでグラスにどれくらい残っていたかが定かでないのだが、グラスに注がれた液体から泡立ちはほぼなかったのでグラスの底のほうだったんですかね。でも、グラスからはシャンパーニュ特有のトーストのような香りとリンゴのような柑橘類のような香りがしっかりと漂ってくる。

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泡立ちは弱め。でもとてもおいしい。

飲んでみると、見た目通りに泡立ちは感じないけれどもなんていうかほら、泡がなくてもおいしいシャンパーニュってあるじゃないですかっていう味。ブラン・ド・ブランらしいしっかりとした酸味と、旬のピークを迎えたリンゴみたいな果実味が上手い具合にグラスのなかで同居してる。これはいい同居。

え、うまいなこれ。存じ上げなかったが貴殿さては名のあるお侍では……? と裏ラベルのQRコードを読み取ると、以下のような文言が出てきた。

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クリュッグだった。シャンパーニュの王様、(この場合)クリュッグでした。そうでしたか。

 

ジャン・ミラン トラディション ブリュットはどんなワインか

改めて公式サイトを調べると、ドメーヌが位置するのは“シャルドネの聖地”コート・デ・ブランのグラン・クリュ、オジェ村。もともとはその地でぶどう栽培農家を営んでいた造り手、それがジャン・ミランのようだ。

そのラインナップを見ると、「オジェ グランクリュ」と表記されたものと「オジェ」とだけ表記されたものがある。これなんでなんだろ。オジェ グランクリュはオジェ村のブドウだけで造られてるとかそういうことなんでしょうか。教えて詳しい方。

ともかく、2年以上熟成させてからリリースされるというこのヴィノスやまざき限定キュヴェ、十分以上においしかったのだった。やっぱり角打ちって、そしてシャンパーニュって本当に素晴らしいですね。

 

カッシェロ・デル・ディアブロ。どこでも売ってるワインの歴史的背景を調べてみた。【Casillero del Diablo SHIRAZ】

カッシェロ・デル・ディアブロ シラーズを買ってみた。

用事があって池袋のヤマダデンキに行ったところワインコーナー全品半額というとんでもないセールをやっていた。こんなもん買う一択だわとモンテス クラシックシリーズ シャルドネ、ヴィーニャ エスメラルダ、カッシェロ デル ディアブロ シラーズの3本をカゴに蹴り込み、その夜のご近所飲み会に2本を持ち込んだのだがそこで飲んだカッシェロ・デル・ディアブロ シラーズが妙においしかったのだった。

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全部で2000円ちょっとでした。お得すぎ。

カッシェロ・デル・ディアブロ。輸入元はキリン。コンビニでもスーパーでもどこでも売ってる安ワイン。生産者はチリのコンチャ・イ・トロ。蔵に盗人がこないようにこの蔵には悪魔(ディアブロ)がいるぞと主人が噂を流したのが名前の由来、みたいなところまではなんとなく日本人の基本的教養として知ってる。教養としてのディアブロ

で、私はこのワインをほぼ飲んだことがなかったのだ。どこでも売ってるし名前の由来にマーケティング臭を感じちゃって。なのだが、飲んでおいしかったのもまた事実なのでこれを機にガッツリ調べることにした。どこから調べるかと言えば、悪魔がいるという噂を流した蔵の主人からだ。

 

カッシェロ・デル・ディアブロとコンチャ・イ・トロの創業者、ドン・メルチョー

ドン・メルチョー、フルネームはメルチョー・デ・サンティアゴ・コンチャ・イ・トロ。名前長いな。ドンはスペイン語圏における貴人に対する損傷で、ラテン語の君主への尊称であるドミナスに由来する。支配を意味する英語のドミネートもここから来てるみたいですよ。ヒマだしワインのむ。は勉強になるブログですね(宣伝)。

ドン・メルチョーはコンチャ・イ・トロのフラグシップワインの名前になってる

なんの話だっけ。ドン・メルチョーの話だった。彼が生まれたのは1833年。コンチャ・イ・トロを立ち上げたのは1883年。じゃあその間の50年間なにやってんだとなるわけだが調べたらチリの大蔵大臣やってた。大物かよ。チリで政財界の大物が設立したワイナリーって意味ではエラスリスと同じ感じ。↓参照

himawine.hatenablog.com

さておき1883年、ドン・メルチョーはフランスはボルドーからブドウの苗木を輸入し、マイポヴァレーにワイナリーを建設する。ちなみに持ち込んだのは、カベルネ・ソーヴィニヨンソーヴィニヨン・ブランセミヨン、メルロー、カルメネールだったそうだ。

ワイナリーは順調に発展し、1923年に株式公開。1933年に輸入を開始すると、1950年にはより規模を大きくしたとある。

 

カッシェロ・デル・ディアブロの歴史

さて、カッシェロ・デル・ディアブロだが、発足したのはなんと1966年と半世紀以上前で、マーケティング臭どころか普通に歴史あるブランドだったすみません私が間違ってました。フロンテラとかサンライズとはわけが違う感のある同社のビジネスの中核に位置するワインがカッシェロ・デル・ディアブロだった。

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カッシェロ・デル・ディアブロの初期デザイン。かっこいい。(画像は公式サイトより)

ちなみに公式サイトを見ると、カッシェロ・デルがつかないそのものズバリの「ディアブロ」というワインもあるようだ。これ日本で見たことないけどハロウィンシーズンとかに需要ありそうな気がする。誰か輸入してください。評価も高いみたいだし。

コンチャ・イ・トロの所有するブドウ畑の総面積は113平方キロメートル。山形県天童市の市域が余すところなくすべてブドウの畑っていうレベル。ピンとこないがとにかくすごい。このスケールを活かしてワインを造るわけだからおいしくないわけないんですよ普通に。

 

カッシェロ・デル・ディアブロと安うまシラーMAP

実際に飲んだシラーズも、シラーとシラーズの中間地点、エレガントと果実味の間の味わいでとってもおいしかったのだった。

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vivinoの評価は3.5。ヒマワイン評価はもう少し上な感じでした。

キチンと果実味があり、胡椒的なスパイシーな香りもちゃんとしてとってもイージー・トゥ・ドリンク。1000円台前半のシラーズとして非常にいいと思う。大手強い。コノスルと同じ会社(コノスルはコンチャ・イ・トロが輸出専用のブランドとして1993年に設立)だけある。飲んだ2018VTが良いVTだったとかなのかな。とにかくおいしかった。

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安うまシラーMAP的にもいい位置にくる感じだった 

こうなるとしばらく放置していた安うまシラーMAPも再起動させていこう。寒くなってきたことだし。